ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳142:君僕主たちと勝利の女神たち
08/12 16:30
「可愛いだろ?」
「ごめん、苗字さん、マジで、何処が?」
そう言って顔を顰める。周りも似たような顔をしているあたりクソガキイメージがでかいのだ。
「可愛いじゃないか。ああでもしないといけなかったし、ああでもしないといけないんだろう。あの歳で三代企業のトップになったんだ。普通はプレッシャーで折れる」
苗字さんはそう言ってシュエンの頭をぺちぺちと撫でた。ちょっと!と本人は噛み付いたが。
「あんたまた子供扱いして……?」
「いやか?」
そう言って首を傾げた彼女に、シュエンがぐぬぬという顔をした。
「アンタ本当にいい度胸してるわよね……!死んだら速攻でニケにしてやるんだから!」
「生憎今は死ぬ予定がないな。量産型になるか失敗でもするか」
「するわけないでしょ!アンタ私を舐めてるの!?」
「舐めてない。技術は流石だといつも思っている」
「当たり前でしょ!!」
うーん、いい感じにかわしてるなこの人。そう思いながら、苗字さんは「偉いな」とシュエンの頭を撫でた。苗字さんといる量産型ニケの1人が、指揮官人たらしなので……と説明する。というか。苗字さんのチームって本当に量産型ばっかなんだな。それを同じく思ったらしいエクシオンと社長が彼女をみた。
「本当に量産型ばかりだな。譲ってやったらどうだ?」
「いや、彼女達で事足りている。彼女達のせいにする奴らが悪いだけだ」
彼女はそう言って肩をすくめた。
「あんまりやりすぎるといらない目が向くから、ほどほどにしていたんだが、」
「ほどほど」
周りが繰り返す。アンダーソンがいう、戦績も可もなく不可もなし、普通と言っていたが。
「……確かに普通だが、お前の場合はニケの損傷率が圧倒的に低い。データに埋もれてわからなかったが」
アンダーソンがそう告げる。俺は彼女をみた。
「あー苗字さんマジごめん。この人副司令……」
「おっと……まぁいいか。お初にお目にかかります、苗字ナマエです」
そう言って綺麗に敬礼した彼女である。おろせ、と言われて彼女は手を下ろしたが。
「権力争いその他諸々が面倒なので」
「損傷率が低い理由にはなってないな」
「よその子の命をお借りしているんですから、指揮官として……ああいえ、私としては当たり前ですが」
「ニケだぞ」
「ええ。でも彼女達の感性は人間と何一つ変わらない」
彼女はそう言ってから目を伏せた。そうして、量産型達をみる。
「今から君たちが嫌な気分になる表現をわざと使うから耳を塞げ」
そう言えばちらほら耳を塞いだり、塞いであげたりする。それを見届けて口を開いた。
「適切な手入れをした武器と手入れを怠った武器の性能は変わります。そして、武器とは基本的に用途に合わせた使い方があり、適材適所でつかっているだけです」
「適材適所?」
「会社、彼女達の持つ武器……それらによって必ず異なる長所が存在する。私はただそれらを当てはめているだけ。1キロ離れた敵をハンドガンで対処しようとする馬鹿な指揮官が多すぎる」
彼女はそう言って眉間に皺をよせた。
「差し出がましい言葉になりますが、洗脳まがいの教育をするくらいなら武器の違いを教えた方が有意義では?自己肯定感だけが強い馬鹿、自分の力量がないだけなのに全て彼女達のせいにする馬鹿が量産されるだけです」
彼女の言葉はもっともだろう。アンダーソンは「彼女達の扱いを変えろと?」と言い返す。
「思考の差は色々ある。それはもう埋まらない差だ。正から負へ認識を変えるのは楽だが、負から正へ変えるのは難しい。しかし、兵器だとしても敬意を払うべきだと思いますが」
彼女はまっすぐにそう言うと、何かジェスチャーした。彼女のニケ達が耳を蓋するのをやめた。
「なんにせよ、被害を抑えた方がいいのには変わらないでしょう?」
「……それはそうだ」
「よくシュエンと一緒にいるな」とこぼしたまわりに、それはそう、と俺は頷いた。
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めちゃくちゃわかった。なんで彼女のニケ達が量産型なのに強いのか。連携が素晴らしいのだ。記憶にある元いた場所の特殊部隊のそれだ。無駄という無駄を削ぎ落とした行動。余計な行動が一切なく、統率が取れている集団。取れすぎというくらいに。まぁ、それでも対処できる数に限りはあるようで、対処できないうちのこしをーー苗字さんが、いたって普通だというように、指揮官が唯一扱える拳銃で撃ち抜いた。
おお、う、え!?あ!?
「うおあああ!?」
「おっと……副司令達もいるんだった」
そう言って彼女はまた装填する。
「……この事態だ、目をつぶる」
「感謝します。ではいつもどうりに」
彼女はそう言うと近くにいたニケから武器を受け取る。いや待て、なんで二つあるんだとか思ってたけど。ネルケ曰く古い銃とか言われてたけど。そうして彼女はそれを構えると口を開く。
「コンタクト!」
嘘だろ交戦始まったんだけど。
「え、苗字さんマジで何?は??」
俺はそう言って彼女をみる。実はニケだったりする?と聞けば、そんなわけないだろうと返された。
「というか苗字さん、アーク生まれだよな?」
「いや?」
彼女はそう言って小首を傾げた。いや???いや??って言ったかこの人。
「ちょっと待って、貴方指揮官よね」
「あぁ、そうだな」
「アーク生まれじゃないのに?」
「ああ、『私』はアーク生まれではないが、この体の持ち主はアーク生まれだろう」
彼女の言葉の意味を噛み砕く。d-waveの影響かと思ったが、違うのかもしれない。この体?とアンダーソンが聞き返した。
「私の世界では、どういう法則があるかはわからないがーー意識を失った人間は並行世界の誰かとして意識を持つことがある。恐らくは並行世界の自分だという説が今のところ一番だが。私は元いた場所で意識を失った結果、死にかけた指揮官であった女の意識となってこちらで目覚めた」
俺はその言葉に息を詰める。今の俺じゃん。ということは元の世界で生きてんの俺。
「ええっと……」
「まぁ、ややこしいな。二重人格だと思ってくれ。主人格が死んだと思って眠っているから私が出ている。その設定が異世界だか過去だかの人間ということだ」
そういう扱いは慣れてる。
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