2019/05/04
ワールドエンドグッドナイト 1
・もしも君僕主が3で死んだあと、サチの代わりに固体時間軸にトリップしていたらなif
・一部付け加えて書き直した
ナマエと呼ばれる人物について、僕はほとんど知らない。スネーク曰く、アラスカでのご近所さん。恐らくは何処かの軍出身だろうとはスネークの話だ。というのも、何時もは僕らの世話をやく彼女だけど何かあればスネーク並みに実戦ができる。その何かなんて滅多にあることじゃないけれど。そして彼女は成熟していた。女性にこんな言い方はどうかと思うけれど、外見はティーンに近く見えるのに(僕もスネークも彼女の年齢は知らない)中身は落ち着いていて大人のようである。たまにぼうっとタバコの煙を眺めながら物思いに耽る表情なんかは本当に大人だった。
彼女がどうしてフィランソロピーにいるかというのは実に単純で、スネークがむやみに詮索することもなく自分の身も守れて料理ができるという条件に満たすからと連れてきたのが理由である。たしかに彼女はむやみに詮索することもなく、自分の身を守れるし、料理もできる。彼女は一つだけ条件をつけて、それを承諾した。彼女はアメリカで、行きたいところがあったらしい。
それは、墓地だった。入り口で待たされた僕らは、彼女が誰を偲んだかはわからない。ただスネークがここにはビッグボスの墓があるといっているあたり、ビッグボスを偲んだのかもしれない。
街を見た彼女が何を見て、何を感じたのかなんて、僕にはわからないのである。
「メリルに振られたんだって?」
そうからかうような声が聞こえて、パソコンから顔を上げる。スネークが眉間にシワを寄せているのが見えた。
「ダメだよ、ナマエ、スネークは引きずってるんだから」
「それは悪いことした」
そういう割には面白そうである。彼女はクスクスと笑う。スネークは反論にでたらしい。お前のせいで振られたようなものだぞ、とタバコを灰皿に押し付けて告げた。彼女はそれを聞いて肩をすくめる。
「責任転嫁はやめてくれ。私は何もしてないだろう?あれくらいの年頃は恋に恋するは脱しても年上を魅力的に感じるものさ。一種のフィルターをかけて君を見てたんだろう。まぁ、頑張れ」
そう言って彼女はひらりと手を振るとキッチンに向かう。それを見送ってスネークは大きくため息をついた。人の気も知らないで、と呟かれた言葉にあぁ、そういうこと、と、理解する。
彼女が誰を想っているかは知らないが、この蛇は恐らく彼女を――。
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「じゃっく、」
スネークを見てナマエがか細くそう呼んだ。スネークが起こそうとしてそうなったということは、どうやら寝ぼけているらしい。彼女はスネークの手に手を絡ませる。スネークがピタリと動きを止めた。
「ごめんね、じゃっく」
彼女はそう言ってまた目を伏せた。固まったままのスネークは彼女を見下ろす。僕はそれを見て口を開く。
「ジャックって言う知り合いは?」
「いない、が、たまにこうなる」
スネークはため息交じりでそう告げるとそのまま近くに腰かけた。その様子に少し笑えば、スネークに睨まれてしまったのだけど。
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彼女が寄りたい、といった場所は誰もいない廃墟だった。その家だけが朽ち果てたような、いや、朽ち果てるというよりは何十年も人が出入りしていないことが伺えた。彼女はそれを見て、何かショックを受けたように佇んでいたけれど、あぁ、そうか、と悲しげに目を伏せた。彼女がポケットから取り出した鍵は、その家に対してまだ新しいもののように感じた。
「合うのか、それ」
「恐らくは」
なんとも不明確な答えである。彼女は少し戸惑ったように扉の前で佇むと、意を決して鍵をあけた。カチャリとなった音、彼女はそっと扉をあける。中もまた、外同様に埃がかぶっている。彼女は中を悠々とすすみ、彼女が心細そうに振り返ったので僕らも中に入った。それはいつもの彼女ではなく、ただただ、幼い子供のようだった。
