2021/12/31

2021年オフラインネタ帳大放出祭22



・ヘルタに女子サッカー部門がある設定

はっきり言って、乗り気ではない。だいたい、私は普段海外にいる身であるし、海外のチームの方が馴染みが深いのだ。日本代表に呼ばれてもめちゃくちゃアウェーなのだ。オリンピックの予選試合らしいが、まだメンバーが定まっていないらしく私に声がかかったのである。辞退しようかと思ったが、国際戦は面白いのは面白いし。
「うーーん」
そうカフェで机に突っ伏して唸る。対面座席にいる花森圭吾は不思議そうに私を見下ろした。昔はある意味幼馴染みであったが、今はなんというか私がヘルタのスクールに通っていた頃に移籍してきて家も近所だったから仲良くなったというかそんな感じである。ドイツではもっぱらお兄ちゃんと妹みたいな扱いなあのでスキャンダルもクソもないため、電話でメンタルよいしょしたり、こうやってたまに会いにきて私が元気になったりするのだ。
「どうした?」
「あんまり、乗り気じゃない」
私はぼやいて起き上がる。花森圭悟改めハナちゃん選手は察したのか「招集か」とぼやいた。
「うん。なんかさー、みんな結構国内リーグからの選抜なわけだし私アウェーだしさー、あんまり今のシステム好きじゃないんだよねー」
あの頃は二人に並びたくてがむしゃらに走っていたが、今はそんな目標があるわけではない。ある意味ダラダラと、フットボールが楽しいからやっているだけだ。目標がなければ女王にもなれないだろう。
「ハナちゃん選手とおんなじチームが良かったなー」
「そ、それは……いくら天才の俺でも、むじゅかしい」
「えー……代表戦、頑張ったらご褒美に一緒にサッカーできるとか、一緒にお出かけできるとかない?」
そう伺うように彼を見上げる。彼は目を瞬いてこちらを見下ろし、ちょっと照れたように目を泳がせた。あら可愛い。
「……か……考えておく」
「ホントに?じゃあ頑張ろっかな」
にこーっと笑えば、ハナちゃん選手は照れ隠しにコーヒーを飲んだのだが。かっわいー。

ということでアウェーである。「昔」と違いあんまり女子人気がないのか、見学に来る人もかなり少ない。この分だと公式戦も多分集客が少ないだろう。「昔」。即ち、私が生まれる前というか、死ぬ前というのか、女子リーグもかなり人気があって男子には少し劣るかもしれないがそれでも結構な集客があった。まぁ、私が女王様して稲瀬さんがよいしょして色々てこ入れした結果ではあるが。ドイツでも女子サッカーが人気なわけではないが、最年少コンビな私と私の友人を見にそこそこやってくるのだ。まぁ、君たちが男だったらよかったのに、という言葉もよく聞くがそれはスルーしておくことにしよう。案外この世界ではどの国でも評価は変わらないのかもしれない。
「うーーん」
国際戦だ。ずっと同点、代わり映えのない試合内容。つまんないな。そう頭を悩ませていれば、隣のコーチが私を見下ろした。稲瀬さんである。ヴィクトリーの監督……ではなく女子日本代表のコーチになっているらしい。この人が私見つけてきたらしいけど、どこで私を見つけたんだろうな。噂によると海外にまできて見てたらしい。
「どうした」
「練習中と思ったけど。なんかもうちょっとなんとかしたいなって。間延びしてるというか、もうちょっとコンパクトにいきたい」
そう言ってベンチから彼女達を見る。監督さんは多分聞こえていない。稲瀬さん以外のコーチが少し眉間にシワをよせ、近くにいた選手も私をみた。まぁ稲瀬さんだけが「そうだな」と前を見たまま頷いたが。
「試合何試合か見てきたけど、なんかつまんないんだよなー。監督さんの戦術あんまり好きじゃないや。守るのも大事だけど攻めるのも大事だし、今は司令塔複数置くの流行りだと思うし……」
あそこら辺、と指差して言えば年上の彼女らの反応は三つに分かれた。確かにと頷く人、キョトンとする人、ぎりりと憎むような目で私を見る人。それはコーチも、だが。これは稲瀬さんもコーチだけど大変な立ち位置になったな〜、と思う。前からいる人を蔑ろにできないが、新たな人を連れてくるあたりは結構監督に抵抗している。稲瀬さんには「昔」の恩がある。
「ねぇ、監督、私が楽しくしてあげよっか!」
そう奥にいる監督に尋ねれば彼は目を瞬いた。苗字、調子に乗らない!と他のコーチが叱るがしらん。あの子達より私のが絶対上手い。
「……わかった。どうせお前を出すつもりだったからな」
「やったぜ!女子のモチダレンって呼んでいいよ!」
まぁ周りにあきれられたが、あきれていられるのは今のうちである。私は青を着てそこにたつ。同じ景色が見えた気がした。


挨拶がわりに結構距離ある場所からスーパーシュートを決める。いやー、やっぱり楽しい。みんなびっくりしてるが、偶然みたいな反応された。いやー、これはハットトリック狙うしかないな。舐めてると痛い目に見るぜの図だ。
向かってきた選手をひらひら交わし、打つと見せかけてボールを止めてキーパーを潜り二点目。選手の股の間とキーパーの隙間をくぐらせて三点目。余裕である。試合を終える笛の音がなり、私は走るのをやめて歩きながら監督、ではなく、稲瀬さんのとこに向かう。まぁその前にみんなにもみくちゃにされたが。
「ね?楽しかったでしょ?」
「……お前年齢詐称してないか?」
「はー?老け顔って言いたいの?」
じとっと稲瀬さんを見れば、貫禄ありすぎ場慣れしすぎと突っ込まれたのだが。今更である。

