背中にキス
『…ッ……!!』
もう、驚きすぎて声も出せない。
こんな状態で、電柱に固定されてしまって、身動きも取れなければ、この場から離れることも出来ない。
そして、追い討ちを掛けるような言葉が。
「満足するまで相手してやりてーが、生憎と任務中なもんでね」
「命よりも任務が大事だ」とか白々しいことを言いながら、名前の髪をゆっくりとすくように撫でる。
『……ッ…』
その仕草に少しだけくすぐったさを感じながらも、この男が行おうとしていることを考えたら何も言えなくなっていた。
どこまでも鬼畜で、意地悪。
「俺が戻るまで、いい子に待ってなせィ」
名前は涙を滲ませながら小さく『待って』と呟いたが、引き留めることなど出来るはずもなく、そう言い残した沖田は、その場を去っていった。
『ん…ッ…ふ…』
未だに内部で振動し続けるソレに、熱は疼き吐息が漏れる。
こうやって、土方と同じように、悪戯に煽ったまま己の身体を放置していくのか。
なんて、残酷な男なのだろう。
そう考えると涙が止まらなかった。
『……ッ…』
けれど、それ以上に。
去り際に背中に落とされた口付けは、どこまでも優しかった――…
END.
背中にキス。
まるで本心を隠すように