ネタ帳vol.3

2023ネタ帳112:君僕主?

01/14 17:50 

「そうだな、プリーズラク(幽霊)とでも名乗っておこう」
名乗るように告げた相手にそう名乗る。さて、私は巻き込まれた学生Aであるだけなのだ。だからオフィシャルだかノンオフィシャルかは知らないが本名を名乗るわけもいかないわけで。まぁ、たまたま一緒にいたサチがバレないようハッキングなどをしてくれているわけだが、脱出経路を探していてたまたま見つけたというか。それにしても同じコードネームでよく似た声を持つ人である。目が覚めたらあの架空の話は存在しなくなっていたわけであるが。
まぁ、軍部だかCIAだかが動いているのであれば大人しくしたほうがよさそうだし、あまり話さない方が良い。要所要所で注意を促せばそれで十分だろう。

と,思っていたのだが。
「スネーク、私は暇じゃないんだが?」
頻繁に無線をいれるな。そう暗に告げる。彼は話がしたいとつげたが。
「知りたがりめ。知りすぎた人間は始末されるのがオチだぞ。第一、君の上司が調べ上げるんじゃないか?」
そう返せば彼はそれに返答はせず、「……お前はロシア人か?」とたずねてくる。
「さぁな?」
「とぼけるな、プリーズラクはロシア語だろう」
「ロシア語は確かにそうだな。君に協力する上で国籍や人種の情報は必要なことか?」
「まぁな」
「どうして?」
「任務後に食事に誘えない」
そうサラッととんでもない台詞を告げたスネークにため息をつく。
「……ひとつ教えてあげよう、スネーク」
「なんだ?」
「任務中にそういった約束をするだろう」
「?ああ」
「それをMOD(死亡フラグ)という。死にたくなければ任務に集中しろ。じゃあな、私は友人を連れ出すのに忙しいんだ」
そう言って通信をまたオフにした。さて、傍受は恐らく彼の上司にはされていることはわかる。ナマエちゃん?とこちらを見上げたサチに、いいや、と首を左右に振った。

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「スネーク、ひとつ聞きたい」
「なんだ?」
「人質の救助に人員は回せるのか?」
どうあがいても脱出する人数を運ぶのには限りがある。スネークは人質?と聞いてもいないかのように告げた。
「まさか、掴んでないのか?」
「なにも」
「航空機がハイジャックされたから君はここにきたわけじゃない?」
そう尋ねれば彼はハイジャック?と本当に訳がわかっていないように言葉を返した。
「オーケー、どうせ君の仲間もこの回線を聞いているな。いいか聞け、フロリダ行きの航空機がひとつ行方を絶っているはずだ。○○航空の×××便にあたる。それがハイジャックされ、ここに到着した。ここには数十人かのパイロットやファーストクラスの人間が人質として捕えられている。残りは旅客機の中だ」
「なんだって?!」
「君がここにいる人質をどうにかするなら私がそのまま旅客機を飛ばすことも考えたが……まぁ少し考えるよ」
そう言って通信をきる。サチがこちらを見たので首を左右に振った。
「向こうはその情報を元に動いた訳じゃない」
「えっ,偶然!?」
「武装蜂起が同時だったのかは分かりかねるが……パイロットがグルな可能性もでてきたな。流石にこれにフレアはつけれない。対空ミサイルにチャフをありったけ投げるだけしかない」
「ファーストクラスの人をこっちに連れてくるのは?」
「難しい。私のなりで今乗客が大人しくしてくれているのが奇跡だ。紳士的な人ならともあれ、何人かは聞かない」
そう言いつつパイロットの席で無線をいじる。サチが「言うこと聞いてるのはナマエちゃんがフルボッコにしたのを見たからなんだよなぁ」とぼやいた。
無線がなり、そちらに応答すればやはりスネークだ。
「上司が話をしたいそうだ」
まぁそうなるだろう。プリーズラグ,と言う声もまた似ている声だ。
「こちらが把握している情報と違いすぎる。お前が把握している情報が欲しい」
「先程告げた情報は?」
「洗ったが事実だった。行方不明になっている旅客機がある」

