2022/12/31

2022年度没ネタ整理156


「李子さんが負けたら休みだかんな!」
と告げた寵沙にどうしたものかと思う。連れてこられたのは修練場だ。周りは止めたいようだが、向こうは全く引く気がない。そう言えば、私自身最近武器を振るっていない。太らないようには気をつけていたが、体力はおそらく格段に落ちている。これはまさに怠けというやつではなかろうか。元いた場所に戻ったらやばいことなど目に見えている。なら、ここで一応多少慣れていた方がいいだろう。
「郭嘉殿、髪紐を持っておられますか?」
「髪紐、ですか?私の予備はありますが……」
「お借りしても?」
そう言えば彼は不思議そうに髪結紐を貸してくれた。その場で簡易に結い上げて、近くにいた兵に槍の柄だけのものを借りる。羽織が邪魔なために、羽織は近くにいた荀ケ殿に預かってもらうとする。
「李子殿、ご無理は……」
「そうです」
「いえ、体力が落ちたと最近思い始めたところです。今一度、自分を戒めねばいけません。いい機会です」
そう言ってくるりと槍を回す。
「寵沙、貴方にとって私では相手に不足がありましょうが、お相手をいたしましょう。李ナマエ、参ります」
そう言えば、銀塀ちゃんが元気よくはじめ!と告げる。まっすぐ飛んできた寵沙の勢いを槍でうけ流す。うーむ、防戦一方はよろしくない。一度離れた距離に寵沙に槍を向ける、と見せかけて地面にさし宙返りをしてくるりと寵沙の後ろに回り込む。反応した寵沙はさすがだろう。攻勢に転じるとする。
「う、げ、げ、やばい、やばい、やばい!」
「足元がお留守ですよ」
そう言って足を掬う。うわっとバランスを崩した彼だが、器用に体勢を整えて刃をこちらにむけた。槍で受け止める。
「李子さーーん!?なんで腕鈍ってないんだよ!!アンタ最近打ち合いもなんもしてないだろ!!」
「鈍ってますよ、昔ならそろそろ勝てていたはずなのです、が!」
そう言って力を横にずらす。いきなりの重心移動にうわっとバランスを崩した寵沙の隙を見逃さず、懐に間髪入れずに槍を入れる。まぁ転がってよけられてまた体勢を整えた。
「むぅ……やはり朝の鍛錬くらいはするべきでしょうか……」
そう言って槍を見つめる。この子冷気に耐えられるかな。まぁ雷纏って飛び上がってきた寵沙に冷気を纏うが。
「桜花!」
「いまが好機とみます」
「雷爆斬!」
そう振り翳した雷の剣に、冷気で霧を作る。氷で人ではない何かを作り上げれば、何かに馬乗りになった寵沙が口を開く。
「よし俺の勝ち!」
「いいえ、貴方の負けです」
そう言って霧を晴らす。後ろから槍を当てれば、は?と困惑した声が聞こえた。
「は?は!?なにそれ!!」
「なにもそれもありません」
「李子さん昔は上から氷の雨ふらしたじゃん!」
「貴方が覚えていらっしゃると思ったので」
「はーー!!」
そう言って剣を掴んで立ち上がった寵沙は口を開く。うーむ、槍が傷んでしまった。
「今のは無効!こんなの聞いてない!」
「貴方が私の手のうちを読めなかった、それだけのことです。あと飛び跳ねる癖をどうにかなさい。隙が多くなります」
「ぐぬぬ、姉弟子モードが入ったな……」
「どうぞお好きにおしゃってください。貴方の仕事は机の上です。遊んでばかりいずに仕事も多少するように。私は執務に戻ります」
そう言って槍を兵に返す。
「申し訳ございません。槍を痛めさせてしまいました。新しいものを急ぎ手配いたしましょう」
「い、いえ、滅相もありません!家宝にします」
「ふふ、ご冗談を」
そう言いつつ郭嘉殿のところによる。髪結紐を解いて返す。
「ありがとうございました、郭嘉殿。荀ケ殿も、ありがとうございました」
「いえ、貴方の珍しい面を窺えてよかった。普段から髪を結い上げたらいかがでしょうか?」
「……ここだけの話、髪を結い上げると、昔を思い出して口うるさくなる可能性があるので……」
向こうのお仕事モードが入るからなぁ、と苦笑いする。荀攸殿が「貴方はもう少し口うるさくても構わないのでは?」と言ってくれたが。
「それにしても、もしや李子殿は軍家の生まれですか?」
「あぁ、いえ、勘違いされることが昔から多いのですが私はそのように家柄があるわけではありません」
そう言えば彼らは不思議に思ったのだろう。まぁ普通軍人に関わる家じゃないと戦いかたは教わらない。女ならば特に。守られるのが普通だからだ。私はとりあえず苦笑いする。まぁ将達がやってきて今度は将達と話をすることになるのだが。


