ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳172:君僕主たちはPWの世界にやってくる(ver2)
08/12 16:51
彼女はいつも1人で海を見つめている。あまり関わりがない子だった。関わりがないといっても、違うグループだからとかそういうわけではなく、彼女は誰ともいないでいつも1人でいた。長い前髪でいつも目元を隠して、休み時間も1人で本を読んでいる。近づきがたい雰囲気だったのだ。
すくなくともこの学校に転入してくるということは、勉強ができなくて進学が難しかったか、何かしらの活動であまり学校に来れなかったか、はたまた、何かの理由で学校に通えなかったかなどの理由の生徒があまりにも多い。私もそうで、私は数ヶ月行方をくらませたことになっているからこの学校に転入してきた。まぁ、実際は世にも奇妙なことがあり、この世界で生きた時間の倍くらいは違う場所で生きていたのだけど。だからかもしれない。彼女の雰囲気が、あの世界にいた傭兵にそっくりだった。孤独になろうとしてるところとか。話しかけたいな、とは思う。けれど、私にはきっかけがいつもなかったのである。何たって、彼女は私と違って運動もできた。勉強も誰の助けもいらない。理数は私の方が高かったけど!それでも彼女は上位にいた。英語もペラペラである。私の手を借りなくても彼女は毎日を過ごしていたのだ。
ーーまぁ、それがこんなことになるなんて、私は思わなかったけれど。
修学旅行の飛行機の中だった。急に光った、と思ったら、乗客のだいたいたくさんが消えた。本当に。それを認識したとき、周りはパニックである。奇跡だと思ったのは飛行機が水平移動をしていたことだ。かくいう私もパニックだった。そんな中、彼女は周りを見渡してそのまますぐパイロットがいる部屋に向かう。私たちにできるだけ後部座席にいるように告げて。それを見て、クラスメイトの中の名寺くんと嘉月くんが彼女を追った。そのあとは、彼女達がどうかしたのかーー飛行機は水面に着陸し、無事に私たちは脱出。近くにあった建物の人たちに助けられた。クラスメイトや先生を含めてたくさんいたはずの人はスタッフ含めて十人余りに減っていた。それよりも驚いたのは、私たちを助けた集団が国境なき軍隊と呼ばれる組織だったからである。それはまごうことなく無くなったフィクションでありーー私がいた世界の過去に存在した組織だった。
彼ら曰く、実験のーー偶然の産物。私も色々資料をみたが、確かにそうとしか言えない。彼ら曰く、私たちの乗る飛行機はいきなり現れて不時着したらしい。もちろん私たちには国籍もない。居場所もない。とりあえず保護されるしかない時、無口な彼女がカズと呼ばれた男性に声をかけたのだ。何かお手伝いします、と。そこからは彼らによって私たちは割り振られた。例えば私はラボに入れてもらい、私たちが来た原因の研究、たまにダンボールを触ったりしている。嘉月くんはヘリの免許があるということで、運送の補佐をしていた。名寺くんは書類系の仕事を、七篠くんという人は訓練に混じって賑やかしをしている。彼女は主に医療班を手伝っていた。よく働く子とは医務官の言葉だろう。
そうして、休みに彼女は1人で海を眺める。お供は人じゃない。一冊の本と、コーヒーが入ったマグカップ。そうしてたまに彼女のそばに泊まる海鳥だけだ。それ以外は誰もよらない。ただ、私と同じように眺めるだけなのだ。
それはこの人も同じらしい。今はまだスネークと呼ばれる(呼ばれたい、かもしれないが)彼もまた彼女の背中を眺めている時がある。気のせいかと思ったけれど、気のせいではない。今も彼女の背中を見つめている。哀愁なのか悲哀なのか、それとも全く違うのか。だから私は彼の近くで、スネーク、と声をかけた。
「ダンボール博士じゃないか」
ちなみにダンボール博士はわたしである。研究に行き詰まって、デイヴィッド達にも評価されたダンボール戦車を作ったからだ。
