赤崎兄の、趣味の話 





「なぁ、赤崎」
「なんスか。後藤さん」
「赤崎の趣味の事だけど……」

番外編 赤崎兄の、趣味の話。

後藤さんに呼び止められ、出てきた単語に無意識にしかめっ面になる。

「音楽鑑賞の何が悪いんスか?」
「いや、悪い、とかじゃなくて、ナツちゃんと関係あるのかな、と」

後藤さんの言葉に「別にないッス」と答え、後藤さんと別れ廊下を歩く。

……実際は関係あるけど。

後藤さんの言葉で、一気に昔の思い出が蘇ってきた。
アイツがまだ、素直で可愛かった時。
アイツがサッカーを始める前。
体が弱かったアイツは、母親に勧められ、ピアノを習っていた。
当時の親のお迎えコースは、ナツ、俺の順でナツが泣きながら俺の迎えに来ることもしばしばあった。
(その時からアイスを食わせりゃ泣き止んでたけど)
俺はピアノなんて興味なかったし、ナツの練習を聞いてて五月蝿いとしか考えてなかった。
けど、ある日、ピアノの発表会があった。
偶然休みだった俺は、親に連れられてナツの発表会に行った。
っていっても、暇で隙でしょうがなかったから半分寝てたけど。
アイツの番が近づいて、アイツは俺の近くまで近づいてきて笑った。


"りょーにぃのためにがんばるから、ねちゃだめだよー! "

そして、アイツの番がきた。
練習で聞いてた曲の筈なのに、とても綺麗に聞こえて。
ナツは輝いていて。

そこから、音楽にのめり込んだ。
アイツが中三で、ピアノを止めるまで発表会の日には絶対行った。
試合の日も、終わってからダッシュで向かった。
喧嘩してても、それだけは見に行った。


「何だかんだ言って、俺もアイツの影響受けてる……」

妹にも、誰にも、死んでも言わない。



赤崎兄の、趣味の話
(あ、遼兄! 練習終わったの?)
(! 何してんだ)
(アイス食ってる)
(見りゃわかる)
(お前ら仲いいよなぁ)
((どこが))
(ってか、監督、途中からいなくなったと思ったらここにいたんスか)
(僕もいるよ)
(! 王子まで!)


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SQUELCH!!