STAGE.1

チョコより甘いキスをして

『んー…と、あれー?』

ムクリと勢いよく起き上がったその人物は軽く手を上げ背筋を伸ばすと、見慣れない風景にキョロキョロと視線を泳がせた。

シーツの中から現れた見知った顔に、思わず銀時は声を上げる。

「おまっ…ッ名前?」

『あー銀さん、おはようございますー』

声を掛けられ隣の人物に気付いた名前も、寝惚けているせいか間抜けな挨拶を銀時に返す。

「な、なんで…」

『何で?』

目を見開いて驚愕の表情を見せる銀時に対し、発した言葉の意味が分からず名前は首を捻る。

この場合、「何でお前がここに居るのか」と続くのだろうが、この状況で女性に発する言葉としてはあまりに失礼だ。

それに。

「あ、いや…と、とりあえずだ。その格好を、な、何とかしたまえ」

『その格好…あ』

銀時が上ずった声で注意すると、名前が自身の姿がどういう状態かを思い出して声を漏らす。

シーツだけ羽織った彼女は、一糸纏わずその若い肌を露としていた。さすがに朝の日差しで明るい室内では恥ずかしく、名前は目を伏せながらゴソゴソとシーツを前でくるめていく。

(やったのか?!やったのか俺ー!!)

その気恥ずかしそうな態度に、目を両手で覆いながら銀時は心の中で叫ぶ。

相手が名前だと分かった今も、昨夜の記憶は甦ってはくれない。この場合、覚えてないことが失態なのか。致したことが失態なのか。

自分の許容範囲を越えている問題に直面し、何をどうしたらいいのか、銀時の頭の中はもうパンク寸前だった。

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