ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳206:君僕主if軸息子ズ
08/12 17:15
俺たちには変な記憶がある。変な記憶というのか、前世というのかわからないが。いや、前世ってのは変な話で俺が生まれてからは未来の記憶だ。でも、死んでる記憶なのだから前世というわけだ。思い出したのは俺たちがまだ何にもわかっていないガキの頃だ。双子の弟とともに意識を失った。ただしくは、姉が俺たちを庇い怪我をしたのだがーー俺たちはあっけなく意識を失い、病院に担ぎ込まれたってわけ。
俺たちは人工的に作られた子供だった。いや今世の話ではなく、前世の方である。何回も第三次世界大戦の発生を阻止した英雄の子供。どうやら昔、演習中に被爆したらしく、子供を作れない女。当時は今より偏見も強かっただろうに、全てを実力で黙らせたおっかない女。そんな女に惚れ込んだ男は何人かいたがーー愛国者という組織を立ち上げた男はゾッコンだったらしい。彼女に黙って俺たちを作り上げるくらいには。まぁ、元から主義主張の関係で二人の仲は冷え切っていたらしい。仲を繋ぎ止めるために子供を作るだなんてよくあることだろう?
でも、俺たちの誕生が完璧に亀裂を産んだらしい。俺たちの母親は男の元を離れーー男はより彼女に執着するようになった。まぁそんなこんな勝手に作られた俺たちは八つ子だったようだが、間引かれて俺と双子の弟だけが生まれた。他は今ことに巻き込まれなかった幸運を持って成仏してくれ。まぁ、双子の片割れと俺は違う国で育つことになるのだが。俺を育てたのはクソババ……言葉が悪い。エヴァとただ呼ばれる女だ。イギリスにいた俺のシッターでもある。女は聞いてもないのに俺の遺伝子的な母親のことを告げた。女も何回か助けられたからゾッコンだったのだ。俺は興味が湧いた。遺伝子上の両親に。父親を聞けば戦死した兵士だったらしい。写真を渡されーー気がついたらアフリカにいた。母親の目撃情報にくわえ、写真にうつる父親にそっくりな男の目撃情報もあったからだ。生きてるんじゃないかと思ったのである。幸いなことに戦闘訓練は積んでいたし、別に子供兵として戦場に立とうがどうでも良かった。母親と対峙するまでは。
俺たちを恨んでいるのではないか。嫌っているのではないか。そう思っていたが、母親はできた人間で俺たちに罪はないのだと慈しんだ。気づけば尖っていた俺は母親に絆されーー父親に似た男にちょっかいを出しては返り討ちにされた。他の男は無視である。ある日、俺は父親と慕いかけていた男に尋ねた。アンタは俺の父親なのか、と。男は違うと答えた。俺は写真をみせる。育ての親からもらったといえば、山猫は黙った。男は写真をみてーー少し悲哀を乗せて、それは俺じゃない、と答えた。彼女の1番は今もその写真の男だ、俺は彼にはなれない、と。よくわからない台詞だ。スタッフに頼んでDNA検査もした。母親は合致したが、父親は合致しなかった。そうこうしていたら俺はイギリスに戻る羽目になりーー母親は俺に告げた。
「ウィル、君には双子の弟がいる」
「名前は?」
「ルーカスだ。アメリカにいる。いいか、家族は助け合うものだ。それがどんな形であっても。二人でいればどんな困難だってうち任せる」
母親はそう言って目を伏せる。
「私は二人の幸せを遠く離れた場所から祈っている」
