ネタ帳vol.3

2025年ネタ帳8:爾に出ずるものは 1

08/12 14:15 
・李子の荀攸が養父な現代転生if

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いいこいいこ、と頭を撫でてから、ハッとする。隣にいるのはわたしの親友である元直ではなく、異なる世の徐庶殿である。困ったようにしているのは、まぁ彼が年上だからか。しかしながら、わたしが手を離せば少しだけ残念そうにする、のでもう一度頭を撫でてから手を離して笑った。
「元気出ました?わたしの幼馴染はこれで元気が出るんですが」
「……うん、ありがとう。元気が出たよ」
「貴方には貴方の良さがあります。自分が驕らないためにも比較は必要だと思いますが、『偶に』に止めておかないと疲れてしまいますよ。お互い自分にできることを頑張りましょう」
そう言って少し笑っておく。彼は俺のできること、か、と繰り返して、わたしを見下ろした。
「うん、俺にできることを頑張ってみるよ」
と告げた彼は迷いがなくなっていそうである。

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あああー、お酒を飲んで饒舌になってらっしゃる。つらつらつらと流れるのは私への賛辞であったり、自分の不甲斐なさ的なものだ。私はこうなると聞き役に務めるので聞いておく。
「荀攸殿は、心底真面目でいらっしゃる」
「俺はそんな……」
「そう卑下されずとも……貴方は曹魏にとって必要な方であることには変わらりません。優秀な方が多い曹魏でそれを纏めているという貴方が優秀でないはずがありません」
「李子殿……」
「さて、明日に響いてはいけません。そろそろ戻られた方が良いでしょう」
と言いながらお勘定をすまし、彼を陣地に連れ戻す。

