2020/07/03
パラレイトライド 1
・君僕主オセロットif
・元の世界に戻ったらみんないたけど年齢がおかしい
君僕主→19歳あたり。留学生としてアメリカにいる。
サチ→19歳あたり。留学生。
mgs3メンバーが5の年齢、したがってオセロットも39-40あたり。デイヴィッド達は二十代後半、ジョージ(ソリダス)が三十代。
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「このパーティーに君のようなお嬢さんが来るとは珍しい」
そう言った男性にグラスを持ちながら、笑みを浮かべる。教授から勧められて、と告げれば彼は「よほど成績がいいんだろう」と告げた。また始まるであろう値踏みに内心ため息をつく。年齢、国籍、専攻。そんなものの問いかけ、それに加えて容姿の判断。それをする時点で相手は二流なのだろう。会話を程なく流し、名刺をもらい庭に降りる。まぁなんと広い庭だろうか。整えられたそこはどう見ても上流階級のそれだ。渡された名刺をひとしきり眺めてもう一度ため息をついた。アメリカに来たのは、日本がひどく窮屈に思えたからだ。目が覚めた後に残った微かな不思議な記憶、そして体の動かし方、言語。医師に相談すれば長い間に見た夢なのだと言われ、周りからはおかしな子供だというレッテルを貼られた。それどころか同じような体験をすれば同じようなことができるようになるのではないかと揶揄われる始末だったのだ。誰が垂れ込んだのかテレビ局が取材をしたいといったこともある。それは流石に父親が、私を事故に巻き込んだ相手の遺族と私に考慮して断ったようであるが。他人の視線、他人の意見、そんなものがひどく鬱陶しかったのである。だから、この国にきた。自由が謳われるこの国に。なのに、どうだ。結局は同じだ。
ベンチに腰掛けて空を見上げる。空には星も何も見えそうなどなかった。当たり前だ。周りが明るいのだから。
「おっと、先客がいたのか」
不意にそんな声がして視線を空から庭に戻す。そこには一人の男性がいた。足音がしなかった。体格がいい。恐らくは警察関係者か軍関係の人物だろう。
「……申し訳ありません、少し会場の熱に当てられてしまい」
「謝ることじゃない。ここは私の庭じゃない。君は……学生側の参加者だな」
「はい」
「自分を売り込まなくていいのか?」
「教授に勧められて出席しましたので、ここがそういう場だとは思っていませんでした」
「それは災難だったな……隣に座っても?」
断りを入れた彼に私は少し横にずれてから頷く。彼は密着することなくベンチに座った。
「かくいう私も上司に言われて参加したタチでね」
「それは……大変ですね。ご無理をしないように」
「労ってくれるか、ありがとう」
彼はそう言って苦笑いをした。そうして私が持っていた名刺に目線を向ける。
「結構な数をもらったな」
「よくわからないままいただいてしまいましたが……」
「……学生の君に渡す場合の意味は二つだ。君の将来を期待しているので引き抜きたい、または君を支援するかわりにそばにおきたい。スカウトかパトロンかどちらかだろう。酷い話は後者だと愛人になれということか」
面倒なものを受け取ってしまったらしい。私の表情を見て彼は笑ったが。
「君から連絡をしなければいい話だ」
ならば家に帰って捨ててしまえばいいのか。いや、捨てたらバレるから燃やすべきか。
「君が要らないので有れば私が貰うが」
「貴方が必要にはならないのでは?」
「いや、それが必要になる。色々問題なんだ、このパーティーは」
そう肩をすくめた彼にやはり警察なんだろうか、と首を傾げる。君が関係することじゃない、と告げた。
「悪用をしないというのなら」
「その文言は困るな。何を悪用と取るかが問題だ。ただ、君に危害が行くことはない。それは保証しよう」
彼はそう言って私の手元にあった名刺をかすめとろうとしたので、私はそれを阻止する。
「素性のわからない人に渡せるわけがないでしょう」
「警戒心の強いお嬢さんだ。わかった。君から貰うのは諦めよう」
彼はそう言って立ち上がった。
「その男に関わるのはよしたほうがいい」
「肝に銘じましょう」
