ネタ帳vol.3
2023ネタ帳86:大神妹と未来からきた歌劇団2
01/14 17:39
おかあさん!とやってきたのは霊力とトランペットを持った女の子である。はて?と首をかしげる。当たり前だが、私には子供もいない。私も加山さんも目を見合わせて、目をパチパチと瞬いた。心当たりは?と聞かれたので、首を左右に振った。とりあえず女の子に合わせて屈めば、おかあさんたいへんなんだよ!と口を開いた。
「なんかね!霧に包まれたと思ったら知ってるようで知らない場所に出ちゃった!ここどこ?」
「ええっと、上野公園だよ」
「こんなのじゃないでしょ!」
ぷくっとほおを膨らませた女の子に、加山さんが同じように屈んだ。
「なんだ、お嬢ちゃん、迷子か?」
「迷子じゃないもん!いちはが迷子なら、おかあさんもみんなも迷子!」
そう告げた女の子に、そうかそうかー、迷子かぁ、と加山さんは頭を撫でた。
「名前はなんていうんだ?」
「加山いちはだよ!」
そう言った女の子に私は加山さんをみる。彼は少し驚いたものの、小さく首を左右に振る。知らないらしい。そうかぁ、俺とおんなじ苗字だな、と言った加山さんに、女の子ーーいちはちゃんが目を瞬いて加山さんを上から下までみた。
「よくみたら、おとーさんだ!!」
いちはちゃんはそう言って加山さんをみる。加山さんは素で「え?」と声を出した。私は加山さんを凝視する。
「何かの間違いじゃないか?」
「間違いじゃないよ!いちはちゃんと覚えてるもん!」
と言ったいちはちゃんに、加山さんは少し考える。
「お嬢さ……いちははいま何歳だったっけ?」
「10歳だよ!」
「何年生まれだ?」
「太正19年生まれだよ!」
と言った彼女に目を瞬く。今が太正16年なので、3年後が誕生日ということになる。なにより、10歳ということは太正29年から彼女は来たことになるのだ。加山さんは少し考える。
「よーし、いちは、驚くことを教えてやろう!」
「驚くこと?」
「今は太正16年だからいちはは未来から来たことになる!」
そうおちゃらけたように告げた加山さんに、いちはちゃんは「な、なんだってー!?」と驚いた。
「そう!だから、俺もいちはとは初めて会うし、ナマエもはじめまして!だ!」
「だからお母さん若いのか〜」
うむうむと納得したいちはちゃんに加山さんは「こら」と叱ったが。
「女性にそんなこと言わない」
「そうだった!」
「わかったならよろしい。いちは、飯でも食べながら話を聞かせてくれるか?」
「うん!」
頷いたいちはちゃんに、加山さんは私を見る。私も賛成なのでいちはちゃんに手を差し出せば、いちはちゃんは手を握った。
「おとーさんとも繋ぐ!」
「お、いいぞ」
と、加山さんも手を繋ぐ。なかよしこよし!といったいちはちゃんに、ちょっと心がほっこりしたのは秘密である。
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話を聞くに『揺らぎ』に巻き込まれたように思える。加山さんもそう判断したのだろう。さて、問題はいちはが逸れた他の人達が帝都にいるかということと、何かが起きるのではということだ。悪い感覚もしないし、嘘をついている様子もない。
「とりあえず俺は帝都をぐるっと調べてから大神に報告をする。ナマエはどうする?」
「私はお兄ちゃんに先に報告して、いちはちゃんのお友達を探してみます」
「ん、わかった。何かあればキネマトロンで連絡してくれ」
そう言った加山さんに、いちはちゃんが寂しそうに見上げる。
「行っちゃうの?」
「なーに、すぐ戻るさ」
と頭をワシワシ撫でた加山さんは伝票を持って立ち上がる。「妹ちゃんはあんまり無理すんなよ」とくぎをさした加山さんにとりあえず頷いておいたけども。
まぁ、店から出た瞬間に「あーー!」と声を上げられたのだが。そちらを見れば、うん、花組っぽい。と納得してしまったのは仕方ない。つなぎを着た青年がずんずんとやってきて、いちはちゃんの頭に拳骨を落とす。
「コラっ!いちは!勝手にいなくなるな!」
「いったーい!玲士くん達がいなくなったんでしょー!!」
