2018/06/17
勇敢であれ!高貴であれ!
例えばである。この荒廃した世界で救いがあるのなら。
酷く朽ち果てたその町に、カラコロと下駄を鳴らしていく。ふわりと隣にやってきた陸奥守が同じように周りを見渡した。
「酷い有様じゃ」
その言葉に小さく頷く。それほどまでにこの町の有様は酷かった。何かが燃えたような後、酷い匂いがしないのは誰かが鼻を覆ってくれているからだろう。ずり、ずり、と音がしてそちらを見る。そこから現れた煤だらけの存在は口をパクパクと開いた。水、水、と彷徨うそれは生きているのか死んでいるかはわからない。古い銃を杖に一歩一歩とこちらに足を進ませわたしの前に倒れこんだ。みずを、くれ、そう告げた彼に、持っていた水を葉に掬い飲ませてやる。ああ水だ、水だと喜んだ人はそのまま息を引き取りーー消えた。なるほど、人じゃなかったらしい。銃一つ残されたそれに銃を拾う。これに呼ばれたのかと思って手に取れば手招きする影が見えた。陸奥守と顔を見合わせて、その先に進む。その間にもまた一つ銃を拾った。瓦礫の下にあった階段を降りれば、沢山の銃が置いてある部屋で一人の少年が倒れているのがわかる。生きているか確認すれば、ちゃんと生きているらしいそれ。どうやらこの子が私を呼んだらしい。
「ここに置いとくわけにも行かないか。とりあえず本丸連れて行くかな。銃もアレだし、結界張って清めるだけ清めるかな」
「そうじゃなぁ」
ということで、一度扉を閉めて口ずさむ。
「つなぎましませ、道祖の神よ、那由多の先とは言わずとも、本丸まで繋ぎませ」
そう言って扉を開けば本丸である。丁度いた石切丸がめちゃくちゃ顔をしかめた。
「とりあえずお清めコース。あと、怪我人いるんで手当てもしたいから薬研くん呼んできて」
その声に周りはドタバタと動き出した。
oo
いまだに目を覚まさない少年である。ちなみに少年と一緒にあった銃は一室に保管されている。刀たちは興味があるのかちらほらのぞいているけど。さて、問題は私が拾った銃二つである。周り曰く、火縄銃と幕末の銃らしい。手入れ部屋に入れたら元に戻ったそれらである。
「主、降ろすのか?」
「話聞きたいしなぁ、おろすしかないかなって」
鶴丸さんの言葉に、そう言う。じゃあ宴会だな!!と言って走っていった彼に苦笑いした。
「ありはや、あそばぬともうさぬ、あさくらに、銃に宿りし付喪の御神よ、おりましませ」
そう呟きながら言えば桜が香る。花びらが散り、二人の人が姿を現した。青年と男性である。洋装なのは銃だからだろうか。パチリと目を開いた彼らは周りを見渡す。そしつ自分の手を見、私を見た。
「ワシは和製の火縄銃の一つだ。主殿よろしく頼む」
「……」
「ほれ、お前さんも!」
「……和製のゲベール銃だ」
その言葉にああ、と納得する。銃は量産型が多いから個々に名前がないのだろう。
「名前は後で決めるとして、色々と聞きたいことがあります。でも先にそちらの質問にお答えしましょう」
なるほどなぁ、と思う。ずれた未来では核戦争が起きたりなんやかんやしたりしているらしい。で、彼らはレジスタンスの兵士の持ち物だったが空襲により壊滅してしまい彷徨っていたら私と会ったようだ。なるほど。此方の説明ーー付喪神を下ろしてることなどを説明すれば納得された。最初は悪態をついていたゲベール銃も話せば割とわかる人だった。よかった。
「少年についても何か?」
「少年?」
「地下にいた銃に囲まれた少年を保護したんですけど……」
「……次の『メディック』か」
そう言ったゲベール銃に、メディック?と首をかしげる。火縄銃がこちらを見た。
「主殿、その子供の手の甲に模様はあったか?」
「ありました。薔薇の……」
あまりいいものではない気がするそれである。力が強いというか。
「なら、次のメディックだ」
「衛生兵?」
「それも兼ねてるが、主の力と似てる。でも違うんだろうとは思うが……前のメディックが死んだからか。まぁ、あの攻撃じゃな」
「ん……ん?」
「主殿と似た力を持つんじゃが、その力は一人しか存在できないと兵士たちはいっていた。入れ替わるように現れる。主殿が見つけたので……五人目だったか」
