ネタ帳vol.3
2023ネタ帳46:杯に映るは逆さ月2(李子とちょっと違う世界)
01/14 17:20
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李子さんに喧嘩売るなよもう〜と困った顔をする。というかどこで聞いたんだその情報は。楚漢戦争の時代から転移か?と思ったが本当の現代人が数人いるので違うっぽい。
「きゃんきゃんとよく吠えられますね」
うっわ李子さんが猫被るのを放棄した。周りが李子さんを見る。あの子はたじろいだが。
「私からすれば、貴方は今まで何をしていたかと思いますね。貴方の周りには私のまわりと劣らず優秀な方がたくさんいる。なのに、貴方はその方々に教えを乞うこともなく過ごした。武働をするわけでもない。かと言って、侍女たちのように誰かの身の回りを世話をするわけも、民のように商いも田畑を耕すこともしない。いえ、できない。それでも貴方が特別でいられたのは未知の情報を持っていたからというだけです」
李子さんはそう言って彼女を見つめる。
「人の持つ情報は有限です。そして主観が入るそれらは全てが事実とは限りませんが、ないよりはマシです。しかし、その情報がなくなってしまえば?」
李子さんはそう言って杯を口につける。
「はっきりいって貴方の価値は農民や兵以下になりつつある。話を伺う限り、貴方のいる国は温情もあるがそれ以上に実力主義だ。通例そのような国では貴方に価値がなくなれば、使えないものは捨てられるか、はたまた、秘密を知りすぎたが上に謀り殺されるかです」
うっわ、黙り込むあたりやばいぞ、そんな話が出てきてるのかもしれない。陸治さんが酒を片手にケラケラ笑う。
「李章殿、ばらすなばらすな。あの娘はその一歩手前だ。まぁその時がきたら同じ世界からきた情けで俺が斬ってやってもいい」
「貴方が斬れば恐らく一瞬でしょうが……もう少し様子を見て差し上げましょう。なんせ、私たちをこちらの世界に呼んだかもしれない方です」
「……吐かせるか?」
「まだその時ではありませんよ。とにかく、貴方は死にたくないのであれば他人を蔑むより自分が今何ができ、何をせねばならぬかを考えなさい。私にできることは貴方の望むように振る舞うことと忠告するくらいのことです」
そう言って李子さんは酒をまたのむ。……この人今日ペースがはやいな。陸治さんも耳が赤い。これは。猫を被るのをやめたというより。
「お二人とも酔っておられますね!!はい、没収!!!酒没収!!皆様驚いてらっしゃいますよ!!」
「酔ってません」
「酔ってねぇ」
そういうのは酔っ払いである。とりあえず李子さんの手元から杯と酒瓶を奪う。
「アンタら酔って私闘始めると大変なんですから!!やめろ!!今すぐ寝ろください!」
「あーん」
「あーん、じゃないんです!李章殿、そのようにしょんぼりしてもだめです!!貴方、かわいこぶるとどうにかなることがおおいとこの世界で余計なことを学びましたね!!項陸殿は酒を隠さない!!めっ!!」
そう慌てて叱る。いやまじでこの二人仲良く飲んでる時とそれ以外の差が激しすぎるんだよ。何で売り言葉の買い言葉になるかわかりかねる。李子さんはすすすと郭嘉殿に近づきしくしくと泣き真似をする。
「郭嘉殿、寵沙殿が意地悪をいいます……」
「おや、酷いね……私ももっと貴方と呑みたいな」
そう言って郭嘉殿が杯と酒瓶をもつ。やめろ。
「蜀軍ー!!蜀の方ーー!!李子さん、引き取りに来て!収拾つきません!」
とは言ったが、郭嘉殿が何か驚いた顔をしているあたり李子さんは何がいいたかっただけだと見える。まぁ馬岱殿と徐庶殿がやってきて、馬岱殿が李子さんを担いで、李子さんが借りてきた猫のように固まった。
「ごめんなさいねぇ、李子殿が迷惑かけて。ほら、李子殿戻るよ〜」
