2021/12/30

2021年オフラインネタ帳大放出祭12



「うーん、君、足のサイズ何センチ?」
そう言って子供の目線に視線を合わせる。え?みたいな顔をしたが、靴があってないのは動きを見ればわかることだ。しばらく子供のサッカーを眺めていてわかったが、この子は周りの子に比べてちょっと違う。服の新しさであったり、靴であったりがだ。でも上手いというか光るものはある。靴を脱いでもらい足をペタペタ触りって形を認識する。あとは俺のスポンサー契約してる業者に電話をして直営店を教えてもらう。ちょっと待ってるように言ってそのままお店に向かいスパイクを買って戻ってこれば律儀にまだそこにいた。他はまばらに迎えに来たのかぽつんとこのチームの監督だかコーチだかわからないがその人とまっている。俺はひらりと手を振って合わせて買ったサッカーセットーーボールを含むーーを持ってそちらに向かった。監督なんかわからないが若干不審者扱いされてるのは国によっては同じことだから気にしない。
「はい、これ君にあげる」
「えっでも」
「合わない靴でサッカーすると怪我するよ。ちょっとはやいだか遅いだかわかんないけど君にクリスマスプレゼントってことで。サイズ合わなかったら交換してもらうから履いてみて」
そう言って履くように促せばコーチだか迷ったように監督だかを見上げた。俺はその人をサングラスをずらして見上げ、いいでしょ?と聞いた。えっと小さく声を上げた彼に人差し指で内緒というふうにする。多分この子は気づいていない。
「……履いても大丈夫だ、この人は不審者じゃない」
そう促した彼に、彼は靴を履いた。サイズぴったりだろうか。このままサッカーを続けるなら大きいサイズもそのうち必要になるだろう。
「君のお母さんとお父さんは勝手に君の物を売ってしまったり、君が何か貰うと怒るタイプかな?それともお家にいないタイプかな?」
伺うようにそう尋ねる。言葉に詰まらせた彼に、そっかー、と言って頭を撫でておく。
「腹減ってる?ご飯食べにいこうか」
そう言って立ち上がり、ボールの入った網を監督だかコーチだかわからない人に渡した。
「あ、これ、ボール寄付します。この子だけだと不公平だし。俺はみんなに上手くなって欲しいし」
「ありがとうございます。サイン一つ入れてもらっても?」
「あー俺ペン持ってないや」
「あります」
なら仕方ない、とボールにサインを入れる。ローマ字の名前とラッキーセブンの星を描いて完成である。ちなみに海外だと日本語でかく。
「ここら辺でうまい飯屋あったっけな……どこか知ってます?」
「ああ、それなら中央通りの定食屋がありますよ」
「えっ、どこ」
スマホの地図を見せながら尋ねていれば、けたたましく鳴ったスマホを手に取った。ohハナちゃんだ。試合に合わせて実家に顔出すって言ってたしな。ちょっと待ってもらうように告げて電話にでた。
「なに?ハナちゃん。俺今から飯行くんだけど……おー、東京にいんの?……一緒に飯?弟と……んーー……まぁ知り合い連れてっていい?うん……ははは、違う違う。そんなんじゃないって。何?えっ、まじで。行く行く。弟も連れてくわ!」
そう言ってプツリと電話をきる。
「予定変更、ご飯食べてそのあとお兄さん達とサッカーしよう。でもちょっと荷物預けるところあるから預けるけど、君のお父さんとお母さんに連絡した方がいいかな?帰り遅くなるし。俺が説明するし一緒に家に行こうか」
「でも、」
「大丈夫大丈夫、俺こういうの引きいいんだよね〜。監督さんこの子の親御さんの家知ってる?」
尋ねればあんまりいい顔しないあたり、想像できる。
「あまりおすすめできませんが……俺もついていっても?」
「助かる〜。俺の車でいい?狭いけど許して欲しい」
そう言いつつサインボールを渡す。後は俺と知り合いが運営する施設にこの子の未来のためのスパイクを預け、弁護士さんを連れて行くことにする。出入りする子供達の頭を撫でて近況報告をきいてまた顔を出すと言ってからそこを後にした。