リビングだろうか。中はまるで60年代で時を止めたようである。彼女は周りをみて、何かを見つけるとそこで足を止めた。沈黙に耐えかねて口を開く。
「埃が被ってるけど素敵な家だね。知り合いの家?」
「……いや、私の家だ」
そう返した彼女に僕はギョッとする。この、時間を止めたような家が?彼女はそれに付け加えるように、自嘲するように口を開いた。
「――母親の家だ」
「ナマエの?」
「あぁ、もう、随分と昔にいなくなってしまったけれど。来る勇気がなかった」
「どうして?」
「現実に目を向けるのが、堪らなく辛かったから。でも、もういい。わかったから」
彼女はそう言ったものの、しばらくは動かなさそうである。スネークがある一点を見つけたまま動かないでいるので、彼女を励ますように声をかけようと彼の隣をみる。
――その色あせたセピアの写真には三人の人が写っている。一人は白人の女性である。もう一人はナマエにそっくりな女性だった。恐らく、彼女の母親に値するんだろうとはすぐにわかる。ただ、もう一人が問題だった。スネークによく似た彼は、スネークが絶対に浮かべないような笑顔で笑っている。スネークが、なんとなしを装って、ナマエの父親は?と尋ねた。彼女はようやく何かから顔を背けて、さぁな、と肩をすくめた。
「いこう、スネーク、オタコン。思い出に浸っても何の意味もない」
彼女はそう言って部屋を出た。僕らも続くようにそこから離れる。あの写真。
「他人の空似かな?」
「そうだといいがな。一緒に写っているだけで、父親だとは限らないだろう」
スネークはそう言いはしたが、それは単につよがりにしか聞こえなかった。そうして、この日から彼女はスネークをスネークと、そしてデイヴィッドと呼ぶようになった、と僕は記憶している。
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「ナマエがいなかったらどうなっていたことか」
びしょ濡れになった彼女はシャワールームである。タンカーと一緒に沈みかけたスネークを救出したのだ。僕が船をつけて、彼女が気を失ったスネークを荒波の中から連れ出した。同じくびしょ濡れであるスネークはタオルを被って、湿気た煙草をくわえていた。
「あぁ、そうだな、毎度助かる」
「いやぁ、笑わせてもらった礼だよ」
彼女がそう言って髪を拭きながらやってくる。その姿は見慣れたもので、最初はドギマギしていたが今はもう慣れた。変な気を起こしたって、彼女に取り押さえられるのがわかっているからだ。
彼女は思い出したようにクスクスわらう。彼女がさすのはジアゼパムの話だろう。プラシーボ効果で船揺れが止まった彼に彼女は「意外と単純なんだな」とそばでケラケラ笑っていたのを思い出す。まぁ、そのあとはあれだ。僕としてはスネークが彼女宛の嫌がらせに心霊写真を送ってきたのだけど、僕が驚くだけで彼女は凄いなとしか言っておらず、スネークが躍起になっていたけれど。任務を遂行する分には別にいいのだが、どうもこの二人は偶にこういうことをする。勿論僕も混ざるけれど。
言い返せないから黙ったスネークに、彼女は冗談だ、と近くにあった椅子に座る。
「それより、あの……滑稽な老人の言葉は本当なのか」
「何が」
「――君が作られた人間だとか、君の体が人より年を重ねるのが早いという話だ」
彼女の言葉に、恐らく拗ねているスネークは「だったらどうなんだ?」と問いかける。
「愛想をつかすわけじゃないから安心しろ。ただ、君が心配なだけだよ。はやいうちに対策をとらないとこのままの生活をずっと送れないかもしれないだろう」
「――そんなことはない」
そう言い切ったスネークに、彼女は安心したようだった。そうか、よかった、と心底から安心したように言った彼女に、少し微笑んだ彼女に、スネークが動きを止める。相変わらず一方通行らしいその気持ちを僕は理解できない、が、スネークは一応奮闘しているようだ。色々な葛藤を含めて。
――彼女はビッグボス の子供ではないか。
そんな疑問が浮かんだのは、あの家を訪れてからである。彼女があの写真の女性の血を引くのは確かだった。そっくりだったからだ。名前も彼女と同じ名前である。それをきいて、写真の女性は彼女なのでは、と思ったが本人が「じゃあ私はタイムスリップしてきたことになるな」と面白おかしく告げた。それもそうだ。写真は見るからに古く、また、スネークとそっくりな男がビッグボスだとしても彼女の今の年齢にかみ合わない。タイムスリップなんて理論や技術は今はまだ確立しておらず、アニメ等の創作の中でしかつくられていない。
