君が君だと僕は信じる




 零ちゃんが変わった日はいつだったんだろう。そうぼんやりと考える。零ちゃんは途中まで確かに自分を「僕」と呼んでいた。でも、ある日、いきなり零ちゃんは「私」を使うようになった。まるで魔法が解けるように。
 今回はその逆だった。まるで魔法がかかったように、あの日の零ちゃんのように、零ちゃんは海帝の制服に腕を通し「僕」というようになった。それがまるで当たり前のように。まるで自分は男の子なのだというように。見事に野々宮くん達に馴染んで見せたらしい零ちゃんを弾くんは酷く心配している。

「零が零じゃないみたいだから、なんか嫌だ」

 そう言って弾くんはつまらなそうにストローをかき回す。メロンソーダは零ちゃんが好んで飲んでいたものだ。

「もう情報は集まってるんでしょ? 学校も無断欠席が続いてるのよ。もうそろそろ呼び戻さないと」
「ああ、そうなんだが・・・・・・」

  私の言葉に帝一くんが苦い顔をした。帝一くんにしては歯切れが悪い。光明くんが少し迷って口を開く。

「もしかしたら、零ちゃん、洗脳されちゃったかもしれない」
「え、?」
「高天原と一緒にいるんだ。付き従うように」

 そういった帝一くんに、弾くんがピタリと動きを止めた。

「は、?」
「それどころか、最近、若園と呼びかけても反応しないんだ」
「零ちゃんって呼んでもね」
「嘘だろ? 零にかぎって、洗脳なんて、」

 弾くんがそう言葉を切った。帝一くんが首を振る。弾くんは言葉を探しているみたいだった。

「明日、確かめてくる」
「弾」
「零が洗脳されてないって、確かめてくる」

 そう言ってまっすぐな目をした弾くんは、まるで自分に言い聞かせているみたいだった。





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