「いや、いちはくんがいなくなったんだよ……」
と突っ込んだもう1人の青年がこちらをみた。
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「ああ、えっと、大神ナマエと申します」
と名乗ったのはナマエさんにそっくりな少女である。正しくは女性と少女の間くらいというか。可憐な人である。大神、と繰り返した俺たちに彼女は、ええっと、と、困ったような声をあげる。
「未来の私とお知り合いなんですよね」
「未来……?」
「いちはちゃんの話を聞いて……今は太正16年ですので皆さんは未来から過去に迷い込んでしまったのだと思います」
と説明したナマエさんに、一瞬戸惑ってしまったが納得した。だから、知っているようで知らない街並み、懐かしい街並みに変わっていたのだろう。
「だからか……」
「ふふ、はやくに納得していただけてよかった。どう説明したものかと思っていたんです」
そう言ったナマエさんは変わらないらしい。ニコリと笑った彼女は美しいというよりは可愛らしい。さくらくんがつねってきたが。
「事態が解決するまで皆さんの対応もありますし、今から帝劇に向かおうとは思っているのですが、一緒に来られますか?」
「え、いいんですか?」
「皆さんからは悪い感覚はしないので」
ナマエさんはそう言って、いちはくんを見下ろした。
「いちはちゃん、みんなを紹介してもらってもいいかな?」
ナマエさんの促しにいちはくんは満面の笑みで頷いた。
「帝劇通いのいちはが教えてあげる!」
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「あら、おかえり、ナマエちゃん」
帝劇の前でさくらさんに会う。さくらさんの後に兄が続いているかと思えば、そういうことでもない。
「はい、ただいまかえりました。さくらさんは今からお出かけに?」
「少し買い物にいくの」
「兄と?」
そう尋ねれば、さくらさんがちょっと拗ねた顔をする。なるほど、さくらさんは一緒外出しようと思っていたけども、兄ね他の要件が入っていたんだろう。
「加山さんと苗字さんと会う約束があるんですって」
「ということは忙しいのか。会わない方がいいかな……」
「今はまだ大丈夫だと思うわ」
そう言ったさくらさんは私のそばにいるいちはちゃんや未来から来た花組をみた。
「ナマエちゃんのお友達?」
「はい。また詳しくは兄に話してからお伝えするのですが……こちらにきたものの泊まる場所などもないようなので」
「あら、そうなのね」
さくらさんはこんにちはと新生花組をみる。感激したようなさくらちゃんが、真宮寺さくらさんだ……!と告げた。私はとりあえず、さくらさんのファンみたいで、といえば彼女はあらと声を上げた。
「私の?」
「はい!さくらさんの舞台を見て、憧れて……!」
そう言ったさくらちゃんがややこし良ことを言う前に撤収したいものだ。苗字さんがいるなら奏寮に空室があるかも聞けるかもしれない。ありがとう、と嬉しそうに告げたさくらさんに、後で代理でサインに伺っても?といえば、了承してくれたのでまたサインをもらいに行くとする。とりあえずそこで別れ、中に入れば、変わらないのね!とちょっと嬉しそうに声を上げたことにより椿ちゃんと音子ちゃんがこちらをみたが。
「ナマエちゃん、おかえり」
「ただいま、2人は何を?」
「今度カフェにいく約束をしてたの。ナマエちゃんはどう?」
「私は邪魔じゃない?」
「そんな、全然!」
首を左右に振った音子ちゃんに、じゃあご一緒しようかなといえば彼女は刻々と頷いた。
「ナマエちゃん、その子達は?」
「もしかして、トランペット持ってるし、オーケストラに新しくはいる子?」
そう言った音子ちゃんに、いちはちゃんが私の背中側に回った。
「おかあさん、だれ?」
「おかあさん……?」
ピタリと固まった2人に私は苦笑いする。
「ちょっと色々あって……お兄ちゃん達に話に行くの」
「……今支配人なら支配人室にいるとおもう」