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つまんない。とは、流石にみんなの前で口には出さないが。もう少しこうしたら?と言え話は若手だからと、初めて来たくせにと聞き流されるし、なんというか色々タイプが合わない。昔もそんなことはあったけども、自分が国内リーグにいたからまだ緩和されていた。私が海外リーグにいるからって、みたいな扱いである。うるせー、と思いながらハナちゃん選手にドイツに戻りたいという旨のメッセージを送る。まぁ時差の関係でメッセージは明日以降になるだろうけど。体調不良って言って帰っちゃダメかなー、と考え始めたところで一応色々チェックしたいことがあるため女子の試合をみる。なーんかチグハグに感じるのは噛み合ってないからだ。そもそも私が「昔」いたメンバーとあまり変わらないが若干ポジションが違う。それは若手も含めてだけど。明日あたりに私がfwに行くことになれば多分監督見る目ないな。

ジョギング中である。となりに並んだ昔であれば私が可愛がってたホープちゃんが私に尋ねた。
「えっと、苗字さんは、ドイツにはいつからいるの?」
「うーん、両親の仕事の関係だから6歳くらい。そこから地元チームのスクール通って今。ホープちゃんは?」
「ほ、ホープ?」
「希だからホープちゃん」
「あ、えーと、私は高校からこっちに入って……」
「あ、年上だった。同い年くらいかと勝手に思ってた」
「希はナヨナヨしてるからなー」
振り返ったのは若手選手である。まぁ、ある程度いくと敵意バチバチだしな。
「あはは、自分でもなんで選ばれてるかわかんないし……」
「……それ、この前から聞いてて思ったけど、癖なのかわかんないけどやめたほうがいいよ。選んだ人にも選ばれなかった人にも失礼だから」
「えっ、ご、ごめん」
「それに、できるのを誰かが見てたからホープちゃんはここにいるんだよ。できなかったら呼ばれてない」
ケラケラ笑いながらそういえば、彼女はパチパチと目を瞬いた。
「まー、監督絶対メンバー固定したいマンだからあんまり交代しないっぽいけど。fwいけとか、私オンリー司令塔とか言われたら、態度が悪い私次からこないからみんな安心してほしい」
「えっ」
「一人しか司令塔がいないからキャプテン抑えられてると攻守のバランス崩れちゃうんだよ。全権がキャプテンに向きすぎだと私は思うんだけどな〜。多分監督と私の感覚が合わない。そんな場所でやってても使い潰されるだけなきがする」
「な、ナマエちゃん毒舌〜」
「だから多分もう来ないと思う。国際戦は楽しいけど」
そういえばなんとも言えない顔をされたけど。私の意見なんて聞いてくれないしな。やりにくい。

スタメンですよねー、権力くれ、と思ったら相手は格下なのか同類なのか若手中心のメンバーで首を傾げる。キャプテンとDFの一人、キーパーぐらいしかいつものメンツがいない。おやー?と思ったら何やら監督さんが成績不振で首切られて、コーチの稲瀬さんが監督代理をするらしい。話が通じる人が来た感するよな。
「とりあえずお前らは好きにやってこい。システムに組み込めるまで俺はまだお前らの要点を掴むプレーをみてない」
「雑な指示だ〜」
ケラケラ笑いながら言う。まぁそれでも仮に形にするっぽいけど。ホイホイと当て嵌めたらしい彼であるがそこそこ要点を掴んでる。この人最初から乗っ取るつもりだったな。だから腹黒いって言われるんだよ。
「まーー、私はモチダレンごっこするから、フォワードは私がボール持ったら前に飛び出すくらいでいて欲しいな」
「なにそれ」
「まぁ、見てて」
ケラケラ笑いながらそういえば、彼女らはなんともいえない顔をしたのだが。

ほーら勝つ。ケラケラと笑いながら楽しかったー!と言えば、キャプテンになんとも言えない顔をされたが。というか今日のスタメン以外はなんかショック受けてる?と首をかしげる。まぁここで世代交代と思う人は去るだろうし、しがみつく人はしがみつくだろう。私はそういうのを気にせずスキップをしておく。今回の試合内容にはまだ満足であるし、なんといっても二試合終わった!から!ドイツにも!帰れる!
「ドイツに帰ったら〜」
「何かあるのか」
「ハナちゃん選手とー、フットボール!フー!!」
るんたったるんたった、と上機嫌でいれば周りが首を傾げた。
「ハナちゃん選手……?」
「私の家のとなりに住んでるケーゴ・ハナモリー!帰ったら一緒にフットボールしてくれたりするって約束した!」
るんたった、るんたった、と内心スキップしてたら周りが一拍置いて叫んだが。うるせぇ。まぁ、稲瀬さんがちょっと考えたのち、「男子も召集かかって花森も明後日あたりに日本で試合だぞ」って言われたけどな。は。