「では、お嬢さん。良い夜を」
ひらりと手を振った彼に私は少し頭をさげた。もう間も無く帰っても構わない時間になるだろう。そのまま庭で時間を潰してから周りに紛れて帰る。先程の男性が、背広を着た男性を乗せているのが見えた。
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君なら一人や二人、パトロンを作るかと思ったが。
タバコを蒸しながら告げたのは私がお世話になっている教授である。この人は何を私に求めているのだろうか。現代兵器の資料をめくる。
「パトロンを作って何になるんですか」
「さぁな、他の学科の人は色々だ。有名企業につとめる足がけにするやつ。誰かの右腕に上り詰める奴もいれば愛人になる奴もいる」
「右腕ねぇ……」
「あそこには軍事業者や武器商人も来るからな。ホワイトな奴もくるブラックな奴もくる。君が誰を引っ掛けてくるかたのしみにしていたんだが」
「名刺は頂きましたがそれだけです」
「何枚もらった?」
「6枚程」
「連絡は?」
「していません。しなければいいと教えていただけたので」
「ほう」
紫煙をくゆらせた彼女は「親切な奴がいたんだな」と私を見つめた。警察関係の方でしょう、と私は資料を分けつつ告げる。
「何故そう思った?」
「体格が筋肉質でしたし、足音があまりしませんでした」
「それが警察とは限らないぞ。あそこはノックや軍人も出入りしている」
と、いうことは非常に厄介な場所であったらしい。
「あそこで気に入られたのなら、君の所作は目を引くものがあったんだろう」
「何もしていません」
「君自身が言ったんじゃないか。歩き方だ」
「歩き方?」
「君の足音は気づきにくい。その上、所作も綺麗だ。どこぞの諜報員だと思われる可能性はある」
「そんな映画みたいな話があるわけないでしょう」
私の言葉に彼女は頬杖をつきながら口を開いた。
「アメリカならあり得る話なんだがな」
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とりあえず教授からは同じ人物に二度会えばそれは偶然に見せかけた必然だとか、そいつはノックだとかありがたいお話を伺えたが普通の学生を見張って何になるのだろうかと思う。とりあえず図書館に寄り、本を数冊借りてから家に帰る。同じ大学へ同じ高校から進学した子と共同で借りている家である。一軒家だ。もう使っていないからと安価で貸してもらえた。その近所は高級住宅街らしくーー渡米して数日は庭の剪定や家の掃除に追われたのはいい思い出だ。自転車を止めていると後ろからクラクションを鳴らされた。なんだ、とそちらを見ればこの前の男性である。高級車の窓から顔を覗かせた彼はひらりと手を振った。教授のありがたい言葉が頭に過ぎる。まさか。
「この前のお嬢さんじゃないか」
「こんにちは」
「まさか君がここに住んでいるのか?」
「はい、友人と一緒に」
そう促せば、後ろの窓が開く。眼帯をつけた男性が顔を覗かせた。どこか見覚えがある気がする。でも、それがどこで見たのかはわからない。
「この前の菓子は美味かった、ありがとう」
「……ということはお隣さんですか?」
「あぁ」
「この間の引越しはお騒がせしました」
私の言葉に彼は何か困ったことがあれば言えばいいと言ってくれた。ありがとうございますと頭をさげておく。何かあったら彼の言葉に甘えよう。後ろから自転車のベルが聞こえ振り返る。自転車を爆走させていたサチが急ブレーキをかけた。
「レポート!言語学のレポート!明日まで!」
「私は昨日出した」
「裏切り者ー!」
「あのな、私は何回か言ったぞ。後でやると言ったのは君だ」
デコピンをする。彼女は「痛っ」といって額を抑えた。そこで初めて私が車に乗っている人物と話していたことに気づいたらしい。彼女の視線に「お隣さんらしい」と言えば彼女は慌てて頭をさげた。
「では、すいません、夕ご飯の準備があるので」
「いやこちらこそ引き止めてすまなかった」
そんな挨拶をしてから彼女と家に入る。うん、これは間違いなく偶然だろう。
