2018/04/24

とーけんとぶんご


なんやかんや刀になった私だけども、私を持っていた一族が一族だったので変な力つかえるし、もっと言えば刀であるはずなのに審神者やらされたりマスターやらされたりしていたのだから、本当、なんていうか。
目の前にいる友人はそんなことはなく、ただ司書としているらしい。羨ましい。私のもうほとんど記憶がない過去において、もっとも推した人はこの図書館にいるキャラだったし、私も司書したい。あわよくば平和に暮らしたかった。
そう図書館の机に顔を乗せてゴロゴロする。すまして入れば美青年なんだけど、と友人は言うが、こちとら神様なのだし美青年は仕方ない。長船の打刀を舐めるなよ。他を見てみろ。何処のホストクラブジャワレェェってなるじゃん。というか、ゴロゴロしてても美青年だろ、と思っていたら、通りすがりの啄木が「お前相変わらず顔だけはいいな」と迷台詞を告げた。その言葉に姿勢を正し、頬杖をつきなおした。
「私も司書したい」
「私の手伝いならいいよ。薄給だけど」
「まじで。お金は有り余ってるから特に」
「まじかよ、苗字、金かしてくれ」
「ヤダよ一回貸したら集られ続けるのが目に見えてる」

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苗字ナマエという人物は見かけは美青年である。だから、ナマエが私の友人として現れた時、周りは騒然とした。女性職員や利用者は文豪というイケメンがいるにもかかわらず、ナマエを見てきゃあきゃあと騒ぎ、文豪は私と彼(なのか彼女なのか不明)の関係を推測したりしていた、のだが、私は知っている。コイツの推しは佐藤先生もとい、佐藤春夫であることを。たまにだらけるがきちんとしめるところはしめる彼は文豪とすぐに打ち解けた。コミュ力、と言えば、遠い目でつけるしかなかったんだよ、と言われたけれど。
「君は本当に佐藤くんが好きだね」
そう行った芥川先生に、ナマエは目を瞬いた。その発言を聞いた佐藤先生は吹き出したけれども。
「何を当たり前のことを」
「あのな、苗字、ややこしいことをいうな、」
「いや、事実、佐藤さん好きだし」
「は?」
「門弟に入りたいぐらい」
口元に綺麗な笑みを浮かべたナマエに、佐藤先生が顔を覆った。
「ここにいる人はみんな好きだよ、まぁ、一般職員になるとチラホラ苦手な人は出てくるのだけど」
「意外だなぁ、博愛主義者かと思っていたけれど」
「博愛ではないさ。長く生きてると、許容範囲が広がるんだと思う」
「長くっていっても、二十年も満たないぐらいじゃないのかい?」
そう困ったように告げた芥川先生と佐藤先生に、ナマエは頬をかいた。
「まぁ、今までの人生で色々な人と会って色々経験したんですよ。だから許容範囲を広げるしかなかったというか」
「何したの?」
私の問いにナマエは口元に綺麗な笑みを浮かべる。
「色々」
その一言に周りがどんな想像をしたのかはご想像におまかせしよう。

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なんだか嫌な気配がするなぁと思いながら空を見上げる。曇り空はゴロゴロと音を立てていた。光忠さんが今日は部屋干しと嘆いていたし、小豆さんと謙信が私に傘を渡したことを考えるに、雨は降るのだろうけど。ナマエくん?と首を傾げた職員さんに、なんでもないですと笑って前を向いた。
長く長く生きてると色々な経験をするし、特にここ数十年の密度は濃い。いきなり顕著させられたと思ったら本丸持たされて審神者するしかなくなるし、異世界ぶっ飛んだと思ったら貴銃士とかいうのを下ろして率いて戦わなきゃいけなくなるしエクセトラ。司書の手伝いは名乗り出たからいいけど。だから、許容範囲は広い、のだけど。
「こういう展開はちょっと」
そう苦笑いして前を見る。衝動的な告白とか脅迫的な告白はノーサンキューである。貴方を殺して私も死ぬ、とかいつの時代のやりとりだ、と思う。さて、私に与えられた選択肢はいくつかある。強制武装解除ノックアウト、とか、刺されてあげる、とか。前に庇い出た佐藤さんに、これだからこの人は好き!となるが、佐藤さんが怪我したら大変である。やれやれと息を吐いて「大丈夫ですよ」と佐藤さんと友人をみる。
「経験は私の方が上なんで」
そう言って彼女をみる。突っ込んできた彼女の手元を掴み、そのまま壁に押し付ける。
「こんなことしてもダメだし、こんなことしても私は貴方のモノにならないよ」
いくらか低い声でそう言えば彼女は目を見開いた。ナイフを没収する。なるほど、よく量販店で売られているそれだ。バタバタと職員がやってきて彼女は抑えられ、ナイフは没収された。私は危ないだろう!といろんな文豪に説教を食らった。解せぬ。

