不思議の本丸の刀剣(5)
ふむ、政府から送られてきた情報が出た。新しい時代に出陣するためのルート改築と万事屋や近所を繋ぐルートの改正、演練場の建て替えなどがあるためルート改築・改正に一週間、調整にさらに一週間かかるらしい。一週間経てば普段行き交う場所などのルートは固定できるのでこちらにいる刀剣達はその時に帰れる、と言うことである。ちらほらとそう言う本丸はあり、その分の食糧や手当てのための資源などは政府が手配してくれるとのことだ。ただ、資源は安全の考慮から最終日に配布らしいが。それから小型の携帯端末が支給された。保護している刀剣達が彼らの本丸と随時連絡が取れるようにと言うものらしい。で、二週間は政府からの仕事はあまりない、と。
「実質他の本丸には夏季休暇というところでしょうか」
こんのすけの言葉に、あぁ、なつやすみ、と納得する。それならこの本丸にいる彼らはあまりよろしくないのではないかと思っていればこんのすけが見透かしたように口を開いた。
「主さま、あれらは自業自得です。審神者のミスですので」
「えーと、」
「まて、こんのすけ。他の本丸、には?」
「はい、こちらの本丸はゲートが関係ないので応急的な処置として出陣する可能性がございます。その代わりと言ってはなんですが、別日に休みが振り当てられます」
「なるほど」
まぁ、それは仕方がない。他の本丸にできないことができるのだから。
「これを本丸のみんなに伝達しなければいけませんね」
「この本丸の皆への俺にお任せください、主」
「主さま、携帯端末は誰に渡せば良いか書かれておりますゆえ。皆その隊を率いる隊長ですので、彼らに言えば伝わるかと」
「わかりました」
そう頷いて箱を受け取る。あぁ、あと、新しい場所が現れたことを長谷部さんに伝えないとな、と思っていれば大包平さんが口を開いた。
「長谷部、新しい場所が増えた」
「何?」
「えーと、ごめんなさい。今朝いきなり増えてしまって」
「いいえ、かまいません。この本丸は貴方のものですから。それに、短刀達も喜びます」
長谷部さんも心なしか嬉しそうである。近くで聞いていたらしいにっかりさんが「長谷部くんも好きだろう?」と口を開いた。
「探検がか?」
「地図を作ることが、だ!」
大包平さんの疑問の言葉を長谷部さんが正す。なるほど、地図をつくってくれていたらしい。通りで彼の部屋には作図のためのものや、地図の資料があったのだろう。もしかしたら何処なのか照らし合わせようとしていたのかもしれない。長谷部さんはため息をつくと、私を見た。
「で、どちらが?」
「出陣ゲートの方に門があっただろう。そこが開いた」
「……あぁ、あの大きな門が」
「主はその先に何があるか知っているのかい?」
にっかりさんが首をかしげる。
「確か、あの先は市場だったと思うのですが……」
「市場ですか」
「それは短刀達のお店やさんごっこに磨きがかかるね。楽しみにしておこう」
そうニコニコと笑ったにっかりさんに私もまたニコニコと笑う。短刀達のお店やさんごっこは楽しそうなのだ。手作りの品に混じって偶に本当に有意義なものが売られている。
「とりあえず、第一部隊は何か緊急事態に備えるとして内番の振り分けはどうする」
「それなら今日は本来遠征予定だった長谷部さんや短刀達に地図作成をしていただいて、 内番の方は内番、残りは手伝いと言う形はいかがですか?」
そう言って内番の振り分け表に名前をいれていく。遠征のところを魔法で地図製作とすれば準備はオッケーだ。
「しかし、主、あれは趣味のようなもので……」
「私も地図が欲しいと思っていたところですので、逆に作っていただけるなら助かります」
眉尻を下げてそう伺えば彼はパチパチと目を瞬いたあと、「主命とあれば」と口元を緩めて告げた。ひらひらとまった桜の花びらに、私もまたニコニコ笑う。
「では、他のものへも伝えて参ります!」
そう障子を開けて駆け出した長谷部さんを見送る。にっかりさんが「主も上手くなってきたねぇ」と笑った。大包平さんがそれを聞いて頷いた。
「あぁ、へし切り長谷部の扱い方がわかってきている。アイツは諸刃の剣の面があるからな」
「長谷部だけではないと思うが」
縁側で日に当たっていた鶯丸さんがそう言って笑んだ。
「……あぁ、そうだな。主は俺たちのことをわかってくれている」
そんなことは、ないと思うのだ。私はまだまだ知らないことばかりだ。彼らのことも、自分の運命でさえも。
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