ネタ帳vol.3

2025年ネタ帳1:現代で再会する李子と郭嘉

08/12 14:10 

ーー沈んでいく。船も、木材も、人も、私も。不思議と息苦しさはない。ただ襲ってくるのは眠気に似たものだった。見上げれば、水面は赤く光っているがわかる。
ーーきれいですね、にいさーー

「李子!!起きなさい!!」
そんな声がして私は飛び起きる。周りを見れば当たり前ではあるが、自分の部屋である。母親が怒った顔で私を見下ろしていた。
「今日はお父さんのところに出かけるって言ったでしょう!」
その言葉にそうだった、と思い出した。今日は中国で暮らしている父親のもとに行くために、飛行機に乗る予定なのだ。ちょっとした旅行というやつである。いつもは父親が日本に来るのであるが、今回は母親がサプライズとして赴く予定らしい。私といえは、オンラインゲームでやり取りしている人達と食事をすることになっている。まだまだ家を出るにははやいが、用心した方がいいのは確かだ。
「すぐに準備します」
「そうして頂戴」
母親はそう言って私の部屋を後にする。心なしか浮かれているようにも見えた。確か昔は私もそうだった。でも、最近はそうでもない。二人の関係は周りの家族と違って歪だ。母親はいつか一緒になれることを夢見ているが。
ーーおとうさんと一緒にいれたらいいのに。
そう告げた幼い私に、彼ははいとは言わずただただ困った顔をした。そこでなんとなく私は腑に落ちたのである。この人は一緒に暮らしたいとは思っていない、と。
悲しくて泣いても、母親に告げることはできなかった。ただ、同じ頃、ハーフだということでいじめられていて、余計に不安定だったのもある。それも母親に告げていない。そんな中、私は川に落とされーー歪な記憶を思い出したのであるが。恐らく、そこで私の純粋さは消えた。きっと大人のような物言いをする子供だと周りは思っただろう。母親は嘆いた。川に落ちてから性格が変わってしまった、と。それでも私を捨てず、育ててくれている彼女には感謝しているが。
父親の元に行くのは母親だけだ。その件があっていこう、父親が苦手だった。いや、歳を重ねるたびに苦手さが増した。こちらに向く視線に母親も気づき、私を父親から遠ざけた。今回一緒に行くのは通訳がわりだからである。父親のところにさえいけば、母親はどうにかなるだろう。一抹の不安は、あるのだが。
身なりを整え、荷物を準備する。そうして予約したタクシーに乗って、私は母親と空港に向かった。

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ついた街は当たり前であるが、現代である。昔の面影なんてない。私は母親に再三父親の家への行き方を伝えて見送ると、自分用に取っていたホテルに向かった。バイト代で奮発し未成年でも泊まれる高級めなホテルだ。チェックインをすませ、荷物を預ける。そうして私は待ち合わせ場所に向かった。
オフラインで会おうとしているのは、オンラインで遊ぶシュミュレーションゲームで出会った人だ。数人、友人ができたのではあるが、その中でも一、二番を競うくらい仲が良い人だ。今回母親について赴くことを告げれば、彼が食事でもと誘ってくれたわけである。待ち合わせ場所にあった椅子に座って空を見上げる。青い空が広がっている。空だけは記憶の中と変わらないな、と思う。あの記憶が前世と言われる過去なのか妄想なのかは分かりかねるが、あの景色がこんなふうに変わるとは感慨深くもあるが少し寂しくもある。もし仮にこれが前世だというのであれば、同じように記憶がある人がいるのかもしれない。
ーーあの、布陣の考え方は。あの布陣の引き方は。
「兄様、なのであれば、謝らなければ……」
私は託されたものを蔑ろにした馬鹿な女だ。今思えばもっとやりようがあったはずなのだ。元直が手伝ってくれないなんて、ましてや、孔明や士元を手伝うなんてわかっていたはずだ。もっと上手くできた。生きて帰ると曹操様に約束したのに、私は帰らなかった。帰れなかった。
足元を見つめていれば、綺麗な革靴が目の前でとまる。男性の革靴である。
「ようやく見つけた」
聞こえてきた声に私は顔を跳ね上げる。そこにいたのは、間違いなく兄と慕った郭嘉殿である。病で倒れ、弱って。死んでしまった。現代の服を着た彼は顔色もいい。元気そうだ。それを認識して、私ははらはらと涙を流す。
「兄様」
「ふふ、懐かしい呼び名だ」
「にいさま、わたし、私は」
彼はそのまま私を抱き寄せる。
「ごめんなさい」
「それは何に関する謝罪かな?」
「わたし、うまく、きたい、あなたのかわりなんて、」
「そんなことはないのだけれど……」
彼はそう言って私の髪をなでる。ごめんなさい、ともう一度謝れば、彼は抱きしめる力を強くした。
「大丈夫、皆心配はしているけれど、誰一人貴女を責めてなんかいない」
「でも……」
「あぁ、ちがうね。私が手本を見せてあげよう」
そう言った彼は体を少し話す。
「ただいま、李子殿。あの頃は心配をかけさせてしまったね。もう私は大丈夫」
彼はそう言って慣れたように涙を拭う。
「ほんとうに?」
「本当、なのだけど、参ったね。李子に対しては昔の自分が首を絞めているとは……」
困った顔をした彼に、私は口を開く。
「おかえりなさい、郭嘉殿。おまちしておりました」
そういって、無理やり笑っては見たが涙は流れていった。


