2022/12/31

2022年度没ネタ整理4


「あ?もしかして将軍か?」
そうかけられた声に三人で振り返る。なんか知らないが、三家合同のパーティーとか祝賀会とかそういう物だ。仲が悪いならやらなければいいのに、とは思うが、個人間のつながりはあったりと大変なのだろう。振り返ったらいた人物は、雑賀孫市である。遠呂智の世界で会った彼はではある。彼は私を上から下まで見た。
「生きてたのか」
「雑賀孫市。開口一番にそれか?」
「あー、そうか、アンタは知らないよな。一の家での雑賀孫市はまだ俺の親父を指すんだよ」
「では、マゴと呼ぶか」
「やめてくれ、親しくすればアンタの従者共が怖い」
「冗談だ。それで?」
「アンタがあまりにも来ないから、アンタ死亡説出てるぐらいだぜ」
「あぁ、少し、体が弱くてな。あまり屋敷から出るなと言われていたんだ」
そう肩を竦める。彼は「アンタの体が弱いとか想像できねぇな」と告げる。私は肩をすくめた。知り合いか?と尋ねた二人の兄代わりに私は口を開く。
「兄様、こちらは次代の雑賀孫市です」
私の紹介に彼は軽く頭を下げた。
「一の家は男か」
「二の家の女子が珍しいだけではないかと思うぞ」
「兄……ってことは」
「別の家の同じ名を持つ方だ」
「……まー、アンタならやりかねないとは思ってたけどよ」
頭をかいた彼に私は首を傾げておく。彼は「いや……」と困ったように笑んだ。
「雑賀も仲が悪いのか?」
「俺としては宗家の野郎はともかく、二の家のお嬢さんとは仲良くしたいね」
「痛い目を見るぞ。女遊びもほどほどにしておいた方がいい」
「アンタも無自覚たらしもほどほどにしておけよ。ガチでそのうち好かれた奴に刺されるぞ」
アンタの周りは重い奴が多いんだよ。
否定が、できない、気がする。ははは、とにっこり笑っておく。
「否定がしかねる」
「アンタが死ぬとややこしいからできれば死んでほしくないんでね、護衛くらいならやってもいいぜ」
「ありがとう、貴殿を頼りにしている」
「だからそういうのをやめろと……」
「マゴー!……!あ、義輝殿なのじゃ!」
そう言ってかけてきたガラシャに苦笑いをする。うーん、こっそり紛れるつもりが多分バレたな。ハグをした彼女が怪我をしないように受け止めておく。
「義輝殿!義輝殿ではないか!聞かせよ!お主、何処にいたのじゃ」
「体を壊して屋敷にいたらしい」
「ほむ?もう体は良いのか?」
「あぁ、もう大丈夫だ。心配ありがとう、ガラシャ」
そう頭を撫でる。そうして周りを見渡した彼女は宗家の義輝殿と二の家の義輝殿じゃな!と笑った。私は彼女の頭を撫でておく。
「あまりそう大声で来ると、貴殿の父が飛んでくるぞ」
「ガラシャ!」
「ほら来た」
「申し訳ございません、公方様。ガラシャには良く言いつけます故」
「子供のすることだ、私は気にしていない」
はははと笑いながらそう告げる。ホッと息を吐いた彼は私をみる。
「公方様、お元気そうで何よりでございます。貴方が姿を現さないため、我々一同心配しておりました」
「体を壊してしまったのと父上が過保護を発揮してな、屋敷で養生していた。そろそろこちらにも顔を出す。信長公にも後で顔を出すと伝えておいてくれ」
「はい、必ずや……と言いたいところですが……」
そう困ったように笑った彼に私は首を傾げる。輝兄様が笑いながら、藤よあちらを見てみろとある一角を指差した。なるほど何か漂っている。闇の婆娑羅だろうか。
「……織田や豊臣、毛利あたりは仲が悪そうだと踏んでいましたが、本当に仲が悪いのか……」
まぁ年始の恒例よ、とは義兄様の言葉である。そんな恒例やめてほしい。
「あの辺りは二の家が一方的に嫌っている気もするが」
「ははっ、二の家は総じて血の気が多いからな。自分の立場に気に食わぬ者もいよう」
「二の家である兄様が言っていいのですか?」
「安心してくれ、予は今の立場を好んでいる」
兄様達は普段一体何を?と聞こうとも二人ともニコリと笑って返されるだけなのは知っているので私は黙る。そのうち騒ぎが大きくなってきたのでため息をついたが。とりあえずこちらにまで漂う闇の婆娑羅と同量の光の婆娑羅で相殺しておく。ついでに光の婆娑羅(ただしくは無双側の力に変化したかもしれないが)を小鳥の形にしてそちらに向かわせた。恐らく闇の婆娑羅での一般への被害は無くなるだろう。
「これで他には影響はないだろう」
まぁ、周りは当然これはなんだとなってるし、織田嫡男の笑い声聞こえましたけどね。
「久しぶりに見たな、藤のそれも。相変わらず美しい」
「私も久しぶりに扱いました。やはり偶には使わねば感覚がわからなくなりますね」
「藤よ、先程のは痛い手を打ってしまったな。一の家に其の方だと理解はされるだろうが、こちらも一部勘づくぞ」
その言葉に、しまった、と思う。久秀殿は恐らく一方的に私が生きていることをしっているが、竹千代や秀吉殿はそうじゃない。黙ってる孫市が口を開く。
「なんだ、二の家と知り合いがいたのか?」
「一部はな」
「なんと、そうでしたか」


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「貴方がいれば、もっとはやくに泰平になっていたのかもしれませんね」
ーー姉上がいれば、違った結果になった。
ーー兄上がいれば。
ーー私が。


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「義昭、大丈夫だ」
「兄上、無理じゃ、」
「大丈夫だ、予がお前たちを守る」
お前たちは死なない。
そう言って笑う。大丈夫なのだと彼の背を撫でる。ああ、可哀想に。私より弱くて、私より優しくて、私より気高い弟。いつかのように、私は弟をおいていき、弟が家を継ぎ、そうして世の中は廻るのだ。
「私がお前に嘘などついたことがあったか?」
「……ない」
そう首を左右に振ったかれに、だろう?と笑いかける。大丈夫だ、ともう一度言えば、兄上がいうのであれば、と、身を引いた。
「吾輩は悪党だから知っているが、貴殿は大嘘つきだ。今も昔も」
久秀の茶々に息を吐く。久秀、と咎めるように言っても、彼は続ける。
「我らの公方殿は嘘をつくのが上手い。その笑みのうちで何を考えているのやら。認めたらどうかね?公方殿は全てが嫌いだと。今も昔も」
そう言った久秀に、私は息を詰めた。
「まだ子供であった公方殿に全て押し付けた父君も、公方殿に縋る弟君も、独断で動き後に弾けない状態を作った従者も、くだらない理由で諍いを起こす人間も、宮内の序列争いも。全てが嫌い」
全てを認めたら楽になる。
そう言って私を見た彼に、こちらを見上げた弟に、周りの視線に、笑いが込み上げる。ふふっと息を漏らして、ケラケラと笑う。兄上?と困惑した弟に私は笑うだけだ。そうだ、嫌いだ。全部嫌いだ。嘘だ。でも、私の内心と肩書きが背負うものは違う話なのだ。
「これだから松永久秀という人は」

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