李子さんがドナドナされていくのを眺めていれば陸治殿が爆笑している。徐庶殿と俺は郭嘉殿に見上げられたが。
「ナマエちゃんの本来の姿はあちらかな?」
「……李子が故意に外したしたのかは分かりかねますが、あちらが本来の李子です」
「元から違和感はしたんだ。娼婦のように振る舞っていても、咄嗟の所作には気品があるからね。あの子の立場を考えてのことだったんだろうけど……」
そう言って郭嘉殿は徐庶殿と俺に杯をわたすと酒を注いだ。
「やっぱ陸治さんも肯定していたしそんな話あるんです?」
「ないとは言い切れないね。彼女は今岐路に立っている。無価値に成り下がるか、ここからどうするかはあの子次第、かな」
その言葉に彼女をみる。彼女はぎゅっと手を握りしめて荀ケ殿と曹休殿と話していたが。
「まぁ、荀ケ殿が何か考えてくれるとは思うけれど」
「意外ですね、貴方はあの子に入れ込むと思いましたが」
「すこし、ね。あの子から少し嫌な感覚がするんだ」
そう言った郭嘉殿に、うっわ中良さそうに見えて軍師全員最初から警戒パターンか??こっっわ。
「それにしても、先程寵沙殿はあの二人を李章殿と項陸殿と呼んでいたけれど……」
「えっ、そんなふうに呼んでました?」
しらを、きりたい。そう尋ね返せば、徐庶殿が呼んでたよと言ってきた。
「ナマエや李子が名前だと思っていたけど、違うのかい?李子は俺たちの文化に合わせて名乗ってるって聞いたことはあるけど……」
「李子っていうのはそのままの意味というか、李章も本名のようで本名ってわけじゃないというか……」
尻すぼみになりながらそう告げる。嫌だって、うん。二人は首を傾げたが。というか、この時代この世界に二人の記述があるかと言えばなぞであるのだが。どこまで話していいか分かりかねる。
「二人に直接聞いて欲しいというか……俺もよくわかんないし」
酔った二人のせいなので酔いが覚めたら直接話してもらうことにする。徐庶殿と郭嘉殿はそれで納得したみたいだし。
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呑みすぎた、と後悔しても後の祭りである。侍女に起こされて、着替えてポイされたと思えば徐庶殿がきていた。
「申し訳ございません、徐庶殿。昨日は酔いが回ってしまったようで……お迎えありがとうございます。遅刻ですか?」
「いや、俺が道すがら寄っただけだから気にしなくていい」
「どうやって戻ったか覚えてません……」
「馬岱殿が担いで戻ったよ。あの振る舞いをやめていたから、そうだとは思っていたんだけれど……」
そう言った徐庶殿に、あちゃあという表情をうかべておく。まぁ実はそこは実はわざとなのだが。問題は次に馬岱殿達と飲んだ時に完璧に記憶が飛んだ。
「郭嘉殿に近づかないようにします」
「うん、そうしたほうがいい。それにしても、その時寵沙殿が君を李章殿と呼んでいたのだけれど……」
徐庶殿の言葉に私は彼を見上げる。あー確かに呼ばれていた。下手をすれば魏軍師は李章が実名と思う可能性はある。
「一時期名私が乗っていた名です。といっても、その時は男装していたので男として過ごしていた時の名です」
そう説明すれば、徐庶殿は目をパチパチと瞬いた。まぁ、徐庶殿には軽く話していても大丈夫だろう。
「男装……?」
「はい、ややこしいんですが、私や寵沙、陸治殿は幼少の頃より何度か同じように違う世界に招かれた経験があるのです。その中の名の一つです。今ではその世界が元の世界にあたるのか、あの子もいた世界が元の世界なのか分かりかねますが」
「それは大変だ……」
「ふふ、大変ですが、同じような方と巡り合うことも多々ありますし、知識を得ることもできます。徐庶殿に似た方とも会ったことがあるので、こうやって話していると懐かしい気持ちにもなります」
