STAGE.1

巻き戻してもう一度キスをしよう

深夜の真選組屯所。

ほとんどの隊士が眠りにつく中、真選組の頭脳と称される鬼の副長の夜は、まだまだ終わらない。

決して、楽しい夜を過ごしている訳ではなく、書類の束を前に、雑務整理に追われているだけだが。


「ふぅ・・・」


仕事の供であるタバコの煙をゆっくりと吐き出しながら、報告書を黙々と作成。その横にある灰皿にはすでに吸殻がいっぱいで、土方が机に向かっている時間を表していた。

しかし、そろそろ切り上げて就寝しなければ明日の仕事にも影響しそうだ。

―――が。

そんな自分の都合などお構いなしに、来訪者は突然やってくるもので。


『土方さーん、眠れないー』

「・・・・・・」


部屋の主の返事を待たずに襖は不躾に開かれ、子どものような駄々をこねながら勝手に入ってくる相手は、目下、土方の悩みの種でもある三番隊隊長 苗字 名前だ。

心の中で盛大に溜息を漏らしていると、ふらふらと近づいてきた名前に背中から圧し掛かられた。


「オイッ!」


何の前振りもなく密着されたものだから、慌てて声を掛けるが、近くに漂ってくるは、女性特有の甘い香り、ではなく。


「てめー、なに未成年が酒飲んでんだよ」


ツンと鼻を差すようなアルコール臭。
呆れた顔を後ろに向けると、頬を赤らめトロンとした表情で見つめてくる瞳とかち合う。


『いーじゃないですかー、どうせ土方さんも未成年の時にお酒も煙草もしてたんでしょー』

「・・・してねーよ」


微妙な間がありつつも、警察らしくそこはキッチリと否定し、とりあえずはこの体勢で居る訳にはいかないと名前の腕を掴んで引き剥がしにかかり。


「つーか、俺ぁもう寝んだよ。酒飲むなら勝手に一人で飲んでろ」


晩酌相手を求めて来たのかもしれないが、流石にこんな時間から付き合えないと自室へ帰るよう促すものの、名前は諦めるどころか。


『それなら、私も一緒に寝て良いですかぁ?』

「・・・・・・は?」


丁度良かったと言わんばかりに両手をポンと合わせて、笑顔を見せると、すでに用意していた布団の中へとゴソゴソと潜り込んでいってしまった。

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