そらをとぶ!
「ギョシュクさんのとこにはびゅーんって、空を飛んでいくからそんなに時間はかからないよ」
ケイファの発言にその場で食卓を囲んでいた人物達は動きを止める。信じられないものを見るかのようだ。荀ケが首をかしげる。
「空を飛べるのですか?」
「ポケモンに乗ってね! 靛も進化したら、コータツさんをのせて飛べるよ! 今のままでも、靛はケイファくらいなら運べるし飛竜は大きい方だし羽も随分育ってるから短い距離なら徐兄のせて飛べるんじゃないかな」
「えっ」
二人はそれぞれのポケモンをみた。靛も飛竜も首をかしげるだけだ。満寵がサンドイッチを頬張りながら首をかしげる。
「進化って?」
「そっかー、ハクネイさん達の世界には進化がないんだよね。ポケモンの姿が変わるんだよ。靛も飛竜も最後の進化をしたらケイファは見上げちゃうね」
ケイファが見上げるほどとは。それぞれ想像してみるが、いまいち大きさがわかりかねた。賈詡がケイファに問いかける。
「それにしても、空を飛ぶってどれくらいの高さだ? あの旗のくらいか?」
「もっと上だよ。雲くらい」
雲。そう周りはまた繰り返す。馬岱が心配したように口を開く。
「落ちたら大変なことにならない?」
「落ちないよ〜。ポケモンは賢いから。でも、慣れてなかったらポケモンライド用の鞍をつけるし、そもそも地方によっては偉い人の許可がいるってきいた」
即ち危険なのである。が、ケイファにとっては、というよりはケイファの地方ではポケモンに乗って空や陸、川や湖の移動は当たり前である。そうでもしないと何日も時間をかけてお互いの集落を移動する羽目になる。
「……万が一落ちたらどうなるんですか?」
「大怪我したり、最悪死んじゃうって聞いたことあるよ。でも、ポケモンが落とさないから大丈夫」
そう言ってケイファはきのみをマルにあげた。マルは嬉しそうにきのみを啄んだ。やはり安全ではない気がするのだが。賈詡はポンと荀攸の肩を叩いた。
「まぁ、頑張ってくれ、荀攸殿。空を飛べれば色々楽だろうしな」
「は?」
「靛は元々賢いポケモンで、他の地方では馬車みたいな感じで人を運ぶって聞いてるし、大丈夫だよ。気性も荒くないし」
「馬車みたいに?」
「人が乗った籠をね、足で掴むんだって。だからその地方では個人で飛べなくてもいいんだよってお兄ちゃんに聞いた。そうだ、ちょっと待ってて!」
ケイファはそう言ってゲルにまた戻る。しばらく何かを探す音がしたと思えば、何か小さな機械を持ってやってきた。
「これは?」
「これはわざマシンって言って、ケイファも仕組みはわかんないんだけどポケモンにわざを覚えさせる機械だよ。コレで空を飛ぶっていうポケモンライド用の技を覚えると人を乗せたりして空を飛べるようになるの」
「ポケモンライド?」
「ポケモンで移動する用の技かなぁ。原則、勝負で使う四つの技には含まれないから勝負では使えないんだけど、戦略上覚えさせたい時は2回使うんだよ。どうする? 飛竜と靛に覚えさせちゃう?」
ケイファはそう言って首をかしげる。靛は首を傾げて荀攸を覗き込み、飛竜は賛成だというふうに羽を震わせた。荀攸は少し考えているらしい。
「ええ……飛竜、俺は随分重いから……」
徐庶の言葉に、飛竜は大丈夫だというようにまた羽を震わせると、ケイファのそばに寄ってきた。
「徐兄、飛竜が覚えたいみたいだから、覚えさせるね!」
徐庶の答えを聞く前にケイファはわざマシンを起動させる。箱のようなそれを開けば、羽のような印が宙に浮かぶとそれは飛竜に溶けた。そうして起動が終わったのか、わざマシンはまた箱の状態に戻った。
「コレでおしまい!」
飛竜は羽を震わせると、徐庶の後ろに回り込みわし掴んだ。え、と驚いている間に、羽を羽ばたかせると徐庶の体が浮き上がる。
「飛竜、徐兄と一緒に飛びたいのは分かるけど、それは服が破れたらおちちゃうから!! ライド用の鞍もってくるから待ってて!」