では、彼女の父親は? と聞けばやはり知らないらしい。
僕がポロっと、写真のことを零せば、彼女の母親の話を聞けた。どうやら彼女の母親は軍にいて、写真の男とは同じ人に師事していたらしい。彼を父親と結びつけるのは率直であり、恐らく彼は母親を憎んでいる。「だからそんなことはありはしないさ」と彼女は言って、目を伏せたのだけど。
――閑話休題。血筋的な問題もあってか、スネークは彼女に奥手だ。いや、普段から口だけ番長であるけれど。彼女には非常に奥手に見える。いや、彼女が交わしているのも理由の一つかもしれない。
「あんまり無理はしないことだ、スネーク」
彼女はそう言って部屋を後にする。それを見送ったスネークがため息をついた。
――実際は、彼の体は老いてきている。人よりも早く。スネークが口を噤んでいるのは、彼女がシャドーモセスの一件を知らないからであるし、自分がどういう存在かも知らせていないからだ。そう、経歴はどうであれ、今の彼女はただの一般人なのである。
「いつかは教えないといけないと思うよ、スネーク」
僕の言葉にスネークは何も答えずにタバコに火をつけた。
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彼女は結構お茶目なところがある。偶にスネークが隠し持ったグラビアの本を読んでいたり、スネークのダンボールに入ってみたり、僕にゲームの仕方を教わったり、パソコンの使い方を教わったりしている。プログラミングは流石に無理なようで、諦めたようだけど。
娯楽代わりだとホラー映画を見ても、僕だけが怖がるばかりでスネークと二人でここをどうやって切り抜けるかを話したりする。スパイ映画はミッションインポッシブルより007派だ。しかも、初代ジェームズ・ボンド派である。好みかと思ったがそういうわけでもないらしい。
今日は休みにするつもりなのか、彼女は雑誌を広げて眺めていた。テロリストというレッテルを貼られた僕たちであるが、彼女だけが素性が知られていない。僕らが生活できるのも、彼女のおかげというわけである。まぁ、スネークの背中に乗ってるのはトレーニングの重石代わりだろうか。何の本だと思えば、政治に関する雑誌のようだ。
「ナマエが珍しいね。政治の本なんて」
「貰い物だからなぁ」
「貰い物?」
「この前、買い物が終わってカフェでくつろいでたら相席になった人にもらった。政治に興味を持った方がいいって。まぁ、事実、私は時事に疎いからな」
「そうかな?そこまで疎いとは思わないけど」
「隠してるからなぁ。向こうはいらない本を処分したかった、私は勉強のきっかけにはなる、そういうことだ。ちなみに何もついていないことは確認した」
彼女はそう言って、雑誌を端に置く。
「オタコンはどう思う?」
「政治について?」
「いや、スネークの老化について」
僕は彼女の問いにはなにも答えれない。彼女の問いかけに対する答えは知っている。でも、それはスネークから言うことであって僕のから言うことじゃない。
「……ごめん、僕からは何も言えない」
「いや、いいんだ」
「ナマエはどう思ってる?」
「見栄っ張りだなと思ってる」
見栄っ張り。確かにそうだ。スネークは見栄っ張りである。僕はケタケタと笑った。
「確かにそうだ」
「おい、本人の上でよくそんな話ができるな。誰が見栄っ張りだ」
「おっと、椅子の上下が止まってるぞ。カウントはまだ目標数まで行ってない。それともギブアップか?」
「まだ余裕だ」
「なら50追加しよう」
ぐ。スネークがそう言って黙り、腕立て伏せを再会する。また彼女が上下に揺れる。
「別に黙っててくれてもいい。君が言わないでいいと判断したから黙っていてくれているんだろうから」
彼女はそう告げて、またカウントに戻る。彼女は引き際が良すぎる。ドラマやアニメでは食いつくところだろうに。
