血溜ノ間殺人事件(08)



「頭の怪我。囲碁クラブの合宿だと聞いていましたが」

 顔をしかめた高遠さんに、苦笑いする。病院に寄らされた為、包帯を巻いての帰還だ。不機嫌そうなそれ。手招きされたので大人しく近づけば、抱き寄せられてしまった。

「この位置、背後から殴られたようだ」
「っ、痛いので触らないでっ、」

 ズキン、と痛んだそれに嫌々と首を振れば怒っているらしい高遠さんは、私を見下ろした。

「他は何もされませんでしたか?」
「……何も……」
「ほぅ、脱がされて写真を撮られても『何も』ないんです?」

 高遠さんの言葉に固まる。まって。なんで、それを知ってるの。

「なんで、という顔ですね。貴方が私に電話をかけたんでしょう。その様子を見れば、無意識だったようですが」
「……」
「わかりますか? こちらが呼びかけても、彼女は応答しない。それどころか、彼女を犯すだなんて話もでてくる。わかりますか?私の気持ちが」

 ピリピリと怖い高遠さんに、眉尻を下げて見上げる。助けに来ようとも場所がわからない。ただ、私をどうするかという声と、誰かが殺される声しか聞こえない。そして、電源が落ちたために消えた声。不安と怒り、だろう。
 高遠さんは怒りを息と共に逃がしたらしい。

「手を出されてはいませんか? ……といっても、意識を失った状態ならばわかりませんね」

 キスを落とされ、驚きながらも高遠さんをみる。

「手を出されていないか、確認します」

 確認しなくていいです、だなんて言葉は高遠さんに飲み込まれてしまった。