「五人ってことは四人死んだんですか」
「詳しくはわかんねぇ。俺はアイツの一部だけど違うし、途中から来た身だからな」
「ワシが知ってる限りだと殆どが敵の猛攻だが、粛清もあったぞ」
その言葉に顔をしかめる。何その黒本丸みたいなの。そこを突っ込む前にドタバタと走って来た刀剣たちが勢いよく扉を開けたのだけど。長谷部さんめちゃくちゃ必死な形相である。
「主!銃の付喪神おろしたんですか!?」
目を瞬いた二人に「刀剣の付喪神達」と紹介すれば彼らは顔を見合わせた。
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いい意味で馴染んだ、というか。お世話係が適切だったというか。ゲベール銃こと八重は(恐らく)年下ができて嬉しい兼さん、火縄銃こと雑賀は長谷部、それを支えて周りという形である。他の銃は恐らく少年が降ろした方がいいと思われるためそのままである。それにしても夢で鑑賞してくるのだけど。その中に八重や雑賀さんと同型がいたりするのだけど、本人達に聞けばそれは概念みたいなものという返答をいただいた。話を聞けば私が個を降ろすのに対し、少年は全を降ろすらしい。量産された銃も多くあるからだろうか。とりあえず八重のそっくりさんはめちゃくちゃ捻くれていたとしか言えないし、雑賀さんはそっくりさんはよりおっとりタイプだと理解した。
「このままいくと彼らが自力で降りてくるのも時間の問題だね」
そうお茶をすすった歌仙に、それはちょっとなぁ、と呟く。意外そうにこちらを見た歌仙に、何?と言えばいいやと彼は口を開いた。
「ゆくゆくは全て降ろしてしまうのかと思ったけれど、違うのかい?」
「あの二人については、私の目の前に現れて私が拾っちゃったし、あそこが何か知りたかったから降ろしたんだけど。他は少年が降ろすべきだと思って」
「目覚めないあの子?」
「そう。元々あの子の力に呼応するみたいなんだよね。だから徹底的に戦術医術エクセトラ叩き込んで自衛できるようにしたいんだけど」
少年がいるからと慌てて長期休みを取った私であるけれども、そろそろ図書館に行かねばなるまい。医術は薬研と森先生がいるし戦術と銃の扱い方は按司と一部文豪に頼めばいいだろう。私の考えていることを察したらしい歌仙は「もはや、按司を連れて来たら銃の判別もすぐつくと思うんだけど」と言った。それはそうだ。
「とりあえず明日、八重と雑賀さん連れて図書館に行って説明してくる」
「そろそろ主も佐藤にも会いたいだろうし、そうしておいで」
歌仙の言葉に歌仙をどつけば雅じゃないよと怒られた。
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八重と雑賀さんを見た途端、新しい刀か?と聞く周りは随分と順応しているらしい。しかしながら、按司が刀ではなく大きめの銃のケースを持っていることに気づいたんだろう。「おいおい、刀の次は銃か?」と突っ込んだことにより周りが驚きの声を上げた。
「右が和製火縄銃の雑賀さん、左が和製ゲベール銃の八重です。ちなみに銃を集めだしたわけではないのですが色々ありまして」
そう困り顔で言えば、佐藤さんが「長く休んでたのはそれか」と口を開いた。
「ええ、そうです。すこし厄介な事が起こってーー」
私は説明する為に二人に座ってもらい口を開く。館長と特務司書、初期文豪は聞く体制に入った。
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「おい、刀は日本の国宝で済むが、銃だと他国の国宝になるぞ」
銃が置かれた部屋に来るなりそう突っ込んだ按司である。陸奥守がワクワクした表情でノートを手に取り、按司にひっついて来た無頼と小林さん、私ときた佐藤さん中心会派は銃の部屋を見渡した。
「色んなんあんねんなぁ」
「おい織田作それ触れんなよ、ナポレオンが使ってた銃だぞ」
「うげっ」
伸ばした手を引っ込めた織田作さんに、いや普段織田作さんがからかってる長谷部も織田信長の刀、と言いかけてやめた。これがこの時期、これが誰が使っていたもの、量産されたもの、個人のために作られたもの、と瞬時に言っていく按司は流石である。
