2022/12/31

2022年度没ネタ整理2

・むそばさたいが


「義兄様は、輝兄様が怖いのですか?」
そう首を傾げて見上げる。彼は目を瞬いて私を見下ろした。何を考えたか、同じ名前が三人いるのだ。恐らく私が無双の足利義輝になった関係で、だとは思うが。宗家は恐らくは大河とかそっちだとは思う。分家が私のいる無双と婆娑羅と形だけはなっている、が、まぁだいたい仲が悪い。足利は私が偶々お忍び中の本家の義輝(通常義兄様)と会ったが為に無双側の分家と宗家は仲が良いし、同じく婆娑羅側の義輝(輝兄様呼びである)と私がお忍び中にあった為仲がいい。が、どうも、宗家は婆娑羅側と仲が悪いところも多い。平和になった今、婆娑羅という力を持つからなのか、唯の先入観からなのか。無双側でも化け物扱いするしな。私が扱えるのは弟と今世ではあってない三好殿しか知らないわけだし。後多分この人も扱えると思うのだ。
「いや?怖いわけではないが……周りがうるさい」
はっきり言ったな、と思う。しかしながらわかる気がする。今も私だから遊びに行っても許される感じはする。
「あの義輝は些か考えが分かりにくいからな。話が合うかどうか」
「賭け事……というか勝負事が好きですよ」
「うむ、噂には聞いている」
「婆娑羅はこわくないのですか?」
「特にはな。まぁ、私にも扱えるからな」
「やっぱりです?私もなんですよ」
はっはっはー、と笑いながら行ってみる。向こうもだろうなぁと笑いながら告げた。扱えない周りがこわい怖い言ってるだけだ。
「む、藤と……これはこれは兄上ではないか」
「輝兄様」
「義輝、久しいな。年始の挨拶ぶりか」
「ナマエが抜け出すのはよくあるが、兄上がここにいるのは珍しい」
「そうか?私はよくここにいるぞ、まぁ、藤に連れ出されて、だがな」
「まぁ、お二方に比べて私は子供ですからね、色々許されます」
そう言いつつココアを飲む。子供だからココアでいいのだ。二人はコーヒーだろうが。義兄様がこちらをみおろした。
「藤は知らぬだろうが、お前が抜け出したのがわかるとお前の三淵が鬼を背負って駆け込んでくる」
「そちらもか。こちらにも駆け込んでくる」
「ごめんなさい、あの三淵は心配性なので」
はははと笑いながら言えば、そうだな、と二人が笑いながら頷いたが。まぁそこからちょくちょく会うようになったとだけ。


