2019/01/20

本日もまた晴天なり 四





寝たら周りにバレてアウトだろうな、と思っていたらまさにそうだった。朝一で審神者さまの叫びが聞こえ、私を見つけるなり私の仕業でしょ!と言われたが鏡が割れたのは私のせいではないし、私の周りのせいでもないだろう。ただの何かが起きる前兆だ。バタバタと役人が知らないスーツの人を連れてきだかと思えば、審神者さまは真っ青な顔をして嘘よ!と叫び荷物をひっくるめていくつものスーツケースにいれるとそのままゲートをくぐっていった。何事だろうか。先日とは違う役人が冷や汗を垂らしながらこちらを見る。寝癖のついた白露くんも何だ何だとこちらにきた。
「何かあったんですか」
「あの、審神者さまは、今巷で有名な××××会社の娘さんになるのですが」
「え、マジで!?あの!?通りであんな態度とるわけだよ!!」
白露くんの反応に、ああ有名な会社らしいとわかる。
「不祥事やら色々発覚し、審神者さまのお父様が逮捕された挙句、株価が暴落いたしまして……」
「あぁ、ご愁傷様です。因果応報でしょう」
さらりとそういえば、役人はダラダラと冷や汗を流し白露くんは私を二度見した。
「ナマエさんなんかした、とか?」
「……私じゃなくて、本格的に政府の役人が動いた、それだけですよ。役人さん、私も一度家に帰りたいのですが。色々準備が必要でしょうし」
「は、はい、大変助かります!」
「え、なに、なに!?」
「白露くんは朝ごはんを食べて寝癖を直してきてください」
ぽん、と肩を叩き促す。そういえば、ここには五本の初期刀候補の刀はある。ならば彼の初期刀は、この本丸にない刀の方がいいだろう。
「刀はこちらで用意しても?」
「助かります!打刀以下でお願いします!」
「わかりました」
とりあえずゲートを自本丸につなぐ。ゲートの向こうにいた全員に突撃されたけど。