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「ケーゴくん」
私はだいたいいつもハナちゃん選手なのだが、たまにケーゴくんよびになる。基本的に不満があったり、私が拗ねている時なので、私がケーゴくんと呼べば彼は「うっ」と言葉をつめた。
「代表戦あるとか聞いてないー。チェックしてない私も悪いけども」
「ナマエなら知っていると……」
「うーん、自分のことで周り見れてなかったなー。ごめんね、一緒に出かけるとか面倒ごと押し付けて」
「……いや、ナマエと出かけるのもフットボールするのも面倒ごとではない……」
「ほんと!?」
「ああ……帰ったら出かける……」
「じゃあ一足先にドイツ帰るけど、ドイツで待ってるね!!!代表戦頑張れ!!10番アピールばんばんしないとモチダレンに奪われるよ!!日本人ハナちゃん選手も好きだけど、モチダレンも大好きだから」
「……ナマエは?」
「私?私はモチダレン好きだよ。でもハナちゃん選手の方が大好きだよ!」
今はモチダレンと関わりがないしな。そう思いながらいえば、ちょっとの沈黙のあと、俺もだって噛みながら言われたのだが。うん?これは??まぁとりあえず無邪気装っとこ。
「これからもハナちゃん選手に好きって言ってもらえるように頑張ってプレーする!!
「……いや……う……そ、そうだな」
「……あ、そろそろ空港行きのバス来ちゃう。頑張ってね」
そう言って通話をきる。いやこれ。えっ、ハナちゃん本気かな??えっ??
「いや、えっ??ハナちゃん年下趣味??……まぁいっか」
るんたったるんたったとスキップしながらバスに乗り込んだが。

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モチダレンが怪我をすると、恐らくはハナちゃん選手のやる気が低下するのはなんとなくわかることである。お気に入りのカフェ、ではなくハナちゃん選手の家でハナちゃん選手と試合を眺める。一人では眺めたくないらしく、人がいる場所でみたいらしい。それはわかる気もする。私はこの先の展開をある意味知っているわけで。前と同じなら、多分、この人はショックをうける。私も少なかれショック受ける。怪我に気をつけてと願ったところでたくさんの人が願うそれは叶うかはわからない。いやしっかしやっぱりレオは、というか持田蓮は上手いな。ボール回しのテンポといい、切り替え、緩急の付け方。参考になる。ノリに乗っている椿くんも上手だ。いいなぁ、と小さくぼやく。ハーフタイムにはいり、選手達が撤収していくのが見える。
「私もこう言う人達とフットボールしてみたいな」
いや、なにも今のドイツのチームに不満があるわけではない。日本については今更監督に就任した稲瀬さんの腕前によるのでノーコメントだが。でも、たまにつまらなくなる。何処を、何を目標にすればいいかわからなくなる。金メダル、ワールドカップの優勝エクセトラ。それは前にもう経験した。何度も。だから、そんなに魅力的に思えないのだ。どちらかというと、気概もなく、楽しくサッカーしたい。
そもそも、どうせ、生まれ変わるのであれば、男の子に生まれて、あの二人と一緒に。目を伏せてその言葉を飲み込む。なんてバカで浅はかで、罰当たりな考えなのだろうか。でも、たまに思うのだ。どうせなら、と。
ハナちゃん選手は私を見下ろしたらしい。ナマエ?と問いかけられた言葉に私はにこりと笑って彼を見上げた。
「男の子なら私もハナちゃん選手と同じチームだったのになぁって思っただけだよ」
「……だ、だぎゃ、同じ青色だ。確かに男女の区切りはあるが、同じ国を代表する立場……ナマエも立たなくてはならない、ナマエは俺には劣るが天才……それが天才の定め」
その言葉に私は目をパチパチと瞬く。
「周りとあわなくても」
「あぁ」
「つまんなくとも?」
「そうだな」
「……待ってる人が来なくても?」
伺うように尋ねる。彼は目を少し見開いて私を見下ろした。そうして「……もちろん」と彼は頷く。
「ハナちゃん選手強いなぁ」
強いなぁというか、辛抱強いなぁとは昔から思うことだ。彼はメンタル面ではとても強いなぁ。そう言って子供のように足をぶらぶらする。
「でもそうだよね、選ばれたからには頑張らないと周りに失礼だもんね。見えてないだけで、面白くなることなんて探せばあるかもしれないし」
ブーメランである。自分が投げておいて、自分にもその言葉がかかってらぁ。私はフニっとハナちゃん選手の頬を触る。びっくりしたように少し身を引いた彼に私は口を開く。
「でも、ハナちゃん選手も無理しちゃダメだよ。私が10番取るまで10番でいてね」
一緒にフットボールしてくれるんでしょ。
私の言葉に彼は少しだけ嬉しそうにして、そうして、ナマエまでもそう言うことを……!と苦しみ出した。うーん、いつも通り。
「何年くらいでなる気だ?」
「多分ねー、ハナちゃん選手くらいになったら流石に10番なってる」
「……あと十年もやれと……!」
「そう!」
ケラケラ笑いながらETUと東京ヴィクトリー戦の後半に目を移す。持田蓮が退場して、年上になった花森圭悟を励ます言葉を私はまだ知らない。