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目を覚ませば燃え尽きた場所、なんてことはなく、和風の天井で。障子が開いた先にあるのは綺麗な日本庭園である。あれ?俺さっきまで世界終末感溢れる洋風な場所にいたよな?と首を傾げながら起き上がる。聞こえてきた足音の方を見れば、髪の短い女性がこちらを見下ろした。着ている服は和装であるが、目は青い。彼女は無表情から少し笑みを浮かべて俺を見ると口を開く。
「やっと起きましたか」
そう息を吐いた彼女は、もしかしたら死後の世界の人物なのかもしれない。
と思っていた一ヶ月前の俺に言いたい。彼女は人間であるし、なかなか優秀で多忙な人物であると。
目覚めたら江戸川コナンよろしく縮んだ体で街にいて、仕方なく物乞いとして生きてきた俺であるが、近くに反政府的な勢力がいたのが運の尽き。始まった空襲、焼かれていく街に逃げ惑っていたら手の甲に変な模様が現れ、近くにいた兵士にそれが見つかりーー地下に押し込められたと思ったらここである。そこから何があったかわかりはしないが、主やら司書やらと呼ばれる彼女、ことナマエさんに助けられて今に至る。同じ場所からやってきたという八重さんと雑賀さんの話を聞けばどうやら俺は貴銃士とかいう存在を降ろす事ができる唯一の存在らしい。俺の力は戦力にはもってこいであり、反政府組織ーーレジスタンスはそれを求めているとかなんとか。世界帝も探しており、見つかると処刑は決定らしい。ナマエさんは?とも思ったが彼女の力はまた別であるとのことだ。譲渡したいんだけど、と話を聞いてぼやけば、雑賀さんに「そうさせてあげたいのは山々だが、死なないと力は譲渡されない」と言われて戦慄した俺である。もしかしなくとも死亡フラグが乱立しているのでは。
まぁ、ナマエさんがそのままだと可哀想だから、と、師匠こと按司さんに銃の扱い方戦い方教わったり、ナマエさんに摩訶不思議な術を教わったり、森先生と薬研に医学、ついでに図書館で会う人に教養やら文学やらも教わってる身だ。なんだこの多忙な学生感。というかそもそも、元の場所に帰らなきゃいいのでは、と真理に気づいた顔で呟けば八重さんに殴られた。この人のデレはナマエさんにしか向けられない。まぁいい兄貴分だけど。
「あのな、あんまりウダウダ言ってると後ろから撃たれるぞ」
「八重さんに?」
「馬鹿、俺がそんなことしたら主に見捨てられるだろ!」
「じゃあ、雑賀さん?」
「俺はそんなことしないぞ」
雑賀さんが野菜やらなんやらを持ってやってくる。畑仕事の内番だったらしい。そばにいた信濃は果物をもっている。
「でもまぁ他の奴ならやりかねんな」
「え?二人の他にいんの?」
「あぁ、あの部屋から出れない人達かぁ」
「え?なにそれ」
そう聞こうとすれば、ナマエさんが荒く足音を立ててやってくる。俺の襟を引っ掴むと引きずるように進んだ。なんだなんだ?と顔を出した他の人を気にすることなく、彼女はすぐ近くの障子を勢いよく開ける。そこに並んでいる幾十の銃に彼女は怒鳴った。
「いい加減にしてください。私は貴方達のマスターじゃないです。安眠妨害しないでください。貴方達のマスターは、こっち」
そう言った彼女に俺ははてなを大量に浮かべる。とりあえず答えがほしくて八重さんと雑賀さんを見れば、八重さんは頭を抱え、雑賀さんは苦笑いをしていた。近くで茶を飲んでいた三日月さんが、「主の力がまた強まったか」と麗らかに笑う。
「あと貴方達のマスターは勉強中ですよ。子供を学もなしにほっぽり出すわけがないでしょうが。貴方達は降ろしません。海外の人も国内の人もです。八重と雑賀さんは色々質問したかったので。じゃあ、安眠妨害しないでくださいね」
スパン!とまた障子を勢いよく閉めた彼女は満足したらしい。跳ね返って開いた障子を今度は丁寧に閉める。そして俺の顔をみてしばらく考える。なんだ?と首を傾げれば、彼女は一瞬目を細めて、またその障子をあけた。
「前言撤回します。一人だけお呼びします」
その言葉に反応したのは俺だけではなく、八重さんと雑賀さん、信濃達もだ。そして、その一言で、そこにあった銃が一斉にガタガタと動いた。怪奇現象である。ビビった俺は悪くない。
