2021/12/31
2021年オフラインネタ帳大放出祭80
変な世界と融合されたな、というのが初めの印象である。そしてきな臭い世界だな、とも。もとより私の住む庵は日の本でありながら違う場所にある者ではあるのだが、そのいつもの道を降りた先にあるのはいつもの里でなく、恐らく戦場となってしまっただろう村だったからだ。馬や人に踏まれ荒れ果てた田畑、焼き払われてしまった家々。それを見て、一緒に様子を見に来ていた同じように戦国に生まれ直した加持がひでぇなと言いながら顔をしかめた。私付きの忍びである半蔵改め弥太郎はあたりを見に行っている。私の後ろで忙しなく周りを見ていた影丸はぎゅっと眉間にシワを寄せた。遺体が転がっていたからだろう。こちらを伺う全体的に女子供や老人が多い。
「ナマエ様……」
「ふむ、まずは安心して眠れる場所だろう。加持、空いている場所はあるだろうか?」
「南の入り口あたりに増設した場所なら空いてるぞ。ただ、北の方は俺の部下がいるからあんまりだけどよ。見たところ時代が時代っぽいしな」
「では南に匿おう。影丸、先に一走り走って庵の皆に伝えて温かい食べ物を用意するように言ってほしい」
「わかりました」
そう言って影丸はぴょんぴょんとまるでムササビのように木から木へと飛び移っている。私はグルリと見渡してから、一番歳を重ねている男性を見つけて声をかけた。
「もし、そこの方」
「……なんでしょう」
「いくつかお尋ねしたいことがあります」
そう言って座り込んでいたその人に目線を合わせて座る。気付いたらこの世界にいたことを話せば、迷い込んでしまったのですね、と返された。混ざってしまった世界、妖魔という存在。それを聞いていた加持が「あー、遠呂智」と頭を抱えた。うん、まさしく遠呂智だろう。
「世情はわかりました。説明を、ありがとう。私はナマエという。この先で、病に罹ったものや怪我をしたものと共に暮らしている。今日寝る場所がないのであれば、私のところにおいてください。この村の人数ならば食事も出せるし、寝床を提供することもできよう。信頼できないのであれば、先に誰か腕の立つ人を連れて行ってもいいが……」
私の言葉に彼は目を見開くと、ありがたや、と両手を合わせる。礼には及ばないさと言って立ち上がる。そばで聞いていた人も話を聞いたからか、話が広がっていく。私は砂を払うとそのまま村の入り口だった場所に一応結界みたいなものを貼っておいた。いやー、ファンタジー世界経由するとこういう時便利。
「ナマエ様ー!動ける奴らで向かえに来ましたぜ!」
わいのわいのとやってきた人物に村人を任せる。歩けないやつは籠に入れて担いでやらぁ!とは加持の親友で大工みたいなことをしてくれている男性、高里である。高里のそばから藁を編んだものを持った女性ーー律が現れる。
「弔いは如何しますか」
「もうじき日が暮れる。弔いは明日にしよう。藁をかぶせておやり」
「かしこまりました」
そう言って藁を編んだものを上から被せる律を手伝い、そのまま両手を合わせて自分の住む場所に戻る。殿を歩いていれば周りを見回った弥太郎が戻ってきて隣に並んだが。
「弥太郎、どうだった?」
「意味がわかりません。魏、蜀、呉と書かれた旗だけならば三国史かと理解できますが織田や豊臣もいます。しかし、皆我らの知る姿ではない様子。後は化け物が目立ちます」
「ふむ……村人から聞いた話では仙人が作り上げた世界らしいぞ」
「また厄介な世界に……元の世界より厄介では」
眉間にシワを寄せた弥太郎に肩を竦める。見えてきた庵は、庵というよりはもう小さな里だとは加持の言葉である。カムラの里っぽいよな、そのまま目指そうぜ、と言われたが、カムラの里が私はよくわからないのであるが。
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どうやら立地的に三国と戦国の間にあるらしい。だからかわからないが、各国の役人が来てやれ税ややれ作物やと話してくるのが面倒なので基本そう言った人は入れないようにしたのだが。
「獣用の罠に人がかかるとはなぁ」
そう言って恐らく魏の人をみる。獣用なのかい!?と驚いている彼に、もう一人が降ろしていただけると助かります、と困った顔で告げた。とりあえずいつも来る上から目線の役人ではなさそうだ。網を解き、人を下ろす。助かりました、と息を吐いた青年に、すまない、と困った顔をした。
「ここをとおるのは獣か村人ぐらいでね、あまり外の人は通らないんだ」
「正面から入ろうとしたんだけど、どうしても違う場所に出てしまう」
「あぁ、役人が口うるさいのでそうするしかなかったんだ」
にっこりと笑ってそう言えば、彼らは顔を見合わせた。
「この先には病を患う人や怪我人が多い。その下に村だって戦で田畑を荒らされ住む場所を追われた人達だからな」
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「貴方は別の世界の家康サンなんでしょ?」
そう尋ねた妲己にはて?と首をかしげる。私は正しくは徳川家康ではないのであるが、彼女がそういうということは彼女は私の世界の何かを知っているのだろうし、何かがあるのだろうか。可哀想に、と愉悦を含んだ笑みは別に感心しないが。変わったことといえば、妲己の隣にいる黒いフードを被った青年だろうか。彼の存在に首をかしげる。恐らく妖魔ではなく、人だ。あの体格見たことあるんだよなぁと思っていれば、妲己の話が続いていたらしい。彼女はまた口を開く。
