2021/12/31
2021年オフラインネタ帳大放出祭44
「……やっぱり一人は心配だなぁ。こうなったら僕が……」
「アスターくん、君は奥さんがいるだろう?」
「一人で大丈夫だよ。これから嫌でもそうなるんだし」
「でも、君はまだ10歳なんだ」
「カブさんもワイルドエリアの呼び出しがあるしね」
「……あ、丁度いい人がいるじゃない」
そう言ったシャスタさんに私は首を傾げた。それって誰?と聞いたらキャプテンに、彼女は「タケシよ」と告げた。私の頭の中にサトシと一緒に旅してたタケシが現れたが、多分違う人だ。
「クラブハウスに住んでるし、丁度世話を焼く人いなくなるわよって話てたの」
「タケシ?」
「はっはっはっ、クラブハウスに住むとは恐れ入った!タケシは君たちのチームにいる新しい監督だね!」
ほほう、と思う。サッカー好きなら四六時中サッカー見てても文句言われないな。アスターさんが「タケシも心配だったけど、」と言葉を濁した。私の許可なく話は進むのだが。まぁいっか。暖炉の前で蕩けているうさぎとミルキーに声をかけておく。
「うさぎー、ミルキー、嵐の間大人の人が一緒にいてくれるんだって」
「にば?」
「みる?」
こちらを可愛らしく見上げた二匹の頭をわしゃわしゃしておく。うちの子は今日も可愛い。
現れたその人は私を見て目を見開いたし、私も私で彼を見て目を瞬いた。ナマエちゃん、この人がタケシよ、と紹介されたその人は間違いなくETUの監督したりしてた達海猛に見えるのだが、目の錯覚だろうか。もしくは、違う世界にいるドッペルゲンガーか。
「ちょっと変なこと言うけど、悪いことはしないから大丈夫よ」
「変なこと」
「違う世界からきたとか……想像力が豊かなのよ」
ん?ということは、である。こちらを見て目をパチパチしてる彼は間違いなくその人本人では。
「タケシ、この子はナマエちゃん。この家で一人で住んでるから、嵐の間だけ一緒にいてあげて」
「……いーよ、別に」
そう頷いた彼に、ナマエです!!と握手を求める。ファンサ、ファンサ、結局あっちでは握手とかした気がしない。蓮とかハナちゃんとか蓮に邪魔された覚えしかない。向こうもよろしくーと緩く手を重ねた。
「こっちはヒバニーのうさぎとポットデスのポットとマホミルのミルキー」
「うさぎとポットはわかりやすいけど、ミルキーは?」
「ミルキーの香りがするから」
私の発言に彼はミルキーを嗅いだらしい。あ、ホントだ、と頷く。
「あっちにいるのがエントツさん」
「エントツさん。あぁー、俺もエントツって呼んでるわ」
「波長があってる……」
シャスタさんが苦笑いしたの笑う。アスターさんがなんとも言えない顔をしたが。カブさんが何かあったら連絡するように言ってくれてるあたりいい人だ。
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「達海さんじゃん!!」
解散し、達海さんの荷物を空き部屋に運び終えた後である。ひゅーー!と私は騒ぎながら彼の周りを飛び跳ねる。私が遊んでると勘違いしたうさぎがぴょんぴょんと同じように達海さんのまわりで飛び跳ねた。
「あー、やっぱりトウキョーヴィクトリーの元女王様?」
「そうだよ、なんでいるの!?」
ぴょんぴょんと跳ねながらきく。女王様こそなんでいんの?と聞いた彼に、私は首を傾げた。それはわからない。
「つーか、王様は一緒じゃないわけ?」
「王様?蓮のこと?いないよ」
首を傾げる。彼は目をパチパチ瞬いた。
「私は死んだなーと思ったらワイルドエリアに倒れて……」
そこでハッとする。達海猛もしや死んだのか!?と彼を見上げた。
「えっ!?達海猛死んだの!?何時!?私が死ぬ前とは聞いてないよ!」
彼を見上げる。俺は生きてるよと不服そうに言われたが。
「つーか、女王様その記憶あんのね」
「あるある。普通にある。カバンの中身がご丁寧に火葬の時に入れられたものっぽかったから、余計に死んだ実感あるよ。死んだらこの世界来るのかーって思ってたけど、達海さんが違うなら違うのか」
いや、考えても答えなんて出ないが。いやー、私の後の時代を知ってる人に会えたなら聞こうとおもっていたのだ。
「蓮はさー、再婚した?」
「いや、してない。花森と仲良く独身してる」
その発言に私は吹き出した。いやー、それは面白すぎる。ハナちゃん結婚してないのか、とか、蓮も再婚してないのか、とか。引く手数多だろうに。むしろあの二人もしかしてできてるのか??と考えかけてやめる。まぁ本人達が幸せなら私はいいのだ。
「まー、達海さんってわかったから、嵐の中ずっとサッカー見てても文句は言われないね、ラッキー」
「またフットボールすんの?」
「うん!」
「……王様も花森もいないのに?」
「なにそれ。あの二人がいたから頑張ったけど、そうじゃなくてもサッカーが好きだから。それに足があるしね!」
ねぇ、うさぎ!と言えばうさぎは満面の笑顔で、にば!と返事をした。達海さんはふーんと言って口を開く。
「持田が言ってた通り、トリオで一番のフットボール馬鹿は女王様なのか」
「ちょっと待って、それ何時の発言だ。生前聞いたことないなその発言。いや、馬鹿とは結構言われたけど」
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どうやら達海さんは私と別経由できたらしい。よくわかんないけど、と前置きがつくが、とりあえず彼はつい先日この場所に迷い込んで、そのまま流れるように監督に就任したらしい。
「達海さん、足治ってないの?」
「んー、多分治ってる。多少若くなってるし」
「プレーしないの?」
「んー……女王様は、自分が引退したと思う?」
その問いかけに、私は言葉を詰まらせてから、ふはっと蓮のように笑う。
「できてないよ」
答えはそうだ。自分は引退した。形式的には。選手としても、アンダーの監督としても。華々しい活躍を残して。でも、それは体のことがあったからだ。私はもっと現役でいたかった。心がついていっていないのだ。
「どっかで割り切れるかなーって思ってたけど、ずっと無理だった。諦めれたら楽だったのに」
ねぇ、うさぎ。
そう言えばうさぎは首を傾げる。私はうさぎを抱き上げて、彼に問いかける。
「達海さんは引退したの?」
「まーな。色々あったけど、俺がETUで監督した年に引退した」
「じゃあ、プレーはしない?」
「多分な」
「羨ましいなー、私も今度はちゃんと引退したい」
そう言ってうさぎの頭に顔を埋める。うさぎはびっくりしたようだが、すぐに私にほっぺをすりすりした。
「でもこの世界、サッカーの人気がないからなのか女子チームが見当たらなくて死んでるんだよー」
「え、俺、男女混合チームって聞いたけど」
その言葉に私は顔を上げる。マジか。
「マジじゃん」
古い試合のテープみてたら本当だった。マジかよ。この世界で生まれてたら私はあんなことをクヨクヨ思わなくて良かったのでは。
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