2022/12/31
2022年度没ネタ整理88
緩やかに目を開いた人物に、目覚めましたか、と言って見下ろす。長く眠ってらっしゃいました、と言って汗を拭えば彼は幻でも見ているかのように私をみた。でも、まだ彼が動くには早い。まだゆっくりお休みくださいませ、と安心させるように笑いかける。彼はまたゆっくり目を伏せた。
さてはて、今回も長沙くんに持たせている転移分身の札が使用されて本人達出ない人がきたわけであるが。この人が来たということは天刑宗は曹操殿に目をつけたのだと理解する。匿っている形になっている貂蝉殿と呂布殿は穏やかに過ごしてほしいと願ってしまうので、たまに兵の稽古をつけてもらうくらいでゆっくり過ごしてもらっている、のだが。呂布殿と貂蝉殿がこちらをみた。
「目が覚めたのか」
「ええ。やはり魏軍の方で間違いありません。恐らく天刑宗は魏軍に目をつけた。聡明な彼は用済みとして処分されかけたところを長沙が転移の札を使ってこちらに呼び寄せたのでしょう。今はまだ貴方達のことも、彼のことも天刑宗にはバレていません。が、バレてしまえば最後彼らは敵として襲い掛かってくることが考えられます」
「私達がいるばっかりに」
「いいえ、謝るのは私です。貴方達が何処かにいって、天刑宗に出会ってしまった方が大変なのです。貴方達に窮屈な思いをさせてしまい、申し訳ございません」
「いや、貂蝉の望む生活ができているから俺は構わない」
「ふふ、今日もお二人は仲が良いですね。私はそろそろ政務に戻ります。三国にバレないよう必要最低限には軍備を整えなければ」
「鍛錬ならつけてやる」
「それはありがたいですね。呂布殿が相手をし、貂蝉殿が手当てをしていただければ兵達の士気も高まりましょう」
ふふふ、と笑いながら告げる。では、と頭を下げて政務室に戻る。李姓を名乗るように頼み、にている赤の他人として彼彼女らは人気である。
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「郭嘉殿」
そう言って見下ろす。郭嘉さんと同じ名を持ち運命を辿る人だ。情を寄せてはいけないとは彼の言葉であるが、寄せるなという方が難しい。魘される彼の力になりたくて手を握る。
「……曹操様」
目を伏せる。長沙くんの動向を見るに、曹魏は天刑宗を扱っているつもりになっていく。恐らくは内部から徐々に食らっていっている状態だろう。このままではもうじき赤壁がおこる。同じように曹魏が大敗したとなれば、魏公を就任し荀ケ殿を弾くはずだ。
「……刃を向ける」
曹操様や荀ケ殿も違う人だ。理解できている。しかし、刃をむける決心など私はまだ持てそうにない。どうしよう、とは決して口には出さないが。
「李子様、これ以上は体に毒です。我々にお任せください」
そう言った医師に頷いて部屋を後にする。
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覚悟もないまま相対するものじゃないな、と陰姫のそばにいる曹操様をみた。危ない気がしたので転移の術で飛んできたが、赤壁の燃える船の中だ。昔は私が陰姫のように誰かに立ち塞がって、そのまま川にドボンだ。李子さん!と長沙くんや星辰ちゃんが声を上げ、劉備殿が李子殿と私に声をかけた。
「李子よ、久しいな」
「はい、お久しぶりでございます、曹操殿」
「どうだ、共に来ないか。お主がいれば郭嘉の跡を埋めれよう」
「申し訳ございません、私の智は彼より遥かに劣りますが故に」
「謙遜か。お主の才は儂が一番理解しているつもりだ。長沙よりもな。共にくるが良い」
「……貴方が天刑宗と手を切っていただけるので有ればお考え致します」
そう言って彼をまっすぐにみる。
「力は必要だと思わんか。乱世を治めるためにはな」
「確かに力は重要です。力がなければ攻めることも守ることも理を引くこともできません。しかし、大きな力には責任が伴い、その上民を納得させる大義が必要です。どうして貴方がこの国を統一しようと思ったのか。今一度お考えくださいませ」
そう言い切れば、陰姫が眉間に皺を寄せたが。彼はフッと笑ったが。
「やはり失くすには惜しいな、」