「落ち着いたかな?」
コーヒー片手にそう告げた彼に私は頷く。申し訳ございません、郭嘉殿と謝れば彼は「昔のように呼んではくれないのかな?」と聞いてくる。
「……嘉兄様かもしれないと思ってこちらにきたのですが、まさか本当に嘉兄様だとは思わず……色々ぐるぐるとして泣いてしまいました」
「ぐるぐる?」
「丁度最近また夢でみたので……兄様は」
「私も李子だと思ってね。まぁ違っても話は合うだろうから来たのだけど……ちなみに最初に声をかけたアカウントを覚えているかな?」
「筍公さんですか?」
「彼は荀攸殿だよ」
その言葉に私は目をぱちぱち瞬いた。確かに筍公というアカウントの人は、結構初期からいて私が一人で対応している時からの知り合いである。
「策を見て最初は私だと疑って、違うと理解してから私に声をかけてきてね」
「嘉兄様、ランクの上がり方がめちゃくちゃ早かったですもんね」
私はそう言ってカフェラテをちびちびと飲む。
「まぁ仕事の片手間だけれどいい暇つぶしにはなったかな」
「ん……ん?ではあのサーバ、もしかして色々います?」
「私たちの中でやっていないのは荀ケ殿だけかな?他の勢力はわからないけどね」
「通りで最近面白いですけど難しいわけですね……」
そう困った顔をする。彼はふふと笑ったが。
「李子は今、日本に住んでいるのだったね」
「はい。母親が日本人なので……」
「おっと、ではあまり遅くまで付き合わせない方がいいかな?」
「いえ、母親は一人で父親に会いに行きましたので、私はホテルに泊まるつもりです。バイト代をためて奮発しました」
「おや?李子は父親に会わなくてもいいのかな?」
「あまり……もとより一年に一度会うくらいの方ですし……私の気のせいならいいのですが、何か隠し事をしている気がしますので」
無闇にあって、いらない事実を見なくても良いでしょう?
そう言って困った顔をする。彼は「それもそうだね」と頷いた。
「良かったよ。今日の帰りは送ろう」
「どちらかに?」
「まぁ、ついてからのお楽しみ……かな」
そう言ってにっこり笑った彼に私は首を傾げる。そのまま車に乗せられてドナドナされるのであるが。


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この人、何していてもサマになるな、と思う。運転席に座る姿なんぞ、どこぞの俳優のようだ。
「兄様は今世も酷くおモテになるのでしょうね。さらに華やかになられたというか」
「それは否定しないね。しかし、李子もきちんとすれば華やかになると思うのだけれど……」
「うーん、整えたいのは山々ですが、学校で面倒くさくなりそうです」
「おや?どうして?」
「日本人と中国人の間の子供ですので、視野が狭い学校では色々あります。瞳の色も揶揄われたり、カラコンと言われたりしますので」
そう言って前髪を触る。
「今は夏休みかな?」
「はい」
「なら大丈夫だね」
何が、と思うが止められたのが理容室的な場所だったのでアレだ。えっ、と兄様を見る。いらっしゃいませ,郭嘉様、と出迎えたスタッフに、兄様は慣れたように片手を上げてからスタッフに口を開いた。
「私はこの子にスーツを買ってくるから、色々と頼みたいのだけれど」
「スーツ、ですか?」
「本当はドレスを着て欲しいのだけれどね、嫌がるだろうし……こんな顔だから男性用のスーツの方がサマになる」
兄様はそう言って私の目元を隠した前髪を片手であげる。私は眩しくて目をぱちぱちと瞬いた。
「なるほど、わかりました。あとはお任せください」
「あの、兄様……?」
「ふふ、阿李、またあとでね」
そうにっこりと笑った兄様に私は兄様とスタッフを見比べる。スタッフたちは「兄様!」と声を上げた。そのまま促されるように椅子に座らせられたのであるが。