これが前世における幼少期の記憶である。その後は割愛する。普通に空軍にはいり、飛行機乗りをしていたのに特殊部隊に配属されることになりーー気が付けばアメリカのCIAのパラミリだ。母親が指揮する部隊で俺は双子の弟と出会うことになり、俺はどっかのバカが組み立てた任務のせいで父親のように慕った男を殺すことになって遂行したのちに除隊しーー双子の弟が同じようにどっかのバカが組み立てた任務のせいで母親を殺してしまい除隊したので迎えに行った。家族は助け合うものだと言われたからだ。俺はまぁ完璧に塞ぎ込んだ双子の弟とアラスカで暮らした。時には口喧嘩し、時には寒い屋外で殴り合いをし、時には寒中水泳でどこまで泳げるかなんてバカな勝負をしーー気づいたら仲良くなっていた。俺たちは隠れて過ごした。キャンベルの馬鹿が呼び鈴を鳴らさずにくるまで。いや、あの部隊のバカが放棄するまで。
そんなこんな、俺たちとメタルギアとよばれる兵器の戦いがはじまり、仲間を増やしつつ、他人より早い老化を笑いつつーーまぁ野望に完勝、のちに母親と再会し、母親が安らかに眠るのを見た。そのあとは弟が死に、俺も死んだ。老衰である。
そんな記憶が目を覚ました瞬間に駆け巡ったのだ。それは弟も同じだったんだろう。前世で使ったハンドサインをすれば、弟もかえす。爆笑である。そんな様子を見て、姉は不思議そうにした。いや、姉だが、姉じゃない。彼女は俺たちの母親だった女だと、すぐに理解できた。生憎母親はまだ記憶を取り戻していなかった。姉は大変よくできた人物で俺たちが母親と慕っても叱ることはなくーーまぁそれは妹達もそうである。俺たちの記憶に存在するのは三人いる妹のうち一人。他二人は記憶にない。それは反対もそうで、あいつらには俺たちじゃない兄弟の記憶はあるが俺たちの記憶はない。話を突き詰めても変だ。あいつらがさすビッグボスは母親ではなく男。母親は売国奴と罵られる英雄。俺たちはそれを聞いて激怒したがーー親友であるナオがそれを止めた。ナオは昔から変なことを言う男だった。兵器に対する予想はことごとく合うが、対人に対する予想は外れまくる男である。ナオは違う箇所を並べてーー俺たちはパラレルワールドの記憶があるのだと説明した。恐らく同じなのは両親だけだろう、と。そう、俺たちの世界で売国奴と罵られた英雄と母親の立ち位置がまるっきり逆だった、わけだ。
まぁ違う世界の記憶を持とうが最終的に利害は一致した。母親を守ることだ。俺たちは強くなった。母親を守るために。悪用されないために。だが、それに関しては今の父親達の方が一枚上手だった。父親達は彼女を平和な島国に隠したのである。
ーーまぁ、母親が知らないうちに護衛として雇った男と暮らすようになったようだし、友達もできた。が、厄介な拗らせ男が母親の近くにいた男を狙撃しようとしてーー母親が庇ったらしい。こうなるとこれ幸いと奴が来る。俺たちは母親を守るために母親を迎えに行くことになったのだ。
と、まぁ、俺達がバイクで駆けつければ母親は護衛とバン移動していたわけだが。なるほど今度の護衛はなかなか役に立つわけだ。ついた飛行場でヘルメットを外す。ひゅう、と口笛をついたら今や相棒の弟もそちらを見たが。
「知り合いか?」
「いや、知り合いじゃないがいい腕だ」
そんな会話をしていたら、妹のライクが、もーーー!!と声を上げた。
「知り合いか?」
「向こうの双子とかだよ!」
そう言って俺にヘルメットを投げ渡し、離陸準備!とだけ告げて妹は母親達のところに向かう。ずるい、と思っていれば、母親は俺たちをみてーーひらりと手を振った。その様子に、理解した。姉は正しく母親になったのだと。それは喜ばしいことでもありーー守られてくれるだけの存在の喪失にも繋がる。俺たちも手をひらりと振ったけど。よくよく見渡せば違う機体が降りているのに気づいた。あの機体のメイクは間違いない。
「うわ、ジーさん達がいる」
俺の言葉に双子の弟ーールーカスは俺の肩をたたく。そこにいたのはジーさん二人と数人だ。ただしくはそこまでジーさんではないが、気分的にはそうなのでそう言っておく。