「あら、では蠱毒で蝕めばいいことでは?私がしてさしあげたすよ」
「楽しみにしている」
そう言って去った曹操様を見つめる。これは間違いなく魏公就任待ったなしである。
「曹操様のご指名じゃ仕方ないわね。長沙を殺せば貴方は降るかしら」
「もし長沙に手をかけるのであれば、私は彼を守りましょう。彼を殺せば私も命を断ちましょう。申し訳ございませんが、私が智勇はこの世界において弟弟子である長沙に預けているもの。天刑宗にはお力添えできませんね」
腕輪を触る。楊戩さんの水を操る力貸してほしい、と思ったら水が集まって彼の槍の細剣バージョンがきた。というか多分飛翔剣みたいなってんなこれ。うっわ、幻影剣でてるから李子さん本気だ、とは長沙の言葉であるが。それやめてほしい……。
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「長沙、貴方は城主なのですからあまり無茶をされないように。星辰に迷惑をかけてはいけません」
そう言ってデコピンをする。目を泳がせるな。めっ、と叱れば善処します、とだけ告げた。
「李子殿、お久しぶりです」
「お久しぶりでございます、劉備様。貴方の噂は流民からよくお伺いいたしますよ」
「貴方の噂もです。清河郡はまるで桃源郷のようだと」
「私はそんなものではありませんし、それをお褒めいただけるのであれば長沙殿をお褒めください。私は不在を預かる身なだけで、城主ではございません。全ては長沙様のご意向ですよ」
そう首を左右に振る。そういうことにしておきましょう、と告げた劉備さんに長沙ががっくしと肩を落とした。いやでも結構長沙がああしたいこうしたいということがあり、私が補助をしていることがある。孔明くんっぽい人と、この世界の士元がいる。あと周瑜さんと思われる人の視線が痛い。
「貴方が長沙殿の姉弟子であった李子殿ですか」
「はい。私は李子、字をナマエと申します。長沙殿が不在の間、清河郡の政務を担当しております」
そう名乗れば彼らは名を名乗ってくれる。うん、ありがたい。周瑜殿が小喬を送り届けてもらい、みたいなことを言ったので、こちらこそお世話になったのだと言っておいた。諸葛亮さんが私を見る。
「李子殿、この後曹魏はどう動くと思う?」
「……釘を刺したつもりではありましたが、あのご様子をみると聞いていただけないでしょう」
そう言って曹操殿が去った場所を見つめる。古典、と首を傾げたのは長沙だけでなく劉備殿たちも首を傾げていた。
「……どういうこと?」
「……人を納得させるには大義が必要です。例えば朝敵であった董卓を討つ時のように、共通の敵がいたりすると楽ですね。力を持っていても、董卓を討つためだといえば周りは納得いたしましょう」
噛み砕いて説明をする。長沙がふむふむと頷いた。
「長沙は一番今大義を掲げることができるのは誰だと思いますか?」
「えっ、劉備さんは民のためとか、孫権さんは江東のため……誰が大きいとかあんの?」
「そうですね、お二人とも立派な大志をお持ちです。しかし、それは漢王朝からすれば頼もしい大志ではありますが、大義ではありません」
「ん……??」
「大志と大義とは少し違います。この場合、天子様をお抱えする曹操殿が一番大義を掲げやすいのです。天子様がいらっしゃる以上、それが傀儡という扱いであっても天子様の勅命という形を取れますから民を誘導しやすい」
そう言えば、星辰と劉備殿たちがいくらか驚いたようにつげた。長沙が「でた」という。
「たまに出る李子さんの黒い部分」
「黒い部分というよひら……事実を告げたまでですが」
困った顔をする。諸葛亮さんが口を開いた。
「まぁ、あの様子ですと近いうちに曹操殿は魏公をお名乗になるでしょう。多くの兵が失われた今、諸外国に力を示す為に。……それをあなた方が好機だと思われるかいなかは知りませんが、あまり長沙を巻き込みすぎないでいただけると助かります。長沙の確認待ちの書類を増やしては長沙が可哀想ですから」
「げっ」
そう言って顔を顰めた彼に、貴方は城主なのですから役目は努めてください、と告げておく。私や郭嘉さんが捌ける分は捌いているのだ。
「さて、そろそろ私は戻ります。仕事は山積みですので」