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夢をみる。郭嘉さんが死ぬ時の夢をみる。私ならよかった。代わりに私がいなくなればきっと。きっとあの戦は。
「李子殿」
そう呼びかけられて目を覚ます。そこにいたのはこの世界の諸葛亮殿である。うなされておりましたよ、とつげた彼の周りにはひょっこりと将がいるあたり、だれかがよんだのかもしれないが。
「随分とうなされておりましたよ」
「……あまりいい夢ではありませんでしたから」
そう言って息を吐く。日はまだ高い。仕事をしないとな、と思っていれば、諸葛亮さんが止めたが。
「お疲れだから、悪い夢を見られるのです。貴方は休むべきです」
彼の言葉に困った顔をしてしまう。気を紛らわせる為に仕事をしたいのが本音なのだが。
「……どうしても仕事をしたいというなれば、果果の話し相手になってくださると助かります」
諸葛亮殿の後ろからは諸葛果ちゃん(と星辰ちゃん達)が顔を覗かせる。苦笑いして、わかりました、と頷いておいたが。

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「そもそも、李子様は遠いところからいらっしゃったとか。いつかそちらに戻られるのですか?」
そう尋ねた諸葛果ちゃんに、そうですね、と目を伏せる。えっ、と声を出したのは誰だ。お茶を見つめながら口を開く。
「こちらにいらっしゃる方々も大切な方ですが、故郷にいる方々も私にとっては大切な方なのです」
一度、死なせてしまった。あの混ざり合う世界で、私はあの人を死なせまいと思っていたのに。私がこちらにきてしまった。
「そもそも、李子さんって左慈さんのところにいたのよね?故郷から出て、仙人になりたかったの?」
「いいえ、そういうわけではございません。私は左慈様に拾われましたので」
「拾われた?」
「はい、兄弟子や左慈様曰く空から降ってきたのだとか」
私の言葉にそこにいた人達は目を瞬いた。
「空から……?」
「李子おねーさんって空を飛べるの?」
「いいえ、私の記憶では川から落ちたのですが……」
「川から落ちて、空から降って……?」
見事に混乱しているなぁ、と周りを見る。ぎんぺーちゃんは李子おねーさんって意外とドジ?と尋ねたが。否定はできかねる。近くで元姫殿とお茶を飲んでいた尚香殿が口を開く。
「なんで川から落ちたのよ」
「川上での戦で、被害を最低限に抑えつつ支えていた方をお守りして殿についたのですが、炎で退路が立たれてしまい、川に落ちたというか落とされたというか……」
「なぜ貴方が殿に。貴方は女性でしょう?」
荀ケ殿はそう言って私を見た。
「それを話せば長くなりますが、男装をしていたので」
さらっとそう返せば、ええっ!?と叫ばれたが。なんでだ。
「思い切ったことをするのね、思いついたことがなかったわ」
「いいえ、男装をしては貴方が考えていることの根本的な解決には至りませんよ」
「なぜ男装を?」
「私が幼い頃に盗賊に襲われたところを、ある御曹司の方に助けていただいたことがありまして。その方がそのうち兵を率いられることはわかっていたので。そこからはがむしゃらですよ。その当時の私は孤児で、なんの学も武力も持たなかった。運良く塾を開いている方に拾われたので、そこで性別を偽り学び始め、武勇に優れた友人ができたのでその友人に武勇を学び……その一方で優秀な方が多い場所に出向き年上の交友範囲を広げ……その優秀な方の推挙で使えることが許されました」
「男の人として?」
「はい。女であれば、恐らくお使えはできませんから。まぁ私の世界も戦乱の世でしたので、兄のような方々と戦に出向いたり国内をみたり色々していましたが、私の上司にあたる方が体調を崩され……」
そう、郭嘉さんが。郭嘉さんが、倒れて。荀ケ殿に頼まれて、彼の世話をして。そうして。そうして、赤壁の戦いで。
「あの方がいれば、きっとああはならなかった」
「……え?」
「私に代わりができれば、どれほど良かったのでしょうか」
そう言って目を伏せる。これお茶じゃなくてお酒では。
「私が代わりに、倒れていれば……」
病に罹っているのが彼でなく私であれば。
「李子おねーさん?」
「……お気にせず。どうにもならないことを考えていただけです。すこし、酔いが回りました」
お酒をいれたでしょう、といえばぎくりと彼女らは方を跳ねさせたが。なんとわかりやすい。ふふ、と笑って空を仰ぎ見る。
「……あの方々がご無事であればいいのですが」