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「好きにすればって言っても、俺が連れて行ってしまうと誘拐だなんだって話になるわけなんです。あと子供に邪魔だとか言わないで」
そう彼の親に言う。この人どっちかっていうとノイローゼ気味ではなかろうか。
「あのね、お母さん。お母さんが辛いなら、誰かに助けてって言うべきです。俺はこの子に他の子と同じチャンスを掴んで欲しいとか色々思うけど、お母さんにも幸せになって欲しいよ」
そうぽんぽんと背中をさする。最初はヒステリックにしていた彼女もだいぶ落ち着いてきたらしい。目線を合わせて口を開く。
「ずっと一人で育てて大変だったんだよね?お母さんも人間だし、自分のことで精一杯だし、しんどいもんな。今までよく頑張ったね。凄いしえらいよ。一人でここまでって凄いことだよ」
そうあやしていたら号泣されてしまった。
「あのね、お母さん、じゃあこう言うのはどうかな。俺がこの子の面倒を一年間見るから、お母さんは一年間お休み。好きなことをして、好きな仕事で働く。それなら優しいお母さんに戻れそうかな」
そううかがえば両手で顔を覆った彼女は頷いた。俺はそっかそっかと彼女の頭を撫でる。
「あ、でも、お母さん俺イギリスに住んでるけどイギリス連れてっても大丈夫?電話とか通じるようにはするし、こまめに連絡するようにはするけど。やっぱりいきなり一年は難しいから、ちょっと一週間距離置いて考えてみる?2週間くらいなら俺日本にいるし」
どうする、とこちらを見た彼女を覗き込む。頷いた彼女に、慣れた弁護士さんが書面を出してサインをするよう促した。いやーこれないと最悪俺が誘拐犯になるからな。何回か日本でしてたり海外でも色々したりするけど。サインをした彼女に複写を渡し、それ専用の連絡先を渡し、私は少年を見下ろす。
「ごめんね、君に承諾なく決めちゃった!とりあえず一週間一緒にサッカーしたりしよっか。先に君に紹介したい場所あるし、今なら日本代表対日本代表の試合観戦もついてくる」
そうぽんぽん撫でれば、ホッと息を吐いた監督さんが少年を見下ろした。
「よかったな、大河」
「大河、大河ね。一週間よろしくな」
一応監督さんにも連絡先を伝えておくことにする。専用の方ではなくガチな方を渡せばめちゃくちゃビビられてしまった。


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「ハナちゃーん、お待たせー!」
「……遅い」
「ごめんごめん」
ご立腹なハナちゃんである。ちらりと大河くんを見たハナちゃんに弟!と紹介すれば「またか」と言われた。まー、たまにイギリス人の弟だったり色んな弟が期間限定でいたりするからな。服を買って風呂入れてたらそりゃこの時間になるのだが、何回か鉢合わせしているハナちゃんは理解しているのだ。
「ご飯何食べる?」
「……た、大河は何が食べたいんだ……」
うーん、ハナちゃんがお兄ちゃんしてるの可愛いな。

結局いつものお店でご飯を食べる。たんとお食べと大河の前に料理を並べつつ自分達もご飯を食べる。
「何時みんなで集合?」
「……16時だ」
「じゃーそれまでどうする?三人でどっか行く?フットサル場借りてサッカーする?」
「妹はいいのか」
「妹は試験会場についてこないで欲しいって言われたから、朝からめちゃくちゃそわそわしてるんだよ。飲み会ごろには顔出すかも。彼氏候補も顔出すし」
「は?」
いやー、多分妹岩淵とできてる気がするんだよな。
「ほら大河、野菜もお肉も食え食え。たくさん食べないとデカくなれないぞ」
「……そうだ……食べろ。体は資本だ……」
「あ、ありがとうございます……」
そう言った大河くんの頭を撫でておく。うーん、もっとお食べ。


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つばきち面倒見いいな〜と思いながら大河くんとサッカーする。弟さん上手ですねと言った窪田くんに、だろ?と答えといた。途中で見つけて拾っで一緒に軽くサッカーしている。いやー、別に日本代表で関係ないボーリングとかでもいいんだけど。
「あの才能を潰させるのはちょっといかがなものかと思うんだよねー」
窪田くんが首をかしげる。ガチガチに緊張してたのに今や椿くんと二人でボールを追いかけているのは可愛らしい。まぁ途中から飲み会に行く色んな人が集まり出して混ざってるのだが。日本のサッカー界ではジョーさんとか海外組やハナちゃんや蓮や五味さんや成田さんなんかはなんとなく私がやっていることは理解してると思われる、から、その上の人たちは何かと協力してくれたりするのだ。私が好きで始めた頃なのにである。私は苦笑いして窪田くんをみた。
「きっとさー、今日たくさん褒められたこととか楽しい思い出が次に繋がると思わない?」

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