「ただし、私じゃない。この子が選んで呼びますので」
ナマエさんの言葉に、銃はシンと動かなくなる。見ていた八重さんが「失礼な奴らだな」といい、雑賀さんが笑った。
「ローランドの相棒、というわけじゃな」
「ローロの初期刀ならぬ初期銃士だね!」
そう納得した信濃になんて?と彼を見る。ちなみにローランドとは俺の外見(俺の心は日本人であるが外見がもろくそ白人系である)を見て、ナマエさんが適当につけた名前だ。本名は黙っといて、と言った彼女の意図は知らないが外見上そっちの方がしっくりくるのでそちらを名乗っているのである。ローロはその愛称らしい。
ナマエさんはもう一度考えると、手をそっと伸ばす。すると五丁の銃が浮かび上がった。人が徐々にあつまってきたのがわかる。
「ローロ、この五つから選びなさい」
「え?」
「この五つは貴方にまだ友好的でしょう」
「銃が友好的とかよくわかんないからナマエさんが選んでくれたら」
「ローロ、それはいけない」
俺の言葉に蜂須賀さんが首を左右に振った。加州さんも頷く。
「それ、ローロ自身が選ばないと意味がないから」
「主が選んだら、主のものだからね」
歌仙さんの言葉に山姥さんが選んでやるべきだと同じように頷いた。陸奥守さんが笑う。
「ま、どれを選んだって、なんちゃあなるぜよ」
そう言われたってなぁ、と思いつつ五つを見る。ナマエさんが直感でいいと思うよと言ったので、目を瞑る。そしてこれだ!と銃を手に取れば、その途端、急に感じた重みに、うわ、と言葉をこぼす。ゆっくりと目を開けば手元には一丁の銃があったーーはずだった。香ったのは薔薇の匂いだろうか。ヒラリと落ちた花びらに、頭の中に言葉が浮かぶ。そして口に出せ、という言葉も。
「高貴に戦え、Be Noble?」
そう呟けば薔薇の花びらの花嵐が起こる。そしてその花びらは一人の人型を作り上げ、その人型は人に変化した。ゆっくりと目を開いた彼は俺を見下ろすとパチパチと目を瞬かせた。
「は、初めまして!新しいマスター!俺はオーストリア産のローレンツライフルです。あの、あの......旧式ですみません......でも、選ばれたからにはお役に立てるように頑張ります!」
頭をバッと下げた彼に、俺は説明が欲しくてナマエさんを見る。ナマエさんは我関せずという風に「貴方達もいずれ」と言って銃を部屋にしまい、障子を閉めた。俺の視線に気づいたのかナマエさんはこちらを見る。
「ローロ、まずは彼と仲良くなりなさい。だから相部屋ね、海外の人だろうし色々教えてあげなさい。ローレンツライフル、何か困ったことがあれば、ローロか周りに聞いてください。私でも構いませんが、私は不在の場合が多いです」
「は、はい!剣のみなさんもよろしくお願いします!」
ぺこりと周りに頭を下げたローレンツライフルに、剣……?と首を傾げた俺は悪くない。
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約一ヶ月の間にローレンツライフル基ローレンツについてわかったこと:ドジっ子属性であるが努力家である。二人で頑張ろう!という話になったからいいだろうし、仲良くなれたからいい。
約一ヶ月の間に自分の力についてわかったこと:銃から銃士と呼ばれる存在を作り出せる?こと、銃士を回復出来ること。そりゃあレジスタンスも欲しがるわ。
約三ヶ月の間に今いる場所についてわかったこと:周りが刀の付喪神、八重さん雑賀さんは銃の付喪神、森先生はかの有名な森鴎外、エクセトラ。ナマエさんがチートであることは按司さんに聞いた。付喪神と銃士の違いとは、と思ったけど、全と個という返答をもらった。なんでも銃士は付喪神の集合体的なものらしい。ローレンツに個人に所有された記憶はないが、八重さんと雑賀さんには個人に所有された記憶はあるとか。なるほどなぁ、と納得したのは記憶に新しい。
「てか、ナマエさんはどうやって最初に五つ抜粋したんですか」
日課となりつつある銃部屋の銃をローレンツと手入れしつつ縁側で佐藤さんと陸奥さんと仕事の話をしていたナマエさんに声をかけてみる。そもそもナマエさんが最初に抜粋していた銃どれだ。
