濡れた睫毛にキスをする
『え、何言ってるんですか?二人とも』
バチバチと竹刀がぶつかる音が響く、稽古中の道場。
胴着姿の隊士たちが汗を流し切磋琢磨するなか、端に位置取り稽古の風景を眺めていた真選組局長と副長の会話に名前は驚きの声を上げる。
「何って、三番隊の話だろーが…」
今、話題の中心であるはずの名前だったが、キョトンと不思議そうな表情で見つめてくるものだから、話を切り出した土方も何故か言葉に詰まってしまった。
三番隊の隊長について。
それを局長である近藤と一緒に頭を悩ませていたのだが。
『だから、もともと私が隊長っていうのは終兄さんの“代理”ですよ?』
「「あ」」
同時に声を上げた幹部二名は思い出す。
危うくダブル隊長制度がここでも採用されてしまっており困ったと話していたところだったが、名前の発言により、その悩みは杞憂で終わったのだった。
『終兄さんが中国だか英国だかを彷徨ってるみたいなんで、戻ってくるまでは頼むって局長が言ったんですよ?』
「…あ、あぁ!確かに、そうだった!いや、忘れてないからねッ!無能な管理人が、終が登場する前に設定考えてしまったとかじゃないからねッ」
「近藤さん…その発言は完全にアウトだ」
煙草に火を点けながら冷静に土方がツッコミを入れるが。
斉藤が放浪により姿を消してしまい隊長不在という状況は好ましくないため、その時に唯一、三番隊に所属していた名前が抜擢されたという経緯だ。
こじつけ感が半端ないが、アレがこーなって、そういうことなので、賢明なお嬢様方はお察し下さい。