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夢をみる。懐かしい夢をみる。そこにいた元気なあの人に、私が泣き出せば彼は私の涙を拭った。どうしたのかな、だなんて告げる彼に、私は彼の服を握る。おや、珍しい。ナマエがあまえてくるなんて、と笑って見せた彼に私は小さく嗚咽を漏らすのだ。


李子さんが目を覚まさない、とつげた女官に周りはピタリと動きを止めた。というかオレも動きを止める。北里さんやらにみてもらったが、西洋医学的には眠っているだけ、だそうだ。水鏡先生がやってきて、ああこれはと少し眉間に皺を寄せる。
「何か強い道術にかかっているね」
「道術?」
「彼女には道術を破る術がある。彼女がそちらを選んでしまっているのかもしれない」
その言葉に思いつく、もしや俺のように諸葛果と鏡の中に落ちている可能性はあった。
「星辰、諸葛果つれてきて!」
「え!なんで!」
「いいからはやく!」
そう言えば星辰は首を傾げながら諸葛果を探しに向かった。しばらくすると、星辰が起きている諸葛果と諸葛亮を連れてくる。鏡に乗る、のではなく、大事そうに抱えてきた彼女は、俺をみて口を開いた。
「主さん!」
「やっぱりソレだよなぁ」
「李子様、道術で私だけを返して」
めぇめぇと泣き出した諸葛果に、ああー、やっぱりかぁと思う。あの人心労溜まってたっぽいし、執着を映し出したり望郷をみせたりとできる鏡はやばい気しかしない。郭嘉さんと諸葛亮が諸葛果をみる。
「どういうことですか?」
「李子さんを夢の中で望みを映す鏡の世界に招いてしまったんです。そしたら、あの人、私だけをこちらに返して……」
「それで、李子殿は目を覚まさなくなった、と」
「案外俗っぽいんですね」
サラッとそう告げた法正さんに、郭嘉さんが眉間に皺を寄せたが。
「李子さんは俺と違ってずっと元いた場所に戻りたい人だよ。でも、鏡ってことは仮初なんだろ?」
「そうなりますね」
諸葛亮さんがそう頷いた。
「目を覚まさせないと。鏡の中で李子さんの話してくる」
そう言えば、待って、私も行く!と星辰達が声を上げる。
「いや、お前達来るとややこしい……」
「でも、寵沙に何かあったら!」
それもそう、なのだが。俺はうーーんともう一度考える。李子さんがいるのはどこか、が問題なのだ。
「寵沙殿は李子殿がどのような場所にいるかわかってるんですか?」
「多分、二箇所のうちどっちかだとは思うんだよな」
「二箇所?」
「許昌か赤壁」
「おや、何故そちらに……」
「でも、この世界のじゃない」
俺の言葉に対して首をかしげる人、不思議そうにする人、考えこむ人色々だ。水鏡先生は口を開く。
「……なるほど、彼女は世界を渡ってきた人でしたか」
「世界を渡った?」
「わかりやすく言えば、桜蘭の都のようなものです。世界は無数にある。同じような世界もあれば、全く違う世界もある。彼女は恐らく何かが原因で彼女だけが転移した」
「むむ……むずかしいよ……」
「ぎんぺーちゃんにわかりやすく言えば、李子さんは『もしも天刑宗がいなかったらなぁ』っていう世界から来た人」
そう言えばなんとなく理解したのだろう。水鏡先生が俺をみた。
「寵沙は知っているのだね」
「まぁ、李子さんに聞いたりした。李子さんの世界には天刑宗がいない、わりに俺たちと同じ名前の人物達が似たように生きている世界、なんだと思う。李子さんはそこで魏にいたっぽい。しかも多分結構高い立ち位置」
「ーー彼女は川に落ちたのだとこの間口にしていましたね。それが原因で左慈殿に拾われたのだと。川の上の戦、撤退戦、火の周りがはやいということは火計」
「赤壁の戦いですか」
そう尋ねた劉備さんに頷く。
「俺も詳しくは聞いてないけど、赤壁だと思う」
「しかし、何故彼女は私たちにも力を?」
「李子さんは別に勢力を恨んでないよ。あの人が恨むとしたら自分の非力さと時代が悪いって案外あっけらかんとしてるから」
さてはて、鏡の中はどちらだろうか。許昌だとすれば、幻影だろうが無双軍師陣相手に立ち回る必要がある。ややこしいし俺一人で立ち回ろうかと思ったが、100パー部が悪い。処刑されて終わる気がする。
とりあえず、様子見て誰かに助けを求められたらいいなと思うのではあるが。

