SQUELCH!!


白い魔女と演練



 同じ刀剣がたくさんいるその場所を歩く。和風の街だ。みんなと完璧に逸れたような気がする。私はそっと息を吐いて、人混みから少しそれた場所で人の行き交いをみる。ことの発端はこんのすけが今日は演練にいきましょうと告げたことだ。演練?と尋ねれば他の本丸の刀剣と手合わせすることだと言われた。今日も私の補佐をしていてくれた長谷部さんがあまりいい顔をしなかったが、とりあえず私は行きたい人を連れて行くことにしたのである。まぁほとんどがよく出陣してくれる彼らが行くことになったのだけど。で、それを終わらせたのはいいのであるが、人混みに押されてこのように演練場と繋がる街に放り出されてしまったのだ。並んでいるものを考えると恐らく和風の街であるが現代に値する場所であることは察することができた。そっと目を伏せて感覚を探る。結構みんながいる場所まちまちであるのをみると、恐らく探してくれているのだろう。目を開いて合流するかと人ごみに足を踏み入れようとすればぶつかった。倒れた私に慌てたように屈んだのは光忠さんであるが、感覚からして私の本丸の彼ではない。
「あぁ、ごめん!怪我はない?」
「あぁいえ、私も飛び出したのが悪いので」
 そう謝って立ち上がる。歌仙さんが見繕ってくれた真白の羽織りを叩く。そうしてもう一度彼に謝ろうとすれば彼は目を瞬いた。
「他所の鶴さんじゃない?」
「鶴さん?」
「ああっと、ごめんね、知り合いに似ていたから」
 ワタワタと彼は慌てて私をみる。そうして上から下まで私をみると、何かに気づいたようだった。
「はっ、もしかして、他所の鶴さんのお嫁さんかな。やるなぁ、他所の鶴さん!」
「あの、」
「おーい、光坊、なにしてんだ?」
 何か勘違いをしているのでは。そう正そうとすれば、遮るように誰かがきた。駆け寄ってきたのは真白の人である。
「あ、鶴さん」
「他所の俺となに話して……って女?他所の審神者か?」
 上から下まで私をみて彼は首を傾げ――手を叩く。
「その色、他所の俺の嫁さんか!いやはや、君は見る目がある!」
 そうぽんぽんと肩を叩いた彼に、私が違うと言おうとするより先にヌッと光忠さんの肩を見慣れた右手が掴んだ。見えたのは大包平さんである。眉間にシワを寄せているが。
「うちの主に何かようか。その手を離せ」
「おっと、悪い」
 白い人と私の間に入った大包平さんに私は彼と二人をみる。これは勘違いが起こっている。
「えっと、大包平さん、恐らく誤解です。私は人混み流されてここにきたので……」
「あぁ、一気に人が増えたと思ったら演練終わりの刀剣が出てきたのか。災難だったね」
「なんだ、迷子だったのか?大包平がくるとはな。旦那の俺はどうした?」
「だから、それは」
「勘違いだ。俺たちの本丸にお前はいない。前の主が折ったからな」
 はっきりとつげた大包平さんに二人は顔を見合わせる。大包平さんは口を開いた。
「主の二色の髪色をみてそう判断したのだろうが、主の髪色は白い方が地毛だ」
「前は黒く髪を染めていたので、ややこしくってすいません」
「……いいや、僕が先に勘違いしていたようだから。ごめんね、疲れているのに」
「いえ、気にしていません。ぶつかってしまってすいませんでした」
「光坊は大丈夫だ。頑丈が取り柄だからな」
「ちょっと鶴さん?」
 ふむ、仲がいいようで何よりである。はぁ、とため息をついた大包平さんは「主、帰るぞ」と私の手を引く。私は慌てて羽織についたフードを被り、二人に礼をしてまた人混みに紛れた。
「どうして彼らは勘違いを?」
「……ただの噂だ。審神者と刀剣が恋仲になれば――仲が深まれば深まるほどに何処かにその刀剣の色を宿すという」
 それは魔法的なのか、それとも染めるのかどちらなのだろうか。フゥン、と納得していれば彼は続けて口を開いた。
「主の白はあれの白とは違う。一緒にしないで欲しいところだ」
「うーん、私はどちらかというとシルバー寄りですもんね」
 私の発言に再度ため息をついた彼はこっちだ、と門を潜る。そうすれば演練場にいきついた。
「あ、いたいた、大包平ー!主はいたかー!」
「あぁ、いた!」
「逃すんじゃねぇぞ、大包平」
「そんな私が動物みたいに言わなくても……」
 そう言いつつ合流して迷子になっていたことを謝る。光忠さんが困ったように頰をかいた。
「あの人混みに流されちゃったかぁ。……あっち方面にみんな行くけど、なにがあるの?」
「店が色々あった」
「飲食店や雑貨屋なんかもありましたよ」
 私の言葉に歌仙さんがそちらをみつつ口を開く。
「なるほど、今まで縁がない世界だね。覗きたい気持ちもするけれど、主もつかれたろうし帰ろうか」
「大包平の旦那、離すなよ」
「言われなくとも離さん」
「私は犬猫じゃないんだけどなぁ」
 がっくしと肩を落としたが、迷子になった私が悪いのである。それ以上は何も言うまい。



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