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「ありがとうございます、松永の宗家様。助かりました」
そう言ってホッと息を吐く。彼はなんとも言えない顔をしているが。まぁ彼は完璧に私は巻き込まれたからな。
「足利分家の義輝様が何故このような場所に?」
「義輝では、他のお二人と被りましょう。義藤とお呼びください」
そう言ってニコリと笑えば彼は苦笑いしてから義藤様が何故このような場所に?と私に問いかけた。少し低い私の目線を合わせるあたり優しい人である。私は正直にいうか迷う。
「巻き込むので言いたくないような……しかし、逆に言わない方が迷惑を被るような……」
「ほう?」
「……参ったことに、屋敷にいたのに乱暴なものに誘拐されかけまして。誘拐犯の隙を見て反撃し、逃げていた最中です」
あちゃー、と松永様が頭を抱える。この人めちゃくちゃ常識人だからな。多分。
「それは……聞いておいてよかった」
まぁ、屋敷にいたけどおきたということは身内の犯行だとは思うのだが、それは言わないでいいことだろう。彼はお怪我は?と私を見る。
「特には」
「家の方に連絡は?」
「スマホを壊されました。残骸ならあります」
「分家の松永を通してそちらの家に連絡を入れましょうか?」
「いえ、そこまでのご迷惑はかけられません。この辺りの地理にはうとく、近くの駅にまで送っていただければ迎えを呼びます」
「迷惑なんぞ思ってはいません。それに駅で待たれるよりは一緒に来ていただいた方が安全でしょう。が、ひとこと、連れのものにその誘拐は我々のせいではないとおっしゃっていただきたい」
「それはもちろん」
刻々頷く。手招いた彼に私は続いた。歩幅を合わせてくれるあたり優しい人である。
「しかし、義藤様、もう少し私に警戒心を抱かれては?」
「貴殿は私に悪事を働くような人物には見えません」
松永様に利点はなかろうし。笑ってそう返したらあちゃーみたいな感じで黙られた。いや、うん、まぁ無双にしろ婆娑羅にしろ松永さんは私にとっては警戒しても無駄感がするからなぁ。
「……何故義藤様はあまり外と関わりを持たぬのです?」
松永様にそう聞かれる。
「義藤様の弟君には幾度かお会いしましたが……あまり他家に信頼をおいていませんか?」
「いえ?信頼しています。しかし、私が不用意に仲良くなった結果、私の意思とは関係なく命を狙われる方がいらっしゃいました。関わりを少なくすれば命を余計に狙われる方も減るはずでしょう?」
そう困ったように笑いながら見上げる。彼は意外だったのか目を見開いたが。
「私はきっと特別を作ってはいけない。誰か一人に深く情をおいてはいけない。それは親族であっても、よく思わない方がいらっしゃいます」
そこで恐らく彼は理解したのだろう。まぁ私はケラケラ笑いながら口を開く。
「まぁ、一番は父が心配性なので、あれやこれや理由をつけるのです」
いつ女とバレるかわからないからな。そこで彼はそこでそう言うことにしてくれたらしい。そうでしたか、と彼もケラケラ笑った。
まぁ、そんなこんな会話しつつ連れてこられたのは宗家の集まりっぽい。向いた視線にちょっと宗家の松永様を隠れる。無双側意外との関わりはない。むしろ、無双側でも今になっては極端にすくない。誰だコイツみたいな視線である、が、義兄様を見つけたというか、義兄様と義兄様の周りに見つかった。確保ーー!と言いながらやってきた彼らに松永様が飛ばされる。宗家三淵さんがやってくる。般若背負ってる。まぁ、先に義兄様がやってきて私に声をかけたが。
「藤よ、今回ばかりは流石に少し騒ぎになっている。今日は抜け出すのは珍しいな。後何故松永と?」
「乱暴なものに屋敷を連れ出され、隙を伺って反撃して抜け出したところを宗家の松永様に助けていただき、迎えを待つにしろ一緒いた方が安全だからとこちらに連れてきていただきました」
「そうか。松永、助かった。礼を言う」
「いえ……」
「義藤様、すぐに迎えをお呼びします。お怪我は?」
「特にはありません。ありがとうございます、宗家の三淵様」
「我らに様づけなど無用です。しばしお待ちください。飲み物もお持ちします」
そう言って慌ただしく動き出したかつて足利に仕えた(まぁ今も何故かそんな感じだが)彼らを見送る。
「松永の宗家さま、ありがとうございました。助かりました」
「いえ、なんとか合流できたようでよかった。しかし、義藤様、襲ってきた相手の顔をご覧に?」
「生憎驚いていたので覚えておりません」
見てるし大体身内だとは目星はついているのだが、余計なことはお口にチャックである。まぁ、私のいる屋敷の警備を強化した方がいいかもしれない。いや、しかし、うん、勝手に強化される可能性の方が高いか。
「藤よ、待っている間甘味でも食べるか?」
「食べます」
わーい、と手招いた藤兄様に続く。ホテルの甘味とか絶対美味しいに違いない。子供だな、と口々に言われるが、まぁ、子供である。

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性別云々の関係でホームスクリーニングであるため学校に行かない。そんなこんなで私の世界はかなり狭いのだが、この前の一件もあってもっと狭くなってしまった。
「選択をいつも間違えるな、私は」
いつもの。いつものお忍びだと言えばよかったのだ。私がそう言えば周りはそれで納得したはずだ。油断した、というよりはそこまで判断が追いつかなかったのである。ため息をついてそのまま横になる。そこで気づいた。恐らく、体調が悪い。この状態でおちれば恐らく殺されてもおかしくはない。が、目は自然と伏せられる。そのまま私は眠りについたのだが。