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イヤホンを外してしまった彼に、私はなんと言葉をかければいいかわからない。あぁ、やっぱり持田蓮は怪我をして退場して行ってしまった。私に見えやすいようにラップトップを私にむけた彼に、視線を別の方に向けた彼に、私は画面をみつめる。そっと彼の手を握っておく。そんなもので元気が出るとは思わないが。前なら私は蓮に対しての嫌がらせのようにきていたETUのユニを脱ぎ捨てて、蓮のところに走った。なんやかんや、私にとって蓮は優先事項の一つだったからだ。そうして足を止める意思がない彼に安堵した。だから、その後の試合は私は見ていない。ダイジェストでみたくらいで、いや、何年か後に蓮に笑われながら見た気がする。何処で抜けだしてきたの、
とか、お前やっぱり俺のこと好きね、とか。そんなことを言われながら見た。リアルタイムでは初めて見る。もう関係のない私が、持田蓮の退場劇から、この勝負の勝敗から目をそむけて逃げてはいけない。だから私は黙って、花森圭悟の手を握りながらじっとその試合を見る。担架を要請せず、拍手の中立ち去った彼はいつかまた戻る。不死鳥のように。だから、一言だけ呟く。決まった勝敗を告げる笛の音に、こちらを見下ろした彼に私は大丈夫だよと言うように告げる。無邪気を装って。
「ハナちゃん選手とモチダレンが揃うワールドカップ楽しみだね」
そういえば、彼は少しだけ目を見開いて、全然楽しみじゃない、と泣きそうになりながら告げた。大丈夫大丈夫と彼の頭を撫でる。拒まない彼に、私は彼を抱き寄せて、大丈夫、ワールドカップには二人揃うよ、と言えば、彼は背の低い私の肩口に顔をおしつけて少しくぐもった声でああとだけ返事をした。「持田は昔からああいうやつだから、心配はしていない」と。嘘つけ、心配なくせに、と言う言葉は飲み込んでおく。ただ、少しだけ抱き寄せる力をつよくしておいた。

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UAEに出かけたハナちゃん選手は多分半分くらいやる気が抜け落ちてそうなのだが、多分椿選手や窪田選手とやってたらどうにかなるだろうとは思う。昔は楽しい?って聞いたら楽しいってかえってきたし。女子の方はと言えば監督が正式に稲瀬さんに変わり、私も何度か召集されることになる、らしい。応援に行こうと思ったが練習やら召集やらで難しそうだ。友人も同じくドイツでの召集がかかっているらしくお互い頑張ろうと言う話で落ち着いた。
日本にいるじいちゃんばあちゃん曰くサムライブルーとナデシコの活躍で湧いているらしい。男子の方は無敗でアジアカップの予選を駆け上がってるのだし、ナデシコは私の話題が多いらしい。通りで最近記者が私の元にくるのだと思った。あまりマスコミが好きなわけではないので適当にかわすが。まぁ、私を噂で聞いて見つけてきた稲瀬監督は褒めていいと思う。
「まー、私は都合がいい客寄せパンダだしなー」
そういえばキャプテンが変な顔をしたが、事実だろう。女子は男子に比べて知名度がそもそも劣る。多くの国にとって、男子のサッカー選手の名前は言えても女子は言えないことが多いのだから。ハナちゃん選手も私が彼に付き纏ったから覚えただろうし。どのスポーツもそうであるが、突出した記録、突出した誰かがいないと興味を持たれない。
「いやー、だって思いません?日本人なんか若い子好きだし。私今のチーム最年少だけど一番活躍してることになってるし」
「あー、確かに若いとちやほやされやすいもんなぁ」
「興味が向いてる今のうちに女子人気上げたいからまぁ自分を客寄せパンダにすることは厭わないんですけど、そろそろ他チームのマークがきつくなりそう。本線だと私のマーク強くなるからそうなった時にはキャプテン達に打破してもらうしかないですし、キャプテン達で頑張ってなんとかして」
「えっ」
「大雑把な指示やなー」
「いやー、だってキャプテンパスセンス凄いじゃん。なんとかなるなるー!」
ケラケラ笑いながらそういえばギョッとされたけど何。なんだ?と思いながら首を傾げた。ホープちゃんが口を開く。
「ナマエちゃんって褒めることあるの?」
「あるよ、失礼な。今回はやる気出たから、みんなの試合ちゃんと目を通してきたんだからなー。色々全部覚えてきたよ。味方がどういう動きが得意なのかは把握しておいても損はないから。だから多分もうちょっと合わせやすくなると思うなー」
そう言いながら伸びをする。そろそろ男子代表戦が始まる時間ではなかろうか。

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「この前聞きそびれたけど、ナマエって花森圭悟とどんな関係なの?」
「幼馴染みのお兄ちゃんみたいな感じ」
私の建前では、という言葉が付くのではあるが。ハナちゃん選手が私をどう思っているかわからないが、彼の説明もまた「幼馴染みの妹みたいな感じ」なのである。まぁこの前の発言からして、よくわからないが。10歳くらい歳が離れている。多分モチダレンが聞けばロリコンと爆笑することが目に見えている。私が成人になるのを待っているのか、それとも本当に妹みたいな感じは不明であるし、そもそも彼女とかいないのだろうか。昔なら一応彼女がいたりしたし、彼も結婚していた。
周りは私の返答に、へぇ、と納得した。まわりが納得できる内容だ。私がケーゴくんの手を引いて歩いたって、妹が兄の手を引いているようにしか見えないし、逆もまた然りだ。
「ハナちゃん選手がヘルタに来た時隣に引っ越してきて、そのまま仲良し。フットボールの相談に乗ってくれたりする」
「へぇ。花森圭悟って、どんな人なん?」
「んーー、喋ると色々と面白いよ」
ケラケラと笑いながらそう言って試合をみる。
「あと言わないけど、モチダレンが好き」
私の発言に近くにいたチームメイトが吹き出す。それはどんな意味で?とキャプテンに聞かれたので、ライバルとか友達として?と返しておく。
「10番奪われるかもだから一番代表に来てほしくないのに、一番代表で一緒にフットボールしたいっぽいよ。だから、次のワールドカップは楽しみにしてる」
私はそうケラケラ笑ってテレビ画面を見つめた。そこに割り込もうなんて、他人の私にはもうできないが。