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偶然だ。家も近いのだし、あれもこれも偶然である。サチが彼女の教授に言われて別のパーティーに参加することになったため私も付き添いで参加することになった。英語を喋れるから大丈夫だろうと告げたが、どうやらそういう問題でもないらしい。ドレスは彼女に貸したため、私はスーツで向かうことになる。エスコートは、なんとかなるだろう。
どうやら今度は技術者達のパーティーらしく、彼女のパーティーは引き抜きや就職の都合が大きいようだ。生憎、私はさっぱりだが。彼女が話が合う人物がいたようなので、少し離れた場所で見守ることにする。やってくる人の話を失礼にならない程度に交わしていれば銃声と取れる音と、叫び声があがった。なんだ、と思えば人が逃げるように走るのが見えた。なるほどやばい事態らしい。同じくパニックになるサチを見つけ彼女の手を引く。ワンテンポ遅れたために机を倒しそれを盾にする。声が響く。銃声も響く。
「何!?何!?何が起きたの!?」
「静かに」
周りはまさにパニックだった。冷静に逃げ道を探す。窓から出るのが一番早いと見える。ちょうど割れた窓が近くにある。念のため食事用のナイフを持ち、彼女ともう一人彼女と喋っていた青年を見た。
「走れるな」
「え、でも、」
「あの窓から外に出れる。三二一で走り出せ」
机から銃声がする方を伺う。まだこちらに気付いていない。
「いくぞ、さん、に、いち」
そのカウントに走り出した二人の後を追う。まぁ、こちらに向いた銃口に二人を蹴り出したのだが。じわり、と頬に足に痛みを感じた。そして腹部に熱も。それもそうだ。弾が掠ったらしい。しっかりとこちらを見たその人間に私もかれをみた。涙でぐしゃぐしゃだ。何があったかは知らないが、しきりにぶつぶつと呟いている。どうするかを考える。取り押さえてしまえば勝てる。でもあれは夢の中の話だ。一歩、足を退ける。彼はこちらに銃口を向けた。周りが叫ぶ。私の絶命を危惧して。引き金を引きそうになるその瞬間、彼が神への祈りを呟いた瞬間、私はナイフを投げた。サクリ、と足に刺さったソレ、に犯人は銃口を一瞬下げ、自分に刺さったソレがなにかを理解する。その時間で十分だった。私は彼に駆け寄って銃を離させ奪う。そのまま彼を抑え込めば、彼は呻き声を上げる。あたりが静まった。
「誰か手伝って!」
私の言葉に知らない誰かが加勢するために、数人が押さえつけてくれている。私は銃から弾を抜き、そのまま遠くに投げた。ガシャンという音がした。とりあえず彼は動けない。ならば、手当てをするべきだ。警察や救急車が来た様子はない。
「貴方は警察を呼んで、貴方は救急車を呼んで!動ける人は外に助けを呼ぶか、怪我人の止血をして!まだ助かるかもしれない!」
その言葉に周りは弾かれたように動き出す。私も見知らぬ誰かを助けるために傷口を抑える。ジャケットを脱いで止血に使う。名札の紐を使う。ショッキングなものもある。だが、助かるものもあるのは確かだ。がんばれ、と励ます。君は死なないと意志を持たせる。周りからもそんな声が聞こえる。サイレンの音がして、大勢の足音が聞こえた。次に聞こえたのは救急車を増やせという指示を出す声だ。怪我人が運ばれていく。私が抑えていた怪我人も運ばれた。頭はいまだに何が何か処理していなかった。私は周りと同じように血に塗れた手で外に出る。どれが自分の血でどれが他人の血なのかもうわからない。大人に囲まれた瞬間、助かったのだと安堵する。いや、安堵してしまった。ふっと、体から力が抜ける。意識が遠くなる。ふらりと倒れた体は言うことを聞かない。周りがざわつく。救急隊が私に駆け寄って、抱き上げたことで私は意識を失った。
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夢を見る。あの頃のような。モヤがかかったその夢の中、現れたその人の名を呼ぶ。白い花が舞う。彼が泣いている。その涙を拭うことさえも私には許されないと言うのに、私は手を伸ばす。受け入れて見せた彼に私はこえをかける。泣かないで、と。彼はその手を握る。ソレがひどく幸せに思えて夢の中でも私は目を伏せた。
