ジャックがうちに来てから、数十日たったある日のことだ。ジャックが生活に慣れ、日本語も話せるようになったので私は大学へまた通い始めていた。
 大学内を歩いていると、見慣れた後ろ姿を見つける。確かに、迎えにくるとは言っていたが、彼が大学内に入ってくるなんて珍しい。そう思いながら、声をかける。
「ジャック?」
 日本語の発音で声をかけてみるが、彼は振り返らない。仕方ないので英語で呼びかけるとする。
「……John?」
 また振り返らない。気づいていないのだろうか。
「Wait! John!」
 私は彼の腕をひく。彼は驚いたように振り返る。
 ――たしかに、ジャックとそっくりである。が、少し違った顔立ちだった。
 人違いだったことに驚き、固まっていれば彼は困ったように頬をかき、日本語で話しかけてくる。
「あー、すまない。俺はジョンという名前では……」
「スネ……デイヴィッド!」
 別の女の子の声が聞こえ、彼は嬉しそうな照れたような笑みを浮かべる。彼女は私を捉えると、驚いた表情を浮かべた。
「シキノさん!」
「えー、と、君は?」
「あぁ、ごめん! 私が一方的に知ってただけだった。同じ高校出身なの! 名前は、ユキノサチ中尉でございます!」
「そうか。知ってると思うが、私はシキノハルだ。よろしく」
 ビシィッ、と敬礼を決める彼女に苦笑いをこぼし、こちらも敬礼(ただし私の動作は正しいものだ)をかえす。同じ学校からもう一人この学校に来ていたことは知っていたが彼女だったとは。彼女は敬礼をやめると、満足そうに笑った。私は彼女からジョンとそっくりな男性に目を移す。
「あぁ、Mr.デイヴィッド、すまない、人を違えてしまったようだ」
「いや、こんな綺麗どころに引きとめられて嬉しかったよ」
「お世辞でも嬉しい……あ、ジャック」
 私は咄嗟に苦笑いをこぼす。ジャックが嬉しそうにこちらに向かってくる。デイヴィッドさんはそちらを向いて固まった。ジャックも彼に気がついて固まったが。
「知り合いなのか? ジャック」
 彼は私の隣にたって、デイヴィッドさんを見る。が、特に返答はない。いや、表情がなんとも言えない顔をしていた。ジョンが何かを言う前に、デイヴィッドさんが口を開いた。
「なっ、まさか、ビッグボスか!?」
「……いや、私は――俺は唯の『John』だ。よろしくな」
 ジャックが握手を差し出す。デイヴィッドさんは少し戸惑うが、ゆっくりとそれに応じる。と、同時にジャックがデイヴィッドさんにCQCを使って投げた。一瞬のうちの出来事に私が驚いていると、彼は清々しい笑みを浮かべて私の手をひいて走りだした。
「また会おう、デイヴィッド!」
 捨て台詞のようにそう言って、走る走る。デイヴィッドさんは起き上がるのが見えたので大丈夫なのだろう。ユキノさんは驚いていたが。しばらく走って、もういいだろう、とジャックは立ち止まる。そして、首を傾げて口をひらいた。
「なんで、デイヴィッドがここにいるんだ?」
どうやら、知り合いは知り合いらしい。そこで一人思い当たる人を思い出したが、私が何かいう前にジャックが兄弟みたいなものだ、とその会話をしめてしまった。

 ちなみにそこから二人は再会する度に勝負をするようになっていた。……格闘はあぶないからゲームに変えさせたけれど。その度に、私とユキノは仲良くなっていき、今では友人と呼べる一人にかわっていた。
――しかし、何故デイヴィッドがいるのか、ジャックがいるのかはお互い黙ったままであるが。まぁ、いつかは教えてくれるだろう。私達の話も、いつかはしなければいけないけれど。

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