揄えるならキスできそうな距離
『・・・はぁ、はぁ』
「・・・早ぇな」
『!』
指だけに翻弄されて。
簡単に達してしまった己の身体が恨めしく、更に追い討ちをかけるような土方の言葉に顔を真っ赤にさせた名前は身を小さくして俯くしかなかった。
けれど、そのまま沈黙が続く訳もなく。
グチュリと中から指を引き抜かれ、僅かに声が漏れるものの、
『や・・・土方さ――んっ』
その声を掻き消すように強引に唇を塞がれた。
そして達したばかりの火照った身体をギュッと抱き締められ、両足はそっと左右に開かれる。
キスも熱くて。
もう、止められない。
「苗字・・・」
請うように名前を呼ばれたと思ったら、いきり立ったソレを濡れた入口に宛がわれ。
―――ぐちゅッ
『あ――・・・』
大きな質量が己の中にゆっくり入ってこようとして、それを受け入れるように彼の腕をきつく握り締めた。
その時、
「土方さーん、名前ー」
「『!』」
襖の外から二人を探す沖田の声が聞こえてきた。
瞬間、ピタリと動きが止まる。
まるで現実に引き戻されるように。
「どこですかーィ?」
恐らく幽霊騒動は何らかの形で終結したのだろう。
そこで、姿が見えない自分たちを探しにきたのだろうが、何てタイミングが悪いんだ。
密着したままの二人は、ただ身動きも取れずに息を潜めるしかなく。
しばらくすると沖田も諦め別の場所を探しにいったようだが、また他の誰かが探しにくるかもしれない。
結果、続きなんて到底ムリで。
「・・・・・・」
『・・・・・・』
居たたまれない空気に耐え切れず、身支度もそこそこに服を掴んだ名前はバタバタと密室を出て行ってしまった。
取り残された土方は、ただ呆然と暗闇を見つめるしかなく。
そんな、まさか、寸止めって。
「・・・泣きてェ」
こんな、夏の熱い日に。
彼女との距離はあまりに近かった。
END.
喩えるならキスできそうな距離。
で、キスをしてしまった二人