Mimic what one says(1)
夏の音。水の流れる音、風鈴の鳴る音、そんな昔ながらの夏の音は身を潜め、今はすっかり冷房の音と遮断された先に聞こえる蝉の音に置き換わっていた。今の子供にとってはもしかしたら後者の方が夏の音なのかもしれない。
かくいう俺の夏の音が変わったのも俺が子供のころだ。その年までの夏といえば唸るような暑さと耳を塞ぎたくなるような蝉の歌、風鈴のおとだったというのに、その日からは冷房の音と音量をさげた蝉の声が夏の音になった。そして、その日、子供である俺は、どうしようもないような殺意を芽生えさせてしまったのである。
――こいつらがいなければ、俺たちはきっと幸せだったのだ。
いや、こいつらでなければ幸せに暮らせたのだ。だから俺はこいつらが許せない。
――何度目かの夏が来る。嫌な記憶が蘇る夏が来る。妹が死んだ夏が来る。
そんな夏の日、俺は出会うのだ。
「その復讐、お手伝いしましょうか?」
笑った男は犯罪者であると理解していた。けれども、幼い時にはもう神様に見放された俺にとってはこの地獄の使いこそが、神のように思えたのである。