ネタ帳vol.3
2023ネタ帳133:君に会いに行く日2
01/14 18:03
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「気分はどう?」
「最悪な気分です」
こちらを見たザボスにそう告げる。無事にヘリに乗ったが薬と出血のために意識はブラックアウト。そのまま手当をうけ入院させられているらしい。らしいとは、私が目が覚めた時にいた主治医の話である。ジャックはPKOの役職についているため警察やら自衛隊が後の処理に加わっているとも彼から聞いた話だ。幻覚剤だけでなく昔尋問に使われた薬剤を投与されている結果,それを抜くまでに時間はかかる。視界が安定しない。大人しくするようジャックによく似た声で告げた主治医と入れ違いに、彼女はやってきたのだ。私の視界に映るように近づいて。まるでドラマや映画で寝込んだ子供に覗き込む母親のようだった。
彼女はこちらを心配そうに見下ろす。なので、少しだけいたずらっ子のように私は口を開く。
「でも、あなたを独り占めできるならそれはそれで」
「……馬鹿な子ね」
そう言って私を抱き寄せた彼女に私は甘えるように近づく。同じように、子供が母親に甘えるように。本当に馬鹿な子、と少し上擦った声を出した彼女に私は彼女にてをまわした。後ろでクラウディアさんが珍しくオロオロしている気配がするし、誰かも笑っているらしい。
「ジョイ、僕らの娘にしようか。アダムスカもきっと喜ぶ」
「ソロー、冗談でもやめてくれ……ジョイも……僕の娘なんだ」
ここで恐らく今は養子でもなく他人だと言えばさらに落ち込むことになるのは見えている、ので、私は黙るが。彼女は一度クラウディアさんの方を見て少し笑うと、私をまたみた。
「もうしばらく、貴方はここで休むことになるわ」
薬も抜けていないし、処理の関係もあるのだろう。なら、私も処理を、カバーストーリーを把握する必要がある。
「……カバーストーリーはどうなってます?」
「……dmh開放戦線による乗っ取り未遂よ。例の男は日本警察に連れて行かれたわ。あの様子だと余罪もありそうね。貴方は……」
彼女は私をみる。私は肩をすくめた。
「大丈夫です。また『嫌われ者/売国奴』になるのは、慣れています」
「そうじゃないわ。貴方はスタッフや患者を守った。警察も政府も貴方を疑っていない。ここがアメリカなら勲章を授与されるわ」
というわりには、彼女は眉間に皺をよせる。私は彼女をみた。彼女はまた私を抱き寄せる。
「……貴方は真面目な子だから、考えた結果でしょう。今も……昔も。昔、長官言っていたわ。貴方ほどの愛国者はいないと」
「……違います、あれは私のわがままです。昔も,今も」
そう言って首を左右にふる。
「今は……みんなを巻き込みたくなかっただけ。昔は……咄嗟に口から出た嘘が、貴方と長官を納得させることができる嘘が、それだっただけ。貴方は疑ってましたけど」
私は少しだけ笑ってそう告げる。彼女は私をじっと見下ろした。
ーー彼女になら、告げてもいいかな,と思ったのだ。あの時一緒に任務の話を聞いていた彼女には。帰還報告とまでは、いかないが。
「……昔から」
「……ええ」
「昔から、私は夢を見ます」
「夢?」
「最初に見たのは、幼い頃です。ユダヤの人が、ドイツに連行される夢を見ました。怖い夢でした。でも、両親はいいました。ただの怖い夢だと。そばで眠ってくれました。忘れた頃に実の父親は、軍用犬に見つかり、私の目の前で連行されました」
そう言って彼女の服を握る。
「母親がフランスに引っ越すと言った日、私は拒みました。夢で血まみれのビーチをみたから。破壊された街をみたから。でも母親はそんなことはないと言いました。連れて行かれたのは綺麗なビーチでした。忘れた頃に、上陸前の空襲や砲撃がありました。母親は死に、街は破壊され、ビーチは血にそまりました。私はショックで、わけがわからないまま、街を彷徨い、クラウディアさんに拾われました。忘れてたんです。そんなこと。だから、同じように何かを見ても何度もただの悪い夢だって言い聞かせました」
だって私は知っていた。知識があった。何年に何があるかなどは覚えてなかったが、なんとなくは何があったかは理解していた。それは夢という形でたまに私の意識にあらわれた。
「……貴方を……最敬(だいすき)な貴方を最愛(だいすき)なジャックが殺す夢をみました。それも夢だと思ったんです。ジャックが笑わない未来も、貴方が死ぬ未来もいつものように夢だと。でも、あの日、急に現実になってきたから」
涙が溢れてくる。彼女が息を詰めた。
「私は貴方に死んでほしくなかった。ジャックにも幸せに生きて欲しかった。夢みたいになってほしくなかった。だから、私が殺されるしかないと、あの時、反射的に思いました」
彼女が泣く声がする。
「たくさん、たくさん、お願いしました。エヴァにも、オセロットにも、ジャックを支えて欲しいと。助けてあげてほしいと。あとは私がジャックに嫌われて殺されたらいい話でした……でも、私は失敗しました。最後の最後で、私は女としての言葉を彼に告げてしまいました」