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とりあえず誰かは連れていけとうるさいので、むっちゃんを帯刀する。まぁ顕現しても極だからわかりやすいだろう。どちらにせよ一部は呼び出す必要があるし。あと、何故か六文も付いてきている。ただでさえ正装で動きにくいというのに、かなり動きにくい。
「五振りに関しては考慮した結果脇差二振、短刀二振、打刀一振にしましたが、未だ現れていない刀もありますのでそれは彼の家が元々持っていたなどということでお願いします」
そう役人に言えば、彼はわかりました!と元気に挨拶した。どうやら上手くことが運び、ストレス源から解放されたらしい。じゃあ俺は上司に報告しとくんで!あとはお願いします!と部下と一緒にいなくなった役人に、丸投げか……と遠い目をする。こちらのこんのすけがトテテと掛けてきて、白露様の準備が整いました、と私の肩に飛び乗って告げた。
「……こんちゃん、可愛い」
そのままもふもふと頬を擦り付けてしまうのは仕方ない。現実逃避である。
「な、ナマエさま!こまりますよう!」
「ちょっとだけ現実逃避」
はっきりとそう言って広間に向かう。この本丸の刀剣男士が勢ぞろいしている。そわそわしている白露くんに、緊張するよなぁ、と思いながら上座に座った。引き継ぎや見習いが独り立ちする場合、上座には本来その本丸の審神者が座るのだが、私がその代わりだろう。むっちゃんを横におき、彼を見た。
「今からちょっと長い儀式始まるけど大丈夫?」
「大丈夫、だけど、え、ナマエさん、え?」
「まぁそれはこれが終わってからね。本来なら五振りの打刀なんだけど、もう五振りともいるし、でもちゃんと用意したから大丈夫。で、刀剣男士は茶々はともかく、誰それ選べば言わないでくださいね」
そう先に釘を刺す。首を傾げながら、はーい、と返事をした彼らに息を吐き、彼を見る。きちんと座るように促せば彼はきちんと正座した。それをみて、私も彼に背を向ける。榊を置いて二礼二拍手した。
「ありはや、あそばぬともうさぬ、あさくらに。このたび審神者となりしもの、かの本丸をひきつぎしものなり。男の審神者の名を白露、年は数えて十九、七年勤め上げればその身を神域とおかず、彼の望むまま審神者であれ。ここに集いし三十の刀剣、即ち刀の御神は彼を主と定め、塗り替えられし歴史を正し、崩れる道筋を守るために力を振るう。刀を作りし鍛治の神よ、歴史を守る時の神よ、日ノ本に集いし八百万の神よ、彼を審神者と定めたまえ」
そう言って彼の方に向き直る。
「一つの神と一つの導き手の推薦なれど、五つの刀な御神の承認により彼を審神者とみなす」
そこで相変わらずぽかんとしている白露くんに苦笑いした。
「今から五人出てきて何か白露くんに質問するから答えてね。時間かかってもいいから」
「え、あ、はい、」
そう頷いた彼に手を伸ばす。
「まずは一振り目、三日月宗近」
桜とともに現れた本体、そしてそれは一人の男性となって私の隣に座った。
「まずは俺からか。そうだなぁ、もし、どうしても勝てぬ敵が現れたらどうする?」
こてん、と首を傾げた彼に白露くんは目をパチパチと瞬いた。
「え……一旦引いて対策をとって勝てるまで頑張る?」
「ははは、良い答えだ。特に引くことは大切だ、周りを見れば何かわかるかもしれぬ」
コロコロと笑った彼は承認しようと手を叩く。それをみて私のは口を開いた。
「二振り目、大典太光世」
「……俺でいいのか」
じっと私をみた大典太さんに、三日月さんが「天下五剣だからなぁ」と頷いた。
「……ならお前は何の為に力を求めた?成り行きか、望んでか」
その問いに白露くんは少し悩んでから口を開く。
「昔は成り行きだったのは否めないけど今は望んで。刀剣達と過ごしてみて、俺はこの人達の力になりたいと思ったから」
「……そうか、刀剣達も力をかしてくれるだろう」
承認しようと彼は頷く。それを聞いてまた違う名を呼ぶ。
「三振り目、数珠丸恒次」
「あなたは刀に何を望むのです」
「特には何も」
即答である。数珠丸さんは「無欲な方ですね」とつげてから、でも、ほんとうに?と可愛らしく首を傾げた。
「強いていうなら、俺と仲良くしてほしいとか、力を貸してほしいとか、あんまり怪我してほしくないとか」
「そうですか。それもりっぱなのぞみでしょう。しかし、過保護すぎるのもよくありませんよ」
承認しましょうと数珠丸さんが頷く。私は少し考えて、ソハヤさんは遠征だと思い出す。ならば、場合によっては数えられるーー。
「四振り目、一期一振」
「ソハヤ殿が留守ですからねーーかしこまりました、勤め上げましょう。あなたの大切なものを助けられる過去があるとして、貴方は本当に歴史修正主義者になりませんか」
「え」
一期さんの問いに白露くんは目を瞬いた。この問いはある意味確信である。わたし達には、歴史を変える手段があるのだ。
「歴史を守るとはある意味見捨てることです。貴方には時間を戻し、救える手はずが整いつつある。貴方も人間だ、親しい人が不意に亡くなることもある。貴方は本当に歴史修正の道に踏み出しませんか」
真っ直ぐに問いかけた一期さんに、彼は考えこんだらしい。そうして答えが出たのか彼は口を開く。
「ーーそういう場面にならないと、わからないですけど、刀剣達にとっても、そうなんですよね。なら、俺は我慢します。我慢できなくなったら、刀達に殴ってでも止めてもらいます」
「そうですね、迷うのでしたらそれで良いかと。審神者をしていれば、必ず何か迷う時が来ましょう。その時は迷わず刀剣達に尋ねなさい」