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そもそも、私は刀なんだよなぁ、と思う。人ではないから、文豪たちよりもうんと年上なのである。しかし、まぁ、そんな概念がないだろう文豪達と館長ら職員は私を年下と見て扱ってくれるわけでして私もヒャッホイ!甘えたろ!となってる。しかしながら、猫は違うわけで。苗字さんは若いんだから、といった館長に、猫は呆れた。
「ニャにをいっている。ソイツは何百、下手すれば千年ほどいる存在だぞ」
「嫌だなぁ、まだ千年はいってないですよ。六百年くらい?」
そうニコリと笑って首を傾げる。館長が「そんな冗談は通じないぞ」と笑った、が、猫を見た。
「冗談、なんだよな?」
「私は冗談は言わにゃい。お前達が苗字ナマエと言っているコイツは人ではにゃい」
「正式に名乗ろうか?」
そうこてん、と首をかしげる。目をパチパチと瞬いた館長に、口を開く。
「私の名前は瑠璃景光。別名は漣景光という長船派の打刀だ。戦国時代末期に作られた」
「刀?」
「そう、私は刀の付喪神だ。訳あって人に降ろされて、まぁ、今は好き勝手に暮らしてる」
私の言葉に館長が、神様だからそんな顔立ちしてるのか……とボヤいたがスルーである。
「戦国時代末期ということは、武将に?」
「徳川方を、転々と。まぁ、最後は志葉家という家におちついた。因みに名の由来は刃が瑠璃色を帯びているからだ。漣も濃い瑠璃色から白に変わる様子が漣に例えられた」
そう腕組みをする。
「あー、でも、文豪さんには秘密にしてくれないか。まだ甘やかされたい」
「……神様には見えないなぁ」
「よく言われる」
おや指を立てれば、猫がため息をついた。

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吉川さんが木刀を振っていたので相手になってみる。ひらひらと避けながら、甘い、と言って木刀を弾き落として首元に木刀の切っ先を向ければそこにいた人達の視線をいただいた。
「これは驚いた、苗字、強いのだな」
そう笑った吉川さんに、慣れてるだけだよ、と言って木刀を担ぐ。
「普段、持ってるの刀とか剣とかじゃないでしょ」
「わかるのか?」
「手の動きとか間合いの取り方が違うからね。あとはみんな慣れてないんだろうなぁとは思う」
「ナマエは剣道か?居合か?何か流派を習っていたのか?」
「あー、なんだろ、色々習った結果混じってるから、綺麗だけど綺麗じゃない太刀筋とは言われる。まぁ、私が使うのは太刀じゃなくて打刀だから太刀筋とは言わないかもだけど」
そう言いながらもうひと勝負します?と首を傾げる。ああ!と頷いた彼は熱血だ。