「……生きてる」
「物騒なことをおっしゃいますな。まぁ、後一歩遅ければ最悪死んでいたかもしれませんが」
そう言ったのは知らない人である。テキパキと薬を準備するあたり医者だろうか。飄々とした感じのその人は白湯を出しながら口を開く。
「三日三晩寝込んでおいででした」
「風邪か疲れか」
ははは、と笑いながら言えば彼は動きを止めてこちらを見た。私は起き上がり笑って白湯を飲む。近くにいた女の子も私を見る。
「そうでしょう?」
わかっている。恐らくはそういう類の話ではない。でも、そう言うことにしておいて欲しい。彼は目を伏せた。
「……そう言うことにしておきましょう」
「ここは?」
「貴方様にとっては宗家にあたりますか。三淵の分家様方が貴方をこちらに運び入れたと聞いておりますが」
「過保護な父がよく許可をしたものですね」
「えぇ、さようでございますね。まだ体の調子が悪いでしょう。お眠りください。時期に義輝様達がこちらに参られましょう」
「……ありがとうございます」
そう言って笑んでまた横になる。そっと目を伏せれば、また眠気が襲ってきた。

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見舞いにやってきた父親に、ただの風邪で大丈夫だと言えば父親は固まってしまった。もう私は元気です、と証言すれば彼は目を見開いて、恐れたように私を見下ろした。恐ろしいものをみるように。化け物とでも言うように。そうか、と、逃げるように立ち去った父親を見るに、彼が色々手引きしたのだろうとは理解できた。周りが思うように、周りに公言したように男ではなく、女として生まれた私を、誘拐されて殺されたことにすれば。露見した今毒で殺せば。私は亡きものになり、形式上弟に家督がいく。狭い世界で生きていれば、周りに説明も楽だろう。私の三淵が私の手を取って額をつけるように屈む。
「義藤様、貴方は……」
「三淵、私にとってお前がお前であるように、私にとって父上は父上だ。親として敬愛している。それ以上でもそれ以外でもない。だからこの話は終わりだ」
な?と、困ったように告げてしまったのは仕方ない。
「しかし、」
「……そもそもは私が悪いのだ。こんな風に生まれた私が」
彼が息をつめる。父上がお嘆きになるのも仕方あるまい、と。彼は顔を決して顔を上げない。ぽたぽたと畳にしみができあがる。
「……私に万が一何かあれば、弟を支えてやってくれ」
そう言って彼の背を撫でる。声を押し殺して泣く彼に、それ以上のことはしてやれない。生きる約束もできない。恐らく私は今世においても線香花火のように短い人生だろう。
「三淵、心配してくれてありがとう」
「……臣下として……臣下として、当然のことで、ございます」
やっとのことで顔が上がったが、涙が未だポロポロと落ちている。それを彼は無理矢理拭うと、白湯をお持ち致しましょうとそのままそこを後にした。

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しばらく宗家に身を寄せることになり、それと同時に宗家と宗家に仕える一部には私の性別が公表された。出生記録も改竄されている為に、記録や書類的には完璧に男であるのだが生物学的には女である。生活するに色々あるから仕方ない。もとより私は実家から離れて暮らしてたわけであるし。輝兄様こと帝はハグした時に気づいていたわけであるし。ま、名目上は社会勉強の為である。