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なんとかなるものだな、と操縦桿から手を離す。客席からワァワァと言う声と歓声が上がるのはお国柄だろうか。深くため息をついて座席にもたれかかる。キャビンアテンダントがやってきて、私とサチ、手伝ってくれた男性にハグをした。そこでようやく男性も安堵したのだろう。大きくため息をつく。私はサチと共に一足先に怪我人として外に出してもらうことにするが。

そのまま人質たちと保護される。幽霊なのだからそのまま謎のままにしておいてくれたら良いのが,恐らく世の中はそんなに甘くはないだろう。まぁ、経歴はどうあがいても善良な日本人なわけだが。サチが手当てを受けている間、どうしたものかと息を吐く。おそらくこのまま米軍基地に居座ることはできないからアメリカに入ることにはなりそうだが、問題は日本の対応だ。迎えにくるのか、どうなのかはわからないが、変にメディアが騒ぎ立ててくる。現にこの武装蜂起に日本人が巻き込まれたというニュースがネットに上がっていて、航空機がハイジャックされて無理矢理そこに行った記述はなく(恐らくメディアにまだ公表されていない)私達は飛んで火に入る夏の虫、自業自得のジャーナリストだとバッシングされているのがわかる。もう一度ため息をついていれば、目の前に紙コップが現れる。中に入っているのはミルク入りのコーヒーだろうか。見上げれば、まぁなんと夢の中の人(ザ・ボス)に似ている人だろうか。服からして上の方の立場にいるとわかる。
「コーヒーよ。温まるものを飲めば気は多少休まるわ」
「……どうもありがとうございます」
一拍置いてそう返す。渡されたコーヒーは苦いものか甘いものか、と思っていれば、彼女はまた口を開く。
「苦くないわ。砂糖を入れているから」
「こう言う場所で砂糖は貴重では?」
「旅客機から提供をうけたのよ」
そう言った彼女に私はコーヒーをのむ。飲まなければ不自然だろう。甘い。私好みの甘さだ。ちょうど砂糖が二つ入ったような。
「貴方は飛行機でどこまで?」
「フロリダです。ディズニーリゾートに行く予定だったんですが、台無しです」
「それは台無しね」
「まぁそれよりも最悪なのが、日本に帰った時のマスコミ対応なんですが……」
そう苦笑いをする。彼女は少し眉間にシワを寄せた。そのニュースを確認していたのね、と告げた彼女に頷く。
「ええ……でも、そうですね、こう言う場所ではあまり端末を見ない方が良いのだと聞きました。ごめんなさい、気が回らなくて」
眉尻を下げてそう告げる。どうも、私は彼女に弱い。彼女は私をハグをする。よかった、貴方が無事で、と告げられた言葉に、私は口を噤む。それでさえ彼女と同じなのかと。目を伏せて、無理矢理気持ちを切り替えた。
「……お気遣いありがとうございます」
そう言って少し体を離した。
「こちらにきて随分と落ち着きました。私はもう大丈夫です」
だから他の人を落ち着かせてください。
夢で何回もこんな状況は体験した。だから私は周りにいる存在よりも強いはずなのだ。彼女は少し寂しそうな悲しそうな顔をしてまた強く抱擁をしたのだけど。その仕草が、香りが、あの夢の中の彼女と重なる。だから、ほんの少しだけ、私は彼女の背に手を添えた。