ある日は諸葛亮殿、ある日は郭嘉殿、ある日は周瑜殿、荀ケ殿などなどなど、……と言うふうに私に愚痴りになのか褒めて欲しくてくる軍師の相手をしていたら、君主陣に私がちょっと疑われたので、私の世界の文献を引用しつつ他者を褒めてるといいことあるよ、軍師褒めてるだけなので褒めてあげてね!と言う話にしておく。これでしばらく各君主陣が褒めるから私は手が空くはずである……と思ったのであるが。
「龐統殿、少し匿ってください」
そう言いつつ私は龐統殿の近くの茂みに入る。なんだい?と首を傾げた彼であるが、誰かが来たのを見て黙った。私がどこへ行ったのかと問われた彼は、奥にいったけどあのまま抜ければ違う陣地だねぇ、と言う話にしてくれたようである。彼らの足音が十分に遠ざかったあと、私は茂みから顔を出す。
「助かりました、ありがとうございます」
「お前さんが人から逃げるだなんて、珍しいねぇ」
「何故か私に人物評価を聞きにくる人が増えました。一緒に行動したこともない方の評価などできかねます」
「お前さんがあっしらを色々いいように言ってくれるからだろうけど……」
「皆さんに関しては良いようにというよりはそのまま思っていることを告げているだけなんですが……」
そう言いながら隣に失礼しても?と聞く。あぁいいよ、と許可をくれたので私は座った。
「お前さんが蜀に来てくれたら孔明も助かるんだろうけどねぇ」
「諸葛亮殿には貴方も徐庶殿もいますし、法正殿や姜維殿と言った方々もいます。いつも不思議に思いますが、法正殿以外皆さん自分を卑下しすぎでは?」
「おや、お前さん達にはそう見えるかい?」
「うーん……卑下というよりは、まぁ、よく諸葛亮殿が優秀すぎるみたいなことを多々聞きますね。どちらかと言えば彼は内政向けでしょう?戦略や戦術、色々な面を考えれば、それぞれに優劣がつくと私は判断しますが。そんな貴方達がいるのだから私は必要ありませんよ」
そう言って彼を見る。彼は一瞬困った顔をしたが。
「あっしがお前さんがいた方が嬉しい、と言えば迷惑かい?」
うっ、その口説き文句は私にちょっと効くぞ。私は結構士元が好きなのだ。
「いえ、素直に嬉しいですよ。私は龐統殿のまとう雰囲気が好きなので。特に龐統殿がのんびりされる時は」
そう言って笑う。
「じゃあ是非ともあっしをのんびりさせておくれ」
「では、仕事がなくなるまで仕事をせねばなりませんね」
ふふふ、と笑いながら返す。それはそう、と返されたが。
「まぁ、しかし、龐統殿がいうように、いつかは私も身の振り方を考えねばなりません。このような事態が長引けば、私はどこかに所属せざるを得なくなるでしょうから」
「……劉備殿に着くのがいやかい?」
「いいえ、そう言ったわけではありません。かの人はとても良い方です。立派な大志があり、人情を慈しむ心があり、どこまでままっすぐで、懐が深くいらっしゃる。まるで陽の光のようです。偶に感情に走られますが、それにしてもなによりも人間らしい魅力的な方ですから」
そう言って私は水面に目を向ける。
「実をいうと、私の世界でも三つの派閥で揉めていたことがございます。それぞれ、似たように、緑、赤、青の派閥です。それぞれ似たような気質と言って良いでしょう。まぁ、今はやれ賭け事やらやれ学問やらと武力的な衝突はありませんが……昔は争っていた」
「……お前さんと、寵沙、陸治殿は違う派閥の出だね」
龐統殿の言葉に私は彼を見る。
「わかりますか?」
「わかるさ。すこし毛色が違うからねぇ。あの懐っこい坊やが緑の派閥。陸治殿は赤だ……と、なると、お前さんは、青だね」
「ええ。私は青を纏う方々に命を助けられ、養子に迎えられて今に至ります。だから、青の派閥に入りその頂点に君する方をお支えするのは当然のことです」
李子殿は義理堅いねぇ、と龐統殿はいう。私は、命を助けてくださったのだから当然では?と返す。
「しかし、参ったことにわたしの友人達はいつも緑の派閥です。所属する派閥をめぐって喧嘩したこともあります」
そう言って目を伏せる。今はもうそんなことはないが、まぁー、前世では三人からなんで魏にいるのか的なことを散々言われた。私はまた川面をみつめた。
「私の世界が戦乱でなくてよかった、と思います。……それと同時に、この世界が人間同士の戦乱に陥るのであれば、どこかに属した私は、貴方達の誰かと敵対せねばならないということも理解しています。しかし、あまり考えたくありません」
水面が風に揺れる。龐統殿の釣り糸が揺れる。川の流れが落ちた葉を遠くに運んでいく。甘い人間でしょう?と困ったように言えば、彼はそれは誰だってそうさ、と返した。
「それを隠す術があるだけじゃないかい?」
それはそうである。
「……戦乱は嫌なものですね」
「……戦乱を好きな人間は少ないねぇ」
それもそうだ。


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ハンドクリーム出しすぎた。そう思いつつ手を見る。勿体無いが、誰かにつけるのも気が引ける。ちなみに近くにいるのは蜀の軍師であるし、法正殿が一番近くにいる。
「なんです?それ」
「あぁ、法正殿、そういえば私に恩を返したいと言ってましたね」
「あぁ、言いましたね。恩を返される覚悟はできましたか?」
「返されるので素手を貸してください」
そういえば彼は不思議そうにしながら手袋をはずす。私はそこに容赦なく出しすぎたハンドクリームを塗る。「あぁ?」と凄まれたが気にしない。ちなみにこういうふうに現代では雑に恩を売り雑に恩を返されている。こっちの法正殿も手荒れしてるなぁ、と思いながらハンドクリームを塗り込んで、手を離す。
「ご協力ありがとうございました。助かりました。貴方がいないと無駄にするところでした」
「李子殿、それはいったい……」
「私の世界の手荒れを防ぐ薬です。出しすぎたので、法正殿に塗りました。あ、月英殿にお渡しされますか?何故かたくさんあります。おすすめは夜寝る前に手にぬるそうです。ただ、香りにも好みがありますし、皆さんには香りが強いかもしれません。法正殿はしばらく風上に立たない方が良いかもしれませんね」
そう言えば、法正殿がすん、と自分のてを嗅いだ。
「あぁ、確かに貴方からたまにする香りですね。そんなに強く匂いませんが、まぁ確かに用心することに越したことはない」
諸葛亮殿が興味を持っているのでとりあえず鞄から幾つかに絞って彼の好みを合わせて選んだもの渡しておいた。ちなみにその後を龐統殿から聞いたが、法正殿は風上に立ちまくり、そのやりとりを知らない徐庶殿達が私の香りがすることにかなり困惑していたらしい。何やってるんだあの人は。月英殿には感動されて夫婦揃ってお礼を言われた。