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順調に私達は勝つ。どこかではきっと負けるが、今のところは。リーグ戦も、代表戦も。それに反して男子はついに負けた。面白い試合だったからこそ、取り返しのつかないことをした椿選手に全てのブーイングが向かう。マスコミも、一気に彼を叩く。何を書いても自由。確かにそうだ。でも、他者を抉るのはどうかと私は思うのだ、と、蚊帳の外から私は思うのだ。自分が、もしハナちゃん選手なら、椿選手の立場から、どうしただろうか。そんなことを考えながらクラブハウスから家に帰る。両親ともに海外にいるため家に帰っても一人なのだが、昔からまぁたまにあることだ。何かあったら花森くんにいうのよ!!とは母親の言葉である。家につき、鍵を開けようとしていれば騒ぎが聞こえた。日本語が聞こえるということは、ハナちゃん選手が帰ってきたのだろう。エレベーターが音を立てて到着を告げる。その先には疲れた顔のハナちゃん選手がいた。
「おかえりー、ハナちゃん選手!お疲れ様!」
そうひらりと手を振る。彼は私を見てホッと息を吐いた。
「ナマエも今帰りか……」
「うん。って言っても、私は練習の帰りだよ。ちょうど帰ってきたとこ」
「?入らないのか?」
「お父さんとお母さんが今他の国にいるから鍵開けてた。ハナちゃん選手一緒にご飯食べた?まだだったら一緒に食べない?」
「食べる」
即答か。ケラケラ笑いながら私は首を傾げる。
「こっちでいーい?」
「ああ」
「荷物おいてゆっくりしてきてー、ご飯作ってるから!」
「……すぐにいく。手伝う。ナマエも疲れてるだろう」
その言葉に私は大きく頷いて、自分の家の扉をあけた。


花森圭悟が私の家のソファでスヤスヤと眠っている。料理を手伝うと言ってくれたが、お客さんなんだからとソファに誘導したらスヤスヤと寝息を立てていた。疲れと時差だろうか。まぁ、その二つに体力を奪われるのは確かである。花森圭悟のほっぺをフニフニと突くが目を覚ます様子はなさそうだ。
ーー寝ている姿は全く同じである。それはそうだ。同じ人だからだ。同じ人だから、私は彼との接し方を知っている。同じ人だから私はするりと彼の近くに来ることができた。目の前にいる彼の想いは知らない。私の思い上がりもあり得る。でも、私も私で、きっと「昔」は「昔」なのだと蹴りをつけるべきだ。
「ハナちゃん選手ー、ご飯できたよ」
そう彼をゆする。まだ寝てる彼に、ケーゴくん、と彼を呼んだ。
「頑張って駆け上がるから待っててほしいな。ちょっとモチダレンに会ってから行くから」
そっとだ。そっと眠っている彼の額にキスを落とす。ふむ。ピクリともしない彼は本気で寝ているらしい。仕方ない。もう少ししたら料理は温めるとしよう。とりあえずフットボールでも見るか、と思いながらテレビのリモコンを探しに立ち上がれば、ガタリとハナちゃん選手が起きた。ん?どっちだこれ。
「あ、起きた?ご飯ちょうどできたよ」
「あ、あぁ……」
「どしたの?」
「ナマエが、持田に会いに行くという夢をみた……」
うーん、夢と現実の境目か。私が首を傾げれば、彼は夢だと判断したらしい。複雑そうな顔をしたのだが。
「どうしたの?」
「いや……夢か」
「何が?」
「……。……なんでもない」
「そかそか、じゃあご飯食べよー」
ケラケラ笑えば彼は頷いて起き上がった。いいお嫁さんになれると思わない?と冗談っぽくいえば彼は刻々と頷いたのだけれど。


==

椿選手はふっきれてETUを導き、結局はハナちゃん選手や私と友人属するヘルタが男女共に優勝した。オフシーズンも何回かは代表戦があったりしたし、ハナちゃん選手と遊びにもいける。なんやかんやでオリンピックだ。無事に一次予選は勝ち抜き、二次予選がどうなってくるかは不明であるがとりあえず私はこれまでの活躍を評価されて10番を身につけることになった。友人達とは決勝で会う約束をしたが、そればっかりはどうなるか不明である。
「椿選手と窪田選手だー」
入場行進前に二人を見つけて話しかけてみる。えっと、と困った顔した椿選手に対して窪田選手は「あー」と声を上げた。近くにいた若手がこちらを見た。
「何、椿と窪田の知り合い?」
「え、いや、」
「女子サッカーの10番の子だよねー?」
ホワホワしている。窪田選手は癒しだな。女子サッカーの、と繰り返した椿選手に窪田選手は口を開く。
「確か、僕らより年下だよ」
「ええっ!?」
「わー、すごい。珍しい。窪田選手女子の試合みるんですか?」
「あー……うん」
こくんと頷いた彼に「そかそかー」と返事をする。多分あんまり見てないか、ニュースだけみてるかんじだろう。
「あ、いけないいけない。女子の話題じゃない。ハナちゃん選手がいつもお世話になってます」
そう頭を下げれば、彼は「こちらこそー」と緩く返したが。周りはなんかハナちゃん選手!?って衝撃を受けているが。
「えっ、えっ!?」
「たしか、花森さんとは幼馴染みなんだよねー?」
「そうですねー、ハナちゃん選手がドイツにきた時から隣に住んでるんですよ。色々教えてくれて助かります。皆さんこれからも花森圭悟と楽しくフットボールしてください。あと、時間があれば私ともフットボールしてくださいね」
二人の手をブンブン握手しておく。ナマエ!何してるの!とキャプテンに怒られたので撤収したが。