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「苗字!」
がしり!と手を掴んだアカに首を傾げる。なんだなんだ?とこちらをみた文豪、アオも遅れてやって来た。
「お前、人間じゃないって猫に聞いたぞ!」
「あのニャンコ野郎……」
ワクワクしたような彼に悪いが、彼は恐らく金になりそうだな!とか思ってるんだろう。やめてくれ。友達が首を傾げる。
「人間じゃないって、どういうこと?」
「君にわかりやすくいうと、とうらぶの方ってこと」
遠い目をしながらいえば、司書は目を瞬いて、叫んだ。正岡先生がこちらを見る。
「どういうことだ?」
「あー、うーん、私はこう見えて数百年生きてる年寄りってこと」
私の返答に、ガタリ、と周りが席を立った。特に小説家。一番素早く寄って来たのは藤村さんだ。
「数百年生きてるって、どういうこと?不老不死の錬金術でもあるの?」
「いや、私はそもそも死なないから。死に似たような概念があるけど。人じゃない」
「謎かけみたいだね、面白い。君は実は幽霊だとか?」
「似たようなものかな」
「妖怪ですカ?」
「それに含まれることもある」
「妖怪に含まれることがあるのなら、他は何に含まれる?」
「烏滸がましいとは思うけれど、神様に」
「神様ときましたか。貴方は何処かに祀られていますか?」
「私は祀られてない。ただ、仲間は祀られているのもいる」
「仲間がいんのか?」
「まぁ、どれを仲間というかは難しいけどね」
「祀られてない仲間はどちらに?」
「博物館だったり、個人が持っていたり、様々だ。答えは出たかな?」
「後モウ一押し、デス!」
「死に似た概念って、どういうことだ?」
「その人によって違うけど、私の場合は折れてしまうこと。まぁ、多くは壊れてしまうことだけど」
手を勢いよくあげた小泉先生は口を開いた。
「貴方は付喪神、デスか?」
その言葉に「その通り」と頷く。荷風先生が首を傾げた。
「付喪神、ということは、苗字は元は道具なのかい?」
「苗字ナマエという道具なんてありましたっけ」
「苗字ナマエという名前は、人に扮する時に使っている名前だからね、本当の名前は他にある」
「もう一つ謎ができましたね。どのような道具なんです?」
「今の時代使われることはもう殆どないから、ほとんどが美術品」
「今まで一番嬉しかったことは?」
「人の身を与えられて、人とこうやって話せるようになったことかなぁ。たまに見える人はいたけど」
「あー、そうなるのかぁ。じゃあ、道具として嬉しかったこととか?」
「うーん、いくつかあるけれど、私を使って主が一番の誉をとったことかな」
「誉?」
「誉」
「じゃあ、一番辛かったことは?」
「それも色々あるね。人の身がなくて沢山の人を見殺しにしたから。あぁ、でも一番辛かったのは、主が私を使って命を絶ったこと、か」
そう目を伏せる。
「君は人を殺せる?」
「使い方によっては」
「ってことは、武器の類か」
「この図書館にも私と同じのが一つだけいるね。ちょっと羨ましい」
「銃かと思ったけど、外側じゃ持ってないもんなぁ」
「ほう、ならば、汝は刀か」
「刀?」
「あぁ、森さんが持ってるからか」
「左様、美術品として扱われるのも刀が多い」
露伴さんと傍観していた紅葉さんがそう告げる。
正解、と笑って、宙に手をかざす。桜の花びらから現れた本体を掴めばがしゃん、と重みを感じる。
「まぁ、ここから先は専門知識がないと無理だろうし、ちゃんと名乗るか。私の名前は瑠璃景光。長船派に属する景光という刀匠がうった刀だ。同じ刀匠の刀には、上杉謙信が使った小豆景光がいる。名前の由来は、」
そう鞘から抜く。
「このように、刀が僅かに瑠璃色を帯びていること。刃にむけ、徐々に白くなることから、漣に例えられ、漣兼光と呼ばれる」
危ないから鞘にしまい、元の主は、と口を開く。
「元の主は東方が多い。まぁ、私も上杉謙信の元にいたが、上杉家から直江に褒美として与えられ、」
「直江状と共に徳川家康に献上された!」
そう目を爛々と輝かした吉川さんに、ああそういやこの人は詳しかったな、と思う。
「まぁ、徳川にいたのも江戸が落ち着くまでで、その後志葉という家に与えられ、今もそこの所有物という形ではあるんだが、色々あって政府に回収されてな、色々あって、今だ」
「その色々が気になるんだけど」
「猫にお問い合わせ下さい」
そう首を左右に振る。アカが爛々とした目でこちらを見る。
「お前を売ったらどれくらいになるんだ?」
「蘇る嫌な記憶。やめてください」
本体をまた隠して嫌々と首を左右にふる。いや、一回使用人に盗まれて競売にかけられて嫌な記憶があるんだよね。
「売られたのか?」
「盗まれて競売にかけられたんです〜めちゃくちゃ怖かったんだからね。姿ないから反抗がほとんどできないし」
「ほとんど?」
「いや、誰もいないはずの部屋で物落とすとか飛ばすとか心霊現象的な?夢枕にたって、元の主人に返せって言ったらスーパーポジティブな人で押し倒されかけてそれは速攻でやめた。結局、警察が見つけてくれて元の主人のとこに戻った。もうあんな経験はしたくない。今思えば私使って自害されるよりそっちの方が辛いかもしれない」
ぞわり、とおもいだしてたった鳥肌に、両腕を摩った。

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「あ、やばい」
そう呟いて周りを見る。司書がどうかした?と首を傾げた。
「いや、本体取り出したら位置特定されるから取り出さないようにしてたんだけど、取り出したな、って」
「位置?」
「そう、他の刀ーー」
「瑠璃ィィィ!!仕事をサボって三月、どこにいると思えば!」
「早いね、長谷部さん」
ぐわし!と掴まれた肩にそう言えば当たり前だ!と言われた。
「貴方が!誰かを!また!誑かしているかも!しれないだろ!」
「やだなぁ、そんなことないよ」
「おぉ、瑠璃ここにいたのか」
「長曽祢さんだ〜!!!」
長谷部さんの手を外し長曽祢さんに突撃、しようとして抑えられる。長谷部に。ギリギリと掴まれた腕はとても痛い。 長曽祢さんがまたかみたいな顔でこっち来たけど。
「わかったわかった、長谷部さん、お手手つなぎましょうねー?とりあえず、司書、私一回帰るから館長文豪先生によろしくいっておいて」

==謎かけのとこが書きたかっただけです



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