「李子殿なんでハンドクリーム大量にあるんだ」
「リップクリームとお菓子もあります」
そう言って鞄をみる。まぁ、私が何故か異世界に飛ばされることが多々ある。不本意だが。それを見かねた兄様あたりが作った四次元ポケット的な不思議な鞄だ。確か私の世界で物を足せばこの中に物が追加される産物だったはずである。恐らく嘉兄様かケ兄様あたりが追加し、お菓子は攸兄様改めて父様が追加していると思われる。
「前に酷く手荒れして帰ってきたからだとおもいますが……あとは兄様が使わないハンドクリームも入ってそうですね」
プレゼントされてもいらないとすぐ私に横流しします、あの人。
そう言って鞄を整理するために中身をだす。見た目より随分と荷物が入っている。本当にちょっとした四次元ポケットである。
「心配するとこ違うくない?」
「まぁ、使用してるのを見て生存確認も兼ねてるでしょう。この辺りは兄様がいらない男性向けの香りですね。兄様の香りは決まっていますから。お好きなのを持っていってください。手が荒れて武器が持てませんでした、では、いけませんからね」
二人はハンドクリームを色々みて吟味している。荀ケ殿が通りがかったらしい。
「李子殿、こちらにいらっしゃいましたか」
「どうかされましたか?」
「いえ、少し貴方っお話ししたく、食事でもとお誘いしたかったのですが……同郷の方と過ごされていましたか」
「気にしないでください。こいつのおせっかいと鞄整理に付き合わされてるだけなんで」
陸治殿の言葉に私はなんとも言えなくなる。荀ケ殿がこちらを見下ろした。
「見たことがないもの、ですね。そちらは?」
「俺たちの世界の手荒れを防ぐくすりみたいなもの、かなぁ」
荀ケ殿の問いかけに寵沙が答える。
「無香料ないのか」
「無香料は父親が使うのでないです」
「なら香りがマシなのくれ」
「ウッド系がいいならこちらです」
そう言ってハンドクリームをわたす。ありがたくもらってく、と言って陸治殿は立ち上がると、荀ケ殿をみた。
「俺は鍛錬いくんで、どうぞごゆっくり」
「じゃ、俺はシトラスにしとこ」
そう言って寵沙も続いて出ていく。別に気を回さなくてもいいのになぁ、と思いながら荀ケ殿を見上げた。
「荀ケ殿も宜しければいかがですか?」
「よろしいのですか?」
「親族がよってたかって私に持たせたがるのでたくさんあります。ただ、香りがついている物ばかりですが……」
「香り?」
「ええ、少し手を……ああ、いえ、薬をあまり不用意に皆さんにそう言ったことをしない方がよいですね」
「いえ、気にしません。貴方達が使う物であれば危ない物ではないとわかります」
そう言って手を差し出した彼に私は彼がまだ好きそうな香りを選び、彼の手の甲にのせる。「これを塗り込む感じです」と、説明しつつ、試しに彼の手に塗り込んだ。
「荀ケ殿、李子殿、随分と楽しそうにしているね」
不意に聞こえた声に私はそちらを見る。なるほど郭嘉殿である。ちょっと不機嫌そうであるが。
「郭嘉殿……」
「ちょうど良い時にお越しくださいました」
「……なにかな?」
「私の世界の手荒れを防ぐ薬を荀ケ殿に試していただいていました。よければ郭嘉殿もお試しください」
「手荒れを防ぐ薬?」
「……ええ、李子殿が試してくださっておりました」
荀ケ殿の説明に、郭嘉殿が「おっと早とちりだったかな」と言いながらやってくるので首を傾げる。なにがだ。
「郭嘉殿もお手を貸していただいても?貴方も女性に触れられるのであれば、手入れして損するわけではありませんし」
私はそう言いつつ郭嘉殿がまだ好きそうな香りを選ぶ。荀ケ殿が「李子殿は」と口を開いた。
「郭嘉殿がどのような場所によく行かれるのかわかっていらっしゃるのですね」
「花のように綺麗な女性がたくさんいらっしゃる夜のお店でしょう?」
「……嫌悪感を抱かないのですか?」