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「久秀」
「げぇ」
「げぇ、とはなんだ。げぇ、とは。失礼なやつだな。息災だったか?」
「そりゃあこっちのセリフのような……というより、吾輩、義輝殿とははじめてでしょうよ。今いくつです?」
「11だ」
「また随分子供なことで……何故宗家の集まりに」
「今は宗家に身を寄せている。社会勉強のために」
ニコリと笑いながらそう言えば、彼は眉間に皺を寄せて私にチョップをおとす。まぁそのまま手を確保したが。
「久秀、久秀、久秀も茶を立てるのか?」
「吾輩は手伝いぐらいしかせんよ。宗家の面目潰すわけにはいかんのでね。しかし、いくら社会勉強といえど高級茶器を扱う茶会はお子ちゃまにはまだはやかろうて」
「むぅ」
そうむっとほおを膨らませて見る。おお、フグのように膨れておるわ、とほおをむにむにされたのがくすぐったくて久秀、くすぐったい、とケラケラ笑えば手を離されたが。
「ふはっ、貴殿もいつもそう言う顔でいれば良い。お子ちゃまにはそれがお似合いよ。ついでにお子ちゃまには甘い抹茶ラテがよく似合う」
悪い顔をしながら告げた彼に私は抹茶ラテ、と繰り返す。美味しそうである。
「吾輩、悪党なのでね、高級茶器で抹茶ラテをこっそりと……」
「一の家の?何してる?」
現れたのは宗家の松永様である。私を見て義藤様、と目を瞬いた彼はもう一度一の家の?と尋ねた。久秀は肩をすくめたが。
「宗家の松永様、今日はお招きいただきありがとうございます」
「いえ、そのお年で社会勉強とは感服いたしました」
「何か手伝えることはないかと思っていたところ、顔見知りがいたものでつい声を」
「そうでしたか。しかし、客人に手伝って頂いてはこちらの立つ背がございません故……」
「申し訳ありません」
「いえ、公方殿が探しておりました。共に参りましょうか」
「重ねて申し訳ございません。……久秀、抹茶ラテとやらはまたの機会に」
「吾輩は貴殿の使いっ走りじゃない、が、まぁいい」
ひらりと手を振った彼にひらりと手を振っておく。まぁ彼は松永様を呼び止めたが。
「宗家の、同じ名を持つ縁だ、一つ忠告をしておこう。それの側は心地よかろうが、それはかつて人の姿をした別のものであった。さてはて、今度はいつ人をやめるのやら」
「私は人だよ、貴殿がいるかぎり」
そう笑って手を振る。松永様が私を見下ろしたので、私は首を傾げておいたが。

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「輝兄様、これは?」
「ああ、藤に渡してほしいと頼まれてな」
サンタからのクリスマスプレゼントだと思ってくれたらいい、と告げた輝兄様に渡された簪を見る。恐らく高いものだ。歩くたびにシャラリと飾りが揺れる。漆、蒔絵、そんなものもあしらわれている。恐らくは、久秀殿が贈ったものだろうとは想像がつく。女性でも男でもつけることができるシンプルさと気品を感じるそれはなるほど美しい。
「はは、そうしていると其の方もただの女子だな。どれ、偶には華やかな着物でも着飾ってみるか。それを贈ったものも喜んで反物を差し出すぞ」
「輝兄様……変な騒ぎになりますれば」
「しかし、藤よ。お前はこの先どうするつもりだ?今の時代、生まれに関する書類を正すのは少し労力を割く」
そう言った彼に私は困った顔をする。彼は少し眉間に皺を寄せる。
「身を投げるなど、もっての外よ。其の方がいなくなれば、二の家が一の家を食ってしまう。今回、たまたま藤の命があったから食わぬことになっただけだ」
「弟では役不足ですか?」
「あれが絆の朋であれば別よ。だが、あれはああじゃない。恐らくもう一人の義輝とてそう判断するだろう」
彼の言葉に私は目を伏せた。参った。弟は気弱だ。優しいとも言えるが、気が弱いのだ。恐らく、義兄様ならともかくこちらには萎縮し恐るだろう。
「生きてくれ、義藤。かつての友の魂を持ちながらも、吾と同じ運命を辿ったものよ。其の方が死ねば乱れるぞ」
「輝兄様は私を買い被りすぎでは」
「其の方も理解していようが、基本的に三つの家は仲が悪い。吾らのように関わり合うなど基本はあり得ぬ。勿体無い話ではあるがな」
「そもそも何故仲が悪いのです」
「重んじる物が違うと余は父に聞いた。宗家は今に教えられる歴史を、一の分家は志を、二の分家は力を重んじると言われ続けている」


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