2021/12/31
2021年オフラインネタ帳大放出祭79
乗り気ではない。乗り気ではないが、仕方がないというのが世の常だ。この世界に迷い込んでいるのだから、いつかはそうなるとは理解していたわけであるし。何より私達が暮らす場所にほどほどに近い。フードを被り、陣を見下ろす。妖魔が攻め入り、人間達が戸惑っている。鉄砲隊を伏せ、撤退場所を固めはしたが、そこまで誘導するにしろ殆どが私を知らない人なので私の言葉を信じるかは謎だ。まぁ、とりあえずその中にいる見知った人物の元に行くとする。まぁ、上からダイブして割り込む形になるのだが。
「阿斗殿、大丈夫か?」
「……あぁ、ナマエではないか。そうか、このあたりはそうだったな」
「わかっているようで何よりだ。東に撤退路を作ってある。そちらに行け。時間はかせぐ」
「あい、わかった。ナマエに任せよう」
そう頷いた阿斗殿もとい劉禅殿に、そのまま落ちていた双剣を適当に扱うとする。
「あれー!?その被り物はナマエ殿!!」
「満寵殿もいたのか。満寵殿、流石に撤退して立て直したらどう、だ!」
そう言って近くにいた妖魔を若干婆娑羅を込めて蹴り飛ばす。ボーリングみたく飛んでいった妖魔は周りにぶつかって気絶した。
「ナマエ殿がいたら立て直せそうな気もするけど、そうするよー!」
「東に向かえ」
「わかったー!」
余裕だなこの軍師。そう思いながら撤退を見送る。そのまま私も殿について撤退を開始する。まぁ、満寵殿と多分魏の軍師が私のところまで下がってきたが。
「ナマエ殿、この先何かひいてる?」
「一応鉄砲隊を伏せている。が、君がご存知のように、鉄砲隊は固定だと思ってくれ」
「えっと、君は味方だという認識でいいのかな?」
「徐庶殿、ナマエ殿はどの勢力でもないけど、今この状況で味方してくれてると言うことはそうだよ」
「緑色の服ということは君は蜀か」
「そうだ」
そう少し考える。周りを見たらなるほど、島津がいる。満寵殿がやれやれしながら口を開く。
「形成逆転したいんだよね。このまま行くと君が暮らす場所もまきこまれそうじゃないかな」
「そうだな。日の本の島津がいるなら話は早い。島津殿、この後釣りはいかがかな?」
そう言って叫べば彼はこちらをみた。周りの兵士はえっみたいな顔したけど、まぁ、普通に聞いていたら何聞いてんだって話だしな。
「小僧、面白い博打をしかけるな。だが乗った」
「満寵殿、徐庶殿、逃げるふりをしながら左右に分かれてくれ。向こうは今全軍でこちらを追いかけている。あとは理解できるな?」
そう言えば二人が頷くあたり軍師なんだよなぁ、と思う。戦況理解が早くて助かる。
「弥太郎二人に協力しろ」
「かしこまりました」
「影丸、加持達に少し陣形を変えるように伝えろ。私はこのまま引き付ける」
「わかりました」
私の命令にそのまま頷く二人は流石である。満寵殿と徐庶殿と時間差で分かれて、まぁ、私と島津に引きつけつつ静かに囲む。まぁ囲んでしまえばあとはなんとかなるだろう。気付いた時には遅しというやつである。まぁ、適当な部分で鉄砲隊には撤退を指示しておくが。形成逆転し追い払えただろうなので。弥太郎もとい半蔵と影丸、加持、律に片手を上げて撤退指示をだしておく。そのまま私もまぁ撤退するかな、と歓喜に包まれたそこにいた島津に一礼だけして戦場を後にした。
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「ナマエ殿のいる場所は病人や怪我人が多いんだ。兵士には向かないよ。自衛の為の最低限とナマエ入っているけれどね。まぁ、療養所も兼ねてるようなんだが、こう……あるものが結構面白い」
そう言った満寵に、仲がいいのかい?と徐庶は尋ねる。私が迷子になるとねそこに行き着くんだと悪びれもなく告げた満寵に、周りはなんとも言えなくなった。劉禅もまた何度か迷い込んだだけだ。大体どのあたりにあるかはわかるが、どう行けば辿り着くかは謎なのである。その実、近隣の村からも実りが悪いやらと言われてナマエが出向くことがあるのだが、それは周りは知らない話だろう。
「どこの誰なんだろう」
「島津をみて日の本の島津と言っていたから、君たち側ではないのかな?」
「うーーん、ナマエなんて人、名前を聞いたこともあの姿を見たこともないんだよなぁ」
そう言った半兵衛に、そこにいた少女は少し目を泳がせた。何故なら自分の記憶には一人だけ該当者がいる。遠目で見たその姿は確かに戦国側である。が、日の本は日の本でも別の日の本で間違いない。問題はその姉にあたる人物か弟にあたる人物かということだ。いや、線は少し細かったし、色々と率いているのを見ると恐らくは姉の方だ。姉の方でも名前が二つあるし、そもそもこの世界の徳川に彼女はいないのだ。いや、妲己の元に婆娑羅者がいたのを考えると。ぐるぐると少女が考えていれば、どうしたのネムだなんて甲斐姫から声がかかる。少女ーーネムは苦笑いをした。
「いや、ははは、」
「あら、ネム、何か知っているの?」
「知ってるような、知らないような……」
ネムは孫尚香の問いにそう誤魔化した。ネムには認識がある。でもそれは会ったことがあるというわけではなく、絵物語として知っているくらいだ。
「おっと……参ったな、私を知っている人がいるのか」
そんな声が聞こえて周りはそちらを見た。劉禅がナマエを連れてきている。おや、ナマエ殿、と満寵が声をかけるとナマエはやぁ満寵殿と手を振った。
「阿斗殿……この場ではふさわしくないか。まぁ、劉禅殿に先程会ってね。出向くときはこちらからきちんと出向くから周りを詮索するのをやめてほしい。獣用に仕掛けてある罠に人間がかかって怪我人が増える」
「あぁ、君のところへの使者が帰ってこないのはだからかな?」
「そうだよ。まぁ今日無事にここまで送り届けたから安心してくれ」
ナマエはそう言ってネムをみる。びくりと肩を揺らした彼女に違う敵意はないのだとひらりと手を振って見せた。
「君は私を知っているようだけれど、同じ世界から来たのかな?」
「いえ、ちがうかと……」
「ふむ……まぁ、ナマエと呼んでくれ。君の知るだろうもう一つの名は捨てしまってね。あれは死んだことにしておいてくれ。なんせ、君のご存知の通り、私は私の世界では死んでいることになっているのでね」
「わかりました」
こくりと頷いたネムをみて、助かるよ、とナマエは笑いながらフードを外した。そうして綺麗に中華風の礼をしてみせる。
「お初にお目にかかります。私の名はナマエ。あの一帯で、怪我人やら病人と暮らしている者です。一緒に暮らしているものがものなので出来るだけ戦ごとには関与せずにいようと思ったのですが、そうは言ってはられない状況のようでしたので使いで来られた方と共にこちらに馳せ参じた次第です」
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