私の答えに椿ちゃんは、呼んでこようか?と尋ねてくれる。お願いします、といえば彼女は頷いて支配人室に向かった。おかあさんと繰り返した音子ちゃんに口を開く。
「音子ちゃんは全体練習は終わった?」
と聞けば、音子ちゃんは項垂れた。苗字さんにこってり絞られたらしい。
「苗字さんに絞られたかぁ……」
「うん、もう、奏さんにこってり……」
「ええっと、ナマエさん、彼女は?」
「彼女は帝国歌劇団・奏組という帝劇専属オーケストラの指揮者です」
「なんだぁ、おかあさんのお揃いかぁ!」
と言ったいちはちゃんに未来の私はオーケストラにいるんだろうか?と首をかしげる。オーケストラ!と声を上げた未来の花組に未来ではいないのだろうか?と首をかしげる。音子ちゃんはなんだか私を間違えて母親と呼ぶと理解したらしい。
「……ナマエちゃんも私がくる前に奏組にいたし、お揃いといえばお揃いかなぁ」
「ま、妹ちゃんは花組に入る前提があっての奏組だけどな!」
「わっ!」
急に振ってきた声に肩を跳ねさせる。階段の方だけ。そこにいたのは兄と苗字さんである。
「ナマエ、椿ちゃんに俺に用があるって聞いたんだけど……彼らは?」
と尋ねた兄に、ええっと、と声をあげる。苗字さんがカッと目を見開いて、もしかして妹ちゃんのコレか!?と小指を立てて声を上げた。エッ!?と椿ちゃんと音子ちゃんが口を開く。お兄ちゃんが「えっ、ナマエはてっきり加山と」と告げる。
「もう!苗字さん、また揶揄ってらっしゃいますね!」
ぽこぽこと怒りながら告げれば、苗字さんが口を開く。
「いや、妹ちゃんが話しにくそうにしてるからつい。で、誰そいつら」
「大神ィ、苗字、その娘達は未来の花組だぜ」
そう言って降ってきた加山さんの声に、兄はキョロキョロ周りを見渡した。
「その声は」
ギターの音に、苗字さんが口を開く。
「加山お前弦かえるかしろ。ちょっとずれてんぞお前」
「おっと、こりゃ参ったな、いつもの台詞言う前に止められちまった」
そう言って加山さんが降ってくる。うわ!と声を上げた未来の花組に、いちはちゃんがキラキラとした目で加山さんをみた。
「おとーさん、すごい!忍者みたい!」
お父さん……?と兄と苗字さんは加山さんをみる。加山さんがだろー!と言いながら頭を撫でたが。
「加山お前連れ子いたんか」
「ちがわい」
「あれ、さっきでも、ナマエちゃんのことをお母さんって」
「加山、お前、子供に刷り込みすんなよ」
苗字さんがバッサリとそう告げる。違う違うと苦笑いで断った加山さんは口を開く。
「この子達は未来から来たんだよ」
「は?」
「え?」
「苗字達が報告をあげてたみたいに、最近小さな揺らぎが多発してただろう?恐らくその関係で迷い込んだと思われる」
そう説明した加山さんに私も頷く。
「いちはちゃんだけでなく、彼らから改めて話を聞いても私もそう判断しました。彼らから悪い気配はしません。彼らはだいたい15年ほど未来からきた花組です」
「確かに、嫌な感覚はねぇな。霊力が強い感覚はするが」
苗字くんも兄に向かって告げる。兄はそうかと頷いて、神山さんの海軍バッチを見たらしい。敬礼をした。
「俺は大神一郎。少佐にあたるよ。今は劇場の支配人をしてるんだ」
「苗字奏。海軍中尉だ。今は奏組総指揮にあたってる」
「加山雄一。同じく海軍中尉。月組隊長だ」
「神山誠十郎。少尉です。帝国華撃団隊長をしています」
「司馬玲士。海軍機関士です。大道具兼整備をしています」
「彼女達は花組です」
「そうか、いきなり過去に来たんだ。大変だったね。君たちに何があったか話を聞かせてくれるかい?俺たちが力になれるかもしれない」
そう言った兄に神山さん達が頷いた。私はとりあえず花組の彼彼女らの部屋の手配もあるだろうと考える。とりあえずは人数分のお茶か。
「みんなに伝えた方がいい?」
「話がまとまってから伝えるよ。彼女達と一緒にいてくれるかい?」
「わかった」
「お茶持っていきますね」
「ありがとう、椿ちゃん」
「音子ちゃんは妹ちゃんに手伝ってもらえ〜復習しろ〜」
と言いながら隊長組がぞろぞろと応接間を兼ねた支配人室に向かう。それを見送ってから、舞台の方がいい?と聞け音子ちゃんが項垂れて頷かれたが。