ケイファがそう言って駆け出そうとすれば、カイリューがいくつかライド用の鞍を持ってくる。
「カイリュー、ありがとう!」
「へぇ、鞍にもいろんなものがあるんだね」
興味津々と言ったように満寵が鞍を見下ろした。
「これなんて人が乗るサイズじゃないように見えるけど」
「こっちは棒みたいだね」
「これは人がぶら下がるんだよ〜。靛やマルみたいな大きさのポケモンで空を飛ぶ時はこれをつかうよ。登るのは難しいけど、山の頂上や崖から降るのにはそれで十分」
ケイファはそう言って満寵と馬岱と鞍を吟味する。賈詡は荀攸をみた。
「で、荀攸殿、靛には覚えさせないのか?」
「迷いますね。利便性は高そうですが……的になる可能性もあります。しかし、空から色々と視認できるのも移動距離を短縮できるのも心が揺れます」
「空を移動できるとなれば、回り道をしなくて済むからね」
「しかし、靛殿の大きさでは降るのは簡単でも登るのは難しいとおっしゃっていましたね」
荀ケはそう言って靛をみた。靛は自分のことを話しているのだと理解しているらしい。とっとっとっ、とケイファに近づくとケイファの手をつつく。
「なになに? 靛、どうしたの?」
そう尋ねれば、靛はマルを見上げた。ケイファとマルに向かって囀ると威嚇をするように翼を広げた。マルは困ったように囀り、ケイファはうーんと考えた。
「うーん、そっかぁ、そうだよねぇ、靛がもう一段進化したら、もうちょっと空は飛べるかも。でも、マルはバトル苦手だたからなぁ。けど、その心意気やよし!」
うむ! とケイファは頷いた。満寵がケイファを見下ろす。
「ケイファは言葉がわかるの?」
「一緒にいるからなんとなくわかるよ。多分ねぇ、みんなそうなる!」
ケイファがそう言っていれば、シキジカとメェークルがケイファと遊んでもらおうとかけてきた。
「あ! シキジカちゃんかメェークルちゃん、バトルしよ!」
ケイファの呼びかけに、二匹は顔を見合わせてからぴょんぴょんとケイファの周りを跳ねるように移動する。よしじゃあ、やろう! とケイファは頷く。
「えっ、いきなり上手くできるかどうか」
「バトルはねぇ、慣れだよ! 慣れ! どうせなら、ダブルバトルで勝負しよ!」
「だぶる……?」
「さっきのホウコウさんとの勝負はシングルっていって、一対一の勝負だよ。ダブルは二対二で勝負するの!」
「人も?」
「人は一人の時もあるよ。ポケモンが二体ならよし! どうせなら、飛竜も一緒にやろ! 徐庶さんも練習、練習! ロコちゃんは……おねむ! ホウコウさんのとこでおやすみ中だし、満寵さんしよ!」
「おや、いいのかい?」
「いいよ! 先にね、技の確認しよ! そっちのロトムー、二人に技の見方とか範囲とか教えてあげて!」
そう言ってケイファは鞍をそっちのけで、徐庶と飛竜を荀攸達の方に押して移動させると、満寵と、ついでに近くにいた馬岱とデバイスを覗き込んだ。
「あっちに興味にいったり、こっちにきょうみがいったり、忙しないお嬢さんだ」
「まぁ、子供らしくていいじゃないか」
郭嘉はそう言ってロコンを撫でる。ロコンはくうくうと寝息を立てていた。
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「うう、二人とも頭がいい人の戦い方する……」
そうがっくしと肩を落としたケイファに、荀攸はホッと息を吐いた。タイプ相性もあるのだが、荀攸と徐庶が見事に勝利を収めてみせたのだ。
「うーん、勝負は奥深いね。なるほど、なるほど……」
「技の精度もだけれど、あとは信頼関係とかも結構関係あるよ」
ケイファはそう言って二匹の回復を施す。元気になった二匹はケイファからきのみをもらうと嬉しそうにぴょんぴょんとはねてかけていった。
「しかし、なぜいきなり勝負を……」
そう荀攸が尋ねようとした時だ。靛がチカチカと点滅した。え? と驚いたように周りは靛を見つめる。だんだんと光の点滅がはやくなり、ついには靛は光に包まれる。その光は丸っこいココガラの形から、通常の鳥のような形へ変わっていく。そうして、光が拡散したかと思うと、靛の姿はココガラからアオガラスへと変わっていた。