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絶対マスコミがうるせぇ〜。そう思いながら先を見る。ホープちゃんのミスであることには変わりないが、それでも私は色々決めたので歩みを止めるわけにはいかないのだ。だから、周りがたとえ機能しなくても、というか機能していないということは他を引きつけてくれているということだから、私は一瞬の隙にボールを奪って駆け上がる。
ーー絶対的だ。10番を背負う人は絶対的なエースでなければならない。いかなるピンチにも堪えず、その先に駆け抜けなければならない。追ってきた追撃なんか振り切って、ゴールキーパーとほぼ一対一になる。一度のフェイントではなく、二度、キーパーが違う方向に飛んだのを見てシュートを決めた。静寂、のちに聞こえた叫び声に、私はチームメイトに押しつぶされる。いたい。おもい。ぎゃあぎゃあと騒ぎながら退いたチームメイトをおいて私はホープちゃんに近寄った。
「うー、内臓出ると思った。みんな容赦ない。ホープちゃん大丈夫?」
「……ご、ごめんなさい」
「気にしないで。そういうのを取り返すのが私の役目だから」
ケラケラ笑いながら背中を叩く。もう一点取りに行くからついておいで、といえば彼女は刻々と頷いた。
ちなみに延長でもう一点もぎ取った。私にマークつけすぎるとキャプテンの技が光るし、私が敵を潜り抜けてちょうどいい場所にいたりするのだ。キャプテンと一緒にまた潰されたが。メダルは確定しているが、やっぱり金メダルがいい。試合を終える笛が鳴る。フーッと息を吐いて、周りを見渡す。またフットボールやろうね、と相手チームに変な顔された。

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ドイツの友人が準決勝で敗退した為、最終はアメリカ戦になった。仇を取れ!と言われたので仇を取らせてもらおうと、芝生の緑色と空の青色のコントラストをみつめる。ナマエ、と呼ばれた為円陣に加わったのだが。
「金メダルはゴールじゃないよ」
そう言って私はケラケラ笑う。なんだ?みたいな顔をした周りに、私は口を開く。
「ただのステップ、またはただの始まりだよ」
まぁ、偉そうなこと言うなと頭を叩かれたが。でも、私にとっては結局そうだ。彼に会いに行くならばステップを踏まなければならない。椿選手達のようにほとんどの人にとってはわたしは知らない人だ。名前も知られていなければ、下手したら見下されることもある。まずは名前を知られること。ついで、プレーを認めてもらうこと。そうして初めて会うことができる。その初めのとっかかりには違いなかった。だから、私は勝たなければならない。同じ場所に立つために。
試合開始の笛が鳴る。ただ直向きに勝利を目指すべきだ。

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ワァワァと騒ぐ周りにホッと息を吐く。なんとか勝った。勝ち抜いた。握手をしてハグをして、またフットボールを一緒にやろうだなんて言う。次は負けないと返した彼女らに私は楽しみにしてる、と返す。こうしてたくさんのライバルを作れば楽しくなるだろう。握手をして手を振って、稲瀬さんに近づいた。
「おつかれ、女王様」
「まだ女王には遠いよ。ワールドカップ優勝して、何度も防衛して初めて女王じゃないかな〜」
「嬉しくないのか?」
「えっ、金メダルは嬉しいよ。でも、金メダルは次のステップへの始まりだから」
そういえば彼は目を瞬いた。私は言葉を続ける。
「次はワールドカップ優勝。今日は金メダルを取った日ではあるけど、ワールドカップ優勝へのスタートラインでもある」
「あぁ、そうだな。次はそうだ」
彼は頷いて私の頭をポンて撫でた。
「偶には息を抜け。お前が一番年下なのに、お前が一番年上みたいだぞ」
「誰が老けてるって!?」
ボスっと稲瀬さんの腹部を殴る。うぐっと言った彼を置いて、私はチームメイトに合流した。もみくちゃにされたけど。