「……寂しくはならない?」
徐庶殿が心配そうにこちらを見下ろす。私はニコリと笑って「たまには」とかえす。
「でも、貴方と彼は違う人なので」
「……良い人だった?」
「いえ、いちばんの親友です。喧嘩別れに近くなってはしまいましたが、いままでも、これからも、世界が離れていても、私の親友です」
私の言葉に彼は羨ましいなとこぼしたが、この徐庶殿は何方かと言えば兄っぽいんよなぁとは思う。
「徐庶殿も法正殿も馬岱殿も兄枠ですね」
「えっ」
驚いた彼にふふと笑う。彼はほおをかいたが、近くからひょっこり現れた馬岱殿がお兄様って呼んでみてといってきた。いつからいたんだこの人達は。
その後仕事中に孔明殿にも同じような問いかけをされたので同じように返しておいた。まぁ、彼よりも劉備殿の方が李章殿と繰り返して少し考える仕草をしたのだが。
「何かございますか?」
「いいや、聞いたことがある名だと思ってな……」
「知り合いの方に同じ名の方が?」
「いや、そうじゃない……祖父から何か……」
そうぼやいた彼に私は持っていたものをうっかり落としかける。まさか、彼は本当に血が繋がってるとか?というより、私に関わる伝承的なものが劉邦殿の一族だけに伝わっているならば、劉協帝もまた知っているのでは。
「李子殿?」
「いえ、少し……驚いてしまい……」
これは同じ世界の可能性がある。ただ、そうなると混ざったという認識にならないだろうか。寵沙や陸治殿と情報を共有しておいた方が良い気はする。
「劉備殿、旧友である陸治殿や寵沙に確認したいことがあります。また近日中に会いに伺っても?」
そう尋ねれば何かを考えていた劉備殿はああ構わないと許可してくれた。そのかわり私が心配だから誰か連れて行って欲しいとは言われたが。
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「あーー……やっぱり?俺も呉で、楚の時の資料があったから目を通したら項陸の名前があって、高祖の世に嘆いて世を捨てた後の行方は知らない的なふうに書かれてたり噂されたりしてたから」
寵沙の言葉に陸治殿が顔を覆う。私は私でやっぱりかと頭を抱えた。と、なるとだ。
「お前のところの上司がきてもやばいが、従兄弟がきたらなおやばい……」
そう、その危険性がある。そうなってくると、陸治さんの従兄弟、即ち項羽に対応できるのが本多忠勝及び呂布、次点で関羽殿や張遼殿、孫策殿あたりになってくるわけだ。
三國でちょっとした会議があるから勉強がてらついでに行くのはどうかと言われて、いってみれば二人がいたのだ。で、お昼ついでに情報交換をしているのである。頭を抱えた私と両手で顔を覆ってる陸治殿に、寵沙が尋ねる。
「まぁ、でもさ、大まかに考えたら三国ともに漢なわけだから李子さんはいいとして」
「よくないです……」
「コミカルな面が増えた李子さんはまだいいとして、陸治さんはどっちに着くのって話にならない?」
「みろよ、李章殿、ここの肉まんあんまんみたいなやつあるぜ」
「わー、本当ですね。美味しそう」
「現実逃避よくない」
「……こっちに義理も恩もあるからこちらにつく気ではいるが、真っ先に俺が殺されて晒されるな。八つ裂きにされるかもしれん」
まぁ、彼はそういう性分である。しかし、彼の言う通り、彼が真っ先に裏切り者となる可能性はある。ちらりと離れた席を見れば、本日会議に出席してた面々である。魯粛殿、荀攸殿、法正殿だ。そして多分ついてきた郭嘉殿とすっかり私のお目付役な馬岱殿、あとは寵沙のお目付役な徐盛殿である。いや、郭嘉殿と荀攸殿が逆の可能性がある。郭嘉殿と法正殿、魯粛殿に伝えた方が何かあった時のためにいいかもしれない。あとは陳宮殿……呂玲姫殿や貂蝉殿に言ったほうがいいか……。
