2019/01/20

本日もまた晴天なり 三


「だから断じて浮気では!」
うたた寝から飛び起きたナマエさんに、どんな夢を見てたんだこの人と見つめる。周りを見て夢だと理解したナマエさんは頭を抱えた。そりゃあそういう認識になるというか、そうからかうよなぁ、と独りごちた彼女は疲れてるに違いない。まぁ、この人、最初から色々気を回してくれてるもんなぁ、と思ったところで、この人休みあったか?と振り返る。無い気がする。
「ナマエさん、今日休みで」
「え?」
「疲れてそうだから」
「元気です」
「いや、休み。飯は光忠とか歌仙てか蜂須賀とかがなんとかしてくれるだろ」
そう言って光忠のところに向かうかと足を向ける。休み、ともう一度言えば彼女は頷いた。

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突然休み宣告をされたので、のんびりすることとする。こんなことなら本を読みたいが、ここには本がないわけで。何か手伝おうと厨に顔を出せば、追い返されたし。暇だ、暇である。昔は按司にワーカーホリック!!とか言いながら仕事を没収されたり、棋院にやんわり釘を刺されたりエクセトラしていたが、彼らがいなくなった今そうそう釘をさす人はいなかったな、と思う。
「……寝よう」
そう呟いて目を伏せる。近くを通った虎さんを乗せればとても暖かいし、虎も虎で丸くなった。これは本気で寝るぞ。

起きたら部屋に運ばれていたし、周りに短刀がワラワラして寝ていた。昼寝の時間ですね、わかります。とりあえず短刀を起こさないように立ち上がり、誰が運んでくれたんだろうかと首を傾げた。とりあえず飲み物を取りに厨に向かうかと足を踏み出した。

「あ、ナマエちゃん、起きた?」
「えぇ、飲み物頂きますね」
そう言いつつコップに水をいれる。ぐっすりだったね、と告げた彼に久しぶりに昼寝しましたとコップに口をつけた。


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なんやかんやで過ごしていたら審神者さんが帰ってきたが周りを見て驚き、私が母屋にいたことにさらに驚きーー怒った。面倒な気配を察知したため今日で研修終了だよな、と意識を切り替える。ぶんと振り上げられた手に、彼女を連れ帰ってきた役人が慌てて止めた。
「暴力はダメですって!本当に!本当に!やんごとない一族の方なんです!」
「私の方が上でしょ!」
そう役人の腕を振り払った審神者さんに、面倒臭い人だなぁ、と思う。そしてそれは気配と一緒に当たった。

まずは刀を人間扱いしていたというか敬っていた私たちとは違い審神者さんは道具として扱うため、色々と食い違いができる。私が気に入らないためめちゃくちゃ悪態つかれるし、極め付けは私が呪具を持ち込んだとか刀を折ったとかそういうことを言い出した。恐らく彼女は私が呪具を使ったようにしたとか、短刀を折ったとかいうことで下げて、自分の評価を上げたいのだろう。そんなものありませんよ、と言えば彼女は私は位置を察知できるのよ!と足を鳴らして離れに向かった。だから処分したというのに。まぁ、結局は1つもなかったのだけど。とりあえずフォローするために、「みなさんをからかいたかっただけでは」と言えば審神者さんはキッとこちらをにらんで、こちらにやってきて私を打った。役人の顔が真っ青になる。まぁ、私は頬をさすりながら審神者さんを見るのだけど。
「研修の身ですが、いくつか進言させていただきますと」
「うるさい!」
「彼らは元は刀ですがーー」
「だまれ!」
「付喪神ですので神の一人、考えようによってはーー」
「耳おかしいんじゃない?」
「天目一箇神の眷属ともとれます故ーー」
「やっぱりへんなやつじゃない」
「存在に扱うと刀剣だけじゃなく神々の怒りを買う恐れがありますよ」
「ふん、そんなのただの嘘でしょ。邪悪なものは入って来れない」
これはもう手遅れだな、と役人を憐れみの目でみる。役人がビビりっぱなしだ。頑張れしか言えない。
「まぁ、嘘と思うなら構いませんが、私はきちんと進言致しましたので」
では、と頭を下げてそのまま離れに向かう。ああそうだ、もう一つ言わなければなるまい。
「私は怒っていませんが、私の周りの怒りを買う可能性はあるので、あの、気をつけてくださいね」
「口だけな癖に」
いや、本当にそれだけで済めばいいのだけども。

