2019/10/07

大神妹はアルケミスト

・二週目妹ちゃんはアルケミスト+新桜
(年代がずれにずれているので雰囲気で書いてる)

10年だ。10年、あの人は帰ってこない。どれだけ大人になってしまったのだろう。どれだけ先が短くなってしまったのだろう。あの日、出撃を許されなかった私は今もここに生きている。
だから、降魔を追い払う術は知っているし、だから、追い払ってみせた。でも、それが引き金となってこうなっている。目の前にいるのは帝国華撃団の子達だろう。こちらを見た彼彼女らに私は困ったように笑うのだ。
「それはできません」
そう、今、私は政府により別の仕事が与えられている。なにより、彼との約束を守らなければならない。なので、首を左右に振る。その約束のわけを、すみれさんは知っている。だから、彼女は決して私をそこに誘うことはなかった。お願いします、と請われても出来ないものはできないのである。私と彼らを見比べた太宰先生が、「なぁ、司書さん、そろそろ仕事」と私の服をつまむ。私はその言葉に、仕事がありますので、と小さく会釈して彼を率いて奥に進んだ。彼彼女らがこちらに来ようとして、先生たちが止めてくれるこえがする。私はそっと息を吐いた。
「ありがとうございます、太宰先生」
「いや……なんかさ、司書、大丈夫?」
困った顔をしてこちらをみた彼に、大丈夫ですよ、というが「森先生のとこによって行こう」という話になってしまった。

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「司書、また奴らが来てるぜ」
そう告げた坂口先生に私は困った顔をしてしまう。先生方が断わってくれたり、職員が追い払ってくれたり、エクセトラ。私と彼らが顔を合わすことはない。が、それでも彼らは諦めない。
「お司書はん、もてもてやなぁ」
織田先生の言葉に、そういうのじゃないんですが、と苦い声をだしてしまった。
「彼ら、昔私がいたところに新しくきた子達だとは思うんですけど」
「……司書を頼ってきたってことか」
「恐らくは」
私はそう小さく頷く。今のご時世、あそこの賛否両論は激しい。いや、いらないという言葉が大きい。だからあまり話したくないのだけれど。
「司書?」
「いえ……」
戻ったら必ず私は死んでしまうだろう。加山さんが死んだなんて信じたくない、から、私はまだ死んではいけない。私が死んでしまえば最後、約束は決して果たされることはない。少しだけでも、話したいんです、という女の子の声と追い払う職員の声が聞こえた。

ーーあまりここには寄り付いて欲しくない、とは私の考えだ。彼彼女らを狙う降魔がいてもおかしくはないからである。
今日は特に嫌な感覚がした。今日もやってきた彼らに、大丈夫だと言い聞かせたが、それでも嫌な感覚がする。だからこそ彼らの前に現れたのだけど。少し嬉しそうな顔をした彼らは口を開く。
「やっとーー」
それを否定するように私は口を開く。
「帰ってください、はやく」
「少しでいいんです、お話をーー」
「今日は特にダメです。はやく帰って」
「でも、アンタは現れてくれないじゃないか。こんなチャンス滅多にないね」
「帰りなさい」
命令口調である。先生がたや職員が私をみた。感覚が近くなる。
「でもっ!お願いします!貴方の力が必要なんです!」
「すみれさんに私を勧誘しているという話は?」
「……いえ……」
だからこんなにも話してくるのだろうか。彼女は全て知っているはずだ。彼女もまた私の身を案じてくれた人なのだから。
「再三ですが、そのお話はお断り致します」
「どうしてっ」
「ーーみんな、また日をーー」
そう決断した青年であるが、それにしたって遅い。
「決断が遅い」
私は彼の背後、エントランスの扉をみる。眉間にシワを寄せた彼は関係がない。とん、と助走をつけて彼の近くによると彼と彼女の手を引いた。その瞬間、降魔が扉と天井の一部を破損してやってきた。
「降魔!?」
「だから、今日は帰りなさいと言ったのですが」
「ーー……」
「足止めは致します。貴方が斬り伏せなさい。動かなければできるでしょう」
そう言ってフルートを取り出し音を奏でる。動きをピシリと止めた降魔に、身構えていた彼女らは驚いたように口を開く。
「また降魔が動かなくーー」
「はぁぁぁぁっ!」
女の子の横をすり抜けて彼は素早く刀を抜いて斬り伏せた。倒れたそれは雪のように溶けていく。それを確認して私はフルートから口を離した。森先生がかけてくる声が聞こえる。青年がこちらをみて口を開く。
「あの、ありがとうーー」
「司書!」
力が抜けていく感覚である。ふらりとふらついた体を支えたのはかけてきた森先生である。
「……司書、また無理をしたな」
「いえ……」
「……悪いがまた後日にしてくれるから」
そう告げた森先生に彼は少し罰が悪そうな顔をして彼女らを連れていくのが見えた。私はその姿にホッと息を吐く。その安堵がいけなかったらしい。ふっと襲ってきた暗闇に、司書!と先生方が叫んだのが聞こえた