「兄弟はあっちか」
「多分な。最近所属不明機が増えたから」
そんな会話をしながら俺達は母さんに近づいた。
「母さん、撃たれたって聞いたけど無事?」
「無事だ。ピンピンしてる」
と言った母親は確かにピンピンしている。周りの視線が俺たちに向いたが無視だ。兄弟が応えるようにじっとそちらを見たが、変な喧嘩にならないように背中を叩いた。
「本当はさー、俺が母さんを華麗に静かに快適につれてく筈がさぁ?ジーさん達が来てんだよ」
そう言った俺に母親はジーさん達がいる方をみたんだろう。そっちからみんな来たけど。
「無事か」
「えぇ、お陰様で。えっと、シラージさんとヘイティさんが来たってことは、厄介なことになってますね」
そう尋ねた母親に、そうだね、とジーさんその1が告げた。ヘイティと呼ばれるこの男は、インサイドという部隊の男だ。この男も母親の養父。実父が運営しているpmcの一人でーー俺と似たような経歴を持つ男だ。
「本来なら安全な旅路を華麗に快適に案内したいところだけれど、最近所属不明機が飛んできてね」
「……所属不明機?」
「無人機だ。今までとは違う。恐らくアレは国が絡んでいる」
爺さんその2ーーシラージ公と呼ばれる男がそう告げた。母さんが眉間に皺をよせーー妹の一人が口を開く。
「我々に引き金を引いたとしても私たちはほぼ実態がないんだから意味ないのにね」
「いや、そうでもない」
母親はそう断言した。
「戦争を始めたくてウズウズしている連中には私達は邪魔だ」
「……そういう動きがあるんですか?」
ジーさんとよく飛んでる男がそう尋ねた。母親は応える。
「まだ水面下です、が、そういう動きは確かにある。多分、ナイトサイドと利害が一致してしまってるな……」
母さんはそう言って眉間に皺を寄せた。
「そろそろ東の大国が軍事的に動くことが示唆されています。それに伴い、西からの援助が少しずつ厚くなっていますから、ほぼ確定です。ただーー」
「ただ?」
「厄介なことに、正規軍同士の衝突はもう少し後になるでしょう。まだ推測でしかありませんが」
母親はそう言って目を伏せた。
「pmc同士の争いが前哨戦になる可能性がある」
「おっと、ウィンタードや彼女と同じ分析だね」
ヘイティはそう言って肩をすくめた。
「君もウィンタードも死ねば恐らくはswallowは瓦解する可能性が高い。いや、簡単に報復に舵を切るだろう。そんなことがあってみろ、世界は一気に戦争に傾きーー第三次世界大戦の幕開けだ。だから君をできるだけ安全に連れて帰る。君たちは悪いが娘と命運を共にしてもらう。いつだって最悪は死ぬ」
そう言ったヘイティさんに、おとなしそうな女が顔を叩いてーーばっちこい!と告げた。ナマエちゃんの友達だからね!!と告げた彼女にーー他が同乗した。ルーカスが口を開く。
「……肝が据わってる女だな」
「これでも!無茶したことあるから!」
「……ふふ、それは結構」
そう笑ったヘイティさんに、まぁ僕も安全運転に努めるよ、と告げた。
「ってことは、当たり前に」
「ウィリアム、君はあっち、僕が輸送機だ。僕がアレを乗るのは本当はグレーだからね」
そう言ってヘイティは俺の肩を叩く。仕方ない。
「はぁーー、じゃあな、兄弟」
「あぁ、兄弟。頼りにしてる」
そう言ってルーカスとハイタッチする。そうして誰だか知らないしわからないが口を開く。
「じゃあな違う世界で生まれ育った兄弟。こうなったら八つ子が揃う日がいつか来るかもな」
そう言ってまぁオセ公の真似をしとく。母親は苦笑いしたが。
「シラージさん、トリガー、カウント、リック、ザラッド、頼みます」
「こう言う時には頼み方があるのでは?」