「苗字さん見てるの?」
私の問いかけに彼は「苗字?」と目を瞬く。
「あの子のファミリーネームだよ。苗字ナマエ。ええっと、今の時代に合わせると、ナマエ・苗字かな」
私の言葉に彼は目を見開いて彼女をみた。
「珍しいね、スネークが話に行かないの」
「どういう意味だ?」
「スネークって、人あたりいいし、面倒見よさそうだから。ああいう子ほっとけなさそうなのに」
誰かさんと違って。いや、誰かさんも案外面倒見はいい。私の面倒見てくれるくらいには。多分この状況なら普通に口説きに行くか話しかけには行ってる。それ以上に面倒見がいいのが彼だと私は思うのだ。彼はその問いかけに、「そうか?」と笑いながら葉巻に火をつけた。
「そう。クラスの人気者だったでしょ」
「そうかもな」
「話しかけないの?」
私の問いかけに、彼はダンボール博士はどうなんだ?と尋ねる。
「私?」
「お前こそいつも見てるだろう?」
「仲良くなりたいけどきっかけがない」
私が正直に答える。きっかけか、と彼は面白そうに笑った。
「それこそいくらでもあるだろう。何読んでるのか聞けばいい」
なるほど。いやでも。
「医学書って知ってるしなぁ」
「なんで知ってるんだ?」
「アハブさんに聞いた。私が何読んでるんだろって言ったら教えてくれた」
「知らないていでいけばいいだろう。そもそも、海が綺麗だねでもコーヒー冷めるでもなんでもいい」
「いやそこまであるならスネークも話に行けばいいじゃん」
「いや俺は……」
彼はそう言って口籠る。なんでそこで引くんだこの人。じゃあ、と私は彼を見上げる。
「スネークと私で勝負ね、勝負!どっちがはやく苗字さんと仲良くなるか」
「やるとは言ってない」
「スネークが勝ったらダンボール戦車を改良する」
そう言えば彼は「ぐ」と声を上げた。私はとりあえず先手必勝!と言いながら、彼女に向かって声をかける。苗字さーん、と名前を呼べば、彼女はこちらに振り返った。その時だ。風が彼女の前髪を揺らした。普段は隠れている、キリッとした灰色の目が覗いた。ただ、その瞳は私だけではなく、多分奥にいるスネークにも向いたのだけども。話すきっかけもなにも、私は反射的に彼女に口を開く。
「わ、苗字さん、綺麗な瞳の色だね」
私の言葉に彼女は前髪を元に戻しながら「ありがとう」と告げた。うーん、クールだ。
「……でも、あんまり好きじゃないかな。後天的だし」
彼女はそう言って困ったように笑った。私は首を傾げる。
「後天的?」
「私にとってはね」
彼女はそう言ってコーヒーを飲む。薬剤の影響なんかでたまに瞳の色がかわるとはチラッと聞いたことはあるが、そんな感じじゃなさそうだ。私はもしかして、と思う。似たような経験をしてるんじゃないだろうか。私もあの世界に行って理数が強くなったのに、こちらに戻ってきたらそれは当たり前になっていた。褒められるでしょ!と思ったが、両親は「やっぱり貴方は理数に関しては天才ね!」と言われたし、昔の成績表をみたら理数物理の成績がかなり良くなっていて、複雑になったのは余談である。そもそももっとつらかったのはスネーク達が登場するゲームも存在がなくなり、私は推しに飢えたことだ。閑話休題。私は隣に失礼する。
「もしかして、苗字さんも数ヶ月行方不明になったことある?」
コソッと聞けば、彼女は私を見る。
「いや、私、数ヶ月行方不明になった後、理数すごい得意になったから……」
「行方不明?」
「いやーー、現実は小説より奇なり!だよね。今もだけど!」
私の言葉に彼女は首を傾げた。
「どこかにいた?」
「頭おかしいって思われるかもしれないけど、mgsっていう今は存在しないゲームの世界」
私の返答に彼女は黙り込んだ。いやこれまって引かれたかも知んない。リカバリーがわかんない。助けてスネーク。そう思っていたら、彼女は何年ごろ?と尋ねた。私は首を傾げる。
「こちらでいう何年ごろ?」
その問いに私は理解した。彼女存在がなくなったmgsシリーズ知ってる人だ!!
