銃を回収に向かった89と別れ、無線を管理する部屋で連絡を入れれば丁度撤退するタイミングだったらしい。怠いけど連れて帰る、または、ちゃんと連れて帰るという言葉をきいて安堵する。お守りだと渡されたのはファルの本体だろうか。彼を元の姿にするかと思うが、先にジクジクと痛む目に落ち着こうと息を吐いた。
「なんだ、ここ?」
そんな声が聞こえて壁際による。会話からしてここの兵士ではない。と、いうことはやはり侵入者がいたらしい。そっと足音を殺して壁による。
「無線室と書いているな、ということは無線を管理する場所だろう」
「むせん?」
「遠くの人と話すことができる装置だ」
「壊すのが得策か」
扉が開く。中に入ってきた男は世界帝の服装を着ている、が。
「ただの一般兵士が無線室で何している?」
そう尋ねれば、彼らはハッとしたように私を見た。構えられた銃は古いものである。
「一般兵がここに入るには上官の許可が必要だろう」
「……申し訳ございません。外の騒ぎの中、ここを確認せよ、と上官に命じられたので」
「そうか、賢い判断ができる上官がいたものだな。命令した上官の名前は?」
黙り込んだ彼らに、まさか上官の名前がわからないのか? と尋ねる。彼らがゆっくりと引き金に手を伸ばすのと、私がファルを後ろ手で握ること、89が彼らの背後から顔をのぞかせたのは同時である。力を込める。その瞬間、青紫色の光とともに現れたのはファルだ。彼が素早く銃を構えるのと同時に89ときゅるちゅ、アインス、ゴーストが彼らの後ろから銃をつきつけた。
「引き金から手を離しなさい。さもなくば、集中砲火を受けて蜂の巣ですよ」
「まぁ、頭を吹っ飛ばしてやってもいいがな」
「両手を上げて武器から手を離しなさい」
そう促せば彼らは両手を挙げた。銃を落とした彼らに眉間にシワを寄せる。
「あとの処遇は陛下に任せます。アインスは陛下に報告を」
「殺さなくていいのか、『マスター』」
「彼らの銃を奪いましたから、殺すならこの銃を壊せばいい話です。まぁ、壊しても死ななければ人ですから撃ち殺すしかありませんけどね」
ジクジクと痛みだした傷に連れて行きなさい、といえば現代銃達は了承して彼らを連れ出した。静かに閉まった扉に息を吐く。たらりと顔に流れた血にあといくつか姿を人に変えなければならないのだと思う。もう一度開いた扉の先にいたゴーストに、ゴースト? と彼を呼べば彼は顔を真っ青にしてこちらに駆け寄ってきた。
「ハル――マスター!? マスター、どないしたん!? 血、いやや、マスター、死なんといて!」
「大丈夫、死なない、いっきにやったから、」
「! そうか、ワシらを一気に呼び出したからやな……」
苦しい。痛い。ゴーストの服を握って息を吐く。落ち着け、と痛みを逃すように。それを繰り返し、やっと落ち着いた痛みに、ため息を吐いた。
「もう大丈夫だ、ありがとう」
「マスター、でも、酷い顔色やで」
「大丈夫」
ポン、と彼の頭を撫でて立ち上がる。ふらついた体を器用に支えた彼は、まだ無理や、と首を左右に振った。
「待っとき、アインスの兄さんが来るから」
「断定か」
「ああいう奴らの扱いはアインスの兄さんより、ファルの方が向いとるからなぁ」
ガチャリと開いた扉を見れば、たしかにアインスが戻ってきていたらしい。
「ゴースト、マスターは無事か」
「大丈夫」
「大丈夫、やないやろ、マスター。アインスの兄さん、マスターを部屋に連れてって上げて」
「あぁ、……酷い血だな……俺たちを一気に呼び出したからか」
「これくらいまだ大丈夫だ。他もいるだろう? エフやナインティ、ラブワン、モーゼル」
「89が持ってるが間をあけた方がいい」
アインスが軽々と私を抱き上げる。ああ軟弱な体になってしまったなと苦笑いすれば、何笑ってんだと小突かれてしまった。
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