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旅客機のパイロットが基地に到着するまで基地に待機、らしい。寝る場所はあるのだろうか,と思っていれば軍の宿舎が一部開いておりそちらを使うようだ。なお、飛行機は整備のためにそちらは使えないらしい。非常時だから寝る場所を提供されただけでもありがたいそれである。ということで、サチと二人眠るために提供された場所に向かう。
まぁ,そこでぐっすり,とはいかず,パニックになった人を宥めたりなんだしていればもう夜更けというわけなのだが。ようやく静まった宿舎に、私は外の空気でも吸うかと宿舎の一歩外に出て座ると大きく息を吐いた。
この体では初めてだ。目を醒ましてからは、そんなことなどなかったそれである。記憶では慣れていても、今の記憶や感覚が、戦場に慣れているかといえばノーなのだ。手が震える。助かった安堵よりも遅れて恐怖はやってくる。手をぎゅっと握りそれを打ち消そうとしたができないらしい。
「眠れないのか?」
尋ねるような声に見上げた。そこにいた男は私を見下ろしていた。また似たような声だとは思うものの、彼の姿はジャックににているわけではない。
「えぇ、少し……流石に気が参っているようです」
そう言って困った顔をする。彼は私の手が震えているのに気付いたのか、少し待つように告げて離れた。そうしてしばらくすると男性はマグを持って戻ってくる。
「ココアだ。温かいものを飲めば落ち着く」
「……ありがとうございます」
差し出されたマグを受け取る手が震えている。いけない、それを認めれば最後決壊する。そっとまた息を吐き出し、ココアを飲む。甘い味が口に広がった。
「お前,年は?」
「今年で18です」
そう簡素に答える。18,と繰り返した彼は、今年ということは、と私をみおろす。
「まだ17か……怖かっただろう」
「世界には私以上に怖い経験をしている子供はたくさんいます。私は助かりました。だから私はまだマシな方です」
そう言ってココアから上る湯気を見る。怖くないと言い聞かせる。
「……そうだな。だが、世界にはお前よりに何も経験しない子供もいる。お前は助かった」
彼はそう言って私に合わせてかがむと口を開く。緑色の目をはっきりと合わせて。
「お前は助かったんだ。安心していい」
告げられた言葉に、ついに決壊した。小さくほろりとこぼれた涙に、彼は私を静かに抱き寄せる。
「怖かった。ずっと、ずっと」
あの頃でさえ認めなかった言葉だ。あの時、それを認めてしまえば私は足を止めただろうから。でも、それ以上は言わない。唇を噛み締めて私はなく。彼はジャックより優しい声でああと頷いて、私の背を撫でた。
「もう大丈夫だ」


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「あの、ありがとうございました」
「いや……おやすみ」
「はい、おやすみなさい」

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「昨日はありがとうございました」
「眠れたか?」
「ええ、ココアのおかげでばっちり」
「ふっ、そうか……」