ストイック元軍人じーさんシラージ公が母さんに告げる。母さんは困った顔をしてからーー目を伏せる。キリッとした表情を作った。
「これより、護衛輸送作戦を結構する。シラージを中心に小隊を編成、輸送機を護衛しーー攻撃をする無人機を撃墜せよ。ただし、国連総会に定められた規約により我々は民間施設への損害を出してはいけない。よって、無人機の撃墜可能範囲は洋上および我らの敷地内である。日本領域離脱後、攻撃が激しくなることが予想される。適宜対処しろ」
その言葉に俺たちは、イエス、サー!と敬礼をする。エアコントロールは誰がするんだ?と思っていれば、母親は金髪と黒髪オールバックをみた。
「イーライ、桜、コントロールは?」
「それは桜の役目だ」
イーライと呼ばれた金髪はそう言って隣の黒髪オールバックを指差した。こいつの操縦ならいける、とは護衛機を指差した話なのだが。
「エアコントロールは桜に任せる。イーライ、副操縦席へ。モニター及びレーダー感知を頼む」
「初心者じゃないのか?」
「全員記憶持ちだ。万が一、私が何らかの都合により指揮が取れなくなった場合、指揮権は隣にいるジョンに移す」
母さんの言葉に俺は隣をみる。似ている。あの写真に映った男に。まぁ、彼は母さんを見下ろして口を開く。
「移さなくていい。お前は俺が守る。お前が指揮しろ。士気に関わる、馬鹿なことを言うな」
「悪い、癖だ」
母さんはそうひとこと告げるとまた口を開く。
「護衛機及びエアコマンダーとの通信が途切れた際はシラージ隊長を主として動くこと。自由に羽ばたけ」
母親はそう言って俺たちを見た。
「私は君たちの無事をーー……いや、君たちと無事に帰還できることを信じている」
そう言って笑った母親に、シラージ公はふっと笑った。
「勿論だ。小娘が言うようになった」
「……シラージさんからかってません?」
母さんが不服そうに言えば、シラージ公は「さぁな」とだけ告げた。
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青い目をした青年がめちゃくちゃデイヴィッドをみてる。姿的にはナマエちゃんを男にした感じである。それにしても無表情だし、無口だ。めちゃくちゃ。デイヴィッドが視線に耐えかねて、なんだ、と聞けば彼は少し首を傾げた。
「何軍出身だ?」
「それは国か?それとも陸海空とかそっちか?」
「陸海空の方」
「陸だ」
まぁたまに違う軍に出入りしてたけどこの人。私はお口にチャックする。
「そうか」
へにゃっと笑った彼はちょっと可愛い。何かあるんだろうか。デイヴィッドは「お前は?」と尋ねる。
「俺は海だ」
そう返した彼に近くにいたオタコンが口を開く。
「意外だなぁ。陸に行けーってなんて、ならなかった?」
「なったらしいが……海が好きだし、潜水艦に乗りたかったから」
理由、と私は思う。理由が可愛いこの人。デイヴィッドが尋ねる。
「……乗れたのか?」
「いや、気づいたらネイビーにいた」
すんとした表情に戻る。可愛いし面白いなこの人。デイヴィッドをさらに静かにした感じである。デイヴィッドがどうしてそうなったんだ、と返してる。
「わからない。フォックスハウンドに入った後に母親がやったのかと聞いたら、軍の人事に口出すまで偉くないと言われた」
フォックスハウンドーー。私たちは彼を見た。まぁ、彼は首を傾げたが。
「……聞いてないのか?」
「聞いてない」
「……そうか。俺の母親はビッグボスだ」
そう言った彼に、デイヴィッドは「母親?」と首を傾げた。
「そうだ。多分アンタ達は違うな。ライクと一緒でビッグボスは男だ」
私たちは多分困惑してるとおもう。それを知ってから知らないでかーー彼は俺たちを見下ろした。