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ガシャン。そんな音がして僕らは音の方を見た。コーヒーカップを落とした彼女はこれでもかというくらい目を見開いて、スネークを見ていた。スネークがただ、不思議そうに彼女の名を呼ぶ。彼女はそれが恐ろしいもののように、後ずさる。様子がおかしい。これから任務に行くというのに。彼女にはサポートに回って貰う必要があるのだ。壁に背中がついた衝撃で彼女は我に返ったようだった。顔を片手で覆うと、「あぁ、すまない、すこし、おどろいて、片付けないと」と口ではいうが体は動いていない。
「ナマエ、任務前だぞ」
「違う、そうじゃない、すこし、動揺しただけだ」
弱々しい彼女は珍しい。雨が降るんじゃないかというほど。スネークが息を吐いて、彼女に近寄る。僕は見ないふりを決める。気になるからパソコン越しにチラッとは見るけど。スネークが彼女の肩に遠慮がちに手を置く。
「ナマエ、どうしたんだ」
「いや、ほんとうに、なんでもないんだ、」
そう笑った彼女は、置かれた手を外す。無理して笑っている。
「空のカップで助かった。コーヒーが服につかなくてよかったよ」
そう言った次の瞬間には何時もの彼女に戻っていて。彼女はカップを拾い上げるとスネークを見上げた。
「さて、スネーク、準備はできたか?」
「本当に大丈夫なんだな?」
「人の心配より自分の心配をしなさい。オタコンもね」
そう言って彼女もまた置かれた装備を身につけた。
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「じゃあ、アンタの部下だって言ってたアマナ・プリーズラクも偽名なのか?」
「そうだよ、雷電。悪いね。でも、本名を名乗りたくはないかな」
そう割り込んだナマエにスネークは頷いた。先程まで僕の操縦を補助してくれていた彼女はヘリを修理してくれている。潜入にあたり、どうやらSHIELDSの隊員――話を聞くにイコロィ・プリスキンの部下の振りをしていたらしい。
「随分な様変わりだな。さっきまでは敬語だったのに」
「新米を装う意味がなくなったからね。名前は秘密」
彼女はそう言って肩をすくめる。
「本名を名乗りたくない?」
「君が雷電と名乗るのと一緒さ。あぁ、でも、スネーク達がやりにくいかな。ファーストネームはナマエだよ。あと、君は私を同い年ぐらいだと思っているが、スネーク達とそんなに離れていない」
それは僕達も初耳な気がする。そう思って彼女を見れば、スネークも同じように作業の手をとめて彼女を見た。彼女は言ってなかったか? と肩をすくめただけだが。
「プリスキン……スネークはアンタをパートナーだといっていたが……」
その発言をきいて、スネークが頭をぶつけた。僕はスネークを見つめる。そんなことを言っていたのか、君は。スネークにはそっと目を逸らされたけど。そんな様子を見てみないフリをしているのか、あるいは気づいていないのか、彼女は口を開く。
「パートナーにも色々な意味がある。相棒、夫婦、仲間、そのどれかには属すだろうが、君には関わりがないことだな。第一、そんなことを聞いてどうするんだ? 私を口説く気かな?」
「……あっ、いや、」
「おい、なんでどもるんだ」
そう突っ込んだスネークに、雷電と名乗る彼は何も答えない。ナマエはため息を一つこぼすと口を開く。
「……下世話な詮索はしないほうがいいし、君の『パートナー』がよく思わないだろうからやめておけ。私は私、彼は彼、仲間だということさ」
面倒になったんだろう。そうざっくばらんにまとめたナマエに、スネークが「そういうことだ」と同調した。雷電からはよくわかっていないような声で、え、ああ、と戸惑う声が聞こえる。
「雷電、仕事に戻りなさい。君に課せられた仕事は重大なんだ」
「ああ、だが――」
「雷電さん、お仕事に戻ってください。合衆国の危機なんですよ。通信終了します」
ピシャリ、と敬語で叱ってナマエは通信をきった。どうやら敬語で彼に接していたらしい。それにしても久々に彼女の敬語が聞けた。スネークは苦い顔をしたけれど。
「だから俺よりも年下に見られるわけだ。ただでさえこの国では幼顔といわれるのに」
「雷電はナマエを何歳だと?」
「十代後半そこらだと」
