ネタ帳vol.3

2025年ネタ帳73:隠れ里の息子と木の葉

08/12 15:20 

「俺は絶対にお前を許さない」
だって、お前がいなければ俺たち家族は一緒にいられたのだ。実の父親から俺への認識が、容姿だけ似た養子になることはなく。母親の存在をこの里の人達が忘れることもなく。ただ、この里の一員としていたはずなのだ。母親は割り切っていた。でも俺はそんなに簡単に割り切ることなんてできない。周りが俺とあの女の間に割り込む。母親がしたことをゼロにしたくせに、母親がしたことよりも原作よりもこの世界の人々を巻き込んで下方にも連れ込んでいる。挙げ句の果てに自分の思い通りにならなかったから里抜けしたのだ。
「お前がしたことを絶対に許さない。お前がいなければ俺たちは家族だったのに!」
あの女が俺を見る。
「もしかして、貴方、あの女の……!」
拘束を外し、あの女に飛び掛かる。あの女の呼びかけに、背後から現れた黒い化け物が触手のような物をのばす。咄嗟のことに動けずにいれば、父親がかばいーー地面に口寄せ紋があらわれーーポンっという音とともに母親が現れた。母親が襲ってきた触手を持っていた刀でぶった斬ると俺達をかついで木の葉の里近くに下ろす。
「よかったー、願掛け成功してた」
「母さん……?」
「こーらー!無茶したな!」
そう言って叱るのは母さんである。なんでここにとか、父さんとか、色々ぐちゃぐちゃになる。母親は俺の視線を合わせて口を開いた。
「お母さん心配性だから、子供が同じ目に遭うんじゃないかと思ってさ……危機的状況になったら口寄せされるように願掛け紋っていう形式仕込んでたんだよね」
はははー、と笑った母親に俺は彼女の服を握る。その様子に七代目が母親をみる。
「イブキの母ちゃんか?」
「ん……あ!ナルトくんが七代目してる。いやぁ、私結局、ナルトくんが七代目してる時見てないんだよね。無事七代目になれて……なんか感慨深いな。おめでとう」
母親はそう言ってまた笑った。ナルトくんと呼ばれた七代目は目を瞬いて、おう?と首を傾げた。母親はそこで父親を見上げる。
「あ、カカシ先生も六代目退任おめでとうございます。幸せにしてます?」
そう言った母親に周りが警戒した。七代目だけがそんなに警戒してないが。母親はそれを見てまたケラケラと笑った。
「あっはっは、記憶にない人間から祝われたり幸せか聞かれても困るか。そりゃあそうだ!……あ、君も久しぶりー。いやぁ、息子が悪かったね」
母親はそう言ってあの女をみる。
「君のせいで散々でメンタル落ち込んだり自暴自棄になりかけたりしたけど、君のおかげで今は色々許してくれて色々心配してくれて大好きな人を大好きなままでいいよって言ってくれる素敵な人と会えたんだよね」
母親はそう言って腕を組む。あの女は「はぁ!?」と叫んだ。
「君がいなければ繋がらない縁がそこにあったわけだ。でも私の頑張りをゼロにされて許せるかと言われたらそこまで私は強くはないんだけど、まぁそれも個人的なものだしとりあえず置いといてさー」
母親は笑いながらそう言って女を見た。確かな殺気を込めて。
「息子にその化け物差し向けてることは許さない」
ゾッとしたのか、女は一歩下がる。
「貴方の願いのために何人の人を供えた?」
母親の言葉に女は見るからに動揺した。
「いや……何人この里の人を葬った?」
母親は俺の手を外させると、刀にチャクラを纏わせ消える。するといきなり宙に現れて、怪物を頭から斬った。雄叫びを上げたそれに、女は焦った顔をする。
「神様の使いになにするの!」
「悪いけど自分の願望を叶えるために他人の命を奪う物を神様の使いとは思わない」
母親が印をさらに素早く組む。そうして手をついた瞬間、木遁が発動したらしい。生えてきた木がそれを突き刺してーーその化け物は叫び声を上げ、口だと思う場所から何人もの死体を撒き散らした。母親は死体に近づく。神様と呼ばれたモノはぎゃぎゃぎゃと叫び声をあげて人を撒き散らしながらその木から離れる。「神様!」とあの女が叫ぶ。
「……いや、木の葉だけじゃないな……民間人もいるのか……」
母親はそう言ってあの女をみる。
「君、これ里外との戦火になりかねないのわかってる?私の努力はもうこの際おいといて、ナルトくん達の努力も潰す気?」
「なに、い、」
「里の人間だけじゃなくーー他の里の人間を食べさせてるなら他所の里を巻き込んでる自覚ある?そしてそれを他の里が知ってみろ。均衡が破れて戦争入りなんて可能性もある。そのことも考えての行動かな?」
母親の言葉に女は顔色を悪くしてーーその場から逃げ出すように走って消える。神様とやらもその後を追って黒いもやとなって消えた。母親はそれを見送ると、ため息をついた。そうして両手をぱちん、と合わせて木遁を解除したらしい。
「まぁ、息子のピンチは凌げたからオッケー!シカマルくん、落ちてきた遺体の照合よろしくー」