「冷戦中に、一人が偽装亡命をしたがーー政府が思い描いた歯車が狂い、別の人物がその人物を殺さなければいけなくなった。任務を全うし、その人物を殺したものはいくつか危機を救ってビッグボスと呼ばれるようになった」
彼はそう告げる。それは正しい。
「お前たちの世界では、男が女を殺した。俺たちの世界では女が男を殺した」
私はその言葉に考える。と、言うことは。
「私達の世界ではジョンさんはナマエちゃんを殺したけど、貴方達の世界ではナマエちゃんがジョンさんを殺したってこと?」
「そうだ。察しがいいな。だから大筋は同じでも色々違うらしい。バーチャスミッションの世界みたいな……D.M.Hには色んな人間がいるから、こう言うこともある」
「DMH?」
「記憶が二重にあったり、存在が降ってわいたみたいに現れた人間の総称。聞いてないか?」
「聞いてない」
「じゃあ後で詳しく聞くとおもう」
彼はそれだけ言うとまた静かに作業を始めた。静かな人だなぁ、と、私は思う。ナマエちゃんがビッグボスで、大筋は同じでも色々と違うのなら、だ。
「ナマエちゃんに育てられたんですか?」
さっき彼らはナマエちゃんを母と呼んだ。今は姉弟ほどの歳の差であるのに、だ。多分記憶がそうだからだろうか。私の問いかけに彼は首を小さく左右に振った。
「……色んな家を転々としていた。寄宿学校にも行った」
となると、彼はデイヴィッドと似た立ち位置の人なのだろうか。オタコンが尋ねる。
「……会ったことはなかった?」
「いや、寄宿学校を抜け出した時にたまたまいてーー一緒に遊園地に行ったことはある。母親だと名乗ってはくれなかったが、母親だとはわかった。兄弟とは違って、俺はフォックスハウンドに入隊するまでに会ったのはそのたった一回だけだ」
となると。
「もう一人は会ってたんですか?」
私の問いかけに、「兄弟は多少の無茶無謀を押し通す勇敢さがあるからな、」と告げる。
「子供のころ、里親の元から抜け出してアフリカに会いに行って、数ヶ月は一緒にいたらしい」
「別のところで育った?」
「あぁ」
「それにしても、仲がいいね」
オタコンの素直な感想だったんだろう。私も思う。いや、今は仲が良くないというわけではない。喧嘩するほど仲がいい、というやつだ。それに対してこちらの兄弟は仲がいい。彼は言葉を返す。
「仲良くしろと言われた」
「誰に」
「母親に」
「いつ?」
「遊園地に行った時。どのような形であれ、家族は家族だからお互い助け合うようにと言われた。だから、ずっとそうしてきた」
ナマエちゃんが知識があったかどうかは謎ではあるが、どうやら釘を刺したらしい。
「兄弟は訳あって銃を持てないから俺が持つ。逆に俺は持てるが航空機関連は運転できないし、人と話すのも苦手だから……そういうのは兄弟がする」
彼の言葉にああだから静かなんだなこの人、と思う。確かに代わりにあの金髪の青年がたくさん話すのだ。デイヴィッドが尋ねる。
「だが、あいつもフォックスハウンドだろう?」
「そうだ。その前がSAS、その前が空軍で空を飛んでた。ただしくは、持てなくなった」
「どうして」
「父親のように慕った男を仕組まれた任務で殺したから」
淡々と彼は告げる。デイヴィッドが眉間に皺を寄せた。
「アウターヘヴン蜂起?」
「そう。そう呼ばれるもの。そっちにもあったか?」
「……あぁ」
「そうか。お前が行ったのか?」
「……そうだ」
「じゃあ、ザンジバーランドはあの金髪か?」
そう尋ねた彼に、デイヴィッドは「いや俺だ」と返した。彼は些か驚いたらしい。目をぱちぱちさせる。大筋は同じ、ただ細かいところが違う、とはこう言うことをいうらしい。
「お前は行ってない?」
「いや。ザンジバーランドの時には、兄弟は除隊されててーーザンジバーランドの時は俺に任務がきた。今度は俺が潜入してーー俺が母さんを殺した」
