――迎えに来たのね。
 ビッグママは彼女――ハルを見てそう告げた。ハルはなんとも言わず、ただ目を伏せる。
「人違いじゃないですか」
「――そう、ね、そうよね、ごめんなさい。彼女はあそこで殺されたんだから」
 聞き覚えのある言葉だった。そう、それは確か、あのビッグシェルの事件でオセロットに彼女が告げていた言葉にも近かった。
「でも、まるであの人の生き写しね。きっと彼が見たら喜ぶわ」
「――貴方は私に怒らない?」
「どうして貴女に怒る必要があるの? 貴女は彼女じゃない。……貴女が彼女だとしても、彼女に謝る必要があるのは私の方よ」
 ビッグママはそう言って目を伏せる。
「私はあの人に彼を負かされたけれど、私には彼の隣は立てなかったし、何もしてあげれなかった。彼が何時も見ていたのはあの人だったもの」
「――そんなことは」
「ふふ、まるであの人と話してるみたい」
 ビッグママはそう言ってハルの頬を撫でて抱きよせる。ハルはただ困ったように彼女を見つめるだけだ。
「――迎えに行ってあげて。私はもう大丈夫よ、心配いらないわ、ヘイティ」
「ごめんなさい」
「もう、謝らないで」
「かえられなくて、ごめんなさい、」
 そこではじめて、ハルがないているのだとわかった。ビッグママは彼女の頭を撫でた。
「――不思議な子」



 メリルが非常に不機嫌だ。それは恐らくハルがいるからだろうか。友好的に接しようとした彼女に、メリルがちょっとむっとしていたのが先ほどである。(そもそも、ビッグママのもとに尋ねる時からこうなのであるが)
 ビッグママの死、兵器の一方的な無力化。その時に傷を負ったハルはあまり体調がよろしくなさそうなのも一つの原因だろうし、僕とスネークが気にかけるのも原因の一つだろう。現に、僕らがシャドーもセスに行ったとき彼女の体調は最高潮に悪かったらしく、スネークのサポートが出来なかった。まぁ、結局は彼女が雷電を引き上げたりスネークを解放したりしてもらった。それに、今はマシになったと言って聞かないけれど。全く、誰に似たんだろうか。
「ハル、お前は乗り込んでくるな。オタコン達の護衛を頼む」
「却下、人出は多い方がいいだろう。君は自分の心配をしろ。万が一君が無理だったら私が行くよ」
「だが、」
「それに、私たちはパートナーだろう? 今更何を言ってるんだ」
 彼女はケタケタ笑いながらそう告げた。大丈夫さ、といった彼女はまた言葉を続けた。
「――誰も死なない」
 彼女の言葉に対する反応は二通りだ。驚いた後で安堵したような顔をする人、そして怒る人、そのどちらかだ。
「ちょっと、何を根拠にそんなことを言ってるの!? この状況で!」
「大丈夫、誰も死なない」
 ハルはメリルの言葉を無視して――というよりは、それを飲み込むように優しい笑みを浮かべて安堵したような顔をした兵士達を見た。
「君たちはやり遂げれる。誰一人、かけることは許されない。ブリーフィングは終わったような物だろうから、銃の確認をしておいてほしい」
 そう促したハルに兵士が何人もうなずいて部屋からそとにでた。それを見送って彼女はメイリンに声をかける。
「艦長、少しでも生存率を上げたいなら士気をあげることだ。心と体は嫌でも同調する。ナノマシンによる強制的なそれができないなら、声をかけて安心させてあげるしかない。それは上官にしか出来ない」
「一理あるな。だが、メリルの言葉も一理ある」
「意志がある人間は死なない。私が教わったことの一つだ。戦場における最大の武器、それは絶対に生き残るという強い意志だと。ここにいる人の意志は強い。だから、大丈夫だ」
 彼女はまっすぐに告げた。それが強い励ましになったのは、言うまでもないだろうけれど。


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mokuji