「1990年代後半から2020年代くらいかな?」
私の問いかけに彼女は、そっか……とまた海を見た。そうして彼女は持っていた医学書を横に置いて私を見た。
「私も数ヶ月意識を失ったことはある」
「えっ」
「事件に巻き込まれたって聞いたけど、その辺りはよく覚えてない。でも、私もだった」
彼女はそう言って片膝を抱えた。私も、ということは、だ。
「え、何年ごろ!?もしやニアミスしてる?!」
「いや、してない。開きが30年ほどあると思う」
「30年……」
と、私は少し考える。後?いや、彼女の様子を見るにそんな感じはない。後ならそれこそ研究とかに詳しそうだし。ということは、だ。私は彼女からスネークをみる。スネークはそこからいなくなっていた。
「1960年?」
「貴方の答え方にならうなら、記憶があるのは1940年前半ごろから1964年の9月2日」
彼女はそう言って困ったように笑った。1964年の9月2日……。
「ーーえ?」
「まぁそんな反応になるよね」
彼女はそう言って海を見つめる。
「『彼女』の代わりに海を渡った」
その言葉に、私はスネークが彼女を見つめるだけになる意味や彼女が周りに関わらない理由を、なんとなく理解する。どうして、と、私の口から言葉がでる。彼女は困った顔をした。
「ーー私が彼女に代わりになれば彼は気にせず幸せに生きるとどうしようもなく思っていたけれど、違うみたい」
「ーー……」
「……戻ってきちゃった、どうしよう」
彼女はそう言って、前を向く。私はなんて言えばいいかわからなくて、でも、何か言うべき言葉を探して、探して、見つからなくて、私も海を見た。
「なんかやっぱり、奇想天外でままならないものだね、人生って」
私の言葉に彼女は私を一度見て、本当に、とまた海を見つめた。それはそうとスネークと仲良くしたらいいとは思うけど、お口にチャックしておく。
==
ヒューイ博士やらストラブ博士が持ってきた資料をみる。いやこれ非科学的なんだけど科学的だ。この時代には確かに確立されようがないものではあるが、未来的にいうと確立されてもおかしくはないものだ。会いたい人を連れてくる、と、その技術を持っていた人は博士達にもーースネークにも告げたらしい。ちなみにその人物は逃げてしまったらしく、CIAの施設にもいない。
「で、起動しちゃって君たちが来てしまったわけだ」
ヒューイ博士の台詞に、ストラブ博士がお前が起動させたの間違いじゃないか、と告げた。私はオタコンと似て非なる彼を見た。
「なんで起動させたんです?」
「いや動くのかなって思って触ってて。わざとじゃないんだよ」
彼はそう言ったが、動くのかなって、といっているあたりわざとな気がする。まぁそれを起動させて壊れたわけだけど。これヒューイ博士のせいでは??