きつい。ちょっと待ってほしい。デイヴィッドでもきついのに、この人の場合、思い出があるのだ。蘇生させられたとしても、それはつらい。
「お前、よく持ったな」
「……お前たちみたいに楽しい思い出はなかった。父親だと淡々と言われただけだ。それに……一人移り住んだ先で近所のお嬢さんが散々遊びにきたからな」
私のことか。それは、私のことが!!私はデイヴィッドをみる。まぁデイヴィッドはスルーしたけど。
「お前もよくもったな」
「いや、もってない。普通に除隊して死のうと思った、ら、兄弟が迎えにきた。無理矢理アラスカに連れて行かれた。一週間くらい殴り合ったりもしたが、仲良くなった」
淡々と無表情でいうことじゃないんだよなぁ、と思う。仲良くなった1番の理由は?と聞けば、彼は眉間に皺をよせる。殴り合いの喧嘩で仲良くなったんですか?とまた尋ねれば、彼はぽつりと呟く。
「一番の理由は兄弟が壊滅的に料理が下手だった。さすがイギリスで生まれ育った男……」
『お前後で覚えとけよ、ルーカス』
急に聞こえた声に肩を跳ねさせる。なるほど、無線通信らしい。
「なんだ、ウィル、無線をこっちに切り替えたのか。どこから聞いた?」
『壊滅的に、から、だ。何初対面の人間に俺の欠点晒してんだ。どうせなら俺の素敵エピソード織り交ぜて語ってくれ』
「だが飯まずは覆せなないしそのうちバレる事実だ。その欠点は兄弟の魅力でもある」
『お前はガチでそう思ってるから下手に文句言えねぇんだよ。いいか、兄弟、俺だってちゃんとした料理は作れる』
聞こえた無線にルーカスと言われた彼は黙る。その代わり、
『レシピ本に忠実に作れるようになってから言って』
と女の子の声が聞こえた。
『あれはただの食への冒涜。食材全部に土下座するべき』
『ボルシチしか作れない女は黙ってな』
『ちゃんと作れてるあたりライクのほうがマシよ』
また別の女の子の声だ。
『食う専の女も黙ってろ……おい、トリガー、勝手に兄弟間の無線傍受して笑ってんじゃねぇよ』
『悪い。でも、みんな聞いてるんじゃないか?』
『BGMには最適ですからね』
『いつもくだらないことで騒いでるからな』
『なるほど?』
あ、桜くんの声だ。
『是非そこにスーリア1で副操縦士しているイーライも入れて欲しいですね』
『おい』
『よぉ、兄弟、入るか?』
『入らん。他はともかく山猫クソババアがうるさいだけ』
イーライさんがそう言ってーールーカスさんが目を瞬いた。まぁウィリアムさんが爆笑してるけど。
『山猫クソババア!』
『……エリちゃんと桜ちゃんと可愛くなって出直してきて。私はこんなに可愛いし、ジェーンもアマナもあ〜んなに可愛いのに、なんで可愛くなくなってるの?あんなに可愛い金髪の天使ちゃんだったのに。クソ生意気だったけど』
『随分英語が上手くなったな、カタコトババア』
『腹立つ!!エリちゃんのくせに!!』
『はっ』
『……さて、久しぶりに二人の喧嘩を聞くのもいいですが、そろそろ日本領海を出ます。貴方達のお母様だがお姉様だかに小言を言われたくないのであれば集中をしたほうがいいでしょう。隣でため息をつかれてますよ』
桜くんがサラッとそう言って話を戻した。そうしてしばらくしたころ、また桜くんが口を開く。
『南方の不明の高速移動体を捉えました。民間機各国戦闘機と識別不一致。ホルス1より8時の方向。このスピード及び旋回は人間では難しいかと思われます』
『勘がいいな。無人機だ』
『下方に民間船は?』
『ありません』
『日本領域を迎撃を許可する』
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