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「うーん、オリンピックで金メダル取ったから、次はワールドカップ優勝なんですけど、次はもっと私に対する当たりが強くなるだろうしそこをどうやって回避していくかを今から考えなきゃいけないなって思います。個人でどうしようもないことは監督やチームメイトにポイしますけど。個人的にはワールドカップ優勝は義務なので」
金メダルのインタビューにそう答える。義務、と繰り返したのは元プロ選手じゃないだろうか。あ、思い出した。
「あ、えっ、よくよく見たら元日本代表の結城さんだ!成田さんの相棒だ!後でサインください!」
「いや、その話は置いておいて」
「え〜……私の話より結城さんの話が聞きたい」
「君の世代じゃないでしょ」
「親の世代ですけど、今の時代映像残ってるから関係ないよ」
「今のインタビューにはそれ関係ないからね。苗字選手にとっては金メダルは義務だったというのは?」
「うーん、誰に課せられたとかじゃないですよ。私のなかでは金メダル取ったのはスタートラインに立ったくらいの感じです。私は目指していることは最低限金メダル取って、ワールドカップ優勝くらいしないと叶わないと思うので」
そう言って私は足元を見つめる。子供っぽい仕草だとは思う。首を傾げた彼に、貴方達にとっては多分単純なことだよ、と告げる。不思議そうな顔である。私はにっこりと笑って口を開いた。
「日本代表の花森選手や持田選手達と同じピッチに立って一緒に試合してみたいって言うだけです」
彼はただ少し目を見開く。そんなこと?と言う顔をしたスタッフもいるが、多分目の前にいる彼はその難しさを知っている。
結城さんは、少しの沈黙の後、じゃあ、と口を開いた。
「今日の金メダルはやっと踏み出した君の夢への第一歩ってことだね」
「うん、そう言うこと。でも、やっぱり金メダルは取れて嬉しいので、普段お世話になってるお兄ちゃんみたいな人には自慢しときます」
「じゃあそろそろ最後に一言」
「サポーターの方もそうじゃない方も応援声援ヤジ色々ひっくるめてありがとうございました!この後も引き続きオリンピックをお楽しみください!!この後まだ試合がある私の日本の推しは競輪の滝宗さんと私と一緒に踊ってくれたシンクロのみっちゃん、選手村で迷子になってる私を助けようとしてくれたサムライジャパンのキッペー選手とそんな二人の救世主レスリングの堅田選手です!」
そうキリッとしながら言い切ったら隣でインタビュー受けてた監督に怒られるのだが。
「ちょっと失礼……こら苗字他の競技に迷惑をかけるな。迷惑かけるのは身内だけにしておけ」
「はーい、ごめんなさーい」

==

さすがに疲れた、ので両親に変わって迎えだかなんだかで空港にやってきたハナちゃん選手に吸い寄せられるようにハグをしに行く。ナマエ?とびっくりしたハナちゃん選手に、さすがに疲れた、とこぼせば頭をぽんぽんされた。
「アイス食べて帰るか……」
「うん!!食べる!!いつものとこでたべる!!」
早く行こう!
そう言ってハナちゃん選手の手を引く。彼は頷いてそのままその場を後にした。

ちなみにその問答を日本の記者に見られていたらしく熱愛みたいな報道されたが、慣れすぎたクラブが「あの二人家が隣で兄妹みたいなものだからそれはないよ」って日本のメディアに釘を刺してて笑った。ドイツの人や一部花森圭悟ファンにとっては公然の事実である。いやー、ハナちゃん選手は私が十二の時にとなりに引っ越して来たからもはやお兄ちゃんみたいなものですね!恋人扱いって私がそれだけ歳とったってことですね!と昔に撮った写真と今の写真を並べてビフォーアフター的にSNSにアップしたら爆速でいいねついてちょっと面白かったのは秘密だ。たぶんハナちゃん選手は持田蓮にロリコン扱いされるだろうが頑張ってほしい。あとアイツはただのコミュ力の塊だから普通に花森圭悟にも絡みに行くって監督呟いて女子選手間で大喜利すんのやめてほしい。あと違う方面の身内も参加するのやめて欲しい。自分達の方がもっとビフォーアフターできる!!じゃないんだよ、キッカスとメルセデスAMG。ややこしいことになるからやめい!ハナちゃん選手も大喜利に乗るのやめい!!あと保護者集会もやめい!!
「保護者集会解散!!」
そうSNSにコメントすれば、やっと保護者集会が解散した。

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オフシーズンにCMの撮影やらテレビ番組の撮影がある。スポンサーな企業の衣服だったりドリンク系だったりするのであるが、私が未成年なのでアレだ。お酒ではない。あと、両親の実家に顔出しにいくついでに受けてる感じである。じっちゃとバッチャに金メダル見せなきゃいけないしな。その前にモチダレンの巨大広告と写真撮らないとだし、日本代表の広告にも紛れなければならない。ということで両親にそれぞれ写真を撮ってもらう。いいなー!と思うのは日本代表一人ずつあるから一人ずつ同じポーズしようとしたらボール受けてる感じにしたら?と言われたのでそうする。後でSNSあげよ。



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男子は持田連と花森圭吾が一緒でハナちゃん選手がちょっと嬉し泣きしたから私も一緒に泣いた。あと男子ワールドカップも成績が例年に比べてよかった。やっぱりあの二人揃ったら最高なんだよこんにゃろう。というわけで女子である。オリンピックの二年後が男子のワールドカップ、その一年後が女子のワールドカップだ。まぁその後またオリンピックがきて順繰り回るのだが。
まぁ三年あれば私の対策は進むだろうけど、私だけを研究しても、監督と私がガッチガチにホープちゃん達を教育するので無理ですなわけですが、でもまぁ苦戦する時は苦戦するし。
でもそこを翻してエースというか。持田連が待っててやるって偉そうに煽ってきたからな。ここで何点か決めて煽り返すことにする。二人ともいい歳だかんな!!とシュートをわざと回転かけてうつ。カーブを描いたボールはネットを揺らした。イエーイ!とシュートきめた持田蓮の真似をする。周りにバレて押しつぶされた。次はセットプレーでななのん選手のアシストする。ナナノン選手クノイチ出身だから二人でニンニンポーズしておく。もう一回、駆け上がって抜いて足を振り抜く。決まったそれにハナちゃん選手の俺が10番アピールポーズ真似といた。潰されたけど。まぁここでやられっぱなしの友人ではないというか。攻められるけど、まぁそれはそれだ。決めきれなければそれは意味にならない。笛が鳴って試合を終える。ほら、優勝してしまったよ、と、はしゃぐ周りをおいて友人を迎えに行った。
「立ち止まるなら、置いてっちゃうよ」
「……ヤダ。意地でもついてく」
「そかそか。またフットボールやろうね」
そう手を差し伸べれば、彼女は泣きながら私にハグをした。