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離れに戻ったナマエさんを見送り、冷や汗をダラダラと流す役人を見る。やんごとなき一族とはどんな一族なんだろうか。審神者さんは足音をドスドスと立てて部屋に入る。刀達が伺うように審神者さんを見たが無視である。とりあえず、役人に大丈夫ですか?と聞けば彼は首を左右にふった。
「やばいやばい、ちょうやばい、ただでさえ身をお預かりしているのに、あんなことされたらガチで首が飛んでもおかしくない」
「ナマエさんってそんなに凄い人なんですか?」
その問いに彼はガックシと肩を落とした。とりあえず、薬研が冷やした方がいいのか?と役人に聞き、役人はハッとしたように頷いた。ぞろぞろとほとんどで離れに行くさまは異様だろうけど。

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「申し訳ございません!」
そう頭を下げた役人に、気にしないでください、と苦笑いする。薬研により冷やされている頬。というかほとんどこちらにきていいのだろうか。彼らの主は審神者さまである。
「それより、本丸に審神者さまが帰られたのであれば、私は帰ってもいいのですか?」
「いや、それは、あのぅ」
「はっきりとおっしゃってください。まさかと思いますが、見習いくんと審神者さまを交代させるまでいろとか、」
「うっ」
「見習いくんが一人前になるまでいろとか」
「うぅっ……」
「……おっしゃいたいんですね」
いかにも図星という顔をされたので、息を吐く。当の見習いくんも目を白黒させているが。
「あの審神者さまはこちらにいらっしゃらないときはどちらに?」
「現世にて他の仕事をされています」
「兼任、ということですか」
「政府は認めておりません……故に上の者は何度かご忠告をしたのですが、家を盾にして聞き入れてもらえず……もとより審神者自体も家を盾にしてなった方なので、」
「ははぁ、片鱗はあるなって思ってたけど、ワガママお嬢様ってわけだ。で、一般家庭育ちの俺がいいように扱われるのはみえてたから、家自体が審神者さまの上にあるはずのナマエさんを召喚したってわけ」
「あと、君の面倒も見てくれるだろうって……」
役人が肩を落として伺うようにこちらをみる。それなら私の本丸に研修とおもったが、そもそも私のいる時代は歴史修正云々はもう解決してるし出陣もほとんどしていないからだろうか。
「しかし、ここの本丸の主はあの方でしょう?刀剣達にとっても、はじめに顕現し契約を結んだのは審神者さまだ」
「見習いくんに顕現させてないんですか?」
「審神者さまの性格をみると、揉めてしまうでしょう。結局、政府はあの方をどうしたいのですか。審神者のままいさせるのか、兼業を認めるのか、審神者を辞めさせるのか。私はずっとここにはいれませんよ」
「存じ上げております。政府としては、審神者を解任し見習いである白露氏に引き継ぎを行なった上で当本丸を維持・向上を目指しております。審神者さまには向こうの業務に集中していただくため、一族を含め審神者であること、あったを忘れていただくのです」
周りの刀剣が静かになる。それはそうだ。ただ、見習いくんーー白露というらしいーーだけが周りを困惑気味に見た。
「え、え、なんかいろいろ初耳すぎるんだけど!ってか!刀剣達はそれでいいのか!?」
そう彼らを伺った白露に、打刀以下はなんともないような表情である。そういえば、そもそも彼らは私たちがきた時には練度が低く、主のことはよく知らないということや前にいた自分が折れていたことを知っていた。一番打刀で練度が高い歌仙がため息をはく。
「人の身とは、面倒な者だね。君たちの僕らに対する扱いに慣れてしまったら、前を地獄だと思うようになってしまったよ」
「歌仙……」
「……この際だから言ってしまうけれど、こんのすけを通して政府に報告したのは僕らなんだ」
そう口を開いた光忠さんに、太刀以上の刀が頷いた。
「折れていく君たちをみて、平然としている、なにもおもっていない主をみて、このままでいいんだろうかって。見習いくんはまだ知らないだろうけれど、演練っていうのは別の本丸と手合わせすることでね、そこで他の本丸をみて、おもってしまったんだ。主は、僕らを見せびらかすために連れているだけで、ただのものに過ぎないんだって。他の審神者は他の刀を大切に扱っているのをみて、ね」
なるほどな、と思いながら話を聞く。演練にはそういう側面もあるらしい。白露くんがプルプルしている。なんだろうかとそちらをみれば、「俺、立派な審神者になるぅ!」と泣きながら告げた。
「ぜってー、もう、そんな思いさせない!」
「はじめから立派である必要はないと思いますよ。刀剣達と話し合ったり、時には意見を衝突させたりしていけばいいと思います。全てをこなそうとすれば貴方が参ってしまいますから」
ポンポンと頭を撫でながらいえば、白露くんが何度も頷いた。ずるいです!と飛び込んできた短刀にもみくちゃにされたけれど。
「でも、結局ナマエさんって何者なの?」
「だから、やんごとなき一族の方です」
私に関してはそれで通すのか、政府は。


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