「女に夢を見すぎ。三十過ぎてるんだけどなぁ」
彼女はそう言って機体の下に潜る。僕とスネークは目を見合わせた。さらっと重大な発言をされた気がするが。
ちなみにその後、偽名の意味を知りたがった雷電から通信が入った。彼女ではなく、手持ち無沙汰になったスネークが答えを告げたのだけど。
「アマナは花の名前だ。オオアマナがナマエが好きな花だから、その花からとったんだろう」
「プリーズラグは?」
「プリーズラクは、ロシア語で亡霊、幽霊という意味だ」
相変わらず言語について博識である。
「ロシア語? ナマエはロシア人なのか?」
「わからん。恐らく国籍はアメリカだろうが――」
彼女の名前を調べても、もう存在しない人物として扱われている。痕跡は1960年代を最後に途切れ、最後の痕跡はソ連側への亡命者となっているのだ。ただ、それは彼女の母親の話で、彼女が生まれてからどう生きてきたのはわからない。
「え?」
「――だが、信頼できる人だ」
たしかにそうだ。彼女は信頼できる。素性がわからなくても。極端な理由を言うならば、僕らの他に誰とも関わりがない人だった。知り合いはアラスカに住んでいた頃の人だけ、という極々狭い人の知り合いしかいないのである。しかしながらスネークの言葉は何処か言い聞かせるような声でもあった。
アマナ。恐らくそれは、彼女が世話をしているあの白い花――オオアマナのことを指すに違いない。
――オオアマナの亡霊。それが何を指すかなど、僕らはこの時、まだ知る由もなかったのである。
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「ヘイティ?」
そう混乱したように告げたのはオセロットだろう。彼はただ唖然としたように彼女を見て、彼女はただまっすぐに彼を見た。ソリダスと呼ばれた男はチラリと彼女を見てオセロットを見た。オセロットが混乱していることなど、簡単に見て取れた。彼も同様をするのか、とスネークは彼女と彼を見比べる。
「ヘイティ? 貴方は、あそこで――」
「……貴方は誰かと勘違いしてる」
そう否定した彼女に、オセロットは目を見開いた。
「……あの人は、あそこで死んだ。それは貴方達が一番良くしること。……あの人が止めたかったことは止められなかった」
「……止めたかったこと?」
「……なんでもない。貴方がそれを知る必要はないのだから」
彼女は静かに銃を構える。
「私はプリーズラク。あの花の亡霊。スネークの相棒だ」
そう言って彼女は引き金を引いた。トーン、という彼女が持つ銃の独特な音が響き、オセロットは我に返ったように物陰に隠れた。
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「オセロットと知り合いだったのか」
「……母親がね」
彼女はそう言ってソファに沈むとクッションを抱えた。スネークは少し眉間に皺をよせる。彼女はただ淡々と口を開く。
「君たちのことだから、私の名前を調べたんだろう?ナマエ・クラウディア。ww2の英雄の一人に拾われた日系人で、後にソ連に亡命した人物。アメリカからは売国奴、そしてソ連からはイかれた奴と言われている人物」
「……そこまでは出てきていない。オタコンが調べたが、彼女は機密情報だった」
スネークがイライラしたようにタバコに火をつける。そう、と、彼女は目を伏せた。そして、流し目で彼を見る。
「彼女のことが知りたいの?」
「ああ」
「――貴方は会ったことがないのに?」
「会ったことがなくても」
恐らくナマエの言う『彼女』の情報がわからなければナマエの情報は出てこない。もしかしたら、ナマエが愛国者の息がかかった人物である可能性がある。そんな不安を拭い去りたかったのだろう。そういう僕もそうだった。やっと掴んだ情報で、愛国者達が百年前に息絶えた人物であることが判明した今、僕らはある意味不安定だったのである。彼女もそれを理解していたんだろう。マグカップを持った彼女はいとも簡単に――いつものように口を開く。
「彼女は元々CIAにいた。貴方の父親がかの有名なビッグボスであるなら、貴方の父親と同じ人に師事した人――けれど、後に東側についた人。あの山猫さんとはどこかであったんでしょう」