パチリとを目を開くと、知らない病室だと言うことがわかった。誰かの手を握っている。そちらに目線を動かせば、あの男性がいたのだが。
「起きたか」
そう言った彼に私は手を離す。すいません、と謝れば彼は「いや」と首を左右に振った。彼はベッドサイドに腰をかけると私の手をもう一度握る。
「何があったか覚えているか?」
ーー何が。
そんなたった一言に、私は思い出す。最初に思い出したのはあの時感じていなかった恐怖だ。死ぬかもしれなかった、その恐怖に体が震える。彼は私を見て目を少し見開いた。
「こわ、かっ、た」
ポロポロと涙がこぼれた。怖かった。とても。死ぬかもしれないと。今になって恐怖がきた。無我夢中だった。痛みを忘れるほどに。彼はもう片手を私の掌の上に重ねた。
「そうか、怖かったな。もう大丈夫だ、君は助かった。君のおかげで多くの命も。ここは安全な場所だ、大丈夫だ」
大丈夫、と落ち着かせるように声がかかる。不思議なことに、一定のリズム、落ち着いた声に恐怖が落ち着いていく。しばらくすれば止まりかけた涙を無理やり拭った。
「ありがとう、ございます、落ち着きました」
「いいや……君の機転は優れていた。君がああしていなければもっと多くの人が死んでいただろう。でも、君はプロじゃない。そもそも君はどうしてあそこに?」
「友人が彼女のいる研究室の教授に言われてあのパーティーに参加をすることになって……英語がまだ不安だからと付きそいで……」
「なるほど。君は最初」
「はい、友人と一緒に窓から逃げようと思いました。机を遮蔽物に使って……あの、」
「君の友人なら助かったよ。下がゴミ置き場でね、幸い無傷だ」
「よかった」
「君は彼女達と逃げなかった?」
「逃げたかったですけど、犯人が銃口を向けたので」
「君は犯人と向き合っていたのか」
「背中を見せてはいけないと、思って」
「誰かに教わった?」
「いいえ、でも、誰かに、」
教わった気がする。
そう目を細めて頭を抱えてみても思い出せないそれだ。男性はそうか、と告げて口を開いた。
「そのあと君はナイフを投げた?」
「食事用でしたけど、隙を作りたかったので」
「その隙に彼を取り押さえ、協力を頼み、アサルトライフルからマガジンを抜いて投げた」
「はい」
「銃の扱いは誰から?」
その言葉に私は動きを止める。何処で、誰から。私は銃なんか触ったことがない。なのにはっきりと、それを分解する手順は知っている。教授から教わったわけではない。両親も知るわけがない。ならば、何処で、誰からなんて一つしか該当しないが信じられる話じゃない。
「わかりません」
「……わからない?」
「たまにそう言うことがあります、他にもたくさん……」
「例えば?」
「例えば……言葉とか……英語も昔はここまで話せませんでしたし、ロシア語とかフランス語とかも……」
そう言って手元をみつめる。教わった記憶などない。でも、私の中にたしかにそれらは存在する。
「何かきっかけは?」
「きっかけ……二年前に、事故に遭って昏睡状態に陥ったらしくて……目が覚めてからです」
長い夢を見ていた気はする。でも、それがどんな夢だったかなんて私には思い出せない。
「何かあれば連絡するようにと言われているので、パスポートに病院の連絡先が」
病院の名前を聞かれた為にそのまま答える。彼はもう一度私の頭を撫でて今は眠るように告げた。穏やかな、眠気がおそう。そっと目を伏せればそのまま意識は沈んだ。
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お見舞いと称してやってきたのは教授や友人達である。どうやらそれ以外は門前払いを喰らうようだ。禁煙だからかタバコに火をつけないでいる教授に警察からマスコミまで私の研究室にまで連絡が入ったよ、と告げられる。それは申し訳ないことをした。
「まぁ、君の場合は正当防衛が成り立つ。罪には問われないだろうが」
いくつかの最近の資料を渡され、暇ならレポートを、と告げた彼女に返事をしかけたが、あと一週間ぐらいで退院になる予定と言われている。
「教授、私は一週間で退院を」
