「あ。村越さんだ」
「!」
眠気眼で一人でランニングしていると、目の前から村越さんが走ってきた。
只今の時刻は午前6時。初夏? のランニングにはもってこいの時間だ。
「おはよーございます、」
「ああ……赤崎妹は何をしてるんだ?」
「ランニングでごわす」
「……眠たそうだな」
「超眠いッス。昨日お兄ちゃんとウイニングイレブンやってました。夜遅くまで。……いつもは眠くないんですけどね、」
ふぁー、と欠伸をこぼす。
頭が回ってないから遼兄のこと、お兄ちゃんって呼んじゃったよ。
まぁいいや。相手村越さんだし。
「……そこ座っとけ」
「ふぁい……」
何だろう、と思いつつベンチに座る。
余談だけど、これは村越さんの言うことだから聞く。なんか断れないんだよな、やっぱベテランだからかな。
え? 先生(堺さんね、堺さん)の言うことを聞いてないって?
基本的には聞いてるよ。アダ名関連の事以外。
どこが境目だろ。……三十路か?
「わっ、冷たい!」
ピタリ、とおでこに冷たい物が当たったので顔をあげてみれば缶のポカリを持った村越さんでした。
「目、覚めたか?」
「覚めました、おかげさまで。びっくりした、」
だろうな、と言って村越さんは私の隣に座った。
(ちなみにポカリは貰いました)
「何回か声かけたが、お前が反応しなかったからな。寝てんじゃないかと思った。どっかの監督みたいに」
それ、絶対タッツの事だよね、村越さん。
「いや、ちょっと考えごとを……」
「考え事?」
「はい、私が素直に言うことを聞くのは何歳ぐらいの人からだろうと」
「……黒田辺りからあんまり聞いてないように見えるぜ、俺は」
「杉江さんは聞きますよ。世良さんあたりからかなぁ」
「後藤さんをからかってるじゃねーか」
「あ」
そうだった。ゴトゥーの言うことあんまし聞かないじゃん、私。
ってことは三十路じゃないと。
結論:人による。
「……赤崎妹、」
「何ですか?」
ポカリの缶を開けて、口に流し込む。
冷たい味が口に広がってきた。
「今のETUをどう思う?」
「んー……いい感じに負け癖がとれてきた感はありますね。問題は……」
「問題は?」
「黒田さん達と、ベンチに下がったベテラン組――」
「黒田達?」
「……そのうち、杉江さんが気がつきそうですね。最近、ラインが下がってきてる」
「……。ベンチに下がったベテラン組は?」
「んー……堺さん以外は、なんか、サッカー止める気になった? みたいな。スタメン入んの諦めてそうだし……ガミさんとか、試合出たらそのままスタメン枠に入りそうなんだけどなー」
ガミさんのプレー、個人的にすきだなー。堺さん然り、ガミさん然り、性格がでるよね、プレーって。
「……じゃあ、俺はお前にどう見える?」
「……昔より、楽しそうにプレーしてると思います」
「楽しそうに?」
「なんか、今はがむしゃらに自分のプレーを貫き通してる感じがしますよ、」
まさに、武士道って感じ。
楽しそうに、って言う表現が間違ってそうだな、
「……自分のプレーに集中して、仲間と試合の形を作る。そして、自分のプレーだけに責任を持つ」
「……」
「こういうプレーヤーって、私的に楽しそうに見えるんです」
「責任、か」
「これはあくまで、私の考えですが……――自分のプレーに責任を負うのがプレーヤー。他人のプレーに責任を負うのが監督。負けという責任を負うのは、『チーム』」
「チームが?」
「そうです。試合に出た人も出てない人も、監督もコーチもスタッフも運営者も責任を負う」
それが出来るチームは、どんなに『弱い』と言われてても、『最高』で『最強』のチームですよ。
私の言葉に、村越さんは優しい笑みを浮かべた。
「確かに、そんなチームは最高だな」
赤崎妹と、村越
(……もうこんな時間か。話し込んじまったな、悪い)
(いえいえ。楽しかったッス。あと、ポカリご馳走さまです)
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SQUELCH!!