優しくそう告げた一期さんに、白露くんは「はい!」と元気よく頷いた。それを聞いて「では承認いたしましょう」と一期さんは笑う。では、最後である。
「五振り目、小烏丸」
そう呼べば現れた彼はクスクスと笑う。
「ふふふ、汝が審神者として選ばれたのも運命。父は尋ねずお前を信じよう。しかし、代わりに父の言葉を心に刻んでおけ」
小烏丸さんはそう言って彼を見やる。
「人間は死ぬものだ。病や傷であっけなく死ぬものだ。それと同じく、物も壊れる。壊れたからといって、あまり気を病んではならぬ。刀が戦いで、主人を守って壊れるのは本望である。だが、それまではどうか我が子らを大切に扱ってほしい。仲間として、友として、家族として」
「……はい!」
「良き返事よ」
ケラケラと笑った小烏丸は、「承認とする」と告げる。
「5つの神の承認を持って白露を審神者とする」
ほっと息を吐いた白露くんは足を崩しかけて、三日月さんに「まだだぞ」と言われて姿勢をただした。
「導き手ーー初期刀を選んでませんからな」
もう少し我慢しなさい、と、弟達をみつつ告げた一期に短刀達が元気に返事をした。
「もうちょっと頑張ってください」
「はい」
「本来なら最初に言った通り、五振りの打刀なんだけど、いるから違うのを連れてきました。ただ、白露くん、現時点で貴方の本丸と私のところにしかいない五振りになります。時が来ればいずれまた会えるでしょうが、扱いは気をつけてください」
「え、あ、はい」
「貴方が選べるのは、一振りの打刀、二振りの脇差、二振りの短刀。どう決めるかは貴方に任せます」
そう告げて宙に手を伸ばす。
「打刀、長曽袮虎徹」
「えーー」
「脇差、浦島虎徹、物吉貞宗」
「は、」
「短刀、信濃藤四郎、太鼓鐘貞宗」
「うぇ!?」
バタバタとこちらにやってきそうな彼らに私のそばにあった陸奥守が姿を現した。
「主は先に言ったはずぜよ、これは白露が選ぶんじゃ。おんしらはお口にチャック」
振り返った白露くんは彼らをみて、また刀をみる。
「どれも知り合いなのかー、うーん、」
「自分で選んだらいいと思いますよ。直感にしろ、今の本丸の状態を考慮してでも。それぞれ個別に説明もできますが」
「うーん、直感ならコレ、なんだよなぁ」
そう指差したのは物吉くんである。
「なぁ、この刀って兄弟とか仲間とかって今の本丸にいる?」
「今はいませんね」
「じゃあ、これにする。兄弟とか仲間とかなら誰かだけを優先することになるからな」
彼はそう言って刀を手に取った。その瞬間、白い花びらが舞った。
「物吉貞宗と言います! お話はお聞きしています! 今度は、あなたに幸運を運べばいいんですね!」
そう名乗った彼に、白露くんは目を瞬いて、白い、とだけ告げた。他の刀は桜の花びらと一緒に消える。
「他の刀もいつかは垣間見えましょう。さて、重苦しい行事もこれで終わりです」
それだけ告げて立ち上がる。三日月さんがこちらをみた。
「ふむ、この本丸に着任したということは、主はようやく帰ってこれるか。ろーろが来てはまだいないのかと口を尖らせておったぞ」
「ローロが来てたんですか」
「もはや、今も来ていますよ。弟弟子だパーティーだとワクワクしておられました」
その言葉に頭を抱える。物吉くんと白露くん、他刀剣がこちらを見上げた。
「結局ナマエさんってなにもの?」
「やんごとなきいちーー」
「主は神の一柱よ。元が審神者であったから、今も引き続き審神者もしておるが」
私がやんごとなき一族、と言いかけたのをかぶせたのは小烏丸さんである。やめてください。
「え?」
「主は言の葉、そしてそれにつながるものを守護する神の一柱ですからね」
「かみさま?え?は?え?」
「あぁ、だから霊力が神聖すぎるのか。おおよそ人の身に宿る霊力の質ではあるまい」
岩融さんの言葉に、刀剣達が納得する。目を白黒させている白露くんが、口を開く。
「じゃああの人、神さまをなぐーー」
「おーと、白露くん、それはお口にチャックしようか。ご飯にしよう、ご飯に。さーて、やることは多いゾー」
「主、お待ちください」
そそくさと逃げようとすれば、後ろから色々と追いかけてきこる。
「粟田口の皆さん、一にぃがいるよ。もう自由にしていいよ」
そう言えば粟田口がわぁと歓声をあげた。卑怯ですぞ、とプルプルしてる一期一振には悪いけども。
とりあえずゲートを繋げてお帰りくださいと言おうとしたら、ゲートの先からローロが顔を出した。

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なんかナマエさんが神様だったとか驚きの展開すぎてちょっとついていけないが、とりあえず本丸のゲートがナマエさんの本丸?屋敷?のゲートに繋がったらしい。そこから顔を出した見るからに西洋人の同い年ぐらいの男は俺をみて目を瞬いた。
「日本人だ」
「当たり前だろテメェ」
「ははぁ、おまえ俺のダチににてるわぁ」
そうあっけらかんと告げた西洋人に俺はそいつを見る。生憎西洋人の知り合いはいない、が、突然と姿を消した俺の友人と似ていた。そいつの名前を紡げば、西洋人は目を瞬いて、俺の真名を言いかけて口を慌ててつむぎーー大学の学生証のI.D.を口にする。その様子に理解する、コイツは突然いなくなった俺の友人であると。
「なに西洋人になってんだおまえ」
「俺だって知りません〜気づいたら幼児でナマエさんに拾われて色々あって今です〜」
「はぁ!?」
「お前俺の弟弟子な!!」
バシバシと俺の背中を叩いたそいつを俺は投げ飛ばす。なんだなんだとナマエさんの本丸や俺の本丸から刀剣達?が顔をのぞかせた。

力尽きた



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