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仮面を被ったのはどちら



 ――夢を見るんです。 あの日の夢を。
 私は母の手を確かに取りました。しかし、私も共に舞台へ落ちてしまいました。その前に、私は彼らに助けを求めたんです。しかし、彼らは誰一人助けることなく何処かへ消えました。母は私に手を離すように告げましたが、私はそれが嫌で拒みました。そして、私は一緒に落ちました。
 私が起きた時には、それは事故として処理されていました。私がいくら事件だと細工がしてあったと告げても、子供である私の言葉など複数の意見にはかき消されます。

 ――毎日、夢を見るんです。あの日、母の手を延々と掴み続ける夢を。母の離すように告げる言葉も。延々と繰り返すんです。それを、悪夢と呼ばずになんと言えばいいのでしょうか。



「遥?」

トン、と肩を叩かれてハッと我に帰りました。嫌な夢を見続けて少し寝不足です。後ろにいた鹿島さんに、なんですか、と尋ねれば、ボーと舞台上見てたから何かあるのかなーって、と言われました。ああ、いけないな、と苦笑いして、「ライトの数を数えていました」だなんて半分ふざけた言葉を告げてみます。案の定、鹿島さんは「ライトの数……?」と首を傾げました。

「ライトの数がどうかした?」
「いいえ。暇なので数えていただけですよ」
「そう?」
「はい」
「なんか堀ちゃん先輩みたいな顔してたから」

 こーんな顔、と言った鹿島さんに苦笑いします。眉間に皺を寄せていたようです。そんなこんな会話をしていれば、堀先輩が休憩! と声をあげました。
 もう一度舞台を見ます。もし、あの時、母さんが死んでいなければ、私は今もどこかのステージに立ち続けていたんでしょう。一人のマジシャンとして。

「近宮ちゃーん、人が呼んでるよー!」

 女子の先輩に言われそちらに目をやれば、そこには近宮魔術団のマネージャーだった人がいました。少し顔を顰めて彼の元へ行けば、彼は私を見下ろしました。


「遥ちゃん!」
「どうしてここに?」
「君のお兄さんに会って、君がここに通ってると」

 そう言った彼は私をペタペタと触ります。彼の癖です。元気そうでよかった、と告げた彼に何の用ですか、と尋ねます。

「山神魔術団に、」
「スカウトですか? お断りします」
「……だよね」
「貴方はよく彼等と一緒にいれますね。彼等は先生を」
「殺した。そして、君も見捨てた。知ってるよ。ねぇ、遥ちゃん、痩せたんじゃない? やっぱり、苦しいよね。でも、もう大丈夫だよ」

 そう告げて笑った彼は狂っているように思えました。兄に唆されたのかもしれません。が、私が関係する事もありません。彼が私達の代わりに殺すのかもしれない。ならば、猫をかぶるのが吉でしょうか。彼の言葉に首を傾げます。

「助けるって?」
「……ううん、なんでもないよ。それより、この後、食事とかどうかな?クラブ抜け出せない?」

 そう告げた彼に首を振ります。今日は野崎くんの手伝いもありますし、彼と食事をするほどの間柄でもありません。すると、彼は少し残念そうな顔をしてくるりと踵を返して去りました。私も同じく踵を返し、鹿島さんや堀先輩の元へ行きます。彼の片手が、ずっとポケットにありましたが、嫌な予感しかしませんでした。

「今の誰?もしかして、恋人?」
「あー、母の仕事先の人ですよ。近くに寄ったから来たそうです。昔から世話焼きなんですよね、彼は」
「へぇ」
「でも、近宮なんか嬉しそうだな」
  口角上がってんぞ。

 堀先輩の言葉に口元をさわります。確かに、口角があがっているようです。堀先輩に「いえ、なんでも」とだけ答えました。彼が関わることではありません。



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