彼女はそう言って一度言葉を切ると、スネークをみる。
「――彼女は亡命した先で貴方の父親に殺された。」
彼女は淡々と告げた。それをきいたスネークが目を見開き――そして、怒ったように口を開く。
「なら俺に近づいたのは復讐の為か!?」
「まさか。貴方と貴方の父親は違う人だから、貴方になにかをしても意味がない。そもそも、貴方の父親はこの国の命令に従った――この国に忠を尽くしただけ」
ナマエは何かを思い出すように、何かを悲しむようにスネークを見た。しかしながら、不自然だ。
「ナマエ、君はいつ生まれたんだい?彼女が情報通りに1960年代に死んだのなら、君はスネークや僕たちより年上のはずだよ」
僕の言葉に彼女は目を伏せる。
「――記憶がないんだ」
意外な返答だった。僕らはじっとナマエを見つめる。彼女は自嘲するような笑みを浮かべた。
「記憶が?」
「そう。気づいたら、アラスカの民家にいた。雪の中を眠るように倒れていたんだっていわれた。どうしてそこにいたのかは知らない。知っているのは彼女のことと、彼女の周りのこと、知識だけ……他にはなにも」
彼女はそう言ってスネークや僕を見上げた。そこで納得する。通りで彼女は知り合いが少なく、時事に疎いのだ。恐らく、名前もなにも思い出せない状況で彼女がとっさに名乗ったのが、ナマエ・クラウディアという女性の名前だったのだろう。母親であるというものも思い込みによるものかもしれない。
「ごめんなさい」
彼女はそう言って静かに謝った。消え入りそうな声で、彼女は俯く。スネークは罰が悪そうに、しばらく黙って、いや、と首を左右に振った。
「俺も悪かった」
彼女に手を回したスネークに、僕はそっと席を立つ。しばらく調べ物をするなり何なりすればいいだろう。
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「ね、ねぇ、ナマエからも、なにかいって!」
「スネーク、一応機内は禁煙だ。次からはサニーに見つからないようにしてくれたらいい」
「あぁ、肝に銘じる」
「もう!」
そうぷりぷりと怒ったサニーに、ナマエは笑ってモニターからスネークをみる。
「ハニー、口寂しいならキスしてあげようか?」
「なっ!?」
思いっきり噎せたスネークに、彼女はケラケラと笑って、冗談だよ、と告げながらスネークのタバコをとって灰皿に押し付ける。それを聞いてスネークが少し残念そうにしたのを僕は見逃さなかった。
――あの後。ビッグシェル事件の後、僕が気を使ったというのに二人の仲は進展していない。
スネーク曰く、あの後ナマエは寝たらしい。それはもうぐっすりと。彼女は任務終わりは緊張が切れたからなのか、泥のように眠ることが多々あり――あのセンチメンタルな雰囲気は眠気からくるものだったらしい。眠りから覚めた後の彼女はケロリといつもの調子で、スネークが肩をすかされていたのが印象的であった。
今の二人は――ナマエはスネークの老化を支えて、サニーの親代わりとも言えるそれは側からみれば夫婦のようだが、本人にはそんなつもりはない。広い意味でのパートナー。逆にそうしか言えない間柄だ。
随分と年を重ねたスネークに対し、ナマエは少ししか重ねていないように見える。彼女が外見に気を使っているからなのか……あまり気を使っているようには見えないけども。いや、サプリを飲んでいるのを見ると恐らくは気をつかっているのかもしれない。
二人の様子を眺めていたサニーが首を傾げて口を開く。
「ねぇ、ナマエは、スネークが好き?」
子供はたまに、ダイレクトに確信に迫る質問をするものである。突然の質問に、スネークは動きを止めた。それに対してナマエは、そうだなぁ、と考える。
「私はスネークもオタコンもサニーも、みんな好きでみんな大切だよ。スネークもきっとそうだ、彼は見栄っ張りだからそんなことは言わないけどね」
彼女の言葉にスネークがしかめっ面をした。しかしながら、僕もわかっていることなので僕もそうだね、と頷いておく。その反面、彼女が逃げたとも思う。彼女がどういう気持ちを抱いているか、僕らは今だに知らないのである。
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