母親はそう言ってシカマルさんに向かってひらりと手をあげた。シカマルさんが怪訝な顔して口を開く。
「オッケーじゃねぇだろ」
「それはそう。いや待てよ、確かサイくん警務部お願いしてたな……遺体照合はサイくんの仕事か。ま、いっか!」
あっはっは!と笑った母親に、さらに周りが警戒を深めた。母親はそれさえも笑いながら口を開く。
「別にいのちゃん達に頭の情報覗いてくれてもいいよ。多分今の君たちには信じられないだろうしね」
七代目が母親を見下ろした。
「信じられないってどういうことだってばよ?」
「うーーん……ま!簡単にいうと!」
母親はそう言って七代目を見上げる。
「彼女の連れてたアレが原因でおきてた事象がなくなっちゃったんだよね!彼女が都合がいい時間まで遡っちゃった、と言えるかな!」
母親はそう言ってケラケラ笑う。
「だから、私からしたらはじめましてではないけど、みんなからははじめまして、だし、はじめましてするかな」
母親はそう言ってやれやれと息を吐くと、緩く手を上げた。
「はたけナマエでーす。君たちと同期から上忍に上り詰めて各一族と丸くなるよう調整したりシカマルくんとカカシ先生の補佐して逆プロポーズ決めた女です」
笑いながら告げた母親にナルトくん達が叫びーー父親がみるからに困惑している。
「まぁそれなりに幸せに生きてたんですけどね、あの女がやってきて時間が巻き戻るという意味がわからないことがおきまして。私は君たちの記憶からなくなったし、強制的に異世界飛ばされちゃって、まぁなんやかんやで今!」
明るい感じで笑いながら告げた母親に、シカマルさんが怪訝な顔をしている。
「記録にも記憶にもないよ。だって時間が遡って消えた人間だからね。いなかったことになってるから。もしくは書類上は小さい頃に死んだことになってるかもね。ってことを含めて頭の中見てもらった方がはやいよ」
母親はそう言って腕を組む。七代目が母親をみた。
「そんな忍術があるってことか?」
「いや、この世界にはないね。あの女が元いた世界のモノだよ。私が異世界で色々と原因を探した時、あの化け物に辿り着いて、あの化け物が人間の命を対価に呼び出した人の願いを叶えてるってわかったんだけど……なっちゃったものはどうしようもないみたいなんだよね。口寄せしていいなら詳しい人呼ぶけど、私の身元洗った方がいいんじゃない?」
「そこまで行くと逆に怪しく見えるわよ……」
サクラさんの発言に、母親は「それもそう!」と頷いたが。
「……お前、何故千手の紋をつけてる?」
「あ、サスケくんも久しぶりにみたなぁ。これは元当主してたから。結婚するときに親戚に引き継いだけど」
「は?」
「まぁ里を離れて旅する分家だったんだけど、特異体質を見出されて当主に担ぎ上げられた身だから。いやぁ、シカマルくん、本当にこの世界大変だったでしょ。あの女がいなければ、ナルトくんの下にうちはと千手が揃ってたし、私が対里内一族対応してたからその分他の仕事に時間回せ出たんだけど……」
母親はそう言って頭を掻いた。
「……綱手のばあちゃんの孫ってことか?」
「いや、私は2代目様の血筋だから……綱手様とはまぁ親戚だね!」
母親はケラケラと笑った。そう言って目を伏せる。
「そちらにいらっしゃるのは、うちは家当主うちはサスケ殿とお見受けします。私は千手ナマエ。貴方と私の一族は色々あったし、過去を水に流せとは言わない。それは千手(われわれ)の奢りでしかない」
真面目な母親である。
「我ら一族の、幼き貴殿に対する無礼、千手を代表しお詫びいたします。もし、貴方さえ良ければ、」
そう言って母親はサスケさんに手を差し出す。
「黄色い陽の元、お互い大切なものをもう何も失わず、共に歩むことをお許しください」
彼はその手をじっと見つめる。そうして、仕方なさげに手を重ねた。それを母親は満足気に目を伏せた。そうして、明るくケラケラと笑った。
「ま!私は記憶にも記録にもなくなった結果、私は千手の人間じゃないんだけどね!」
俺はため息をつく。母さんはよく笑う人である。

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母親に飛び込んだグルコに、母親は目を瞬く。
「知ってるんだよ、知ってる匂いなんだよ、知ってる大好きなんだよ、でも、わからないんだ」
その言葉に母親は少し固まった。瞳を揺らした母親に、言葉を続ける。
「ずっと帰ってくるのを待ってたんだよ、でも、みんなわかんなくて、みんな知らなくて、でも、さみしかったんだ」
「……そっかぁ……」
母親はそう言ってグルコを撫でた。
「そっかぁ、覚えててくれたのかぁ」
声が揺れる。父さんは少し目を見開いてその光景をみている。
「私は大丈夫だよ、もう大丈夫。グルコももう大丈夫だよ」
そう言って母親はチョビを下ろす。
「私はナマエっていうの。イブキのお母さんだよ。またよろしくね」


category:隠れ里の人たち(nrt/MHR)