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夢を見る。あの人の夢を見る。幸せな夢を見る。あの人は笑って私の頭を撫でる。そうして、また、桜の町に消えていくのだ。
パチリ、と目を覚ませば医務室と補修室を兼ねた場所だ。引かれているカーテンを少しあければ、いつものようにこの部屋の主人である森先生がいた。窓の外は暗く、あれから時間が経ったのだということは理解できた。
「あぁ、司書、目が覚めたのか」
「はい、すいません。負荷がかかるとは理解しているのですが」
「いや……君がああしなければ、被害が広がっていただろう。だが、医者として言わせて貰えば体に負荷がかかりすぎだな」
そう指摘した彼は、もう少し穏やかな日々が続いてくれるといいが、とまたカルテに文字を書いた。
「司書業務は全然こなせるんですけどね。これでも少しだけ体力は戻りました」
そうグッと力こぶを作るような仕草をしてみる。彼はそれをみて笑った。
「そのようだ。だがああもすれば皆また甘やかしてしまうぞ」
「そんな年ではないんですが。特に啄木先生なんて年が変わらない気がします」
「毎度その話題を聞くたびに思うが、君は衰えないな」
「気を配ってますから。帰ってきた人ががっかりする姿は見たくありません」
クスクスと笑えば、彼は「なら死なないように」と最もな発言をする。まぁ、その後すぐに医務室の扉が開いて、志賀先生がおかゆを持ってきてくれるのだけど。

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「加山さんって、帝国歌劇団と何か関わりがあるんですか?」
少しの軽蔑を含んだ目で職員が告げる。私が公表しないのはだからもあった。この国ではもうあそこは要らないものなのであるし、非難の対象なのだ。だから、私は困ってしまうのだ。否定して仕舞えば嘘をつくことになる。肯定して仕舞えば軽蔑され、非難される。しかし、わかる人からすればわかるだろう。わかりにくいのは私は最後に紐育にいたこと、そして兄と同じだったはずの黒髪は色褪せて茶色になってしまったことだろうか。
「どうして?」
「この前のやつもそうだし、帝国歌劇団の連中がアンタを尋ねてくるじゃないですか」
そう告げたその人に、私は「そうだと言ったらどうする?」と尋ねる。彼は目を瞬いた。届いた手紙を振り分けながら口を開く。
「貴女は軽蔑する?それとも、何故生きているのかと非難する?」
先生達がこちらを見る。彼は口をつぐんだ。
「10年前。降魔との大きな戦いで彼らはいなくなってしまった。それから、この国は彼らの風当たりが強くなった」
「その戦いでどれだけの犠牲が出たか知らないんですか!」
「そうですね、たくさんの犠牲がでました。でも、彼らが戦わなければもっと酷いことになった」
「そんなもの、推論だ!」
そう怒鳴ってみせた彼に手紙をわけてしまった私は彼をみた。
「そうですね、推論です。……貴女達が憎むのも恨むのも理解できます。人はそういった感情をどこかに向けることで楽になるからです。でも、彼女達の舞台まで汚すことはないでしょう。私はどうであれ、舞台が好きなので彼女たちを応援したいだけです」
「……俺の従兄弟は、あの日、大怪我を負った!アンタ達がいなければ!」
「それは……お大事にしてください」
私の言葉に彼は目尻を釣り上げた。
「このっ!」
大きく手を振りあげた彼に、私はそれを受け入れる。パシン、となった音に彼はアンタを軽蔑した!と言いながら部屋を出て行く。私はその後ろ姿を見ながらそっと口を開く。
「……私の家族も、旦那も、友人達も、あの日から帰ってきません。手紙だけは届くのではないか、と毎日淡い期待を寄せているんですが、届きません」
そう、ただ、淡々と。目を閉じて。
私は誰を憎み誰を糾弾すればいいのかわからない。なぜなら、その矛先がないのだから。私が唯一、糾弾できるのは暴言をはけるのは、憎めるのは、あの日、彼らを見送った私だけなのである。
「司書さん」
かけられた言葉に、私は目を見開いて見下ろす。こちらを見上げた新美先生と宮沢先生に、どうしましたか?と尋ねかけーー眉尻を下げた彼らは心配してくれているのだろうと結論を出す。
「おやつにしましょうか」
そうできるだけ笑って告げる。大丈夫?と尋ねた彼らに私は大丈夫だと頷いて笑った。

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「加山さん、大丈夫か?」
そう呼び止めたのは館長である。恐らくは話が彼の元へと届いたのであろう。大丈夫です、と答えれば彼は眉尻を下げた。
「本当に?」
「はい、慣れていますので」
言葉の返答を間違えたな、と思う。彼は悲しげに目を伏せたからだ。
「それに、いつかはバレてしまうことでしょうから。館長が悲しむことはありません」



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