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さてはて、プリーズラグの正体は皆黙ってくれている。どうやらある人は大男といったり、ある人は妙齢の女性といったりと周りが色々と証言しているらしい。私とサチも一応は尋ねられたが、わからないとかえしておいた。そんなこんな、救助されるまでは穏やかな日が続くかと思っていたのだが。
見事に人質である。まぁ、あの航空機の中に他の仲間がいたのかと思えば気絶していた兵士というかそういう人が暴動に出ているらしかった。何人かは私が背後からしとめたわけであるし、私の姿をみていないのだろう。とりあえずサチが人質になりそうだったので私が変わった。私のこめかみに銃口をむけている人はいう。記憶がある人間は神様の御使だとか、特別だとか。兵士たちが銃口をむけるなか、彼はご高説を垂れる。自分たちは選ばれた人間なのだと。
「……記憶がある人間?」
私がそう尋ねると、彼は口を開く。
「あぁ、あぁ、そうだとも!俺はこの前世とも呼べる記憶に苦しんできた!救ってくださったのは彼らだけだ!」
前世とも呼べる記憶、と繰り返す。
「お前達にはわかるまい!!この苦しみが!周りに理解されず!ただ恐怖を向けられる!」
私は彼と同じ方向を見る。私の知る人と似たような人達が集まってきている。武器を捨てろと叫んでも刺激するだけだと思うのだが。サチが泣きそうな顔でこちらを見ているので大丈夫だと口パクでいう。
「そう、貴方は辛かったんですね」
私はとりあえず同調をする。彼は私を見下ろした。
「他人に理解されないのも畏怖されるのも、さずかし辛いことでしょう。貴方は普通の人のはずです。周りとなんら変わらない、ただの人です」
「目に見えた同情なんざいらない!」
「同情なんかじゃない。私もそうだった。事故から目を覚ましたら、頭の中に別人がいた。何をするにもその人が顔出す。最初は不眠症だった。その人物に自分が乗っ取られるような不快感。夢の中で何回も追体験する。まるでその人に慣れとでもいうように、元の私は呑まれていく」
そう言えば彼は少しだけ力をゆるめた。
「そうか、でも、貴方達の考え方は腑に落ちる。前世、それはいい解釈かもしれない。そうか……なんというか、うん、しっくりきた」
そう言ってから彼の銃口を逸らし、即座に解体する。狼狽えた彼をCQCで投げた。
「だから、日本生まれの小娘がこんなことができるわけだ」
手を叩きつつそう告げて銃のパーツを蹴飛ばす。目を回した相手を爆発物を持っていないかと見下ろしていれば、唖然とした周りをおいて、サチが、ば、ばかー!と口を開きながらやってくる。ぽかぽかと叩くのはご愛嬌か。
「ばかー!ナマエちゃんのばかーー!!」
「ごめん」
「ごめんですまないよね!!プロたくさんいるんだし、プロに任せたらいいでしょ!ばかー!!ナマエちゃんが死んじゃうかと思った!!怪我してない!?」
「大丈夫だ」
そう言って頭をぽんと撫でる。くっそー!イケ女子め!と叱られたが知らない。まぁ、背後から近づいた相手には回し蹴りをいれたが。今度こそKOした相手に、対面にした隻眼の男がぼやくように口を開いた。
「相変わらず足癖が悪い女だな」
相変わらず、と私に変わって繰り返したサチに、私はかれをみる。声、表情,おそらくは彼こそがジャックだろう。だからわたしは言葉を返す。
「相変わらず葉巻を吸ってるのか、ジャック。喉頭癌になると喋れなくなるし、今の時代には即さないんじゃないか?」
「そうだな、喫煙者には随分と厳しい世の中になったものだ」
彼はそう言って葉巻をふかす。
「『プリーズラグ』はやはりお前だったわけか」
「やはり?」
「お前をここで見かけた時からお前だと思っていた。乗客の証言は男から女まで多岐に渡るがーー誰一人子供とは言わなかったからな」
「まぁ、経歴は普通のティーンですし……みなさん善意でわたしの情報を伏せてくださっただけです。このことディズニーリゾートに行きたくて飛行機に乗ったら巻き込まれただけで」
「お前は相変わらず好きだな、そういう場所が」
子供っぽくて悪かったな、という言葉はふせる。ムッとしてしまったのは仕方がない。
「君も相変わらず嫌いなんじゃないか?牙が生えたーー」
「怖くない」
食い気味で返された言葉に私はふはっと息を吐いて、ケラケラ笑う。
「えらく食い気味だな」
「あのな、俺はお前と違って大人なんだ。そんな子供騙し、怖いわけないだろう」
「そうか?」
「ああ、そうだ。というか、そういうお前こそどうなんだ」
