2022/12/31

2022年度没ネタ整理157

・女だとバレた世界線

「郭嘉殿、聞いていません」
そう言った荀家に、郭嘉は肩をすくめる。郭嘉も直に聞いた訳ではない。李子ーー李ナマエという人物は恐らく女であるというのは推測でしかないし、かつて交友があった人物ーー戯志才が生きていても恐らくはナマエが女性であるという同じような推測を持っているだけで、その真相は知らないだろう。本人といえば、怪我からの熱で未だ意識はない。自らの殿ーー曹操を騙そうとしていたのか、と言えば恐らくそうではない。が、その疑念がどうしても付きまとうのだ。
「私もあくまで推測の域だよ。本人の口から聞いたことはないんだ。だから一応、ね?」
「おっと郭嘉殿でさえもそうなれば……徐庶殿はどうだ?」
そう賈詡が徐庶に尋ねれば、徐庶は首を左右に振った。
「俺たちも男だと思っていたから……」
思えば、徐庶は節々に納得できることはある。しかし、当たり前に男だと思っていたのだ。
「ナマエ殿に限って、殿を騙そうとしていた感じはないけどなぁ」
満寵があっけらかんとそう告げる。本人が目を覚ましたら、と言う話にはなりはしたが、前代未聞には変わらなかった。

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バレてしまった。もうここにはいられないかもしれない。そう思ってメソメソする。怪我明けだから仕方がないが、精神が不安定なところに追い討ちである。郭嘉殿が頭を撫でるが、曹操様の前で失態である。
「李子よ、泣いてばかりでは何もかわらん」
「……貴方様は覚えてらっしゃらないかもしれませんが」
メソメソしながらそう切り出せば、彼は不思議そうな顔をして私を見下ろした。
「私が幼児の時盗賊に襲われていたところを、狩りにこられていた貴方様と夏侯惇様に助けられたのです。私が名を尋ねると、貴方様は名を名乗られませんでしたが……身なりから身分が高い方だとわかり、夏侯惇様との会話から名を覚えました」
二人は思い当たりがあったのだろう。あの時の……?と首を傾げた二人に私は刻々頷いた。
「孤児になった私が恩をお返しするためにはどうしたらいいか考えていた時、水鏡先生に拾われ、学問に励めばいつかお役に立てるのではと思っていました。水鏡先生に尋ねれば、貴方の身分はわかりましたから。しかし、女だといえば学問を教えてもらうことも、仕官することもできません。私はそこで、男だと偽ることにしたのです。そうすれば、曹操様に仕えて恩をお返しできると」
ぐすぐすしながらそう言う。袖で涙を拭い、まっすぐに彼らを見る。
「ですが、結果は貴方様達を騙していたのです。出ていけというのならば私は出ていきましょう。死を命じられるのならば命を捧げましょう。私ができるのはそれだけです」
まぁ、曹操殿はフッと笑ったが。そうか、と、笑いながら告げた彼は、お主は忠義者よな、と言って肩を叩いた。
「李子よ、お主の才を儂が手放すと思うか?」
「しかし……」
「より一層励むが良い、李子よ。性別などは関係なく、知にたけたお主だからこそ、郭嘉の補佐を任せておる」
その言葉に涙腺が崩壊した。はげみます、とほろほろ泣いていれば、郭嘉殿が良かったねと頭を撫でたが。

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荀ケ殿が過保護だ。いつもなら許されたことが許されないこの感じは父親みたいな感じだろうか。あとは官僚からは婚姻がどうのという話は郭嘉さんが笑顔で止めてくれているが。
「まぁ、ナマエの地位はかなり高いからな。地位を狙う奴らもいるだろう」
「私の旦那になったからといって特になることはないと思うんですが」
「ナマエを娶ることで、自分がその地位につけると思っているとは思うけどね」
「そのうち私が皆さんを唆したことになりそうです」
そう言いつつ、竹簡を運ぶ。賈詡殿はケラケラと笑って見せたが。そのまま賈詡殿と話しながら歩いていれば、官僚に呼び止められる。あまりよく知らない人だ。噂をすれば、というやつである。
「李子殿、例の話は考えてもらえただろうか」
「お断りしますとお伝えしたはずでは?」
「なに、李子殿にとっても悪くない話だと思うが。後ろ盾もできるし、何より家に貢献できる」
「私は家ではなく曹魏に貢献したいのだとも告げたはずです」
「女は家に尽くすものだ。それこそ女の幸せだろう」
すーぐこれである。
「一般的な女性はそうかもしれませんね。しかし、私は曹魏に尽くすのが幸せなのです」
「あっはっはぁ、ナマエらしい。さ、ナマエ、早く行かないと郭嘉殿が怒りそうだ。立ち話はやめてそろそろ行くか」
「はい」
そう言ってそのままその場を後にする。賈詡殿、助かりました、と言えば彼は笑ったが。流石にそれが数件続けば、賈詡殿がうんざりしていたが。
「随分と遅かったね」
「途中に誰かさんと婚姻したい、させたい男につかまってね。いやぁ、その数が多いのなんの」
「最近は移動するたびにああです。何度お断りしても話を聞いていただけません」
苦い顔をしていれば、郭嘉さんが「またか」となんとも言えない顔をしたのだが。
「困ったものだね。まぁ、もとからナマエはその手の人物から人気ではあったけれど……」
「なんの冗談ですか」
ぽこぽこと郭嘉さんを叩く。郭嘉さんはニコリと笑うだけである。
「ナマエ、どうしても断るのが煩わしい?」
「はい。私の意見を聞いてくださいません」
「なら、形だけでも婚姻を結ぶのはどうだろう?」
「知らない方とですか?」
「いいや、私と」
そう言った郭嘉さんにまた冗談を、と告げる。いや、でもそれはありだな?郭嘉さんまでとは言わないが、私のことを理解してくれて尚且つ自由に動くのを許可してくれる人なら断然ありだ。
「冗談ではないよ。ナマエにとっては良い話だと思うのだけれど。私ならば別に家に居ろとも言わないから仕事をしていてもいい、それどころか私たちの意思の疎通は楽になる。煩わしい周りからの婚姻の話もなくなる」
「……」
全然アリなんだよなぁ、と考える。しかしこの人は確か歴史上は妻子持ちだったはずなのだ。
「郭嘉殿はそう言えば遊ばれている割には婚姻の話は聞きません。というか、郭嘉殿にも何か良いことがあるのですか?」
「それはもちろん。なければ提案していないよ」
ならお願いしても良いのだろうか、と考える。


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