ネタ帳vol.3
2023ネタ帳85:大神妹と未来から来た歌劇団
01/14 17:39
「あ!!おかあさんだー!」
そう言って駆け寄ってきた子供に首をかしげる。お母さんとは?と不思議に思っていれば、お母さんもなんか若い!という言葉をいただいた。その後ろにいる青年達はあちゃあと頭を抱えている。
「お母さん、どうしたの?」
「ええっと……?」
「もしかして、おかーさんもいちは達のこと忘れちゃった……?」
そう少し心配気に告げた女の子に、私はその子を見る。髪色や目元なんかは加山さんに、他がわたしに似ている気もしなくは……いやいや、と首を左右にふる。それは願望に近い。青年が近づいてくると、頭を軽くつついた。
「こーら!いちは!」
「いたーーい!」
「だから、ここは過去だからナマエさんにお前の記憶はないの!」
と叱った青年に過去……?と思う。もしやまたゆらぎか何かの関係だろうか。こっそり霊力を探ってみても嫌な感覚はない。話を聞いた方がいいだろう。小さな彼女に向かって屈むと口を開く。
「ええっと、詳しく話を聞いた方がいいのかな?」
「え?」
「何かお困りなんですよね?」
そう青年を見上げると目をパチパチと瞬いた。小さな彼女は「そうなんだよー!」と何かに憤慨した。
「なんかねー!降魔じゃないけど降魔みたいなのがでて、霧みたいなのに覆われたらここだったんだよ!」
「たいへんだったね」
「たいへんだよー!なんか知ってるようで知らない街並みになってるし!」
ぽこぽこと怒っている小さな彼女のお腹がぐうとなる。その音にクスクス笑って、難しい話はあとにしてご飯にしよっか、と告げれば彼女は大きく頷いて見せたのだけど。
「貴方も、向こうにいる皆さんもよろしければ」
そう告げれば、そばにいる青年は目を瞬いてとりあえず後ろにいた彼彼女達を呼びに行ったのだけど。
帝劇に向かいながら彼らの話を聞いていると大体10年くらいは経ってそうだ。10年後は想像できそうもない。玄関の掃除をしていた兄は私を見て口を開く。
「おかえり、ナマエ」
「ただいま」
「その子達は?」
「うーーん、私の娘なんだって」
そう素直に言えば、兄は「え?」と目を瞬いた。ええっ!?と声を上げた兄は私と小さな彼女ーーいちはちゃんを見比べる。確かにナマエと似てるけど……とこぼした彼に、私は口を開く。
「上野公園で戸惑っていたし、彼らから悪い妖力は感じないから、ご飯食べながら詳しく話を聞こうと思って」
「なら、俺も聞いた方がいいね。少し待っていてくれ。片付けてくるよ」
「なら食堂にいるね。今日は休館日だから他に誰もいないし」
「わかった、向かうよ」
頷いた兄にこちらですと案内する。今の誰?ときいたいちはちゃんに、私は首をかしげる。
「私のお兄ちゃん。会ったことない?」
「ないよ!ずっと留守だから!」
「そっかぁ。お兄ちゃんは忙しいのかな」
「知らないけど、おかーさんはとっても忙しいよ!」
そう告げたいちはちゃんにそうなの?と聞けばそうだよ!と言われてしまった。はて……?
とりあえず帝劇に入れば、女性陣が何か感激していた。花組さんのプロマイド!と飛びついた彼女を「さくらくん」と青年が制したが。さくらさんと同じ名前の子が属しているらしい。
「あ、ごめんなさい」
「いいえ、お気にせず」
「あら、ナマエちゃん、お友達?」
そう尋ねた楓さんにとりあえず「そうです」と答える。
「少し食堂をお借りしても?」
「構わないわよ」
楓さんに挨拶をしてからそのままテーブルにつく。食事を頼んで待っていれば兄もやってきた。
「お待たせ」
「今料理が来たところだから大丈夫」
そう返せば、兄は彼らを見た。
「ええっと、俺は大神一郎。帝国歌劇団の支配人をしているんだ。君たちは?」
「ええっと、なんと言ったらいいか……」
と告げた青年に対し、いちはちゃんと仲がいいらしい青年が口を開く。
「俺は司馬玲士っていいます。で、こちらが神山誠十郎。俺が帝国華撃団の霊子甲冑の整備、こっちが花組の隊長です」
「玲士……」
「誠十郎、こういうのは腹割って話した方が早いだろ。ナマエさん達がせっかく親身になってくれてるんだから」
その台詞に、それもそうか、と頷いたもう1人の青年はお初にお目にかかりますと挨拶をした。
「帝国華撃団隊長の神山誠十郎です」
「君たちが花組と関係者ということは……」
「はい、私たちも花組です!」
と告げた少女に、ふむ、と兄が考える。
「やっぱり『揺らぎ』のせい、かな?」
「報告があるの?」
「大規模ではないけどね。加山に調査を頼んでるんだ」
その言葉になるほどなぁと思う。だから加山さんが最近忙しそうなのだろう。加山!と告げたいちはちゃんは興奮したように立ち上がる。
「おとーさんもいるんだ!」
「えっ……」
「ええっ!?」
「ええーー!?」
兄がこちらを見る。私は目を背けるというか顔を覆う。様子を伺っていたらしい私たちの花組が雪崩をおこす。恐らく楓さんから話を聞いたのかもしれない。どういうことだ、だの、やっぱりそういう関係、だの、やってきた花組と兄に私は小さくなる。
「呼んだか?大神ィ」
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
上から降ってきた加山さんに周りは驚いたらしい。
「加山!?お前いつからそこに!?」
「今さっき。妹ちゃんを囲んじゃってまぁ。大丈夫か?妹ちゃん」
そう言って見下ろした加山さんに私は絶対顔が真っ赤な自信があるので指の隙間から彼を見た。彼はそれを見て首をかしげる。
「妹ちゃん?熱でもあるのか?顔が真っ赤だぞ」
とはいうが。これは絶対に揶揄っている。
「っ〜〜もう!加山さんも、みなさんも、私をからかっておいでですね!」
「ははは、ついつい妹ちゃんが可愛らしくてな!」
ぽこぽこと加山さんを叩く。
「で、大神、彼らは?」
「それが……」
「はー!おとーさんだ!」
キラキラとしたお目目でいちはちゃんは加山さんを見上げる。加山さんは「おとーさん?」と目を瞬く。
「いちはね、おとーさんとたくさんお話ししたかったんだぁ」
「……大神、どういうことだ?」
「えっと、揺らぎが最近発生しているだろう?それに巻き込まれたらしい。未来の帝劇関係者だ」
「……お話をお伺いするに恐らく10年以上は時間は経っているのだとは思います」
私の説明に加山さんがずっと目を細めたので、妖力は感じませんと言えば、なんとも言えない顔をされたが。
「調べることが増えたな……」
「ああ、加山、悪いけど頼めるかい?」
「大神の頼みなら仕方ない」
そう言ってポンといちはちゃんの頭を撫でた加山さんは、じゃあな小さなお嬢さん、また会おう!とまた消えた。身軽だなぁ。
「おかーさん!おとーさん、消えちゃった!」
「うーん、加山さんは忙しいみたい」
「おかーさんも?」
そうしょんぼりしたいちはちゃんに、頭を撫でる。
「んー、今お稽古中だからなぁ」
「そうか、期間が変わらなければ暦を見るに夏公演の時期か……」
神山さんがふむと考えながらつぶやけば、目をキラキラさせてさくらと呼ばれていた女の子が口を開く。
「お手伝いさせてください!」
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category:大神妹(桜)