「まぁ、私はサチが来て助かった」
「お役に立てて嬉しいです。まぁ私は広く浅くな知識ですけど」
「充分だ」
「ちなみに、向こうで稼働してるAIって誰がモデルなんです?」
本編通りのpwならザボスだ。でも、なんとなくーーストラブ博士の話をなんとなく聞くに、ザボスは生きていると思われる。そもそも苗字さんが改変しようとした結果なら、彼女は死んでいないのかもしれない。
「私の知り合いの……子供のようなものだな」
彼女はそう言ってコーヒーを飲んだ。
「死にに行った理由を知りたがっていたから、AIに学習させ擬似的なその人物を作り上げることで、理由かわかるかと思った」
「わかりました?」
「蛇が嫌いということか」
「それ伝えました?」
「どちらに?」
「どちらも?」
私の問いかけに、私の知り合いには伝えてない、と返される。ということはスネークは聞いてるということだろう。いや待って。これめちゃくちゃ拗れてないか。私はなんとも言えなくなる。まぁ、すぐにお昼ご飯を食べにスネークやらセシールやらが来て賑やかになったのだが。私は斜め前にいるスネークのお皿にキヌアを移しつつ、頭を抱える。
「ダンボール博士、どうしたんだ。研究に行き詰まったか?」
「うるさーい、見つめるだけのスネークには勝ってまーす」
そう言って私はコーヒーをのむ。カズさんが首を傾げた。
「勝ってる?」
「どっちが先に苗字さんと仲良くなるか勝負してます」
「苗字さん」
「医務隊手伝ってる子です」
と言えば、カズさんはおもいあたったんだろう。はああ、と納得した。パスが口を開く。
「ナマエのことね」
「ナマエ?」
「ほら、前髪で目元を隠してる……」
その台詞にセシールが、あぁ!と手を叩いた。あのお化けみたいな!とはある意味的を得てるきがする。
「パスは話す?」
「たまにね。ナマエ、いつも医学書を読んでるから、邪魔になるかなって」
ちなみにあれは全部読んで二週目か三周目らしいけど、そのあたりは言わないことにする。
「あの子と何を話すんだ?」
「色々よ。音楽の話とか、ナマエがいたところの話とか……本の話とか」
と言っていれば、本人が来た。まぁ、相変わらず医学書とコーヒーだけを持っているが。お昼ご飯は最近食べないと言っていたから多分彼女の昼食はあれだけだろう。私が苗字さーんと手を振れば、彼女は小さく手を振りかえした。が、こちらにくる様子はない。しかしながら背後にいたアハブさんが私たちに気づくと、無理矢理連れてこられた。強い。
「勉強もいいが人ともっと関わった方がいい」
そう告げたアハブさんは彼女を私の隣に座らせると、自分はカズさんの隣に座った。えっと、こんにちは、と困った彼女に、周りはこんにちはと返す。パスが問いかける。
「珍しいね、いつもの場所にいかないの?」
「近くでサッカーしてたから……」
彼女はいつもより高い声でそう返した。なるほど。うるさかったらしい。セシールが覗き込むように彼女をみた。
「ねぇ、どうして前髪で目元を隠してるの?」
「眩しいので……」
彼女の返答に周りは首を傾げた。まぁ確かに色素の関係上、彼女の瞳は眩しさを感じやすい。ストラブ博士が彼女をみた。
「眩しい?」
「はい。あとは揶揄われることが多いので……」
彼女はそう言って困った顔をしたようだった。カズさんはふむ、と考えてから「多国籍だから揶揄われることは少ないと思うが」と告げた。
「試しにサングラスかけてみるか?」
「いえ、貴方が眩しくなるでしょう?」
私はスネークをみる。スネークは私の視線に気づいた。話しかけなよ、と足で彼の足をければ、彼はなんとも言えない顔をする。タイミング悪く苗字さんがそれを見たんだろう。
「あの、やっぱり私がいない方が……」
「違う。そうじゃない。ここにいていい」
スネークはそう言って彼女をみた。
「眩しいのはわかったが、そのままじゃ目を悪くする。少しは避けた方がいい。カズが言った通り、ここは多国籍だ。目の色も肌の色もいろんな人間がいる」
