ネタ帳vol.3

2025年ネタ帳167:君僕主(大人)とジョンと

08/12 16:48 
「お前はいくつか勘違いしている」
ジョンさんはそう言って彼をみた。ここに立てこもったテロリストに、彼は葉巻を吸った。最後に一本くらいいいだろう、と告げた彼はもう逃げないし抵抗しないと思われているのか、わりかと自由にされている。ぶっちゃけ諦めないでほしい。一番強い人だろうからだ。
「勘違い?」
「全てを正すのも面倒だが、お前の敗因になる勘違いを正してやる」
余裕綽々という感じだ。私たちはずっと緊張してるというのに。彼の仲間がケラケラと笑った。
「お前の勘違い、の間違いだろう?」
「いや、聞いておいた方がいい。後学にはなるかもしれない」
と、ふざけているようである。彼はいかにもラフな感じでそう告げる。
「医師団だ。もう離れたとは思うがーー不釣り合いな小児科の医師がいたはずだ」
「さぁな、いたか?」
「いたんじゃないか?女だろ」
「女なら捕まえておけばよかったな、こいつのいうように何かと有用だ。産まれたガキの面倒を見せてもいい」
ゾワッとする会話である。デイヴィッドが私を隠すように少し動いてくれた。これでデイヴィッド達がいなければ、私はきっといっぱいいっぱいでパニックだったとおもう。聞いていたジョンさんは険しい顔をする。
「お前たちの手に負える女なわけがないだろう」
彼はそう言って葉巻を吸った。
「なんせお前たちはそいつに制圧されるんだからな」
と、彼が言った瞬間、テロリストたちの真上から人が落ちてきた。正しく真上である。下敷きになった、と私たちが認識したのは離れていたからだろう。近くにいた仲間は降ってきた人が持っていた拳銃とナイフで制圧される。奥にいた人物は銃を投げ渡されたジョンさんが丁寧に処理をした。そうして彼は銃口をその人に向けたがーーくるりと銃を回転させてグリップ部分にした。覆面をつけたその人はそれを受け取る。ジョンさんはまた葉巻を加えた。
「遅かったな」
「仕方ないだろう。私は君みたいに軍務に行ってるわけじゃないんだ。久しぶりだった。あと、葉巻はやめろ、喉頭癌になって喋れなくなる」
女性の声である。その人から彼女は彼から葉巻をうばうと自分が吸いーーむせた。まずっ、と告げた彼女は葉巻を彼に返す。やめろという割に彼に返すらしい。
「どこがうまいんだ」
「吸い方がなってないからな。……外の状況は?」
「ツバメ達が各個制圧してるはずだ。時期に終わる」
「そうか。悪いな」
そう言ったジョンさんに、彼女は彼を指差して返す。
「君、わざとだろ」
「何が?」
「救難信号。わざわざ私によこさなくても君たちだけでカタがついただろう。普段もっと酷い怪我が任務終わらせたりしてるそうじゃないか」
彼女の言葉に彼は肩をすくめた。
「いや?難しかった。俺たちは怪我人だし、人質も多い」
「超人が常人のふりしてて笑う」
彼女はそう言ってケラケラ笑う。彼もまた珍しくふっといきをはいた。
「その装備、敵の追い剥ぎだろう?取っておけ、勘違いされてややこしくなるぞ」
「それはそう。実は暑かったんだ」
彼の言葉に彼女は着ていた戦闘服をぬぐ。普通のタートルネックのシャツだ。そうして覆面をはずす。ふう、と息を吐いた女性に私は目を瞬く。黒髪を結った彼女は灰色の瞳を私たちに向けた。
「う、えええ!?ナマエ先生!?」
「ヤァ久しぶりだな、サチ。元気そうで何よりだ」
「え、先生、小児科医、カウンセラー、え、ええ!?」
そう言ってさわぎ、私はハッとする。先生にはいるじゃん。家族しか知らない旦那さんが。一年に一回何日かしか会わない旦那さんが。
「え?先生、もしかして、ええええ」
「酷い混乱だ」
「待って待って待って、先生、先生の旦那さんは私達の認識で、一年に一回しか会いにこないクソ不倫野郎だったんですけど!」
そう言えば先生は目を瞬きーー笑った。ジョンさんがめちゃくちゃ嫌そうな顔をした。
「まぁ確かに?不倫されていても私はわからないな?」
「するわけないだろう」
「わかってるよ」
「おい待て、お前、結婚してたのか」
余波がデイヴィッドにとぶ。ジョンさんは、悪びれもなく「ああ」と告げた。唖然としている。



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