「私はさらっといろんな世界を渡ったことを伝えましたが、お二人はなんと?」
「あぁ、そういえばいいのか」
「あぁー、なるほど、そういうふうに言えばいいのか……」
むしゃむしゃと食べながら二人はそう告げる。誰だ私の皿の上に肉まんをつんだのは。
「李子殿、どうかした?こっち見てたけど」
「いえ、視線を感じたと言いますか……」
「バレちゃった?みんなで何話してるんだろうねっていう話をしてたんだよ。ほら、陸治殿が顔を覆ったり、李子殿が頭を抱えたり熟孝したり、まぁその間に饅頭が積まれて行ったわけだけど」
「しっかり見てらっしゃる……こんなに食べれませんよ」
そう言って二人の間におけば彼らはそれを取って食べ出す。私の残り二個が食べたかったとみるが、その実私もお腹いっぱいなのでぜひ食べて欲しい。
「何考えてたの?」
「お話に伺います。今大変面倒なことが露見しかけています」
と言えば彼は「面倒なこと?」と首を傾げた。陸治さんが近くにいた給仕を捕まえて席をつけていいかと聞いている。
「それって俺と法正殿だけじゃだめ?」
「だめですね。何かあった時に他国と連携をとった方が良いです」
「どんな話?」
「俺たちが知ってる呂布並みに強い輩がこっちにくるかもなって話だ。下手したら呂布より強い」
陸治さんがそう言ったので頷く。その言葉に彼は眉間に皺を寄せた。
「法正殿〜、李子殿が話したいことがあるから全員連れ来てって」
「俺たちだけで済むでしょう」
「それが李子殿達の知ってる人がこっちにきたら大変なことになるから他にも行った方がいいってさ。下手したら呂布より強いんだって」
その言葉に法正殿が「ほう?」と返事をして、周りの客はこちらを見る。うーむ、仕方ない。しかし、他にも話が伝わった。まぁ、みんなが席移動してくるのちょっと愉快では。そして郭嘉殿が当たり前のように隣にきた。
「ふふ、李章殿は興味深いことばかりだね」
「郭嘉殿、ご自重くださいませ。近いです」
「おや、この間までは君から近づいていたというのに」
「あれはああするべきでしたので。普段はあんなはしたない真似はしません」
「それは残念」
残念に思ってないなこの人。荀攸殿が郭嘉殿と止めたが。
「それで、李章殿でしたか、呂布より強い人とは?」
「俺の従兄弟」
「陸治殿の……?」
「それを話す前にいくつか前提をお話ししなければなりません。私と陸治殿、寵沙は幼少の頃から今回のように多々他の世界を渡ることがございます」
「他の世界に……ですか?」
「魏にいらっしゃる彼女はおそらくそれを知りません。彼女と同じ世界にいたとしても、ほんのひとときの話。このことは私たちのお互いが知っているくらいです。そしてそれはどんな条件なのかも分かりかねます。招かれることもあれば、天の悪戯のようなこともあり、とても私たちだけでは判断が難しいのです」
「だからこの前は招かれた可能性があると言ったんだね」
「その節はご迷惑をおかけいたしました……まぁ、その渡ってきた世界の中の一つなのですが、貴方達の過去にあたる可能性がございます」
そう言えば、過去?と周りが首を傾げた。
「はい。先日劉備殿が李章という名に聞き覚えがあるのだと告げていたでしょう?それも祖父から聞いたようなと……」
「言ってましたね。では、貴方は劉備殿の祖父と知り合いだと?」
「いえ、おそらくそれが本当に私であるならばもっと昔です。私は確かにその方に、もし私が仙の身になれたのならば、貴方の子孫の身が危うくなればお助けいたしますとお約束しています。おそらくそれが伝わっているのでしょう。合わせて、寵沙から聞いた呉の地方に伝わる話です」
「呉に伝わる話……そう言えばこの前、熱心に昔の書物を読んでいたな」
