デートらしいデートなんかしたことはない。当たり前だ、私と彼は恋人ではなかった。一緒に行動することはもちろん多かった。その中で一番デートらしかったのは二人で海に出かけたことだろう。穏やかな時間だった。そう、彼との最後の、穏やかな。
「ハル、起きろ」
そう私の*をペシペシと叩いたのは89だろう。目をゆるかにあけた先にいた彼は魘されてたぜと口を開いた。
「……また食事にきたのか? 今作るから」
「いいや、いい。そんなひどい顔した奴に作らせるほど俺は馬鹿じゃねぇ。座ってろ、ホットミルクぐらいは作ってやる」
「……ありがとう」
そう言ってソファに逆戻りする。
「……今日は調子、悪いのか」
「いや、これは、精神的なものだろう。誰かを呼び出したとか、そういうわけではないよ。いや、徐々にあの人からこちらに力が移っている可能性はあるけども。あの人の容態は?」
「よくねぇな。死にたくねぇってピィピィ泣いてるぜ」
「あの人が死んだら君達はどうなる?」
「しらねぇ。ハルが気にすることじゃねぇ」
渡されたマグカップに口をつける。まごう事なくホットミルクだ。美味しい、と言葉を零せば、彼はそうかよと言葉を零したが――聞こえてきた銃声と共に銃になった。それに目を見開いて、彼を抱え上げる。損傷はない。と、いうことは恐らく、あの人の命が尽きたのだ。今日の予定を頭の中で思い起こす。ベルガーはエフと、ミカエルは確かナインティと、他は待機だったはずだ。作戦時間はもう過ぎている。眉間にシワを寄せて89を摩り力を込める。ジクジクと痛む目を無視して、また姿を現した89に息を吐いた。
「なんだ、いまの、」
「89、他の銃を確認して持ってきてくれ。恐らく誰かがあの人を撃ち殺した、騒がないから味方があの人を撃ったか」
「……あり得る話だな、あの人は敵を作り過ぎてる。今やあの人――ザイルがスパイ説だってのも濃厚だ」
「それか、誰かが潜入しあの男を撃ったかだ。私はミカエルとベルガーに二つを持って帰れと無線で連絡を入れてくる」
「待てよ、ハル一人じゃ危ない。敵がいんなら尚更だ」
その言葉にポン、と89の頭を撫でる。大丈夫だ、といえば、彼は目を少し泳がせた。
「わかった、マスターの命令だ、面倒クセェけど、途中まで一緒にいくからな」
その言葉に頷いて扉を開ける。兵士達が何処かへ向かっている。その波に逆らうように、こっちだと手招いた89について走り出した。
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