「お父上に暗殺されて命からがら逃げたんだってね。可哀想、せっかくの家族なのに」
「まぁ、客観的な事実はそうだ。それに正しくは私は徳川家康ではないし、この世界だと大変ややこしい話になってしまうからそう呼ぶのはやめてほしいものだ」
そう言って肩を竦める。あら、貴方ってば強がりさんと言われてもそうなのであるから仕方ない。強がってないし。そもそも周りの将兵の視線が痛い。稲姫が私を凝視している。
「ナマエが別世界の殿……?」
「初耳です、ナマエ殿」
隣にいる荀攸殿の言葉に肩を竦める。
「参ったな……ややこしいから黙っていたのに。世界が違えば時勢も違う。そもそもこの世界には私は存在しなさそうだったからいらぬ混乱を招かないように黙ってたんだが」
ははは、と笑いながら言えば二人ともに笑い事ではありませんと言われた。毛利殿が首をかしげる。
「ナマエが家康殿ならどうして父親に暗殺をされたんだい?この世界の君の行動を見る限りいい君主だろうに」
さぁな、とはぐらかそうとすれば、青年が口を開く。
「ーーそうだ、貴方は良き君主だった。民に慕われ、弟や臣下にも慕われた。また大名や帝を友とし、時にはその橋渡し役として間を取り持った。天下はもっとも貴方に近かったはずだ」
声を聞いて、ああなるほどな、と理解する。妲己に唆されたのか、それとも探しにきたのか、問いかけに来たのか。彼が来た意味などわかりそうなどないが。
「それは違う。まぁ、確かに私の世界の有力者とは仲が良かったから……」
そう言って顔を顰める。思い出したら結構ろくでもない喧嘩に挟まれて止めに入っていただけなような……。
「いや、仲がよかったのか、あれ……しょっちゅうくだらないことで騒いで戦しようとするから私がただ止めに入ってただけな気がするな……まぁよく話したりはしていたし、仲は良かったのかもしれない」
うむ、と考える。いや、いろんな話をできて楽しいのだ。全員が考えることが違うからこそ、いいところを真似もできた。
「だが、仲がいいだけでは天下は取れない。そもそも私は興味もないし、本来ならば対等に扱われる資格もない。七割が私が嘘をついていたから対等に扱い、残りの三割がそう扱ってくれていただけだ」
「……資格はないから?嘘をついていたから?だから貴方は殺されたというのか?」
「青年、それは早とちりというものだ。目の前にあるだけのものを真実と思い込むな。全ての物事には側面がある。自分の見聞きした出来事の多くは事実ではあるが、過程を知り得ないのであれば、それは決して真実ではない」
そう首を左右にふる。青年は口を開く。
「貴方達はいつもそうだ!小難しい解答しか寄越してくれない!」
うーん、小難しい解答か。まぁ、私にしろ信長公や義輝公にしろ、秀吉公にしろ、確かに遠回しの答えしか言わないな。相手の婆娑羅が高まっている。ビリビリと大気が震える感じがする。妲己が、ねーえ、と口を開く。
「ホントに貴方の探してる人なの?もしかしたら、偽物なのかもよ」
「妲己。彼を唆すのはよせ。手を出すのもな。あと元にいた場所に連れ帰ってくれると嬉しい」
「連れて帰るなんて無理よ。だってこの人が勝手に来たんだもん。道は閉ざされちゃったわ」
となると、闇の婆娑羅を辿ってきたんだろうか。いや、たまたまにしてはできすぎてないか。どうやって来たのかはなかなか問題なような気がするのではあるが。
「それにしても、貴方、冷たいのね、聞いててほんと呆れちゃうわ。貴方に会いたいって言うから連れてきてあげたのに」
「会ってしまえば離れ難くなるだろう。家族なら尚更だ。だが、元の世界に戻る術がないのならば仕方ない。諦めも時には肝心だ」
うむ、と頷く。家族、と向いた視線に私は苦笑いをした。
「だが、後からなぜか合流できた皆に、大人になったお前の名を聞いているが、本人から名乗りを聞きたいな。と、なると、必然的に私は私の世界で贈られた元の名を名乗る必要がある、か……まぁいいか。どうあがいてもこの世界と私のいた世界では色々違う。所詮は同じ名の人だと思ってくれ、特に徳川をはじめとする戦国の人は」
ケラケラと笑いながらそう言って、まっすぐに青年をみる。
「貴殿とあいまみえたのも何かの縁。某は松平元信。恐れ多くも四皇が一、三河松平家の次期当主だ」
もうないのだ、三河の松平は。私の死後、本家は徳川という苗字をもらって徳川家に変わっている。終わりは全て徳川に任せるとは秀吉公の言葉であるが、松平の終わりは私だ。彼は槍を握る。それがし、と小さくつぶやくように告げた彼に、私は待つ。彼はグッと拳を握ると、フードを外した。
「某、三河徳川が当主、徳川家康。慈しみをもって三河を率いた貴方にお会いできて光栄だ、元信殿」
そう言ってまっすぐにこちらを見た彼ーー竹千代に、うむ、と頷く。ああ確かにややこしいね、とこぼした元就殿に、参りましたな、と呟いた家康殿に、そうだろう?と笑っておく。
「家康殿、申し訳ないが、こちらの世界にも徳川家康殿がいる故、幼名で読むことをお許し……あぁもう他人行儀はやめだやめ。竹千代の名乗りが聞きたかっただけだ。許せ、竹千代。お前ももう大人だから色々理解できる年ではあるか。詳しいことは庵で話そう。妲己から離れてこちらに来てくれれば助かる」
「あら、そうなったら貴方のお友達がどうなるかわかってる?」
そう言われてハッとする竹千代を見るに誰かもいるらしい。忠勝か、三成か、と思ったのだが、多分違いそうな気がする。
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