そういや兄様私のサイズ知らないはずでは?と、思ったのだが、買ってきたのはピッタリのサイズだった。何故……?と首をしきりに傾げては見る。勘か、それとも女遊びに慣れているからか。まぁ世の中謎にしておいた方が良いこともある。とりあえず着替え終わって外に出れば、兄様がこちらを見た。
「うん、やっぱり貴方達の仕事は素晴らしいね」
そう言ってスタッフを褒めた彼は、サイズも丁度良さそうだ、と頷いた。
「兄様、お金……」
「あぁ、そのあたりは気にしないでいい」
「気にします」
「なら、将来、働いて返してもらおうかな」
いこーる、とても高いものでは。昔も簪をもらった時、似たようなことを言っていた気がする。兄様は最後に持っていた簪を私のお団子にさした。しゃらしゃらと揺れるタイプの簪は李の花があしらわれていた。鏡に映るそれはいかにも高価そうである。
「兄様、高価なものでは……!」
「さて、何年私の元で働いてもらおうかな……阿李がこれを返すには、十年……二十年……」
その言葉に私は顔を真っ青にさせる。やはり、高額なものでは!!
「働きますけども……!そのような高額な……!!」
そうワタワタとすれば、彼はまたクスクス笑って、「冗談」と告げた。彼は私の肩に手を置くと、耳元に口を寄せた?
「簪は、再会を祝してちょっとしたプレゼントだから気にしなくていい」
「わっ、耳元で話さないでください、くすぐったいです」
「ふふ、我が妹はやはり色気よりも違うものだね。さて、阿李、食事に行こうか」
そう言って郭嘉殿は私の手をひいた。私はスタッフさんにお辞儀をする。またのお越しを、と言いながら手を振られたが。

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目の前にいるのは曹操様である。はわわ、この時代になってもかっこいい、と私ははわはわする。目を見開いてこちらを見た彼に、彼らに私は戸惑う。李子殿?李子殿では、とざわざわと騒がしくなる周りに、私は体を固まらせる。兄様が背中を押す。私は彼を見上げた。大丈夫、と告げた彼に私はもう一度曹操様を見た。お久しぶり、ではないのだろう。兄様の、郭嘉殿の例を見るに。私は綺麗に挙礼をする。
「曹操様、遅れてしまい申し訳ございません。李子、ただいま帰りました」
そう言って頭をさげれば、彼は「顔をあげよ」と告げた。私が彼を見上げれば、彼はふっと笑って、私の頭に手を置いた。
「お主にしては遅い戻りであったな、李子よ」
その言葉に私はまたはらはら涙をながす。
「申し訳、ございません、」
「良い。お主のおかげでかなり被害は抑えられた」
曹操様はそう言って涙を拭うと、お主は誠に愛い奴よな、と告げた。まぁ、夏侯惇殿な孟徳!としかったが。夏侯淵殿がこちらを見る。
「……李子、お前、何歳だ」
「?16です」
「じゅうろ!?」
夏侯惇殿が,というか一部の将兵が目を白黒させる。私は首を傾げて兄様をみる。兄様は、まぁ李子は昔から大人びて見えるからね、と告げたが。そうじゃない。兄様方の歳を知りたかっただけである。息子よりは年上だな,と告げた夏侯淵殿が口を開く。
「なら、まだこれから、か?」
「淵、どうした?」
「いや、惇兄、李子ってもうちょいでかかったろ。いまはあの時に比べて栄養状態もいいし、もうちょい身長が伸びてんじゃねぇかって思ってたんだよ」
その言葉に私はそっと目を逸らす。それはまぁ理由はある。兄様が「夏侯淵殿、李子は昔よりは少し伸びていますよ」と告げた。私は余計なことを言うなと彼をちょっと睨む。
「いやだって、前は殿や荀攸よりちょっと小さいくらいじゃなかったか?」
「それは今でいうシークレットブーツを履いてましたからですね。7センチくらいの」
「兄さ……郭嘉殿、何故バラすのですか……!秘密にしてくださっても良いでしょう!」
「私は秘密にして欲しいとは言われていないからね」
それは、そうだが。
「しかし、郭嘉、李子をどこで見つけた?」
「オンラインの戦略シュミュレーションゲームですよ。先に荀攸殿が勘付いて私に知らせてくれました」
そう言った兄様に私は辺りを見渡す。攸兄様もその隣にいるケ兄様も変わりがなさそうだ。私はニコリと笑って手を振る。二人とも手を振りかえしてくれたのでほっこりしたが。
「李子よ、今はどこに住んでいる?」
「母親が日本人ですのでーー」
と言っていたら着信である。父親からだ。曹操さま達断ってでれば、父親だ。
「もしもし?李子?」
「どうか致しましたか?」
「母さんが拗ねて先に帰ると言って飛んで帰ってしまったんだ」
「……何かありましたか?」
「生憎今日から俺も出張でね。そのことに拗ねてしまったらしい」
「しかし、母親一人で出国やチケットなど難しいと思うのですが……」
「その辺りは俺が手配したよ」
にしては、私に何も連絡がない。ひとこと腹が立つやら、同じホテルに泊まらせてほしい、やらと言われそうだが。私は眉間に皺をよせた。
「李子は今どこに?」
「知り合いの方に、食事に連れて行ってもらっています。帰国の際もそちらの方に手伝っていただく旨になっていますので、父さんは出張に行ってくださって大丈夫ですよ」
「しかし、心配だ。どう言う集まりかな?」
「元は編入する制度や奨学金制度、就業インターンなどの説明会です。話があった方にお声掛けいただきました」

category:中華組関連(msu・oa)