「李子殿はどうやってこちらに?」
「長沙殿が危なくなった時のみ一時的に移動できるように仙術を組み込んだ札を持たせています。今回は初めての発動ですね」
仙術って便利だなぁと思うのだが、人間やめてる気がするので気をつけたいところである。ほら、と透け始めた手を見せる。諸葛亮さんが興味深そうに私をみたが、キラキラ光って私は清河郡に戻った。
「お戻りになられましたか、李子殿」
そこにいた郭嘉さんに私は困った顔をしてしまう。さて、彼には何と答えたものか。
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帰還する為に調べていた召喚の陣がある。長沙はともかく、左慈先生曰く私はこれに召喚されたのだろうということなので、調べれば何かわかると思って書き写してあったの、だが。光が走ったと思えば、ドサッという音と共によく知った顔が現れた。荀攸殿に元直が下敷きになっている。状況に頭がついていっていないため、わーー、と漏らせば、近くにいた郭嘉さんが少し眉間に皺を寄せた。
「これは……」
「召喚の陣です。私はこれできたのだろうと左慈先生がおっしゃるので、手の空いた時に調べてはいたのですが……」
「では、彼らは李子殿の同郷なのですか」
「そうですね、私の兄みたいな人と友人です」
そう説明していたら元直がゴメン!っと言って飛び上がった。荀攸殿がゆっくり起き上がり、ここは、と周りを見る。三国時代の服に戻っているが、これはどちらだろう。三国時代か、同じ時代の彼らか。二人がはた、と私をみる。
「李子殿!!」
「ナマエ!!無事だったのか!」
これ本当にどっちだ。赤壁後か、同じ時代からか。二人が駆け寄ってきて無事かどうかチェックをされる。いやどっちだ。元直が無事と理解して私をハグしたが。
「よかった、また俺は君を失うかと……!」
また、ということはこれは同じ時代からだろうか。はいはい、と背中を叩いてから少し離させる。荀攸殿がホッとした顔で口を開いた。
「李子殿、よかった、ご無事でしたか」
「無事です。念のためですが、スマホは何の略ですか?」
「えっ、スマートフォン……?」
「……あぁ、なるほど、俺たちがややこしい姿に戻っていますね」
そう言った荀攸殿に元直が服をみる。え、なんで、はわからないが恐らくこの時代に合わせた形になっているのだろう。
「とりあえず私は無事です。この世界の左慈殿に拾われ……なんだかんだと今は清河郡の城主補佐です」
「左慈殿、ということは」
「後漢末期にようこそ」
若干遠い目をする。二人が目をパチパチと瞬いた。様子を見ていた郭嘉殿が首を傾げる。
「李子殿はやはり仙界の方だったのですか」
「それを話せばややこしくなってしまいます……しかし、郭嘉殿、貴方には話した方が良いでしょう」
そう話せば二人が固まった。わかる。彼がどうも郭嘉殿と同じには考えられないのだ。
「私はこの世界とよく似た場所で本来は生きる人間です。仙界と言えばわかりやすいですが、争乱もある場所なので決して平和ではありません。貴方達と同じ名を持つ誰かがいて、そこで暮らしていたはずなのです」
「私達と同じ名を持つ誰か……」
郭嘉さんはそう言って二人を見る。
「郭嘉殿にわかりやすくいうのであれば、青い服を着た方は私と同郷の荀攸殿です」
「……なるほど、貴方は嘘をおっしゃらない方です。その言葉は充分信に足りましょう。では、もしかして、貴方は貴方のいた場所では魏に属して?」
「はい。この世界ではそうはなりませんでしたが」
「その言葉に納得致しました。だから貴方は魏を他国よりほんの少し気にかけ、曹操様の身を案じていらっしゃるのですね。それに考え方が我らに少し似ていましたから」
「それは気をつけます。だから諸葛亮殿に魏の動向を尋ねられたのでしょう」
そう少し考えていれば、もう一人の方は?と尋ねられる。
「私の親友の徐庶です。字が元直ですので、元直と」
「……俺たちも理解しました。貴方は異界の郭嘉殿ということですね。ややこしいですから、俺のことは公達とでもお呼びください」
「はい、そうさせていただきましょう」
「……ええと、郭嘉殿がいるということは清河郡は魏の?」