スネークはそう言ってから、だが、と言葉を続ける。
「お前の場合は他の理由があって隠しているのに、周りに納得されやすい理由を並べているだけだろう」
おっと、断定である。いや、もしかしたら彼の鎌掛けかもしれない。彼女は困ったような表情を浮かべるだけである。私たちに緊張が走ってるのはスネークが剣呑な雰囲気を出してるからだろう。
「どうなんだ」
再度尋ねたスネークに、彼女は答える。
「貴方が前に私の目を見た時驚いていたのでやめた方がいいかと思っただけです。眩しいのは本当」
「……ああ、驚いた。お前が俺の知人に似ていたからだ」
「貴方、その人が嫌いでしょう?」
彼女はまた困ったように尋ねる。彼は黙ったが。
「その人に似ている人でも、見ない方が貴方は楽なのでは?」
「……いや。そいつに似ているなら、俺たちは何か手を打たないといけなくなる。早くわかった方がいい」
おっとーーー??パスがいる前だ。いやでもこの子黙ってくれる……かな?と私はパスをみた。ちょっと不思議そうにしている美少女である。苗字さんは息を吐いて、わかりました、と告げてーー前髪を流した。うわっ、美人、と私は思う。他の隊員達も気になっていたのか彼女をみる。グレーの瞳がのぞいてーーストラブ博士がスネークをみる。スネークは「やっぱりな」と言って息を吐いた。少しだけ片手で顔を覆ってからーーその手を口元にずらして口を開く。
「悪いが、お前は他と違ってここから出さない。いや、出せない。外に出ればお前を知っている人間たちはお前を利用しようとする」
「……わかりました」
「名前は?」
「ナマエ・苗字です」
「……クラウディアに聞き覚えは?」
彼の問いかけに、彼女は目を伏せて肩をすくめた。
「アメリカにいた養父のファミリーネーム、ですね」
==
ストラブ博士がデータを消した。いや私にちゃんと断りをとってからだけども。私たちが来たというデータもその研究のデータも消した。それは多分正しいかもしれない。ヒューイ博士はただただ戸惑っていたけれど、あれは正しく守るための行動だと思う。
そんなこんな、みんなの知らない間に私たちが元の世界に戻る手立ては振り出しに戻った(正しくは私のスマホにデータはある)のである。が、スネーク達の話も進む。苗字さんの声を出すAI兵器とこんにちはしたのである。いやこれは最終段階か……?と思っていれば、AI兵器がスネークが嫌いとか色々言ってるのが聞こえた。いやだめだよこれは。絶対スネーク曇るじゃんこんなの。相手もまた殺すのか?とか言ってるし。スネークが珍しく身動きが取れていないのがみえる。あぶない、と誰しもがおもった。ら、苗字さんが、スネークを掴んで無理やり回避した。
おお!と私は声を上げる。彼女は唖然としたスネークを見下ろすと、また転がって彼を物陰に誘導した。AI兵器はそこで撃つのをやめた。彼女が物陰から現れる。彼女の手にはスネークが持っていた銃があった。彼女はまるで慣れているようにその銃をかまえた。
「知ったふりをしないで」
彼女は怒っているようだった。
私は彼女の言葉に、理解した。彼女が髪で顔を隠すわけも、スネークとあまり関わらないわけも。幸せを祈っていると告げたわけも。
ーー自分が幸せになってはいけない、といったわけも。ヘイトと呼ばれる彼女と少し似ている声を持つAIはスネークではなく彼女を認識した。
「何を言ってるの」
「……思考を訂正しなさい」
彼女は珍しく強い口調でつげる。
「嫌いなわけがないでしょう。何年一緒にいたと思っているの。いくつ一緒に死戦と呼ばれるそれを潜ったと思ってるの。いくつ一緒に夜を重ねたと思ってるの」
そう言って彼女は機械をみつめた。
「そんな相手を人間は嫌いに慣れない」
その声は誰かの記憶を引き継いだ機械と同じ声だ。