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甘い話には裏があるのだけれど、でもまぁやらないよりはマシだからと飛びついてみたのであるが。男子のチーム入りである。クラブハウスの平等の精神アピール兼話題作りなんだろう感はすごいする。まぁ、そんな感じだからそりゃあ非難も批判も多いし、賛成よりは反対も多かろう。チーム内からもそんなものはあったが、なんかそんなものは「昔」の時点で慣れた気がするので、実力でサクッとチーム内は黙らせた。ちょっと落ち着かないのはハナちゃん選手がいないので私が愚痴ったりする相手が身近にあんまりいないことだ。電話で話したりはするが、ハナちゃん選手も日本に戻った為ちょっとぼっちなのである。まぁ、でも、やることは変わらない。結果を出して、黙らせる。どこが自分の弱点か把握して、それを克服する。しかしながら、まぁ。
「いい意味で客寄せパンダなんだよなぁ」
そうベンチでぼやけば、隣にいるユーシ君が目をパチパチ瞬いた。私がベンチにいても何かは言われるあたり、試合に出ても何か言われるだろう。そもそも私が出るのもめちゃくちゃ負けてるとかそんな安全バーがある感じの時だろうし。今みたいな、と思ってたから本当に監督から交代指示がきた。ブーイング凄いうるさい。元代表というかスター選手だったアンセントさんと合流してグータッチする。
「ブーイングがすごいねぇ」
「大丈夫かい」
「気にしてないよ。まぁ黙らせるには結果出すしかないし」
ケラケラと笑って、眺める。青と緑、それはどこでも何一つ変わらない。


その瞬間、まさかという顔をした周りに、静まったそこに、私は特に嬉しくもないのだが、とりあえずヘラリと笑っておく。私のチームメイトだけがよってきてぐしゃぐしゃと頭を撫でた。それを見てサポーターからの歓声がようやく上がる。
「やりやがったな」
「まぁねー」
「やったわりには不満そうだな」
「だってあれくらいしないと私に本気出してもらえないんだもん。今の完璧手抜かれてたし。私ノーマークだったし。アンセントさんとウィルさんしか見てないし、多分まぐれって思ってるからもう一点ぐらい行けると思うしボールほしい」
「わかった、お姫様、君にボールを渡そう」
「アンセント、コイツお姫様って柄じゃないよ。ただの生意気なルーキー。またはなぜ何期のガキ」
ひゅー、トニーわかってるー!と言いながら別れる。さてさて、四一からの四二。あと一点取れば状況はだいぶ変わるだろう。

いい場所にいるなぁ、と思ったのでシュート打つのやめて股くぐらせてウィルにパスだしたらが決めてくれるあたりあの人の視野やばいんだよなと思う。ウィルもまたアンセントと同時期ぐらいのスター選手なのだが、二人とやってるとめちゃくちゃ勉強になることが多い。そっかーー!!みたいな解答がでるから。ウィルさーん、と近寄ればバンバン叩かれたけど痛いわ。そろそろ目の色変えるだろうな、とワクワクする。恐らく選手側は偶然じゃないってわかった。だから、次は本気で来る。
「みて、あの顔。ワクワクするなー」
「お前ホントにいい根性してるよ」
意外となんとかなってるのは準備をしてきたからだし、周りのレベルが高いからだ。さすが腐っても元代表選手。久しぶりにこんなにワクワクしてるし、楽しい。突破したりされたり、できたりできなかったり、シュートまで持っていっても弾かれたり。そうしてる間に、山なりのボールを飛ばす。それに合わせてトニーがヘディングシュートを決めてギリギリで同点に追いついたまま終わった。のちに相手チームのサポーターや記者から悲劇とか言われるし、私がでるのはせこいとか言われるのだが、それはまだ知らない。
「んーー、もうちょっとで勝てた気がするなーー。でもこう……体格いい相手と競り合うのはちょっと慣れたけど、やっぱり囲まれたりすると突破がかなり難しいからなんとかしたい」
「普通もそうだよ」
「ウィルさんとかアンセントさんとか軽やかじゃん。私もなんかわかればできると思うんだよね。勉強しよ」
「息抜きはしろ」
そう頭を小突いたウィルさんはファンサ兼インタビューに行くのを見送って、アンセントさんと並んで帰るとする。うーん。
「過保護だなぁ」
「過保護って、君、今日の試合で結構活躍してるんだから気をつけた方がいい。みんな驚いているし、負けたのは君が交代して現れたからだっていう人もいるだろうから」
「先が長いけど一歩ずつやって認めてもらうしかないよ」






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