元直が首を傾げる。清河郡は独立勢力ですね、とは郭嘉殿の談だ。え?みたいな顔をした元直に、しかし、と荀攸殿が口を開く。
「我々の世界でそうであったように、郭嘉殿、貴方は魏の要では」
「私は世間では死んだことになっていますから」
「……えっ?」
「今赤壁が終わったところ、なのですが。私たちの世界にはいなかった、天刑宗という妖術を使う集団がいまして。その集団が暗躍されている為、結果的に同じ道筋を辿ってはいますが細かな現状は違います」
「曹操様が天刑宗を取り入れ……天刑宗に毒を盛られて私は死ぬところでした。しかし、この清河郡の城主である長沙殿や李子殿に助けていただいたのです」
「ちなみに、魏では郭嘉殿を殺したのは長沙殿ではないかという話になっています」
「……それを理由に攻め込まれてないのかい?」
「今のところは。天刑宗を弾くものを張っています。曹魏の力の多くは今は天刑宗の力ですから、近づけないはずです」
そう困った顔をして説明をすれば、元直が困った顔をした。荀攸殿も何かを思案する。
「……貴方を連れ戻そうと思っていましたが、そのような状況で投げ出すのは民にも郭嘉殿、長沙殿という方にもよくありませんね」
「そうだね」
頷いた二人にありがとうございます、と笑う。はっきり言って猫の手も借りたかったのでありがたいのだ。しかし、だ。
「そもそも帰還の仕方は私はわからないんですが、お二人はわかって?」
「いえ、帰還の方法はわかりませんが、我々も仙の方々の力を借り、スマホが通じるようになっています」
その言葉に目を瞬く。マジか。便利すぎないか。
「本来ならば我々の世界の郭嘉殿が来ることができればよかったのですが……」
「率先して来ないのを見るとやることがあるのでしょう?気にしてません。とりあえずお二人の部屋などを手配しなければいけませんね。私はとりあえず部屋の手配やお二人を招く準備を致します。申し訳ございませんが、郭嘉殿、お二人のご案内や制度などの説明をお願いしても?」
「いいのですか?久しぶりにお会いしたのであれば、逆の方が」
「私は今荊州あたりにいるであろう長沙に伺いを立てなければいけませんから」
仙術を使って文のやり取りをせねばならない。彼は納得したらしい。
「あぁ、それは私はできませんね。かしこまりました、私がご案内いたします」
「では、荀攸殿、元直、後でまた会いましょう」
そう告げてからそのまま女官に声をかける。まぁ!そんないきなり!と怒られるかと思えば怒られなかった。それどころか嬉しそうですねと言われてしまった。
「ふふ、そんなに表情にでていましたか?」
そうクスクス笑えばめちゃくちゃびっくりされたが。
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「北里殿、北進殿」
「李嘉殿、客人か?」
「いえ、李子殿の同郷の方がお越しになられ、士官していただけることになりました」
「李攸殿、李庶殿、こちらは先程説明した医術院の医師統括にいらっしゃる北里殿と、薬師統括にいらっしゃる北進殿です」
「多分李子殿と同郷の北里だ。こっちも多分同郷の北進」
「同郷……?」
「元々左慈師匠のところにいたのですが、我々が出ている間に襲撃され、李子殿と長沙に助けらてそのままです」
「ふむ、あなた方は川で溺れた記憶は?」
「ある!!!しかも外国のな!!!」
「人が落とされたのをみて助けに入ったら一緒にこの世界にきたんだよ」
「ああ、はい、理解いたしました。恐らく同郷でしょう。そして恐らく落とされていたのは李子殿です。助けようとしていただきありがとうございます。変わって礼を申し上げます」
「は?」
「えっ」
「ナマエは少し元の場所で事件にまきこまれていて……」
「李子殿になり変われるとおもっている方の仕業なのですが、今回ばかりは我々は後手にまわってしまい……」
「と、取り返しのつかないことにならなくてよかったですね」
「全くです。そもそも夫婦間で喧嘩をしなければこんなことになっていません」
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