言わなければよかった。嫌いだと言えばよかった。どうしてあんな言葉を告げたのか、私は私がわからない。
「……私は出来損ないの人間です。貴方に褒められる人間ではありません。結果的にたった一言で彼の人生を狂わした」
私はただの……利己的で愚かな女です。
そう言って私は目を伏せる。そうただの。馬鹿な女だ。あの時蔑んだ男と同じ。後先を考えない馬鹿なのだ。私は少しだけ彼女と距離をひらき、明るい声でつげる
「だから……だから、今は貴方達に会わないことにしました。PKOにいけば、貴方達がいることなんて、察しはついた。でも、もうあんなことにならないように。だかり、遠くから祈ることにしたんです」
貴方達の幸せを。遠く離れたどこかから。今回の事件も貴方達の正当性が示せるのであれば、私一人の犠牲で済むのなら、会わなくてすむのなら、みんなが……みんながそれで幸せに笑っていられるなら。私はどうなってもよかった。悪い人間だと言われても、世界のどこかで彼彼女達が幸せであるなら。
どうして会いにこないのかとジャックはきいた。どうして会いに行かないのかと友人や事情を知る患者は聞いた。
「だって、それが私の罰です。貴方達をたくさん傷つけ、人生を歪ませた私への罰だ。私は幸せになってはいけない。でも……でも、会ってしまった」
あぁ,無理だ。無理矢理笑おうとする。会いたくなかったといえばいいのに、また馬鹿なことを口を告げる。
「ほんとうは、あいたかった……貴方達に、ずっと」
彼女は涙をこぼす目を開いて、私をまた抱き寄せる。「馬鹿な子」と叱って。私はそれでいいので、めをふせる。
「本当に、貴方は……誰よりも、優しい子……」
彼女の言葉に私はまた涙を流す。ただただ、涙を流す。幼い子供をあやすように、背中を撫でた彼女に、私は声を漏らす。
「貴方達は、本当に世話のやける……馬鹿な子達」
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「その日は大切な仕事がある」
ペラペラとスケジュールを確認する。過密するスケジュールの中、なんとかそこだけ時間が取れたのだ。だから、その日に済ませないといけないことが多々あるのである。目の前にいるジョンはちょっとだけ訝しげにした。
「この日は休みだと聞いたが?」
「休みだからこそする仕事があるんだ」
「仕事のしすぎじゃないのか?」
そう告げたジャックに返答ができかねる。というか私の主治医であるエイバブもまた仕事のしすぎだと頷いた。私が変わりましょうか?だなんて様子を伺っていたアダムスカが私に尋ねる次第だ。私はしばらく困った顔をしてジョンを見つめる。彼は折れる気はないらしい。
あの事件から数ヶ月の時間がたった。日本政府が何かカバーストーリーをつくるかと思えば、わりとそのまま報道している。まぁさすがに一部職員や一部患者が行った暴力沙汰は全て正当防衛と処理しているようだったが。あの占拠をdmh達を狙った強行事件とし行った組織を糾弾、そして今後の再発防止としてこの施設をNPOから国の管轄にした。そうすることで第3セクターだけでなく、他のセクターも国連にあるdmh団体の傘下になった。まぁ言ってしまえばジョン達がここにくる建前を作ったに近いのだが。施設長がいなくなった今新しい施設長が決まるまで政府とのやりとりを代行したり、それこそジョンやゼロと仕事のやりとりを繰り返していたらもうこんな時期というわけである。確かに二人の時間というものは取れていない。彼はそれを許容してくれていた。というか彼も忙しかったのだと思う。そうして見つけたのがこの日だったというわけだろう。だが、私も折れるわけにはいかなかった。
「買い物に行かないといけないんだ」
「買い物?」
彼はそれが仕事か?というふうにこちらをみる。私は周りに子供がいないのを確認して口を開く。
「毎年サチといってたんだが、今年は一人で買いに回らないといけないし、みんな毎年楽しみにしてるからやめるわけにも……」
といっていたら、ジャックが何かいう前に、扉がノックされたが。返事をすれば、扉が遠慮なく開いた。
「やっほー!ナマエちゃん!はっぴーほりで……あ、ごめん邪魔した?」
「いや、こっちに帰ってこれたんだな?」
「ホワイト!ホワイト!それにオタコンとエマちゃんが日本のイベントに行きたがってたからね!一緒に日本にきたの!それに毎年の荷物たいへんだし、ナマエちゃん一人で例の作戦をするには大変だろうから、荷物持ち兼スケットも連れてきたんだよね!」
そう言ってサチは扉から人を引きずってきた。ジョンより落ち着いた髪色の彼は、これだけいれば俺はいらないだろうというような顔をしてる。サチはそれを丸っと無視して私をみたが。
「いらなかった?」
「いや、人員は助かる。ジョン達も忙しいからこういうことを頼むのは気が引ける」
「手伝うが」
ジョンがムッとしたように告げる。いやしかし、ジョンも結構疲れている。