「何が?」
「犬だ」
仕返し,のように告げられる。私は一瞬言葉を詰まらせる。
「犬は……可愛いな」
「そうだな。犬は可愛い。ここにはこんなに大きい犬がいるぞ」
そう言ったジャックに動きを止める。それは、犬ではない大きさじゃないだろうか。私が苦い顔をしていたからか、私の反応に彼はふはっと息を吐いた。
「相変わらずか!!」
ケラケラと子供のように笑う。珍しいのか周りが驚いている。
「嫌いじゃない」
「ああ、知ってる」
そう言って彼は葉巻をふかすと、目を伏せる。
「お前のことは、知っているはずだった」
なぜあの任務にお前がついたのか。お前が何故俺にあんな言葉を告げたのか。
サチが私を見上げたのがわかった。サチだけでなく、まわりもだ。私はそれに応えずに、そうだな、とただ告げる。
「答えろ。どうしてお前だったんだ」
真っ直ぐに尋ねられる。
あの先の顛末はサチから聞いた。わたしの行動は無駄な足掻きだったのだと思った。最初、彼は嫌悪した。私を。そのうち彼は私に指示をした国を嫌悪した。仲間を嫌悪した。全ての原因は私にあるようなものだった。どうして、と何度も彼は私に問いかける。死ぬ時も。
サチから尋ねられたとき、わたしは応えた。正しく。そうしたら彼女は泣いたのを覚えている。
「国益のためか?」
「……それもある。どういう形であれ、敗戦国にいるはずの私にはあの国に恩はある。私たち二人が残るよりは君とボスが残った方が後に何かあっても動ける。不完全な1を二つ残すより、完全な1と不完全な位置を残した方がいい」
彼は眉間に皺を寄せた。何度もこの言葉を聞いたのかもしれない。
「……と、ボスにも当時の長官にも、当時の上司にも告げた」
私はそう言って私は真面目な雰囲気を止め、肩をすくめた。
「引き受けたのは個人的な事情だ。ひどく利己的な理由だ。ことの顛末は私達とずれてるサチから聞いた。だからそうしておいてくれ」
「死にたかった、とでも?俺に殺されたかったとでも?それなら確かに利己的で個人的な理由だな」
彼は鼻で笑う。サチがまた私を心配そうに見上げる。
「昔から夢をみるんだ」
そう言って私は笑う。ポケットから残ったタバコを取り出して。
「ーー夢?」
「夢だと思っていたことが急に現実味を帯びたものだから、あの時は慌てた。それらしい理由を並べたが、今思えばやっぱり証明が足りない」
「貴方は未来を見た?」
ボスが静かに問いかける。
「あれを未来と言えるのかはわかりません」
「そこに貴方はいないのね、貴方の養父がみた夢のように」
彼女の言葉に私は彼女をみた。
「途方もない現実感を帯びた夢。貴方はそれで何かを見た」
「ーー夢の中で、任務に着いたのは貴方だった」
そう返す。
「貴方が任務に着いても筋書きは変わらない。持ち込んだ核が放たれて、ジャックは貴方を殺しに向かう。そうして、貴方は殺される」
「お前はボスを守りたかった?」
「ボスがいれば」
目を伏せる。私が今から告げるのはきっと残酷な言葉なんだろう。
「ジャックを止めてくれると信じていた。悪い方向へ向かっても、導いてくれると、君の道が逸れないと、どうしようもなく信じた」
彼の瞳が揺れる。ジャックだけでなく彼らの瞳が。
「私がボスの代わりに死ねば、軍人である君が、他一般の軍人たちとおなじように、幸せな人生を生きていけるのだと、どうしようもなく信じていたんだ」
世界の顛末を考えれば、笑えるほど、ひどく利己的な理由だろう。
そう言って笑う。彼は何も返さない。それでいい。だってそこには他者の答えはいらない。私の自己完結だ。ジャックの片手が涙を拭うために動く。私は一歩彼に近づいて、彼を覗き込んだ。昔のように。こちらを見下ろした彼に、昔、彼が私にしたように、私は手を差し出す。
「私の名前は苗字ナマエ。今の父のファミリーネームに基けば、ナマエ=クラウディアです。国籍は日本。所属もなにもないただのハイティーン。貴方は?」
彼はまた目を見開くと、同じように手を差し出す。
「ジョンだ」
「そう、ジョンさん、これからはよろしくお願いします」
そう言って握手をすれば、思いっきり引き込まれて驚いたが。
「ああ、そうだな、これからはよろしく頼む」

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「やばい」
「どうしたの?ナマエちゃん」
「養父が来る」

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