「おめでとう! 靛! アオガラスに進化できた!」
ケイファはそう言って靛を持ち上げてくるくると回って見せた。が、靛は嫌だったらしい。手加減してケイファの手を突いた靛に、ケイファは手を離す。靛は荀攸の肩にいつものように止まった。
「ぐぬぬ、手加減はされてるけど、いたいものはいたい……」
「靛、なのですか?」
そう尋ねた荀攸に、靛はひと鳴きする。デバイスロトムたちがいっせいに口を開いた。
「アオガラス。カラスポケモン。飛行タイプ。足で小石を掴んだり、縄を相手に巻き付けるなど道具を扱う知恵を持つ。相手の力量を判断する力を身につけている」
「わ、なんだい?」
「デバイスロトムはポケモンの説明もしてくれるから」
ケイファはそう言って、ひこうポケモンの鞍の中から一つ選ぶ。棒のようなものと手綱のようなものが一緒になっているタイプのものだ。靛はその隙にケイファが持っていたわざマシンを机からとる。
「多分、飛竜は進化してもそのまま使えるけど、靛は変えなきゃいけないかも。あっと、危ない危ない、わざマシン使わなきゃ!」
靛からわざマシンを受け取ったケイファはそれを起動させる。浮かび上がった羽の印に、ケイファはそれを靛に当てた。羽が舞い散るエフェクトのあと、元の機械にもどる。
「準備よーし!」
「よくありません。使い方をきいてません」
「靛や飛竜はね、この棒を掴むよ! コータツさんとね、徐兄はこの手綱の方を使うよ。この手綱の部分を長くしてブランコみたいに乗るひともいるし、私やお兄ちゃん達は綱のところに足をかけて乗ったり手綱で体を固定したり、面倒くさいからそのまま棒に捕まったりするよ」
ケイファはそう言って指笛を3回ぴゅうぴゅうぴゅうと鳴らす。そうすれば、空にはひこうポケモン達が寄ってきた。ケイファが鞍の一つ――手綱と棒でできた鞍といえるかわからないもの――を真上に放り投げれば、その中のうちの一匹――オオスバメが空から滑空してきてその棒を掴むと、その勢いのままケイファは空に舞い上がった。そのまま高いところまで浮かび上がったケイファを見上げる。しばらくすれば、ケイファとオオスバメは降りてきたが。
「あんな感じだよ」
「ええっと、この棒のところを飛竜や靛が掴むんだね……?」
「慣れてない時はね、手綱を襷みたいにかけるんだよ」
そう言ってケイファは徐庶の体に手綱を襷みたいに巻き上げる。飛竜がワクワクしたように一度距離をとると、棒を掴んでそのまま舞い上がった。うわっと言う戸惑いの声が聞こえたかと思うと、その場にはもうおらず、徐庶は空高く飛んでいる。
ケイファは間髪入れずに荀攸にも手綱を襷掛けする。浮かない体に不思議に思った荀攸は靛を見た。靛は様子を窺っている。
「靛はコータツさんの合図を待ってるんだよ」
「合図と言っても何をすれば」
「言葉で伝えればわかるんじゃないかな。空を飛ぶって言えばわかるんじゃない?」
ケイファの言葉に、荀攸は靛と目を合わせる。
「靛、空を飛ぶ」
そう言えば靛は一度空に舞い上がると勢いをつけて棒の部分を掴んで飛んだ。高く浮き上がった体、浮遊感に一瞬荀攸は息を詰めたが、見えた景色は美しい。かなりの高所だとはすぐにわかる。ポケモンがたくさんいる名前の家付近の草原、その先にある森はもちろん森を抜けた先にある川、遠くには都市が見えた。他のひこうポケモン達は靛と荀攸、そしてもう少し上の方を飛ぶ飛竜と徐庶の様子を窺うように周りを飛んでいる。
――ポケモンがいなければ、見ることができなかった景色には違いない。
「たぶん降りるっていったらおりれるよー!!」
ケイファの声に、徐庶と荀攸は降りると声をかける。そうすると、二匹は下降を始めた。
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