「まってくれ。李章殿、貴方が言わんとしていることは理解した」
魯粛殿に寵沙は聞いたようである。周りが首を傾げた。
「呉の地方には項陸という人物の話が伝わっていると」
その言葉に彼らは陸治さんを見た。陸治さんは両手を上げた。
「まどろっこしいな。俺が元いた国は楚だ。そこでの名が項陸だった。俺の父の名は項伯、危惧してる従兄弟の名は項籍……項羽って呼んだ方が通じるんだっけか」
陸治殿の言葉に彼らは止まる。
「項羽が現れる?」
「このような事象がある場所で、ありえないとは言い切れません。貴方達は軍師です。その可能性は頭においた方が良いと思われます。単独勢力ならまだ話は通じましょう。しかし、」
「妖魔と組んだ時や操られた時が厄介だね」
郭嘉殿の言葉に私は頷く。
「陸治殿はおそらく魏から離れません。貴方達に恩義がありますから。しかし、そうなれば最後裏切り者として彼は狙われる可能性もあります。まぁ、彼は器用ですからおそらくあなた方が考える通りに動いてはくれるでしょう」
「褒め言葉として受け取る」
陸治殿は肉まんをとりつつそう答える。郭嘉殿が口を開く。
「李章殿は項羽がきたらどうする?」
「敵としてであれば、私ならば呂布殿や本多殿を項羽殿に当てます、が最初の一回はおそらく時間稼ぎにしかならないでしょうね。彼は目上と認めた方の話はきちんと聞きますし、直情的ではありますが理を詰めれば納得する節もあります。そちらから崩して味方につけるのも手かもしれませんね。独立勢力であれば同盟を組みたいところです」
「併合ではなく、か?」
「楚国の方は結構直情的ですからね。楚国を滅ぼせば恨みを買い、反乱ののちに大虐殺の可能性は否めませんから。ある程度自由にさせるのが吉です」
「おい、李章、楚人の俺の前でよく言えたなそれ。否定はしないが」
「項陸殿が珍しいのですよ。というより、貴方は止める側及び知識を身につけないとあの集団は力一辺倒だったと考えますが。楚は項羽殿の力を制御または諌めてうまく導く軍師の数が足りなかった」
「それは否定できない。その点魏は優秀な軍師が多いから武働に集中できて楽」
「でしょうね。貴方はどうします?」
「あの人は策に嵌めないと無理だな。個人戦はほぼ無理だ。だが、策に嵌めたら嵌めたで怒ると面倒。その辺りの匙加減を考えるのも面倒。もし魏に攻めてきたら俺と張遼殿と典韋殿で殴りに行く」
ほらきたこれである。荀攸殿が眉間の皺をほぐしている。
「郭嘉殿よろしくお願いします」
「貴方の世話を?」
「陸治殿の世話を、です」
「私は貴方にも魏にきてほしいのだけど」
「行きません」
「どうして?私と貴方は色々と相性が良いのに……」
「嫌です。私は劉備殿に保護していただいた恩がありますし、皆さんよくしてくださいます。恩は返さなければ。それに」
「それに?」
「貴方達は別の場所の兄代わりにそっくりで一緒にいると寂しくなります……」
ちょっとしょんぼりしながら言えば、郭嘉殿と荀攸殿がぴたりと固まった。まぁ法政殿が私の肩を抱きながら、今の兄がわりは俺たちなんで魏軍はお呼びではないですねと言ったが。もっと言ってほしい。寵沙が神妙な顔をして口を開く。
「李子さん、項羽だけじゃなく李子さんのお父さんも呼ばれない?俺の父親はもとから文官で武はからきしだけど、李子さんのお父さんとか叔父さんそうじゃないでしょ」
「上司のたぬきジジイとか、お前を大好きな寵沙の兄嫁とか、元皇帝の血筋とかもくるかもな」
陸治殿の揶揄うような言葉に私は饅頭を食む。
「……桃饅頭おいしいですね」
「李子さーん?わかりやすく現実逃避しないで」
と、言われても、だ。劉邦殿であればいい。何故なら彼は恐らく三國は元々俺の臣だから全員俺の部下というジャイアニズムをするだけだ。寵沙の兄嫁、すなわち劉魯殿も芯がしっかりしているから心配ない。しかしながら、である。父親や叔父となると、だ。