「きみは休んだ方がいい。夜中だ」
「夜中?余計にどうしてコイツがよくて俺がダメなんだ」
そう噛みついたジョンに、入ってきた男性をサチがこづく。
「デイヴィッド、何想像したか知らないけど想像とは違うことだよ」
すかさず突っ込んだサチに、デイヴィッドと呼ばれた彼はサチを見下ろしたが。不機嫌そうなジャックをよそに、エイバブさんが口を開いた。
「夜中に何を?」
その言葉にサチは近くにあった椅子にすわると、精一杯の真面目な顔をつくる。そうして周りをみた。
「よし、オペレーション・エス・エー・エヌ・ティー・エーのブリーフィングを始めよう」
「オペレーション……なんだって?」
そう困惑顔をしたデイヴィッドに、オセロットは気づいたのかふはっと息を吐いた。向いた視線に彼は「いや?」と返したが。私も深刻そうな顔をして、いわゆるゲンドーポーズをする。
「十二月になるとこの二週間ほどやけに子供がみんな大人しくなり、お手伝いをするなどさらに『いい子』になる。まぁその子供達は問題じゃない。年々増加する問題児達はどこかに集まりだし、それと同時に大人の怪我人が増える」
「怪我人……?」
意図を察したのか、私とサチが深刻そうな顔をしているからかエイバブさんが眉間にしわをよせた。
「数年前より私たちはとある男によりなぜそうなるかの情報を得ている」
「……情報?」
「悪戯小隊を中心にした子供達による、オペレーション・エス・シー捕獲作戦。子供達は12月24日の夜武装蜂起をおこしエス・クラウス氏を捕獲しようとしているという情報だ」
私の言葉に、オセロットが便乗したように口を開く。
「子供達はエス・クラウス氏を捕まえて何をしようと?」
「プレゼントを奪取して好きなものを選んだり、空飛ぶソリに乗りたいそうだ」
そこで恐らく周りは理解した。ふはっと笑ったジョンは「なるほどな!」と声を上げた。恐らくエイバブさんやデイヴィッドもわかったのだろう。少しだけ緊張感があったが、もうそれは和やかにかわる。
「十二月初頭より秘密裏に展開されているその作戦により、第3セクター内小児棟一帯はトラップをしかけられ怪我人がふえる。君に頼みたいのはエス・クラウス氏の代わりに子供達が占拠する小児棟に潜入、痕跡を残さずクラウス氏より預かった(とされる)荷物を配ることだ」
エイバブが少し笑いながら口を開く。
「こんなことを毎年してるのか」
「してます。最初はクラウス氏に託されて色んなスタッフが配ったんですが……」
「トラップレベル上がりすぎてスタッフの怪我人がふえたから代わりに女の子のクラリス氏が真っ赤な服着て潜入してるんだよね」
すなわち,私がサンタ衣装をきて潜入して配っているのである。
サチの説明に、デイヴィッドがわたしを見ながら口を開く。
「そのクラリス氏に任せたらいいだろ」
「彼女は無理だ。仕事が山積みすぎる。今年はディープスロートがいない分、探りを入れないといけないが探りを入れる暇もない。休みは山ほどのプレゼントを用意には知らないといけない。後多分今年は分散したほうがいい」
そう言って遠い目をする。
「去年、配り終えたのは朝四時だった……」
「あーー、そうだったね!去年、武装協力する子供が増えちゃって、ラフメイカー隊長がめちゃくちゃ楽しんでホームアローン的な感じのトラップかけまくってたもんね!」
「あのなぁ、君たちは画面越しにみるから愉快なだけでこっちは全く愉快じゃないんだぞ」
そう少しだけ恨めしくサチを見る。まぁ彼女はオペレーター・プランサーとして私を見守ってるから仕方ない。
「ホームアローン?」
「知らない?映画。家に残った子供が、泥棒を退治する話なんだけど……」
「去年はペイントボールをなげてきたりペイント弾がとんだりだ。大変だった」
そう言ってため息をつく。
「今年はディープスロートがいないから、教官としてスパイを忍び込ませよう。君たちの中で教官役としていい感じに子供やスタッフに怪我人が出ないようにしつつ、情報を抜いて欲しい。多分教官は二人くらいいたほうがいい」
「デイヴィッド子供の世話苦手でしょ。潜入するしかないよ」
「だから参加するとは……」
「ナマエちゃん、こうは言ってるけど、ブツクサ言いながらやるから大丈夫」
ケラケラ笑ったサチに私はジョンをみる。
「ジャックもするか?」
「あぁ!」
「そいつがいるなら……」
「あたしがデイヴィッドのサンタ衣装見たいだけなんだけどなぁ」
デイヴィッドが固まる。なるほど。でもまぁ私がいうとジョンが怒るからだまる。
「オセロット、エイバブさん、子供達が怪我をしないか監督をしつて補助しつつ情報をくれると嬉しい」
「わかった」
「あとは買い出しか……」
私はそう言ってリストを取り出す。そこに書かれた文言に少し眉間に皺を寄せた。ジョンがそれを見て、おそらくは書かれた文言を見つけたんだろう。私の妹二人が揃って子犬をお望みである。
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