「あと二ヶ月、大学は君を含む事件に巻き込まれた学生を休学させるように言われている。一週間でこの病院は退院になるだろうが、巻き込まれた学生はカウンセリングを受けさせろと政府が言っていてな。君も該当者だ。それに君の家はマスコミがはりついてそれどころじゃない」
「あぁ、だから、」
ここにたまに見舞いにやってくる彼がもうしばらくすれば別の場所に移る必要があると言ってくれていたのだろう。
「あの、サチは?」
「あの子なら君が助けた青年の家族が預かってくれている。彼女もまた休学中だ」
彼女はそう言って、しっかり休むように、と釘を刺して病室を後にする。それならレポートを置いていかないで欲しかったが。ため息をついて資料をめくる。まごうことなく冷戦時代の資料である。
しばらく資料を読んでいれば、その資料を掠め取られた。わ、と驚いて顔をあげればあの男性がいる。冷戦時代の資料か、と告げた彼に「教授にレポートを出すように言われてしまったので」と苦笑いする。
「ナスターシャ・ロマネンコ。軍事アナリストか」
「はい」
「軍事に興味が?」
「と言うより冷戦時代から先の時代に興味があるだけです。彼女はそう言う時代についても詳しいので」
資料を机に置いた彼はいつものようにベッドに腰掛ける。
「なら君のように事件に巻き込まれた学生の処遇もきいたな?」
「はい、まだ二ヶ月は休学するようにと。あと、カウンセリングをうけろとも」
「君は一応受けているんだがな」
「貴方がカウンセラー?」
「一応君の担当だ」
彼はそう言って私を見た。その言葉に納得する。なるほど。
「君の家の有り様を聞いたか?」
「マスコミがいると」
「あぁ、みんな君に興味津々だ。なぜ、普通の留学生があんなことができたのか。国籍は掴まれている。自衛隊にいた記録でも探ってるところか、スパイだなんだとゴシップ誌では騒がれているところだろう」
その一言が私は妙に面白く思って、カラカラ笑う。
「あはは、私がスパイ。ふふふ」
「奴らは本気だぞ」
「ゴシップ誌に躍り出るスパイ……ふふ、私が本当にスパイならあんな目立つことしないと思います、ふふ……アメリカってすぐそんな話をする」
「その口ぶりをきくに、誰かに言われたか?」
「教授に、あのパーティーであった人に、もう一度会ったらそいつはスパイだって、あははは、おかしいのなんのって……そんな映画みたいな話」
あぁ、面白いとひとしきり笑う。目元を拭えば彼は苦笑いをしていた。
「アメリカでは案外いるんだがな。聞いたことはないか?CIAとか」
「ミッションインポッシブルとか漫画のイメージしかないです」
「まぁそれだけじゃない。他国のスパイ、企業のスパイ、探せば出てくるだろう」
「手を上げるわけではないでしょう?」
「それもそうだ」
彼は肩をすくめた。
「まぁ、スパイの話は置いておこう。ナスターシャ教授の話によると、私に疑惑がかかってしまう」
「ふふふ、」
「君の帰る家なんだがな、どういうわけか私の家に割り振られた。普通はそうはしないんだ。一人身の男の家に君のような学生を招くなんて」
「それだけ貴方は警察に信用されているのでは?」
「さてな。まぁ君の生活の援助はさせてもらおう。パトロンというわけだ」
「生活の援助までは流石に……私は貴方に何もできません」
そう首を左右に振れば彼は「いいや」と首を左右に振った。
「君のような症例を研究しているんだ」
「研究?」
「知らないのに知っている、という感覚を持つ人間がごく稀に現れる。私は君の生活を援助する。君は私の研究の一環として報告される」
「……なるほど」
「悪くはない条件だと思うが?」
伺うように彼は私に尋ねた。私は頷いて彼に手を差し出す。
「よろしくお願いします、えーと……」
「アダムスカだ。オセロットでも構わない」
オセロット。その言葉に、白い花びらが舞うように見えた。一瞬誰か違うように見えてーーすぐにそれは治ったけれど。
「よろしくお願いします、ミスターアダムスカ」
そうもう一度言えば、彼は「あぁ、よろしく」と頷いてくれたのだが。
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