「ああー、李子さん、ごめん、しょんぼりしないでほしい……」
「一緒に暮らせる好機かもしれないだろ」
「……否、きっと父上様はわからない……」
「昔の喋り方に戻ってんぞおい」
そう言って桃まんを並べられる。そんなに食べられないのだが。
「あああ、ごめんって李子さん」
「是……気にしないでください。私がまだちょっと……」
「何かあるのか?」
「目の前で……父が自害したことがあるだけで……」
そうぼやけば周りがピタリと固まった。ちなみに寵沙も固まった。
「いえ、しかし、あの世界というか時代というか……結構な人数がそんな人生歩んでますし……」
「貴殿ほど悲惨な奴は稀」
ですよねー、と顔を両手で覆う。もう私は考えないぞ、と法正殿に頭を押し付ける。
「……拒……我不考……」
「ちょっと陸治さん、李子さん思考停止しちゃったじゃんか」
「蜀軍、こいつは親族が絡むとこうなるから対章邯戦線には間違っても加えんなよ」
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約束した。私が危なくなったら必ず助けに来ると、私の父は私に約束をしたのだ。それに、いつか、いつかはまた一緒に暮らせるのだと私は淡い希望を抱いていたのだ。その光景を見るまでは。父が目の前で、自らに刃を突き刺す。そうして絶命した彼に私は慌てて彼に近寄った。お父様、と言ってゆする。彼は小さく何かを呟いて、息絶えた。こんなはずではなかったのに。この乱世は私から家族をうばい、友人を奪い、そのして父さえも奪っていったのだ。
残った少しのものを奪われたくなかった。だから、また劉邦殿の元に馳せ参じたのだ。戻った私を見て彼はなんとも言えない顔をした。何故なら彼は父と隠れて住めとこっそり勧めてくれた人であったからだ。私が戻ったのを見て喜んだ人もいる。関中を落としたのだと。私が章邯を破ったのだと喜んだ。劉邦殿はただ一言、章邯は、と尋ねた。私はいつものように、自害した、と答えるのに精一杯だったのだ。
ほどなくして、劉邦殿は天下を統一した。私をどこかに封じようとしてくれたが、私は断った。名誉も財産も何もいらない。私は疲れていたのだ。それを聞いた周りは私に仙になるつもりかなどと尋ねる。人は死んでも仙になれる人がいるのだという。だから、私は是と答えた。その意味を理解するのはどれくらいの人数だったのだろうか。
「……仙になったら俺の子孫助けてやってくれねぇか」
劉邦殿はそう言って杯に酒を注いだ。私はまた是と頷く。
「かならず」
そう言って、私はその日の夜に城を出て川に身を投げたのだ。苦しくなどなかった。生きることの方が苦しかった。まぁ、そのあと本当に仙人に助けられてその道にはいるとはおもわなかったのだが。
仲の良さそうな親子を見た時。母や父に縋る子を見た時。羨ましさも寂しさも感じる。そしてあの一瞬も思い出す。もし父親が助かっていたら。孫堅殿と尚香姫のような関係、関羽殿と銀塀殿のような関係、本多殿と稲姫のような。どんな関係だったのだろうかと考えた自分を嘲笑う。そんなことはありえないのだ。ただただ親子という仲を見るのが辛くて私はそのまま宴の会場から席を外した。夜風に当たってはみたが、気分はすぐれないままだ。庭の端で小さく座り込む。
「おとうさま……」
そう言って膝に顔を埋める。
「……おとうさまの、うそつき」
助けに来ると、また一緒に暮らすのだと、約束したのに。もう私は彼女達のようにはなれないのだ。
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category:中華組関連(msu・oa)