「ええっと、皆さんの時はオーケストラピット使ってないのかな?」
「はい、使う話は出てるんですが……」
クラリスさんの言葉に、じゃあ見てみます?と尋ねる。一緒にいろ、ということは劇場にいてはダメだとは言われていない。みたいです!と手を叩いた彼女らにそのまま劇場にむかった。
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「あれ?ナマエじゃん。奏さんに呼び出された?」
「源三郎くん久しぶり。うーん、さっきそこで会って、練習に付き合ってほしいって言われたの」
「へぇー」
「そちらの方々は?」
「えーと、彼女達の上司が支配人と話してるので時間潰しに見学でもどうかなって。オーケストラをあんまり見たことないみたい」
「なんだ、そのちっこいやつはちっちぇトランペット持ってるから新入隊員かと思った」
そう言ってかがんだ源二くんに、いちはちゃんはふふん!と胸を張った。
「いちは、こう見えても未来の首席奏者だかんね!おかあさんのいるところで演奏するの!」
「へー、そうか!それはすごいな!」
子供の扱いに慣れてらっしゃる。そう思いながら、音子が練習するなら付き合うかー、というふうに周りは動き出すのだが。とりあえずどこがどう言われたのかを聞き、練習する箇所の目星をつける。
「まぁ、でも、カンナさんとスミレさんが喧嘩する可能性があるし、そういう時の対応とかもいるなぁ。多分だけど、ここ喧嘩しそう」
「ナマエちゃーん、なんとかしてくれへん?」
「私にはちょっと……」
と、言いつつ私も予備の楽譜をもらう。台詞は覚えている。じゃあ、と言いつつ口を開く。
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マリアさんが飛び入りで来て驚いた。なんでも私が練習しているのをみつけたらしい。ヒロイン役だけじゃなくヒーロー役もいないと、とはマリアさんがウィンクをしたが。
「オーケストラさんもいるは珍しいわね」
マリアさんはそう言ってオーケストラピットを見下ろした。音子ちゃんが固まった。
「は、はいっ」
「音子ちゃんがだいたい指揮者してる苗字さんにダメ出しされたらしくって」
「あら、その練習も兼ねてるの?せっかくだしお付き合いするわ」
そう言ったマリアさんに、音子ちゃんがはわわとしながら、ありがとうございます!と頭を下げた。
「あの子達は?」
「兄から連絡が来るとは思います」
「あらじゃあ合流待ちなのね。私も呼ばれると思うし、やっぱりナマエと練習するわ。貴方の休養前の最後の舞台だもの。素敵なものにしないとね」
「ありがとうございます」
マリアさんにそうお礼を告げる。え!?そうなんですか!?と音子ちゃんが声を上げたが。
「うーん、まだ正式には決まってないけど、留学の話が出ていて……」
「ええっ!?」
「あら、私はラチェットのご指名で加山さんと紐育に行くって聞いたけれど」
私はその言葉にエッ!?と声を出す。そんな話は聞いていない。最近体調が安定しないので一時体調を整えるため、勉強するために留学と聞いているからだ。クスクス笑ったマリアさんに揶揄ってるのだとわかる。
「冗談よ」
「もう、マリアさん、揶揄って……!」
「あら?嘘とは言ってないわよ」
「揶揄ってるじゃないですか!」
そう言ってぽこぽこ叩く。無理はしないようにね、と告げたマリアさんに頷くのだが。
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兄達が合流した。やっぱり合同調査という話に落ち着いたらしい。
「マリア、ちょうどよかった」
「隊長、彼らは?」
「彼女達は15年後の未来の花組だよ」
と言った兄にマリアさんは目を瞬く。
「前に俺とさくらくんが一緒に『揺らぎ』の事件に巻き込まれていただろう?」
「はい、行方不明騒ぎ……金の鎖の事件ですね」
「ああ、それと同じで迷い込んでしまったようなんだ」
「最近降魔がちょっと活発なのもそのせい、だな!」
category:大神妹(桜)