SQUELCH!!


白い魔女と褒美(3)


 大包平さんに誉のご褒美に花を贈って以降、誉のご褒美が花だというのが定着したような気がする。同じものだと面白くないだろうと数を重ねた人には少し属性を氷の中に閉じ込めたものを渡したりしているが、解けないため増えるばかりだ。まぁ、大包平さんが百合、御手杵さんがチューリップ、同田貫さんが水仙のように種類をかえているがために同じものがたくさんあるというよりは色んな花が増えている。それなら勲章のように身につけるものの方がいいんだろうか、とぼうっとしている。執務は終わった。今お茶を入れに行ってくれている長谷部さん曰くなんでも嬉しい、らしい。それはそれで私も嬉しいけど困る。数輪集めて一つの勲章にするのもいいかもしれない。恐らく出陣の誉が一番多いのは大包平さんと御手杵さん、同田貫さんだろう。十輪くらいは集まっていると思う。
「主、何考えてるの?」
 ひょこりと奥から顔を出したのは加州さんである。
「誉のご褒美を、みんな飾ってくれているでしょう?増えてきたし、十輪くらい集まったら違う形にしようかなって考えていて」
「違う形?」
「勲章みたいな、ブローチみたいな、アクセサリーみたいな……」
 私の説明に彼は首を傾げた。「身につける飾みたいな感じかなぁ」と説明すれば彼は目をキラキラと輝かせた。
「いいじゃん!それ!」
「本当?」
「うん!あれ持ち歩けないから、持ち歩きたかったんだよね」
 ニコニコしている彼にそういうものかぁ、と思う。でもあと三輪は必要かぁとぼやいた彼に今度は私も首を傾げる。彼はあと二輪ではなかろうか。彼は照れたように笑うと「部屋にも飾りたいから」と告げた。まぁそれは本人に任せよう。長谷部さんが持ってきたお茶を三人で飲んでいれば、足音が聞こえる。主ー、あるじさま!という声を聞くに出払っていた隊が全員帰ってきたらしい。おかえりなさい、と出迎えれば軽傷程度で済んでいたらしい。それにまず安堵する。今剣くんに抱えられたこんのすけが「今回の誉は」と言えば同田貫さんがジロリと、御手杵さんがじっと、他が苦笑いして大包平さんをみ、大包平さんが自信満々に桜の花びらを舞わせた。
「大包平。拮抗してたんだけど、大将首をとられたからなぁ」
「当たり前だ」
「ありゃお前の方に大将がいったからだ。それがなけりゃ俺だった」
「同田貫さんは斬り込んでくれる分、手前の敵を相手しがちですもんね」
「あぁ、俺たちは追うのが精一杯だ」
「そうだね、俺たちも精進しよう」
 そんな会話の後に短刀部隊がはいっと手をあげた。
「主君、僕らの誉は今剣くんです!」
「ぴょんと一息にやっつけてしまいました……!」
「薬研も惜しかったよね」
「あぁ、いいのか?薬研」
「あぁ、俺も異議なしだな。練度の差がなくなってきた」
「へへん!ぼくだってやりますよ!あるじさま、ほめてください!」
 そう前に出た今剣くんに、彼はこれで六輪目、と慣れたように光を閉じ込めた氷の菖をつくる。受け取った彼は嬉しそうに笑った。加州さんはそれをみて口を開く。
「そっか、今剣は六輪目かぁ」
「?何かあるのか」
「主が花の数が多いと大変だろうと考慮してくださった」
 長谷部さんはそう言って氷でできた百合の花を九輪取り出す。いつのまに、と思っていればチューリップや水仙もあるので目処を立てていたらしい。
「それは、俺の!」
「大包平さんは、赤と青、黄色と緑、白と水色、どれがお好きですか?」
 そう尋ねれば彼はしばらくおいて、白だ、と答えた。なるほど白は確かに彼は相性がいいだろう。白い光を閉じ込めた花を魔法でつくり、他の九輪と宙に浮かべる。そうして指揮をする様に――しかしながらいつもと違うように指を振ればそれは一つに合わさって百合の形の勲章のブローチみたいなものが出来上がった。ゆっくりと手のひらに降りてきたそれに不具合がないか確かめる。ふむ、不具合はない。兄弟子に贈っていたアクセサリーと同じだ。私は大包平さんに近づくと胸元の邪魔にならない場所にそれをつける。
「貴方にこれからも光の加護があらんことを」
 そう笑みを浮かべれば彼は動きをとめた。そうして少しの沈黙の後、桜吹雪が起こる。う、わ、とバランスを崩しかければ長谷部さんが支えてくれた。短刀や周りにいた刀達が同田貫さんの胸元についたブローチをみる。綺麗だの美しいだのと騒ぐ周りに私はホッと息を吐いたのだけれど。



- 11 -

*前次#


ページ: