この国は、終わるべくして作られた。彼はそう言って優しく笑んだ。そこにいた将軍達は知っているのだろう。何も言わずに、私の反応を見ている。終わるべくして? と尋ねれば彼は頷いた。

「この世界は――」

 ピアノの音を聴きながら、先程の言葉を考える。統一的な思想を得る為にその思想を掲げる空虚により作られた国家。彼は、彼らはそれに利用されただけの人物。ただ、他の何も知らない人物達と違うのは忠誠を誓う誰かの代わりに生きそしてその為の犠牲になるのを承知の上で「そこ」にいるのである。

 ――君には無理を言いたくはないが。

 彼の言葉に構いませんと告げた。もうそんなものは慣れている。誰かの悪役に徹しろということでしょう? と尋ねれば、彼らは頷いてみせた。もう一度、だ。人生に二度目はない。普通は。繰り返すものでもないのだ。なのに、私は。

「マスター?」

 ピアノの音が止む。目を開けばピアノを弾いていたミカエルがこちらを見た。

「マスター、どうかしましたか」
「あぁ、いや、少し考えごとをね」
「考ええ事?」

 そう小首を傾げた彼に「つまらないことだよ」と笑いながら彼を見た。

「ミカエルは人の姿が好きか?」
「そうだね、好き、かな。ピアノが弾けるから」
「そうか、私はミカエルの弾くピアノ好きだよ」
「本当に?」
「本当に」
「でも、マスター、考え事をしてた」
「それはそれ。これはこれだ」

 少し不機嫌そうに告げたかれに、苦笑いしてそう告げる。続きを聞かせて、と言えば彼はまたピアノを奏で始める。聞いたことがある曲だ。少し古い曲ではあるけれど。あぁ、確か映画である。それを聴きながらもう一度目を伏せた。
 もし、あの人生が映画だとしたら、まさしく私は悪役だろう。いや、あの世界はフィクションだと記憶しているけれど。
 では、この現実での私はどうなのだろう。陛下と呼んだ彼はこの国は終わるべくして作られたと言っていた。ならば、正義とはあの子のいる方にあるのだろう。
 ――いつだって私はこちら側だ。正義ではない、対の方だ。自分が選んだとしても、選んでいないとしても。決して幸せな終わり方はこない。幸せな終わり方を望んでいるわけではない。あぁ、しかしこうも揺らいでいるのはあの時のように信念があるわけではないからだ。そもそも――。

「そんなものを塗りつぶしたのは私だ」

 ポーン、と音がなって曲が終わる。心配そうに振り返った彼に何でもないよと笑った。


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mokuji