「ローロが主義主張ガンガン来る人も野心抱いてる人も苦手だろうからそれ以外でかつ真面目誠実ローロと話が合いそうな刀剣達に喧嘩売らない銃。あと八重と雑賀さんの同種は抜いたかな」
そう言ってのけた彼女に銃がカタカタ揺れたがもうなれた。人選に異議ありというとこだろう。
「あと重要なのが、俺がやるからやならくていい、とか、俺が守るから何もしなくていいっていうタイプより、ローロをサポートできること。サポートじゃなくても、ローロの成長を気長に見守れるか、ローロと一緒に成長できること」
そう告げた瞬間、銃は動きを止めた。しかしながらその言葉を聞くに、最後の条件にローレンツは当てはまったんだろう。ローレンツは「納得したように、だからタバティエールさんやドライゼさん、スプリングフィールドさんやケンタッキーさんが並んでたんですね」と告げた。
「あと君達は前のマスターに固執してなさそうだったし」
「え、そこまでわかるんですか?」
目を瞬いたローレンツにナマエさんは肩をすくめた。佐藤さんが元の持ち主ってことか?と首をかしげる。
「いえ、前にローロと同じ存在が四人いたようです。佐藤さんでいえば、私がなんらかの理由で死んでしまってその後按司達の会派に所属したとかそんな感じ」
その言葉に彼は納得する。陸奥さんが「ローレンツは前のマスターのこと覚えちょらんやが?」と首を傾げた。
「俺やドライゼさん、スプリングフィールドさんやタバティエールさん、ケンタッキーさんああなる前に緊急に呼び出されちゃって……正直前のマスター達がどんな方なのかなは知らないんですよね」
苦笑いしたローレンツに、あれ、じゃあ八重さんと雑賀さんは?と思ったがまた違うんだろう。あの人たちはレジスタンスの一般兵の持ち物だって言ってたし。
「でもなんでナマエがあいつらに目をつけられたんだ?」
「それはナマエさんが高貴で神聖な人だからだと思います!」
頬を染めながら告げたローレンツに、ナマエさんが苦い顔をした。陸奥さんが「夢を見過ぎじゃ」と突っ込んだけど。佐藤さんは一人納得してる。
「ナマエの血筋の関係か」
「恐らくはそうなんでしょうけど、怖いんですよね、あの盲目さ。私は普通の人間です」
ナマエさんの言葉に、佐藤さんが噴き出した。むっとしたナマエさんはポコポコと佐藤さんを叩く。
「なに!わらって!るんですか!」
「いや、ナマエは普通から結構逸脱してると思うんだが」
「そうじゃな、主は普通から逸脱はしちょる」
「むっちゃんー?」
「おお、肩叩きかえ?ちょうどよか」
ふざけ出した三人に(ナマエさんは怒っているようだが)俺とローレンツは顔を見合わせる。帰ってきた八重さんと同田貫さんがボロボロなのを見て、ナマエさんはすっ飛んで行ったけど。
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ここはどこだ。周りを見渡せばいつの日かの面影がある街である。燻っている火やいろんなものが焼けた臭いが鼻についた。俺ノエル達と五虎退や秋田と昼寝してたはずなんだけど。とりあえず相棒のローレンツはいないかと探してみるがいないらしい。どうしたものか、と思っていたら、人の声が聞こえる。生き残りがいたぞ!という声にそちらをみれば、街でたまに見た兵士達がいた。それに慌てて手を見る。いつのまにかハマっていた手袋に首を傾げていれば、彼らはこちらにやってきた。
「良かった、生き残りがいたか」
ほっと息を吐いた彼らに首を傾げる。何があったかわかるかい?と尋ねた彼らに、あー空から爆弾が、と言えば彼らは眉間にシワを寄せた。
「やはりか……おい、メディックを探すんだ!」
そうバタバタと慌ただしく動く彼らに、俺は放っておかれるわけで。さてどうしようかと思っていれば、リーダーっぽい人がこの町の有様ではな……と呟いて、俺を拾った。やめてほしい。
リーダーっぽい人にひかれてついたのは拠点だろうか。町の近くではなく、少し離れた場所である。みるからにボロボロの拠点はなんとか生活はできるように整えられているんだろう。負傷兵が目立つそこに、周りをキョロキョロと見渡していればリーダーのような人がこっちだ、と手招いた。