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これは夢だとわかっている。これは夢で、それにしがみつく私はみっともないのもわかっている。ハラハラと涙を流す。郭嘉さんが私の髪をすいた。
「わかっています。これは都合の良い夢なのだと。願望を映した夢なのだと。なんと、惨めなのでしょう」
きっと私は惨めな女だ。過去に縋りつく、惨めな女だ。郭嘉さんは一瞬だけ動きを止めたが、すぐに私の涙を拭うと、口を開く。
「そう、これは確かに都合のいい夢だね」
手が頬を撫でる。郭嘉さんが泣きそうな顔をしている。どうしてそんな顔をしているのかわからない。だって、これは私の夢だ。夢であるならば笑ってくれれば良いのに。
「私にとって、都合の良い夢だ」
彼はそう言って私を抱き寄せた。
郭嘉さんにとって、都合の……?と考える。これ、は、私にとって都合がいい夢じゃないのだろうか。そんなことを考えていれば、耳元で囁かれる。
「おや、困った子だ。考えごとをするなんて」
「郭嘉さん、これは貴方の夢なのですか?」
そう問いかければ、彼は動きをとめ同じように考えているようだった。
「……これは、ナマエの夢だと?」
「はい、これは私の夢です」
「おかしいな。これは私の夢のはず……お互いに意識があるということでいいのかな?」
と、いうことらしい。私が頷けば、彼は笑顔でムニっと私の頬を引っ張った。
「いひゃいてす!」
「川に落ちて帰ってこない悪い子は誰かな?」
「うぅっ、私です」
しょんぼりしながら言えば、彼は手を離したが。この手のひらの返しようである。
「ナマエ、今何処に?」
「わかりません、違う世界に迷い込みました」
「詳しく聞かせて」
彼はそう言って私を膝に乗せると杯に酒を注ぐ。う、うぐう。膝に乗せなくともよくないか?


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「貴方を殺してしまえば、清河は荒れるでしょうね。貴方がいなくなれば、あの世界はまた混沌に陥れられる」
そう告げた陰姫に私はいいえと首を左右にふる。巻物をいつでも取り出せるようにする。もちろん、気づかれないように。
「寵沙がいる限り、それはあり得ません。あの世界は寵沙がいたから落ち着いたというだけのこと。私はすこし力添えをしただけにすぎません。私だけなら、きっと見て見ぬ振りをしたこともたくさんありましょう」
彼女にそう告げる。彼女は顔を歪ませた。
「あの世界の誰もが平穏を願っている、形は違えど平和を願っている、だから私はその願いを調整し橋渡しをしたまでのこと。他の国にしたことはたったそれだけ。あとは寵沙のまっすぐな行動が周りに信を持たせ、周りに影響を与えた。今やあの子はもう独り立ちできます。だから、私を殺しても無意味なことです。まぁ、私がはいそうですかと死ぬことはしませんが」
そう言えば彼女は眉間の皺をよせる。まぁ、すぐに後ろから現れた張郃さんに彼女は慌てて避けたが。
「李子さん!無事っスか!!ていうか!もーー、なんであんなこと言うんスか!!他はどうか知らないッスよ!俺は李子サンに寵沙を頼まれてるから協力するだけッスよ!李子サンが死んだら俺……」
ううーん、ぽこぽこ怒りながら縄解いてる張郃殿は相変わらずである。とりあえず前から来た敵は足が自由なので蹴り入れたが。それと同時に体が自由になった。援軍が到着したらしい。みるみると戦線が回復していく。飛んできた寵沙がぽこぽこ起こっているが。
「李子サーン!ばかーー!!ばかやろーー!!あんなこというなーー!!ばかーー!!」
うーーん、語彙力がない。やはり怒ると語彙力がない。まぁ寵沙を庇ってバッサリやられるのだが。

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「郭嘉殿」
と言って、ぴくりと俺たち側の郭嘉さんが反応したが、呼ばれているのは無双側である。無双側の荀攸殿や荀ケ殿、あとは諸葛亮殿がいたりする。
「聞いていません。ナマエが女性だとは」
そう、問題はそこである。俺を庇ってバッサリ切られたナマエさんを手当てする時着てるものはぐじゃん?女性だとバレたんだよな。
「おや、奇遇だね。私も推測はしていたけれど、ナマエの口から性別を聞いてはいないんだ」

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