Mimic what one says(8)

 全員の部屋を指紋や痕跡を残さないようにもう一度整える。その間にきた高遠遙一からの連絡に俺は医者を計画通りに殺したとつげた。それはそれは、と頷いた彼に後一人だと答えた。彼は止めることもなく、淡々と告げる。

「そうですね、後一人、無事に計画が遂行されることを祈っていますよ」
「今までありがとう、高遠遙一」

 高遠遙一に礼を言う。彼はふっと笑ったように息を吐いて別れを告げる。

「いいえ? それでは、良き旅路を」

 そう切れた電話に俺は連絡先を削除し、スマホを壊してから父親の部屋に置いた。それから俺は濡れたクッションを持って準備された自分の部屋を開けた。中はむせかえるような熱だ。あの日のあの部屋のような暑さだ。あたりに散らばしたのはあの頃の写真である。

 ――これは俺の死を持って解かれることのない謎になる。

 他殺のような自死、もしくは事故のような自死。最後まで残った俺はこの部屋の気温のせいで死亡時刻がずれるはずなのだ。だから、俺が犯行を行ったのにもかかわらず、俺は犯人になり得なくなる。高遠遙一に話を聞いた時まるでミステリー小説のようだとおもった。そうしてみんな「いなくなった」。それがこの事件の顛末となる。
 俺はきっと地獄に落ちる。何故なら天使ではなく、地獄の使いの手を取ったからだ。でも、それでよかった。だって、俺が憎んでいたのはアイツらだけではない。

 ――俺が一番許せなかったのは自分だ。

 あの日、真夏の日、父親に言われるがままあの部屋に妹を置いて行った俺だ。そばにいれば妹は死ななかった。一緒に連れて出ていれば、あるいはもっと早くに他の大人に助けを求めていれば、妹は死ぬことがなかったのだ。
 俺は奴らと同じだ。俺は妹を殺した。間接的に。だから、俺はいつも俺を殺したかったのだ。

 俺は袋に詰め込んだシンナーを肺にいっぱいつめこんだ。意識が朦朧とする。濡れたクッションを近くにおけば、俺はそこに沈んだ。そっと目を伏せる。この暑さの中で。蝉の声が聞こえて――消える。

 ――妹が来世では幸せな生を得られるよう、俺は地獄の底から願うのだ。