「ここは噂に聞くレジスタンスの拠点の?」
「一つではあるが、ここにいるのは皆負傷兵ばかりさ」
そう苦笑いしたその男性に、近くでタバコを吸っていた兵士が「まぁ、役立たずの掃き溜めって言われてる場所だけどな」とケラケラと笑う。
「坊主にわかりやすく言えば、俺たちはまぁ、負傷兵の回収係だな」
その言葉に納得する。だから負傷兵が多いらしい。あと回収された負傷兵がここは嫌だ的なことを言うのをみるとある意味レジスタンスでも見放された場所なんだろうか。俺が考えている間に、男性とタバコを吸っていた兵士が会話に移る。中核と彼女はいたか、彼女は中核が連れて逃げたようだ、また怪我人を放置かメディックとは肩書きだけだな、そんな会話に俺は彼らをみあげる。メディック、とはもしかして。いや、それだと俺に力が宿った意味とは?と思う。とりあえず、何か手伝いましょうか?と聞けば、ゆっくり休めばいいと言われ、別の兵士にボロボロの部屋に案内されーー中から現れた外見は年下とか同い年ぐらいの彼らに驚いたのだけども。
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夢だった、っていうオチはないよなぁ、と思う。夢の中であったナマエさんはいつかはそうなるとは思ってたけど、とぼやき、俺の手の甲に何か術を仕込んだ。どうやら薔薇の紋章を見えなくなるものらしい。あと、ちょっと古ぼけた鞄も貰った。いや、持ち物増えてもな、と思った俺ではあるが、目が覚めたら普通に俺が持っていたものになったから驚いたのだが。中には俺が勉強に使っていたノートやら筆記用具、ついでに手帳やら飴やらなんやらが入っていた。入っていた飴を見て目をキラキラとさせた子供に渡した俺は悪くない。とりあえず鞄は常に携帯するとする。
「よぉ、新入りの坊主。よく寝れたか?」
「あー、路上よりは?」
「まぁそりゃあ路上よりはいいだろうな。名前は?」
「ローランドです」
「ローランドな。ここじゃ働かざるもの食うべからずだ。どんどん働け」
そう背中を叩かれて「ウィッス」と返事をする。リーダーらしき人がやってきて俺を見下ろした。
「リーグ、子供達に飴をやったのかな?」
「飴?俺は仕入れてないな」
「あー、俺がたまたま持ってたのであげました」
「君が?ありがとう、子供達は甘い物が好きなんだが、どうも支給品に飴は含まれなくってな」
「ああ、いえ……えーと、俺はローランドです。寝床をありがとう」
「いや、構わないさ」
「気にすんな、ローロ。ここにいるのは上からしちゃ怪我人ばかりの役立たずばっかだ。坊主が一人増えようが変わらない」
「怪我人が役立たずって、一緒に戦った仲間だったんだろ?」
「さぁなぁ?あいつらは彼女に構うのに必死な節があるからな」
「リーグ、言いすぎた」
そうリーダーもといクロウさんの言葉にリーグと呼ばれた彼は肩をすくめた。
ここで数日過ごしてわかったが、終焉の地、もしくは見捨てられた地と呼ばれるだけあってこの部隊はかなり待遇がわるい。最前線にいるからなのか、最前線にいるくせにというのか、物資が届きにくく、そして怪我人を回収するのが任務であるというのに圧倒的に衛生兵の人数が少ない。話を聞けばそこから熱を発し死ぬ人間もおおくいるという。
「子供もある意味で貴重な人手でな。掃除洗濯ぐらいはできるからこっちは重宝するし、向こうは飯にありつけるからいつく」
そうモグモグと頬にパンを突っ込んで咀嚼しているリーグさんは俺を見る。クロウさんがコーヒーを飲みながら肩をすくめた。
「たまにお前みたいないい拾い物もするしな」
「美味い飯も作れて尚且つ衛生兵と同じことができるときた」
「俺を世話してくれた人が、生きるために必要だって言って医者の知り合いに掛け合ってくれたんすよ、無免許だけど」
「まぁ、あれぐらいできりゃあいいもんだ」
そうポンポンと俺の頭を撫でたリーグさんに、照れておく。マジで照れる。そういえば、最近、周りの噂で気になることがある。
没!
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