ダイレクトな問いかけである。まぁ嫌悪感を抱く人は男性であれ、女性であれ結構いるのは確かだ。
「特には。兄の一人がそういったお店によく足を運ぶのもありますが……そこで働いている方々も事情があってそこで働いている方もいらっしゃるでしょうし、嫌々働いてらっしゃる方もいれば、誇りを持って好きで働いてる方もいらっしゃるでしょうから」
「おや、詳しいね。お兄さんから聞いた、のかな?」
郭嘉殿の問いかけに私は目を伏せる。
「……いいえ、一度そういった場所に売られたことがある身なので」
私はそう言って甘めの香りがするハンドクリームを彼の手にとり、塗り込む。
「……売られた?」
「はい。生活に困窮したのか、借金を抱えていたのかはわかりませんが、幼い頃に実の両親にそう言った店に売られたことがございます。まぁ、商品として並べられはすれど男女のあれこれはする年ではありませんし、主にそこにいる女性の世話係をしていましたが……」
荀ケ殿の眉間に皺がよる。私はそれを無視して口を開く。
「店には色々な方がいらっしゃいました。私と同様に身売りされた方、自らの借金を返すべく働く方、男性とそういったことをすることで心の安寧を求める方、それしか自分の生きる価値が見出せない方、自らの美容に自信があってそのような世界に飛び込んだ方。事情はさまざまにしろ、そういった方にとっては郭嘉殿のように上手に遊びにきてくださる方は有難い存在でしょう」
兄様もそうであるが、その辺りの駆け引きが酷く上手いのである。だから女性たちが争うことはないに等しい。
「まぁ、私はその後役人の方が助けてくださり、孤児院が併設されていた学舎に預けられましたが……」
「貴方の兄上達は一体何を……」
「兄たちとは血が繋がっていません。孤児院で私のことを気に入ってくださった方がいらっしゃったのですが、今いる父や兄はその方のご学友やご友人達ですね。私が勝手に兄のようだと慕って、彼らが私が兄と呼ぶことをよしとしてくださっているだけです。最初は気に入ってくださった方に引き取られる予定でしたが、彼が逝去したため、兄と慕う方の一人に引き取られました」
これくらい塗り込めば大丈夫だろう。
「郭嘉殿、香りは嫌ではありませんか?」
「いいや、とても甘い素敵な香りだ。……あまり、貴方のそういった身の上話は聞かなかったけれど……あまり話したくはなかったかな?」
「いえ?聞かれないので話さなかっただけです。曹操殿や袁紹殿、袁術殿は知ってらっしゃいますよ。面と向かって聞かれたので」
そう言えば荀ケ殿が何故と聞いてきたが、袁紹殿は仕官して欲しい的な誘いからだったはずだ。曹操殿は詩の話を彼としたころだろう。
「袁紹殿に呼ばれて伺った、といいますか……曹操殿は庭園にいらっしゃったので。袁紹殿は何か思うところはあるようですが、それを言わないあたり彼はできた人ですね。近くでたまたま聞いていた袁術殿は穢らわしいもの扱いしてきますから。曹操殿はそんなことはまったく気にされる様子はありませんね。何かとあると、我が軍門に加わるか?と聞いてくださいます」
ふふふ、と、私は笑う。
「私達もそれを心待ちにしていますよ」
「ありがとうございます。私もこのまま帰れないのであれば、身の振り方を考えないといけないとは思っているのですが……私が戻るのが先か、はたまた兄や友人達が乗り込んでくるのが先か、私が覚悟を決めるのが先か……」
そう言って目を伏せる。
「名族の道を歩むには私は出自がよろしくなく、一族の道を歩むには私は家族というものを知らず、仁の道を歩むには我が身は穢れ……覇の道を選ぶには皆様と仲良くなりすぎてしまった」
困った顔をして笑っておく。
「自分の弱さに嫌になります。割り切って仕舞えば良いのですけどね」



category:中華組関連(msu・oa)