「訂正は不可。私は彼が嫌いであるから任務についた。彼より上位と示すために。貴方の発言はその前提が覆られます。事実に基づく情報を持って訂正してください」
「その前提が間違ってる」
そんなこと、苗字さんが知り得ない情報だ。そのはずなのだ。だって私たちは異世界から来たと彼らは知っていたからだ。ヒューイ博士が「成功だ」と小さく呟いた。違う、きっとこれは成功してはいけなかったことだ。死んだ人は戻ってきてはいけないのは、世界の理のはずなのだ。彼女は悔しそうな、悲しそうな声で話す。
「私……貴方か彼女だった」
「彼女?」
「ザ・ボス」
「私の『師』だ」
「そう。あの任務につくのは、貴方か彼女だった。でも、貴方はそれを引き受けた」
苗字さんの言葉に、機械は答える。
「ザ・ボスに私の方が優位だと見せるため。国に愛国心を示すため」
「違う」
彼女はそう言って否定する。
「貴方は知らない……貴方にインプットされていない貴方と貴方の親類しか知らない情報がある」
「追加を求めます」
「……貴方は未来を知っていた」
私は彼女をみた。ああ、そうか、私と同じように世界を渡ったなら、彼女もやっぱり知っていたんだ。スネークがビッグボスになることを。どう言う人生を辿るかを。
「……貴方は、スネークがザ・ボスを殺す未来を知っていた」
彼女の呟きに、ストレンジラブ博士が息をつめた。
「それは、私と養父、実父しか知らないこと。ユダヤ系ドイツ人であった父はその知識を利用しアウシュビッツを抜け出しーー嫌悪と呼ばれた養父はノルマンディーで貢献した。私たちには確かに未来が見えた」
彼女はそう言って目を伏せる。
「……大切な人が、大切な人を殺してほしくなかった。彼女を殺さなければ、彼は幸せになるとどうしようもなく信じてた。2人が笑って暮らせると、思ってた」
彼女はか細くそう告げる。
「貴方が嫌うのはスネークじゃない。ザボスでも、あの任務を組み立てたアメリカでも、核を撃ってしまった大佐でも、ソ連でもない。あの時、最後まで嘘を貫き通せなかった、自分自身だ」
泣きそうな声だった。でも、彼女は顔を上げた。
「スネークに貴方を殺させない。貴方にスネークも殺させない」
「ーー」
「私は私を嫌悪をする。だからお前は私の手で壊す」
「ーー不能、理解不能」
「理解しろとは言っていない」
「貴方は誰だ」
そう問いかけたAI兵器に、彼女は口を開いた。
「私の名は、ナマエ・クラウディア。お前は私なのに、知らないのか」
彼女はそう言って的確に攻撃を開始した。身軽である。掠りそうな攻撃も器用に回避し、隙はない。まるでアクション映画だ。それはスネークにも言えることだけど。
「カズ!」
スネークから通信が入る。
「支援物資を落とせ!!」
「……!あぁ!!」
「加勢に入る!」
そう判断したスネークに私は少し安心して息を吐く。まるでお互いがわかっているかの連携だ。長年一緒にいたような。彼女は止めをさす。破壊された兵器を見下ろして、彼女は目を伏せた。
==
「おい、勝手に出てきたことへの謝罪は」
スネークがコンコンと苗字さんを叱っている。苗字さんはツーンと耳を塞いでいる。あ、子供っぽいことをしてる。スネークはその手を無理矢理とると、「お前は出てくるなって言っただろう」と叱った。彼女は手を離させると、「危なかったくせに」とちょっと怒りながらすすむ。スネークはその隣に並んだ。
「あーあーお前の存在を見つけたKGBやらCIAがうるさくなるぞ」
「追い出せばいいだろう」
「追い出すわけがないだろう。そっちの方がやっかいだ。お前の父親の話をボスから聞いていたからもしかしてとは思ってたけどな。第一なんだお前。あれで俺を誤魔化せると思ってたのか?」
また苗字さんが耳を塞ぐ。スネークがそれを外して、引きずった。
「カズ、独房あけろ。こいつをぶち込んで吐かせてやる」
「医務班に戻ります」
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